【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

78 / 571
78_水のドーム

「あああっ! …………?」

 

 尻餅をついた。

 先ほどまでの木製の小舟とは違う、ゴツゴツとした硬い感触。

 自分の居場所が変化した事が理解できた。

 加えて、全く視界が効かない。

 

「加賀美さん……?」

 

「着いたな」

 

「わっ」

 

 真っ暗闇の中で、加賀美さんの声が聞こえた。

 ……予め知っていたとはいえ、こんな場所に放り出されると不安で仕方がない。

 この体勢から動いていいものかすら分からない。

 

「……あったあった」

 

「うっ」

 

 突然の光に、目が眩んだ。

 

「あっごめん」

 

「だ、だいじょぶです」

 

「広角にしなきゃな」

 

 先ほどよりも広い範囲に拡散された光が、今いる場所全体を照らし出す。

 

「うん、成功してる」

 

「良かった……」

 

 20m四方ぐらいの岩場に僕たちはいた。

 上を照らすと、深い青。

 地上の光は全く見えない。

 

「今、どれくらいの深さなんでしょうか」

 

「最初は200mぐらいだったと思うぞ」

 

「200m……」

 

「海で言えば深海だな」

 

「200mで深海なんですか?」

 

「定義で言えばな」

 

「へぇ……」

 

 僕たちのいる場所は、ドーム状になっていた。

 端っこに行くと頭に高さが近くなってくる。

 境目がどうなっているのか気になって触れた。

 

 指は境目を抵抗なくすり抜け、水中に飲み込まれる。

 指だけだと何が何だかわからなくて、そのまま腕まで奥に入れた。

 ぐるぐると腕を動かすと確かに水からの抵抗を感じる。

 

「……変なの」

 

「少なくとも、物理法則からは完全に逸脱してるな」

 

「よくわかんないです」

 

 ぶつり法則をそもそもあんまり覚えてない。

 学校よりも、お金を稼ぐ方が大事だったから。

 

「ミニマスモンスターは、水中にいるんですよね?」

 

「そう、こいつを使って仕留める」

 

 銛を肩に担ぎ、投げる仕草を見せる。

 僕の腕力じゃ、そこまでの威力は出せないけど……

 

「何も一撃で殺す必要はない。紐でくくりつけて、少しずつ引き寄せればいいんだ」

 

「……あれですか」

 

 ドーム内の中央に、頑丈そうな太い柱が立っている。

 その周りにロープが放置。

 

「打ち出す機械とか……」

 

「置いたとしても、整備する人がいなきゃな」

 

 それはともかく準備準備と、リュックを漁り出す。

 僕も何かお手伝いをしようかと思ったけど、あまりにテキパキしているものだから何もできなかった。

 

「最初は見ているだけでいいよ、そこの椅子に座ってな」

 

 逆に邪魔になるんだろうな。

 せっかくなので、加賀美さんが置いてくれた椅子に腰掛ける。

 

「こうやって、適当に餌をばら撒くんだ」

 

 加賀美さんは、取り出したミミズ? みたいな餌をドームから水中に向けて放り投げ始めた。

 一箇所でなく、全体で。

 内から外へ。

 逆ふりかけみたいな。

 

「何も難しい事はない、ただ、これだけだ」

 

「……確かに、簡単ですね」

 

「あとは──待つ」

 

「どれくらいですか?」

 

「さぁ?」

 

「…………」

 

「本当に分からない。さっきもそうだし、ここはダンジョンそのものが気まぐれなんだ」

 

 言われた通り、ただ、待つ。

 とてもダンジョンにいるとは思えない。

 静寂と、穏やかな時間。

 

 僕たちがアンダーに潜った時は……常に、緊張していた。

 暗闇のどこからモンスターが現れるのか。

 ずっと目を凝らして、足音もなるべく立てないようにして。

 

 加賀美さんは、岩に腰掛けて眠そうにしている。

 慣れるとこうなるのかな。

 僕たちも、こういう風になれたのかな。

 ──加賀美さんが、僕のことをチラッと見た。

 

「暇だな」

 

「はい」

 

「その割には、ちょっと顔が硬いな」

 

「…………ちょっと、緊張してるかも、です」

 

「俺も最初は緊張した」

 

「加賀美さんもですか?」

 

「誰だって最初は緊張するさ」

 

 それは、少しだけ安心した。

 加賀美さんも最初から何事もなくやっていたわけじゃないんだ。

 

「……お、きたな」

 

「っ!」

 

「だから、最初は見てなって」

 

「は、はい……」

 

 加賀美さんがライトを向ける。

 

「っっ……」

 

 思わず口に手を当てた。

 目から、勝手に涙が滲み出る。

 歯の根の震えを、必死に抑える。

 あの時の記憶がどうしても、脳裏にこびりついていた。

 

「ノーズイール、だな」

 

 ──直径50〜100cm、体長10mほどの巨大な蛇型モンスターが遊泳していた。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

  • いる
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。