【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
自分の部屋に久しぶりに入った。
ベッドは綺麗にしてある。
事前に連絡はしてたから、整えてくれたんだろう。
しかし机の上をなぞると、少しだけ埃が指先についた。
そこに関して特に思うことはない。
今でも残っているだけマシな方だ。
愛すら感じる。
普通なら独り立ちが完了した時点で机とか全部捨てて、新しく活用するだろう。
窓から眺める景色も、昔と変わらない。
ゆっくりとした世界。
10数年を経ても家から見える景色が変わらないというのは、日本では珍しかったように思う。
建築技術や開発のスピーディーさというのは、その規模に比して驚くほどだ。
数年も経たぬうちに駅前をビルが埋め尽くす。
だが、この世界ではゆっくりとした変化しか起こらない。
文明がリセットされたからだ。
地殻変動やグリーンウィンドは、大気汚染を無くして新たな地下資源を再生した。
だが、それだけじゃない。
人類の歴史すらも無かったことにしたのだ。
そもそも、世界的に工業や産業が死んでいた。
電気機器が地中に飲み込まれ、人工衛星も意味を為さなくなった。
物を作るための物が無くなったせいで一時は原始時代まで遡ったようだ。
だが、それでも人類はしぶとい。
なんとか物資を見つけ、口伝や頭に残ったマニュアルから文明再起を図った。
0から現代までにするのには数万年かかるが、知識があれば数十年で達成される。
というか達成された。
「はぁーあ、技術じゃどうにもならないのマジでウンチ」
でも、養殖とか工場みたいな大量生産の要は完全復旧とはいかなかった。
大量の物資や生物がそこに一定期間存在すると、魔素が蓄積する。
多大な努力の結果に得られるのは、ダンジョンとモンスターの発生だ。
第一次エネルギー革命から始まった、大量生産大量消費の時代は終わったのだ。
俺としては、大量生産大量消費の時代の方が良かったな。
「はぁーあ、うんちうんちうんちー」
この世の無情は全てうんこに帰結する。
俺が食ったものはうんこになるし、俺が食わなかったものは誰かのうんこになる。
これ、真理だね。
「……何言ってんの」
「おい妹様よ、思春期男子の部屋の扉を開けちゃダメだぞ」
「べー!」
あっかんべー、か。
なんでこの言葉が残ったんだろうな。
いただきますと、何が違ったんだ。
神様は何を思って、何を選別しているんだ。
「勉強は?」
「1時間半やったからちょっと休憩!」
「……ああ、なるほど」
俺が教えた通りにやってるわけね。
「15分休憩?」
「うん」
「そか」
俺のベッドを占領して、寝転んだ状態でこちらに顔だけ向けてくる妹様。
久しぶりのお兄ちゃんの帰省が嬉しいのかもしれない。
……俺の家に結構くるけどな。
「ところで彼氏とかできたのか?」
「死ねば?」
おおう、間髪入れぬ口撃。
この反射神経は間違いなく10代のもの。
「やっとミツキさんと……し、したからって、いきなりそんなこと聞く? いくらお兄ちゃんでも超キモいんだけど」
「?」
「…………何?」
「してないが」
「は?」
「どうした」
あれだな、多分。
ホルモンバランス? ってやつが崩れてるんだ。
ミツキとアリサもすこぶる機嫌悪い時あるし、そんな感じだろ。
「……まだ手出してないの?」
「うーん」
手は出した。
手は、な。
「うーん、て…………最低じゃん、ミツキさんかわいそー。ぽっと出のイケメンに寝取られちゃえばい──お兄ちゃんがイケメンを寝取りそうだな……」
酷い言いようである。
俺にも色々あるんだよ。
考えることとか、思うところとか。
「ほんとう焼肉のことしか考えてないんだね、この空っぽの脳みそ」
「あだっ」
ツンっと、爪の先で額を突いてきやがった。
まったく……可愛いやつめ。
「人を突いちゃダメでしょうが!」
「──あははははは! やめて! 助けてえ! どうせ痛くないでしょー!」
「反省するまでコチョコチョだぞ!」
「した! したからぁ! いひひひ! 〜〜っ! うひひひ!」
「ついでに偉大なるお兄様に逆らった罰だ!」
「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! ひゃひゃひゃひゃ! もう逆らいません!」
「──牛肉最高だよな?」
「はぁ……はぁ…………え?」
「…………」
「うひゃひゃひゃひゃひゃ! 最高です! だからやめて!」
「よし」
「はぁ、はぁ、はぁ…………休憩なのに……」
「ふんっ」
「あーあ! お兄ちゃんに邪魔されたからもう少し休もーっと!」
「ほどほどにな」
「……なに読んでるの?」
「先生の本」
「またぁ?」
「新しいやつだから」
「永井せんせーだっけ? 好きすぎでしょ」
実用性ありきなんだよなあ。
俺も流石に誇大妄想を元にした作り話を書くような人だったら買ったりしないし、大学も別のところに行ったはずだ。
「……うわ、文字ばっかじゃん」
「本が文字ばっかで何が悪いんだよ、あと挿絵もあるから」
「面白くない」
結局、ベッドで寝息を立て始めた。
休憩とは。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない