【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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83_ごぼぼ!ごぼ!ぼぼぼぼぼっ!?

「──んぐっ!?」

 

 目を覚ますと、全身が異様な感覚に包まれていた。

 具体的に言えば大地から受けるはずの力が感じられない。

 つまり重力。

 肉体に重さを生み出し、僕たちを星という檻の中に閉じ込めているもの。

 重みを感じない身体は、存在するのかしないのかあやふやだ。

 

 視界もおかしい。

 もう少しクリアに見えていたはずなのに。

 何かで覆われ、はっきりと向こう側が見えない。

 ……暗い。

 不安で息が荒くなる。

 ここはどこだろう。

 

 一番変なのは髪だ。

 切るのが億劫で、最近は後ろでまとめていた髪が揺らめいている。

 ゆらゆらと、川で遊んだ時みたいな…………川? 

 

 そうだ、僕は──

 

「ごぼぼぼ」

 

 ダンジョンだ。

 マスダンジョンに来て……でも、なんでこんな……

 僕は一体、何をしているんだ。

 ……加賀美さんは? 

 

 焦りによって、手足がめちゃくちゃに動く。

 もちろん何も出来ないけど、動きに逆らって発生する抵抗で気付いた。

 水中だ。

 僕は水中にいる。

 ……なんで水中に!? 

 

 平静という言葉とは微塵も繋がらないような精神状態だった。

 

 疑問がいくつも浮かんでは消える。

 なんで水の中にいるのか。

 なんで1人なのか。

 なんで加賀美さんがいないのか。

 

 ──いや待てよ? 

 そもそも僕たちは安全圏の中にいたはず。

 そう、そうだ。

 小舟からあの空間にブリンクして、ノーズイール──うなぎを食べた。

 そして確か…………えっと…………時間が分からない場所にいたせいで、眠くなったんだ。

 それで…………そのあとの記憶がない。

 多分、寝ちゃった。

 

 怖い。

 こんな水中で1人。

 今は溺れていないけど、ずっとこのままならおかしくなってしまう。

 そんな確信があった。

 

 加賀美さんはどこへ行ったんだろう。

 水中に視線を飛ばしても、全く見えない。

 それ以前に、ここがどこか分からない。

 

「ごぼ…………ごぼぼ……」

 

 口元から漏れた泡が、水中を漂って離れていく──水平方向に。

 …………おかしい。

 泡って、上に上がるんじゃないの? 

 目を凝らしてもやっぱり、その場から少し動いただけで上にはいかなかった。

 暗闇の中に消えていった泡。

 

 そして気付く。

 なんで僕は、横向きに動いているんだ。

 泡はその場に留まっているのに、何が僕を動かしているんだろう。

 もしかして……何かが僕を、背負っている荷物ごと引っ張っている? 

 まさか、あのノーズイールみたいな巨大なモンスターが? 

 

 僕を寝床に連れ帰って、保存食として扱うつもりなんじゃ……

 意識しだすと、なんで気付かなかったのかが分からない。

 僕は明らかに背後に向けて引っ張られている。

 腕も脚も髪も、体の前に向けて流れていく。

 

 だけど、いつまでも恐怖の元から目を背けていることはできなかった。

 こんなところで、訳もわからず死ぬなんていやだ。

 せめて、敵の姿だけでもと思って振り返った。

 加賀美さんがいた。

 なんなら、僕を引っ張っているのは加賀美さんだった。

 加賀美さんが泳いで、ロープで僕を引っ張っていた。

 ライトで照らしながら、進んでいる。

 

「──ばばばびばん!?」

 

 声というか、母音の通りに息が漏れただけの音が僕の身体の中に木霊した。そして、息が漏れる音で気付いたのか、加賀美さんは背中越しにグッドサインを出した。

 何がどうグッドなのかは分からない。

 

 でも……すごくホッとした。

 

「…………」

 

 ホッとすると、色々と見えてくる。

 溺れていない理由とか。

 そもそも僕は人間だから、水の中だと呼吸はできない。

 そして、眠っていただけで、不思議なパワーによっていきなり息が出来るようになるわけもない。

 

「ごぼ……」

 

 口元を確かめる。

 準備した酸素ボンベをいつの間にか装着していた。

 いつの間にって言っても、眠っている間なのは間違いない。加賀美さんがわざわざ着けてくれたんだろう。

 

「────」

 

 暗闇の中を、間違いなくどこかに向かっていた。

 どこかっていうのは全く分からないけど、迷いがない背中を見れば確信を持って行動していると分かる。

 今話しかけるのは邪魔になるだけだね……っていうか、水中だから喋れないけど。

 

 結局……ライトの光の中をよぎる影にビクビク怯えながら、無力に運ばれていくことしかできなかった。

 他に誰もいなくて本当に良かった。

 はたから見ると、多分すごい情けない体勢だったから。

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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