【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「──んぐっ!?」
目を覚ますと、全身が異様な感覚に包まれていた。
具体的に言えば大地から受けるはずの力が感じられない。
つまり重力。
肉体に重さを生み出し、僕たちを星という檻の中に閉じ込めているもの。
重みを感じない身体は、存在するのかしないのかあやふやだ。
視界もおかしい。
もう少しクリアに見えていたはずなのに。
何かで覆われ、はっきりと向こう側が見えない。
……暗い。
不安で息が荒くなる。
ここはどこだろう。
一番変なのは髪だ。
切るのが億劫で、最近は後ろでまとめていた髪が揺らめいている。
ゆらゆらと、川で遊んだ時みたいな…………川?
そうだ、僕は──
「ごぼぼぼ」
ダンジョンだ。
マスダンジョンに来て……でも、なんでこんな……
僕は一体、何をしているんだ。
……加賀美さんは?
焦りによって、手足がめちゃくちゃに動く。
もちろん何も出来ないけど、動きに逆らって発生する抵抗で気付いた。
水中だ。
僕は水中にいる。
……なんで水中に!?
平静という言葉とは微塵も繋がらないような精神状態だった。
疑問がいくつも浮かんでは消える。
なんで水の中にいるのか。
なんで1人なのか。
なんで加賀美さんがいないのか。
──いや待てよ?
そもそも僕たちは安全圏の中にいたはず。
そう、そうだ。
小舟からあの空間にブリンクして、ノーズイール──うなぎを食べた。
そして確か…………えっと…………時間が分からない場所にいたせいで、眠くなったんだ。
それで…………そのあとの記憶がない。
多分、寝ちゃった。
怖い。
こんな水中で1人。
今は溺れていないけど、ずっとこのままならおかしくなってしまう。
そんな確信があった。
加賀美さんはどこへ行ったんだろう。
水中に視線を飛ばしても、全く見えない。
それ以前に、ここがどこか分からない。
「ごぼ…………ごぼぼ……」
口元から漏れた泡が、水中を漂って離れていく──水平方向に。
…………おかしい。
泡って、上に上がるんじゃないの?
目を凝らしてもやっぱり、その場から少し動いただけで上にはいかなかった。
暗闇の中に消えていった泡。
そして気付く。
なんで僕は、横向きに動いているんだ。
泡はその場に留まっているのに、何が僕を動かしているんだろう。
もしかして……何かが僕を、背負っている荷物ごと引っ張っている?
まさか、あのノーズイールみたいな巨大なモンスターが?
僕を寝床に連れ帰って、保存食として扱うつもりなんじゃ……
意識しだすと、なんで気付かなかったのかが分からない。
僕は明らかに背後に向けて引っ張られている。
腕も脚も髪も、体の前に向けて流れていく。
だけど、いつまでも恐怖の元から目を背けていることはできなかった。
こんなところで、訳もわからず死ぬなんていやだ。
せめて、敵の姿だけでもと思って振り返った。
加賀美さんがいた。
なんなら、僕を引っ張っているのは加賀美さんだった。
加賀美さんが泳いで、ロープで僕を引っ張っていた。
ライトで照らしながら、進んでいる。
「──ばばばびばん!?」
声というか、母音の通りに息が漏れただけの音が僕の身体の中に木霊した。そして、息が漏れる音で気付いたのか、加賀美さんは背中越しにグッドサインを出した。
何がどうグッドなのかは分からない。
でも……すごくホッとした。
「…………」
ホッとすると、色々と見えてくる。
溺れていない理由とか。
そもそも僕は人間だから、水の中だと呼吸はできない。
そして、眠っていただけで、不思議なパワーによっていきなり息が出来るようになるわけもない。
「ごぼ……」
口元を確かめる。
準備した酸素ボンベをいつの間にか装着していた。
いつの間にって言っても、眠っている間なのは間違いない。加賀美さんがわざわざ着けてくれたんだろう。
「────」
暗闇の中を、間違いなくどこかに向かっていた。
どこかっていうのは全く分からないけど、迷いがない背中を見れば確信を持って行動していると分かる。
今話しかけるのは邪魔になるだけだね……っていうか、水中だから喋れないけど。
結局……ライトの光の中をよぎる影にビクビク怯えながら、無力に運ばれていくことしかできなかった。
他に誰もいなくて本当に良かった。
はたから見ると、多分すごい情けない体勢だったから。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない