【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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80_遠いモノ

「あ、あの……」

 

「なんですかね」

 

「こんな場所で火を焚いても大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫かどうかは死んでから決めようぜ」

 

「ええ……」

 

「冗談冗談、この場所は空気足りなくなる事ないから」

 

「…………はは」

 

 加賀美さんの冗談は面白くない。

 感謝はしてるけど、そこだけは間違いない。

 

「中国産だろうがなんだろうが、ウナギがいつでも食べられるって幸せだったのね……ほろり」

 

 よく分からないことを言っている。

 焚き火に、串刺しにしたウナギの肉を掲げて物憂げに焼きながら、ウナギとアナゴがどうとか。

 アナゴは何? 

 

「ウナギって、どんな味がするんですか?」

 

「えウナギはお前そりゃあ……ウナギだよ」

 

「近い味とか……」

 

「逆だろ。ウナギに近い味があるだけで、ウナギは何かに近いわけじゃ無い」

 

「いやいやそんな」

 

「………………あーあ、寂しいなぁ」

 

「──加賀美さん?」

 

「なーんちゃって」

 

「…………」

 

 背中を向けていて顔も見えないけど──冗談めかして言っていたけど。

 本当に少しだけ、声が沈んで聞こえた。

 背中もいつもより、小さく見えるような……

 

 だけど、そんなのは錯覚だった。

 

「そろそろ焼けるから、こっち座りな」

 

 すぐにいつもの雰囲気に戻り、明るい声と顔で焚き火のそばへと誘う。

 腰を下ろすとお皿が二つ。

 自分の前と、僕が座ったところの前に一つずつ。

 こんな余計なものを持ってきていたなんて。

 

「お皿なんて持ってきたんですね」

 

「皿は大事だぞ、飯に彩りと格を加えてくれるからな」

 

「でもここ……ダンジョンですよ?」

 

「役に立っただろ?」

 

「…………」

 

 焼いたウナギが、半分に切られてお皿に盛り付けられた。

 本当に大丈夫かな……毒とか。

 

「血抜きしたし、焼いたし、何の問題もない」

 

「うぅ〜……」

 

 さっきまであんなに大きかったモンスター、ノーズイール。

 1代目のモンスターを倒したら元の姿に戻るのは当たり前だけど、それを食べるのはちょっと……

 勿論スーパーにだって売ってるし、僕だってそういうお肉とか野菜を食べた事はある。

 でも……なんかちょっと……あれだよ……

 

 あと、あんなに大きくて恐ろしかったモンスターと綱引きをして何事も無かったように振る舞う加賀美さんは、やっぱりちょっとおかしい。

 ……僕が研修生だからなんだろうけどね。

 

「いただきまーす」

 

「あっ」

 

 そんなどうでもいいことを考えているうちに、目の前でウナギを口まで運んでしまった。

 

「──ううん! うまい!」

 

「…………」

 

「くっそ、醤油がなぁ!」

 

 膝をバシバシと叩きながら、どんどんと口に入れる。

 10mから1mくらいに縮んだけど、それでも十分な量のはずのウナギが見る間に消えていく。

 お皿と加賀美さんの口の間で目が行ったり来たり。

 加賀美さんは、そんな僕を見て苦笑いした。

 

「いいから食べなって」

 

「じゃ、じゃあ一口だけ……」

 

 加賀美さんは演技をしているようには見えなかった。

 それに焚き火で焼いているとき、脂が滴ってとても美味しそうだった。

 小さく切って、口に運ぶ。

 実はとんでもない味という可能性もあるから、うん。

 

「……どうぞ?」

 

「いただきます………………っ!?」

 

 口に入れた瞬間、淡白な舌触りを感じた。

 味も、とてもあっさりしている。

 それなのにジューシーで、噛むほど脂が溢れてくる。

 思っていたゲテモノの味とは程遠い。

 正統派な旨みが口の中を支配した。

 

「もいひぃです!」

 

「だろ?」

 

「こんな美味しいもの…………」

 

 その続きを言う事はできなかった。

 心中に浮かぶ皆んなの顔。

 途端に、甘さすら感じていた口の中が苦味に変わった気がした。

 

「…………」

 

「まぁ、とりあえず食べちゃいな」

 

 加賀美さんは、少し悲しそうな顔で言った。

 申し訳なくて、言葉が出てこなかった。

 

「…………」

 

 口に運ぶと、やっぱり美味しい。

 僕がこれまでに食べたことのある食べ物の中で一番だ。

 でも……そうじゃない。

 

 僕は、みんなと一緒にこれを食べたかったのに。

 何で1人なんだろう。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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