えぇ、全て私の責任です   作:ワンコそば

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プロローグ

 

誰もが思っていただろう。

平和な世界がこれからも続くと。

しかし、少女だけは理解していた。

最悪の結末は避けられないことを。

 

 

少女はゆっくりと歩んで近づく人物を顔を見上げる。

 

 

「・・・あなたも無事でしたか」

そう言葉を発する少女は左腕は欠損しており無事とは言い難い状態で今にも崩壊しそうなビルの壁に寄りかかっている。

 

「・・・ハァ、お互いボロボロですね ・・・」

少女の言う通り、少女の目の前に立つ人物もまた、体の至る所に傷を負い重症であった。

 

 

「・・・彼女の言う通りでした。切り捨てることで得られるものなんて何もありませんでした。むしろすべてを見捨てて前に進んだ結果、この状況に陥ってしまったのかも知れません。」

 

「赤く濁った海、燃え盛る街並み、人の痕跡の消失、栄華を築いた文明の崩壊、全くもって笑えないですね・・・」

 

「私は誰かを頼るべきでした。彼女あるいはあなたの手を取ることができたら少なからず今より少しはマシな状況だったでしょう」

 

「私は、生き方が不器用だったんです。他人を信頼し頼る。それが私には難しかった。」

 

「今になって後悔してるんです。結果的に彼女にこの選択を選ばせてしまった自分に。」

 

 

少女の目からは雫が一滴二滴とこぼれ落ちる。

 

「怒っていますか?それとも憎んでいますか?」

 

目の前の人物はその問いに無言で首を横に振るう。

 

「フフフ、そうでしたね。あなたはそう言う人でした。」

 

少年の目の前にいる少女は微笑みながらも一拍おいてさらに言葉を続ける。

「彼女だけだったんです。私をただの普通の少女として見てくれたのは。いや、彼女の場合知っていたのでしょう。特別であることがどれだけ苦しいことか。」

「ですが、そんな普通を教えてくれた少女が自身の全てを捧げ世界に対する責任を一身に背負うのは間違っています」

 

少女は、手元のキュウブのようなものを見て、どこか悲しげな表情をする。

「時間が迫ってきているので、最後に一つだけお願いがあります。あ、別に無理難題を押し付ける気はないのでご安心ください。単なる友人としてのお願いですから」

そう言う彼女はどこか不安そうな表情をしながら目の前の少年に顔を向ける。

 

 

「世界を救えなんて大層なことはお願いしません。貴方はあなた自身が救いたいもののためにやりたいことをしてください。少なからず、それが最良の結果につながると私は信じています。」

 

「大丈夫です。この負債は私が負いますのであなたは気にしないでください」

「そろそろ時間ですね。」

 

 

どうか、今度はあなた自身の願いを叶えるために───

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

───報告

 

XXXX年4月3日

 

来訪町に居住する住民と一切の連絡が取れないという通報を受けた。これにより国は警察及び救命隊を派遣。その後、燃え尽きたような後の来訪町が発見され警察では原因の究明が困難と判断したため、国は魔術連盟に魔術師の派遣を要請。

派遣された、魔術師が到着後すぐに魔術師の指揮のもと生存者の調査を実施。

奇妙なことに生存者どころか遺体が一つも見つからないという報告が挙げられた。

以上のことから、今回の調査結果を受け来訪町に居住する約5000人の住民を行方不明者リストに追加。

 

以上

 

 

 

◆◇◆

  

 

 

「・・・酷いね、これは」

「あぁ、何があったらこうなるのだ」

 

 

とある土地に10代半ぐらいの少女と初老の男性が2人で訪れていた。

 

 

「10日前まで、5000人以上の人間が住んでいたとは思えない程の惨状だ」

 

 

そう、初老の男性が言うように彼らが訪れていた来訪町には少なからず5000人以上の人間が住んでいたのだ。しかし、現在来訪町には人の気配が感じられなく全ての建築物が焼け焦げたような状態で発見された。

 

 

「今は、警察関係者も立ち入りを許可してないのでしょ?」

「あぁ、警察が調査したところで原因不明で調査が打ち切られるのがオチだ。それに余計な手は加えられなたくないしな」

「まぁ、現状竜玄さん達も分からないから私に調査を依頼したようだけど、私も何が起こったかなんて検討もつかないんだけどね」

 

彼らが話す通り現在、この町にはこれ程大きな事件があったにも関わらず、警察関係者、一般人等の立ち入りを許可していない。この町に立ち入りができる人物は彼らのように少し特殊な身分を持つもののみに限定されている。

この世界での彼らの身分を広義的に明かすというならば魔術師と言われるカテゴリーに属している者たちだ。

 

 

「しかし、気がかりなのはこれ程の規模の町が消失したというのに気づくのが、1日経った後ということだ」

「その報告は聞いていないんだけど」

「あぁ、この場で落ち合ってから話そうと思っていたからな。それに公にして世間に騒がれるのは面倒ごとが増える」

「ふーん、それで?」

 

「テレビの報道ではお前も聞いた通り事件が発生したのは4月2日と聞いてるはずだ」

「うん、事前の報告でも4月2日まで来訪町に住む住民と連絡が取れていたという情報があった」

「ところがだ、来訪町に残っていた監視カメラの記録を見ると4月1日11時59分までの映像記録がありその後一斉にカメラの記録が途切れた」

「なるほどね。4月2日になっても住民とは連絡が取れていたけど、監視カメラの映像が4月1日の11時59分で途切れていると。一応聞くけど、4月2日までに連絡をとっていたこの町の住民は今連絡が取れていないということでいいんだよね?」

「あぁ、その認識で間違いない」

「この町の住民と4月2日に連絡していた事例は1件だけではなく複数件あるという認識でもいい?」

「合っている」

 

「うーん、監視カメラの映像が4月1日に途切れたからといって事が起きたのが1日ってのは流石に推理雑過ぎない?それに4月2日まで住民とは連絡取れていたって今言ったのは竜玄さんじゃん。矛盾が発生してる」

 

「あぁ、その点についてもう一つ報告がある。来訪町で見つかった記録物のほとんどが、4月1日で更新が止まっている。これを踏まえて事件が起きたタイミングが1日の可能性も出てきた。」

 

「うわ。確かに、それだと4月1日に事件が起きた可能性も捨て切れないね。それだと、4月2日まで連絡が取れてた理由が謎でしかないけど。どのみち住民全員が消息不明という報告に間違いがなさそうだね。まぁ、この町の惨状見る限り普通の人間が生きてるとは思えないけど」

 

「そして見ての通り周りが山に囲まれて閉鎖的になっている。そのためか外部からの人間は滅多に訪れない。以上の理由から4月1日または、2日事件が起きた日の目撃情報は一切ない」

 

 

 

少女は、竜玄の話を聞き何かを顎に人差し指をつけ何かを考え込むかのように「んー」と唸る。しかし、すぐに唸るのを辞めため息一つ吐く。

 

「ダメだ。今回の件あまりにも逸脱しすぎて、何一つ解決の糸口に繋がる気がしない。超常現象じゃん。住民たちは一体どこに消えたんでしょうね」

「それを調査しに来たわけだか、何か分かりそうか?」

 

その竜玄の発言に、少女は眉間に皺を寄せながら、分かるわけないじゃんと言いたそうな顔をして見つめていた。

「竜玄さん、別に私はこういう超常現象を調べる専門家でも探偵でもないただの一介の魔術師にすぎないんだけど」

 

「まぁ、そういうな。その専門家達でも早い段階でお手上げの状態だから、ダメ元でお前を呼んだわけだ」

「成程、つまりお前には期待してないと」

「なぜ、お前はそう悪い用に捉える」

「ごめん、冗談だって」

竜玄は少し呆れたような表情をし話を続けるように促す。

 

 

「しかし、1日遅れで発見されたのがどうにも引っかかるよね。そこは、自然科学で説明できない分野であるから、やっぱり魔術絡みしかないと思うけどこの件を解決するにはかなりの時間は必要だろうね。下手したら一生解決しないかもしれないけど」

 

「問題は人為的に起こせるかどうかだ。こんなこと何度も起こせたらたまったものではない」

 

「街全体を燃やすくらいならできそうだけどそれをこの町の外に情報を漏らさず5000人以上の人間を痕跡も残さず誘拐何てことは不可能でしょう。」

 

「そうだな。確かに町を燃やすくらいなら出来はするな」

 

「気になったのがこれだけ町全体が激しく燃えた痕跡があるというのに救助隊やらが到着するまでには鎮火していたこと。そしてこの町を囲むようにある森に燃え広がっていない点」

 

来訪町を見渡すと、確かに建築物が激しく燃えたような痕跡を残している。そして、森の近くに隣接している建築物もまた、激しく燃え盛った痕跡があると言うのに、森には一切燃え移ったといった跡がなかった。その光景があまりにも不自然である。

 

「町全体が激しく燃えた痕跡があるのに鎮火している点には、疑問を持って調査を進めていたが森に燃え広がっているないのは変だな。結界で森に燃え広がるを防いだということか」

 

「正直、この町を囲う規模の結界を構築するなら近隣の町とかに住む腕の立たない魔術師でも気付いてもおかしくないと思うんだよね」

 

「近隣に住む魔術師達にはすでに来訪町についての情報提供を求めたが、芳しくなかった」

 

「何だろね。まるでこの町のみ切り抜かれた感じは。すごい違和感ある。」

「切り抜かれた、か」

 

「この件について連盟はなんて」

 

「政府側と解決していくとポーズだけ取っている状況だ。今回の件については時間も人員も無駄になると判断からか、来訪町に警備のものを残して調査には時間も金もかけないという方針だ」

 

「まぁ、こんな訳の分からない事件だからね、妥当の判断ではあるけど、この件をほっとくのも何だかね」

 

「俺も、後数日調査し進捗がなかったらこの件から手を引くつもりだ」

「そもそも竜玄さんは独自にこの事件の調査してるから別に、手を引いたところでお偉いお方から何も言われないでしょ。進んで自ら仕事を増やすなんてワーカーホリックなんじゃない?」

「お前には言われたくない言葉だな」

「何でよ」

「とりあえず、話を戻すぞ。俺自身、立場的なこともあって1週間もこ・・・」

すると竜玄が話している最中に手をかざし、ある方向を見つめ始めた少女に竜玄は疑問を抱く。

 

 

「話を遮るようで悪いけど。ちょっと待って」

「どうした急に」

「微弱だけど魔力の波長を感じる」

「俺には何も感じないが」

「歳とって感覚鈍ったんじゃない?」

「失礼なやつだな」

「フフ、冗談」

「はぁ、とりあえず場所の案内を頼む」

「うん、じゃあ行こうか、と言っても1kmとちょっとぐらい離れた場所だからそう遠くもないかな」

「しかし、相変わらず感知に関してもずば抜けているな」

「えへ〜お褒めにあずかり光栄です」

ムッとしたのか少し調子に乗った少女の頭を軽く叩く

「ほら、さっさと案内しろ」

「はいはい、わかりましたよー。では、行きますよ」

頬を膨らませ睨みつけるように視線を送る少女を無視して案内を促す。

そして15分ほど歩いた先に古びた社がポツンと立っていた。

「この社からかな?僅かばかしだけど波長を感じるのは。ここって調べた?」

「一応調べたと報告は受けている」

少女はやや訝しげに竜玄をチラッと見て「本当に調べたのかな」と呟く。

「とりあえず、この社扉無理やりこじ開けるよ」

「あぁ、構わない。さぁ、開けろ罰当たり」

「当たり、なんか強くない?!」

 

そう言いながらも少女は、戸惑いなく鍵がかかった扉無理やり壊して開けた。そして、その中にあったのは、否、いたのは傷だらけで倒れ伏した少年だった。

 

「竜玄さん急いで警備の人間に連絡して!後、病院の手配も!」

「了解だ!」

 

そこから二人の行動は早かった。すぐさま来訪町に常駐している警備の魔術師に連絡をし近くの病院の手配をすぐさま行た。幸い少年は危険な状態ではあったが、早期の治療により峠は越えた。

 

 

 

───そして、この時少年を助けたことにより再び全てが動き出した。

 




初のオリジナル作品となります!
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