Muv-Luv Alternative Manchuria 作:ビリーT
※オルタネイティヴ世界線とは異なる確率時空でのストーリーです。
※参考文献 「MUV-LUV ALTERNATIVE INTEGRAL WORKS」及び「シュヴァルツェスマーケン 殉教者たち」
1995年10月13日 満洲帝国 フルンボイル市近郊 満洲帝国司令部
ソビエト方面および敦煌ハイヴより溢れ出したBETAが梯団を形成し、東進を始めた報告から3ヶ月。
既に
ウランバートルを陥としたBETA群は、数千の規模となって我が帝国西部国境に迫ってくる。
西部国境線の要塞線構築は間に合わなかった。
途切れ途切れになった防衛線の合間を縫ってBETA共が我が帝国に侵攻してくる。
我々は、BETA先頭集団を遅滞しながら応戦。突出したBETA群の側背を付く作戦を企図した。
NATO軍の戦術、アクティブ・ディフェンスである。
この辺りは、元々蒙古族の遊牧民が住んでいた平原だ。
湖以外に遮る物は殆ど無い。
外蒙のチョイバルサン市より東方に位置する、市の名前の基になったフルン湖とボイル湖の中間地点を戦場に想定。
現有戦力の全てをここに集結させて、BETAの企図を挫くのだ。
既にBETAはチョイバルサン市東方500kmまで到達している。
あと1日程度で想定戦場へ到達する予測だ。
此度は駐満
1994年に配備が開始されたF-18E/Fを一個大隊。
それ以外もF-14を4個大隊作戦に参加させている。
ここか抜かれたら、
大陸戦線の援助とは違った気合いの入れようだ。
日本帝国も部隊を派遣してくれている。
F-4Jを中心とした4個大隊だ。
些か旧式ではあるが、まだF-4系統の機体は世界中で戦闘中である。
十分に戦力として期待できるだろう。
ひるがえって我が帝国は、相変わらず威徳大隊のみでの参戦となる。
もはや、衛士の補充すらままならなくなっているのだ。
国土防衛。しかし現実として
過去、我が帝国をして「正に小児の如し」と喝破したのは誰だったか。
現実――もはや理想など大事の前の小事――とは残酷である。
「我々は満洲帝国を見捨てない! 最新鋭機も配備した。此度の作戦は我が国の部隊が誘因役を務める。十分に戦線が伸びきったところで、左右から中心のBETAを襲撃。遅滞していた部隊は反転し共に包囲を行う。
「マクミラン殿。我が国も出来うる限りの戦力を出しております。側背を突く役目は我らが部隊にお任せを」
日本人顧問が言う。
もはや、威徳大隊の出番は――残念ながら――限られているのだ。
残党狩りに加われれば良い方だろう。
それでも、それでも私は言う。
「マクミラン殿! 我が威徳大隊にもせめて誘因役くらいは勤まるのではありませんか!」
冷酷な目でマクミランが答える。
「陛下。残念ながら数度の実戦を経た程度の練度では、足手まといになるのが関の山です。大人しく後方で戦況を見ている方が――」
やはりそうだ。明らかに練度が足りていない。
誘因は高度な駆け引きが求められる。
その練度に達していないと判断されたのだろう。
私は唇を噛みしめた。
「Mr. マクミラン! 提案があります」
クリフォード中校が発言する。
「言いたまえ、クリフォード中佐……おっと今は中校だったな」
「発言の機会を与えてくださり光栄です。我が大隊は側面を突く部隊に配備させて頂きたく思います。貴国の部隊は射撃戦中心かと。我が大隊は74式長刀を我が手の如く使える者が揃っております。後詰めとして配備させていただく事は可能かと愚考する次第であります」
中校……私は感激のあまり涙しそうになった。
彼はちゃんと私達の事を見ていてくださったのだ。
「ふむ……よろしい中校。その作戦を採用する。弾薬の補給を気にしないで済むのは助かるな」
「ありがとうございます、Mr. マクミラン」
我が部隊も戦場に立てるのだ!
危険は伴うものの、私は驚喜した。ありがとうクリフォード中校。
1995年10月15日 満洲帝国 フルンボイル市近郊 ポイント・エコー
司令部での話から一日後。
想定通りBETA群は戦場に到達した。
我々威徳大隊は、ポイント・エコーにて日本帝国軍2個大隊の後方に控えている。
「
「アルファ01より
「右翼より、
「左翼、右翼と同様。全て問題無し」
網膜投影される戦況情報では、BETAの
十分に戦線が伸びきったところで、我々が側背を突くのだ!
「
同時に、自走砲と戦車部隊の砲撃が始まる。
面制圧とAL弾でのレーザー攪乱を同時に行うのだ。
砲撃が始まると同時に、一部確認されていた
重金属雲が展開され、レーザーを攪乱出来る状態になる。
「
「右翼部隊! 突撃開始! 目標は
「左翼部隊も右翼に遅れるな! 目標は
我が威徳大隊は左翼部隊に配備されている。
「威徳02より威徳大隊各機! 左翼部隊の後方より突入せよ。優先目標は
各機より「了解」の返答が続く。
我々はBETA群中央左翼に突入する。
歩行速度の遅い
そして、蟻の様に群がってくる
何だ、私でもやれるじゃ無いか!
「威徳03より01、陛下! 突進しすぎです!」
「大丈夫だ! 散っていた者達の恨み! 今こそ晴らす時だ!」
「威徳03、これより威徳01の背後を守ります」
そう言うが早いか、七生の威徳03は背中にマウントされた74式長刀を抜き払い構える。
「チェストー!」
威徳03が叫びと共に直線上の
前にも見せてくれた示現流の剣技だ。
いかん、あの攻撃の後はかなり無防備になる……!
私は36mmを構え直し、威徳03の周辺を警戒する。
案の定
「消えろ! 赤蜘蛛共め!」
無心で乱射する。
「陛下、援護ありがとうございます。示現流は集団戦で使う物ではありませんね!」
「ぼやいている暇があるなら大丈夫だな。行くぞ威徳03!」
大隊各機も続いている。
「こちら左翼部隊!
「右翼部隊! こちらも同様。ポイント・エコーまで突っ切る。砲撃はよろしく頼んだ!」
「威徳02より大隊各機。聞こえてる通りだ! 我々はこのままBETA群を倒しながら突っ切り、ポイント・デルタへ向かう」
戦闘開始より20分。
「
勝った……!
今回ばかりは人類の勝利だ!
気分は高揚したものの、やはり無傷というわけには行かない。
今回も大隊から数機の戦死者が出た。
他国の部隊もそうだが、大隊員の損失はやはり辛い。
これで、あと12人……完全に中隊規模だな……。
私は一人、涙した。
◇ ◇ ◇
「旧ウランバートルに18番目のハイヴが確認されました。クラスノヤルスクハイヴより溢れたBETA群と合流した梯団規模のBETA群が確認されており――
――1996年02月06日、満洲国統合参謀本部の会議にて」
「駄目だ! フルンボイルはもう保たない!
――1996年07月26日、フルンボイル市防衛戦での無線より」