【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「ただいま……」
当然、返答は無い。
1人だけの部屋。
みんなのものは残ったまま。
僕だけが帰ってきた。
お兄ちゃんの僕だけ。
机の上に、買ってきた物を置いた。
コトリ。
そんな音が、やけに部屋に響いた。
壁にもたれかかる。
冷え切った壁は、誰もいないことを一層、強く教えてくれた。
壁にかかっているのは──幸せの象徴だった、みんなの似顔絵。
それを見て、前の僕だったら自然に笑えていたのに。
誰もいない。
声もない。
物音もしない。
光すら、希望すら無い。
……ああ……死にたいなあ……誰か、僕を殺してくれないかなあ。
グサッ、て。
だけど、生きなきゃいけない。
僕がみんなを殺したんだ。
死んで楽になるなんて、許されないんだ。
たとえ腕がなくなっても、脚がなくなっても、心臓が無くなっても。
「……ごめん」
胸が痛い。
頭が痛い。
心が、魂が、軋みを上げているようだった。
どうにかなってしまいそうだった。
心臓の位置を掴む。
──小さな駆動音。
キュィィと、ほんのわずかな音だった。
左腕を見る。
左腕『だった』ところを見る。
肌色のにぎやかな物体。
継ぎ目が多い。
重さは、ちょうど良い。
左腕そのものみたい。
だけど、左腕じゃ無い。
手に入れたばかりの機械の腕。
滑らかに動く。
ともすれば、元の腕よりもよほどやりたいことに従ってくれるくらいだ。
僕じゃあとても手が出せないような高級品。
加賀美さんが買ってくれた物。
与えてくれた新しい腕。
あの人は、僕に何を求めているんだろう。
僕は、どうすればいいんだろう。
どうすれば。
何をすれば。
なんで僕は。
「わかんないよ……」
力が抜けていく。
壁をずるずると下がって、床に座り込んだ。
「つめたい」
僕は、ここからどうやって生きていけばいいの?
どうすればよかったの?
誰も教えてくれなかった。
だから自分たちで、頑張って生きてきたんだよ。
必死に調べて。
お金を少しずつ貯めて。
前に進んでいたのに。
1人、みんなを置いて逃げた。
「──ああああああああ!!」
叫んでも、何も変わらなかった。
驚いてヒマリが顔を壁から出すこともない。
ユウキが不満げな顔で文句を言うこともない。
ミナトが……
「…………あ」
こんな時にも、お腹が空く。
本当、バカみたい。
ゆっくりとする時間すら、この体は許してはくれないんだから。
食欲なんて無い。
食材を買ってきたのだって、それがいつも通りだったからだ。
何も考えず、買う物を選ぶ時間は気が楽だった。
「ごはん、つくらなきゃ……」
ノロノロと立ち上がる。
冷蔵庫にしまう物と、今使う物。
仕分けている間、ミナトの声が聞こえた気がした。
『コレはこっち、ソレはそっち』
声に従って、しまっていた。
仕舞い終えて、振り向く。
今までのは全部夢で、みんな生きている。
笑顔で待っている。
そうなんじゃないか。
この声も、ミナトがそばで──
「──ぅぁ」
誰もいない。
電気はついていない。
冷蔵庫の中の明かりが漏れているだけで、人の気配は無い。
当たり前だ。
みんな死んだんだから。
あのダンジョンでモンスターに襲われて。
──ベッドに倒れ込んだ。
全部、冷蔵庫にしまった。
ご飯なんかどうでもよくて、お風呂もどうでもよくて。
これ以上、何もしたくなかった。
布団をかぶって丸くなる。
早く寝たかった。
夢。
夢の中なら、みんなが居るはずだ。
みんなと僕。
一緒に……一緒の場所に……
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない