【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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98_アルコバレノの怪物

「加賀美くーん、ちょっと良いかなあ」

 

「なんでしょう」

 

 ある日のこと、酒場で1人、焼肉のことを考えていたら方目さんが声をかけてきた。

 せっかく集中していたのに、と思う暇もなく眼前1mmの距離に膜状の何かが展開される。

 

「これ、どう思う?」

 

「近い近い」

 

「ほら! ほら!」

 

「見えねえよ」

 

 どかして距離を空ける。

 彼女が広げたのは布で、そこには奇妙な絵が描かれていた。

 

「この絵、どう思う?」

 

「心理学の質問ですか」

 

「良いからさ」

 

 のんびりしてたのに……鬱陶しい。

 だけど、この人はこういう時に引いたりしない。ウゼェから霊領でビビってた姿をバラしてやろうか。

 みんな多少は興奮するだろ。

 彼氏もできんじゃね? 

 

「絵、ねえ……」

 

 絵は、だいぶ崩れている。

 経年劣化や水で、というよりは元からこういう絵なのだろう。

 新しい絵なのは間違いない。

 黒い絵の具だ。

 

「角がありますね」

 

「うん」

 

「二足歩行だ」

 

「ほうほう」

 

「逃げているのは人ですかね」

 

「なるほど」

 

「武器を持っているということは、ダンジョンでの出来事で間違いない」

 

「ふむふむ」

 

「なんですかこれ」

 

「これはね、アルコバレノの怪物だよ」

 

 ヒソヒソと、最後は俺にだけ聞こえるような声量で囁いた。

 

「……あー」

 

 虹のふもとに現れる怪物。

 討伐実績は無し、だったか。

 正体も不明。

 こういう感じの絵は初めて見たな。

 へー……これがアルコバレノの怪物ねぇ……誰が描いたんだ。

 

「何か感じる?」

 

「あー……あー……角が大きいっすね」

 

 ヘラジカのツノぐらいでかい。

 

「──そっか! ありがとう!」

 

「なんですか」

 

「ううん、なんでもない!」

 

「そっすか」

 

 シュルシュルと布を巻き戻し、そそくさと背中に隠してしまった。

 

 絶対なんかあるだろうとは思うけど、問い詰めて白状するような相手ではない。そもそも、害悪でも邪悪でも無い女性相手にそんなことをするのはちょっと。

 ワンパクなら鼻っ柱をへし折れば良いけどな、アリサ達みたいに。

 

 でも、俺みたいな絵心ゼロ男に聞いてなんの意味があったんだろうか。

 

「──話は変わって、加賀美くん」

 

「ん?」

 

「1人でそこの席に座るのは良いと思う」

 

「うん?」

 

 俺は今、ボックス席を1人で占領している。

 来た時は2、3組ほど中にいたけど、空いてたので座った。席は広ければ広いほど良いからな。

 後からアリサが現れる可能性もゼロじゃないし、そういう時に隣に座れたほうがいい。

 俺の知恵がフル回転して弾き出した結果だ。

 

「1人でずーっと考えことしててもいいと思う」

 

 机の上にはジョッキが置いてある。

 ビールお代わりしてたからな。

 イマジナリー焼肉だよ。

 ……気が利かねえなぁ! 飲み終わったら下げてくれよお! 

 

「まあウチはセルフだからね」

 

 それで? 

 

「1人で唸りながら白目剥くのはやめない?」

 

「は?」

 

 俺がそんなクソキモい人間なはずが無い。

 仮にも俺は元社会人にして人生二週目の人間プロだぞ。

 人前で変なことをしたら目立つことくらい分かってる。

 目立ち方に2種類あることも。

 

 そんな俺が、公衆の面前で白目を剥くわけがないだろうが!! 

 

「いや……加賀美くん風に言うならクソキモかったよ」

 

「なぜそんな酷いことを言うんですかね」

 

「事実だもん」

 

「もん、じゃない」

 

 人に酷いことを言う時は、婉曲的に表しなさい。奥ゆかしい日本人の血を引いているならな。

 ……いや、方目さんは奥ゆかしさとか無いけど。

 

「それは禁句だよね」

 

「……禁句? ちょっと聞いたことないですね」

 

「嘘つけ! 大学まで行ってるエリートのくせに!」

 

『そーだそーだ!』

 

「この変人!」

 

『そーだそーだ!』

 

「……凡人どもの僻みが気持ちいいなあ」

 

「うわ! 本音が出た!」

 

「山ではあんなに可愛かったのになあ……」

 

「ちょっ! そっ──やめてよ!」

 

「みなさーん! ここにいる方目七緒さんはこんな太々しいフリしてますけど、山ではもごご……」

 

「おほほほ! 失礼しまーす!」

 

 ふんむ……

 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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