Muv-Luv Alternative Manchuria   作:ビリーT

1 / 19
※この物語はフィクションであり、実在の人物・事件などには一切関係がありません。
※オルタネイティヴ世界線とは異なる確率時空でのストーリーです。
※参考文献 「MUV-LUV ALTERNATIVE INTEGRAL WORKS」及び「シュヴァルツェスマーケン 殉教者たち」



プロローグ

1993年09月06日 統一中華戦線(中華人民共和国領)石家荘市郊外

 

高度を上げすぎた僚機が光線(レーザー)に操縦席を貫かれ爆散する。

 

康熙(カンシー)01より、八路(パーロ)01。光線級吶喊(レーザーヤークト)の進捗はどうなっている!」

「(ノイズ)――、八路01より康熙01。現在重金属雲下のため通信が不安定。進捗に問題無し。繰り返す――」

共産主義者(コミュニスト)共め! ちゃんとやれるんだろうな!」

 

36mmの薬莢を周囲にばらまきながら、康熙01――満洲帝国陸軍第04戦術機大隊(康熙)指揮官は独りごちる。周囲には要撃(グラップラー)級と突撃(デストロイヤー)級、かてて加えて戦車(タンク)級のBETAの群れだ。

 

どこまでも続く平原に、奴ら――BETAは(ひし)めいている。

 

敦煌ハイヴより出現した数個師団規模のBETAが、北京市南西に位置する石家荘市へ向かっているのが監視衛星より観測されたのは2ヶ月前だ。10万を数えるBETA群に対して、国連軍は統一中華戦線主導の作戦を提案した。

1993年09月06日を持って発令された正式呼称「九・六作戦」は統一中華戦線および満洲帝国、駐満美軍(アメリカ)と日本帝国大陸派遣軍の共同作戦として開始。

統一中華戦線の戦術機6個大隊、満洲帝国の2個大隊、駐満(アメリカ)軍の1個大隊が参加。

そして友邦日本帝国は、作戦の側面支援として4個大隊を派遣。

さらに10個師団(1個師団はだいたい1万人)を数える歩兵、それ以外に砲兵数個旅団が後方に控えている。

 

会戦は砲兵部隊の砲撃から始まった。戦域に重金属をばらまくための砲撃。

全ての砲弾が光線(レーザー)級のレーザーに灼かれ、重金属を周囲にばらまく。

念入りな準備砲撃の後、戦術機部隊が突入を開始しした。

 

開始から15分。後方に確認された光線(レーザー)級が光線(レーザー)で妨害してくるため、砲兵支援はいまだ頼りない。

東側の代表的な戦術である光線級吶喊(レーザーヤークト)が成功せねば、我々も生還が難しくなる。それは分かっている。

 

光線(レーザー)級が居なければ俺達だって余裕なんだが」

「――八路(ノイズ)――八路01よりCP(コマンドポスト)、残念なが(ノイズ)――」

「CPより各位! 八路01より04, 07まで通信途絶!」

「何だと! 自信満々で出ておいてこの体たらくかよ! CP、光線(レーザー)級の残存数は!」

「CPより康熙01、残存数30」

「畜生め! 康熙大隊各位! 生き残りは全員付いてこい! 頭は低くだ! 共産主義者(アカ)共のケツを拭きに行くぞ!」

「康熙02了解! 隊長、美帝(アメリカ)の連中は動かないのですか?」

「あいつらはご自慢のフェニックスミサイルを撃つために待機してる。光線(レーザー)級がいれば折角の誘導ミサイルが台無しだ。何としても先に光線(レーザー)級を潰さなきゃならん。死ぬ気で付いてこい!」

 

光線(レーザー)級へ向かう大隊。だが、途中で1機、また1機と撃墜されて行く。

ようやく光線(レーザー)級に迫った時には、大隊の半数が脱落していた。

 

「良し、生き残りは火器使用自由! ありったけを光線(レーザー)級に――しま」

 

康熙01が脇から突撃してきた要撃(グラップラー)級の一撃を受け、腰部を折られる。

 

「康熙01通信途絶! 康熙02が指揮を引き継げ」

「――康熙02了解。大隊各位、36mm弾を全て撃ち込め!」

 

光線(レーザー)級が赤い体液を吹き出して消滅していく。

 

「CPより康熙大隊! 各位光線級の残存17、9――0。今すぐ現座標より離脱せよ」

「康熙02了解! 生存各機は速やかに離脱を!」

 

「側面警備に当たっていた日本帝国大陸派遣軍より入電! 「ワレBETAの側面奇襲ヲ受ケ被害甚大、支援不可能。天津へ退却スル」との事です!」

 

「これはいけませんなあ。各国の戦術機部隊はほぼ壊滅。しかし光線級の脅威はやっと解消されたようで。総司令殿。ここは決断が必要ですな」

 

中国共産党出身の統一中華戦線総司令は(アメリカ)軍のオブザーバーに問われて、冷や汗を流しながら冷静さを保とうとする。作戦の失敗は粛正と繋がっているのだ。

 

「九・六作戦総司令の権限で命じる。多大な犠牲を払って光線(レーザー)級を排除したのだ、航空機が飛べるうちに戦術核を奴らの頭上に落としてやれ! 急げ! これは命令だ!」

「待ってください! 石家荘周辺への影響が大きすぎます! 国土を焼くなど正気ですか!」

 

満洲帝国のオブザーバーが悲鳴を上げる。

 

「我らは何度もこうやってきた! BETA共に蹂躙されるよりマシだろう!」

「しかし……」

「我々は一日でも、戦線の拡大を抑えねばならんのだ!」

「総司令、美国(アメリカ)が戦術核の投下準備完了とのことです」

「よし、発進させろ! 美帝(アメリカ)に借りを作るのは癪だが、我らの手持ち戦術核も大分乏しくなったのでな」

 

その数10分後。先程まで犇めいていたBETA群は4発の戦術核によって焼き払われた。

 

戦術機部隊の生還は7機。美国(アメリカ)機は射撃できないとみると、すぐに退却して行ったため損害はなし。

出撃した8個大隊と側面支援に向かった日本帝国の2個大隊がほぼ失われる結果になってしまった。

 

特に満洲帝国の損失は大きく、折角錬成してきた精鋭の2個大隊がほぼ壊滅という憂き目にあったのだ。

第01戦術機大隊(天命)および第02戦術機大隊(崇徳)は、1990年に派遣された西方作戦で正に全滅してしまったため、実働可能な戦術機部隊がほぼ喪失したことになる。

 

残存戦術機は天津にて再編成を行うため、長躯飛行して飛び去った。

 

戦術核の投下で、石家荘市は辛うじて守られた。多大なる犠牲と共に。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。