Muv-Luv Alternative Manchuria   作:ビリーT

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※この物語はフィクションであり、実在の人物・事件などには一切関係がありません。
※オルタネイティヴ世界線とは異なる確率時空でのストーリーです。
※参考文献 「MUV-LUV ALTERNATIVE INTEGRAL WORKS」及び「シュヴァルツェスマーケン 殉教者たち」


最終話

1996年08月06日 満洲帝国 帝都新京 満洲帝国司令部

 

「もはやこれまで! 陛下、日本領朝鮮に近い臨江市へ遷都しましょう。いざという時に日本領に逃げれば鴨緑江が盾になります」

 

マクミラン軍事顧問団長が言う。

気持ちは分かる。すでに新京の200km手前までBETAは到達しているのだ。

満鉄は数分単位で臨時列車を出し、大連や朝鮮半島側へ国民を避難させている。

もはや我が帝国西部はBETAの庭となってしまった。

 

ウランバートルにハイヴが確認された頃。

ソビエト領にあるクラスノヤルスクハイヴや敦煌ハイヴから溢れたBETA群が梯団を形成。

数万規模になって我が帝国領に侵攻してきた。

フルンボイル作戦では見事に勝利を得ることが出来たが、今度は規模が違う。

美国(アメリカ)も日本も、そして我が帝国も。

全力を尽くしたが戦線は破られ、数多の民の命が奪われた。

 

そしていよいよ帝都新京に奴らは迫ってきたのだ。

 

「まだ逃げ遅れている民が居る! それを残して朕が新京を放棄するわけにはいかんのだ!」

「しかし陛下! 貴女が斃れては満洲帝国はどうなるのです!」

「……済まないマクミラン団長。これは私の最後の我が儘だ。聞いてはくれまいか」

「そうですか。ではこれ以上我々は引き留めません。我が顧問団は早々に大連へ避難して日本へ向かいます。どうかご武運を」

 

マクミランと美国(アメリカ)の顧問団が踵を返して司令部を辞す。

 

「それでは、我々も帰国致します。陛下、何かあれば我が帝国へ是非」

 

日本顧問団も去って行く。……とうとう、我々だけになってしまった。

 

「それでは、作戦の説明を致します」

 

クリフォード中校が説明を開始する。

 

「現在BETAは哈爾浜(ハルビン)・新京・奉天のラインから200km西方を進撃しています。我々が用意できる戦力は、威徳大隊の12機。そして歩兵師団が10個。砲兵旅団が3個。……そして満鉄の列車砲及び、海軍の全艦艇です」

「定足数については聞かないでおこう。海軍の位置は?」

「旅順港を発し、営口市近郊に布陣しております。満鉄線路を死守する為の支援砲撃を展開する予定です。また、美国(アメリカ)第七艦隊からもF-14が2個大隊支援に向かうとの報告が来ています」

「大慶油田も陥落したのに、美国(アメリカ)は良く付き合ってくれるな……。鞍山や撫順は無事だがそれも時間の問題だ。美国(アメリカ)の権益ももう砂上の楼閣になったのに」

「”六族協和”なのですよ。美国(アメリカ)は我が帝国に開拓精神(フロンティア・スピリッツ)を見ているのです。合衆国(ステイツ)とは常に開拓精神で発展してきた。我が帝国も同じです。たぶん、同情しているのでしょうね」

美国(アメリカ)の気持ちはありがたく受けておこう。それで、他に戦力はどのくらいだ?」

美国(アメリカ)よりF-15を中心とした4個大隊。日本よりF-4Jを中心とした4個大隊が加勢してくれます。避難民を逃がす時間は稼げるかと」

 

一人でも多くの民を避難させねばならん。ここは我々が踏ん張る時だ。

 

1996年08月07日 満洲帝国 帝都新京 満洲帝国陸軍基地

 

「大元帥陛下に、敬礼!」

 

大隊員が敬礼で応える。

 

「総員傾注!」

 

クリフォード中校が宣言する。いよいよ最後の出撃になるかも知れないのだ。私も覚悟を決めよう。

 

「大隊諸君! もはや我々が負ければ新京は陥落する。死力を尽くして戦え! ……そして、必ず生き残れ!」

 

1996年08月09日 満洲帝国 帝都新京近郊

 

突撃(デストロイヤー)級が城壁に突き刺さって幾重にも重なって行く。

それを確認して背後の柔らかい箇所を射撃して撃破。

 

市内からは砲兵が大量の榴弾を撃ち込んでいる。

頭上を越えてBETA集団に弾薬が撃ち込まれ、要撃(グラップラー)級や戦車(タンク)級の群れを打ち砕いてゆく。

 

哈爾浜(ハルビン)が陥落した報は昨夜遅くに届いた。

奉天はぎりぎり持ちこたえているとの事だ。

新京~大連の満鉄主線が守られていれば、満鉄での避難はまだ可能である。

 

一両また一両、新京から避難民を満載した満鉄の列車が出発して行くのを見て少し安堵し、戦闘を続行。

もはや威徳大隊も残り8機まで減っていた。もう中隊ですら無い。

 

「威徳02より各機。高度を上げるな! 光線(レーザー)級の排除を優先せよ!」

「威徳03了解。BETA中央集団へこれより切り込む。後方支援を求む」

「威徳02了解。聞いての通りだ! 威徳01と03を先頭に突撃を敢行する。01と03以外は射撃支援を怠るな!」

 

了解の復唱が続く。

 

「CPより威徳02。支援に当たる日本帝国部隊より入電。『ワレ損害多大ニツキ戦闘継続不可能。幸運ヲ祈ル』との事」

 

凶報が飛び込んできた。

新京西北に布陣していた、日本帝国の戦術機部隊の光点(フリップ)が全て消滅している。

 

……今は目の前の敵だ。

七生の03と共にBETA中央集団に突入。

要撃(グラップラー)級や戦車(タンク)級を躱しながら光線級集団へ迫る。

 

突然、目の前のBETA群がさっと両脇に下がる。

! これはレーザーの予備射撃の兆候だ。

 

「威徳03、レーザーが来る! 回頭して脇から攻めよ!」

「03了解! 左翼へ回頭します。陛下は右翼へ!」

 

回頭しながら、背負った74式長刀を構える。

光線(レーザー)級からレーザーが放たれた。

 

今だ……! 次射までの僅かな時間が狙い目。

私は七生の03と共に、射撃の終わった光線(レーザー)級の群れを全て薙ぎ払う。

 

安心したのも束の間。後続の要塞(フォート)級から新たな光線(レーザー)級が排出されてくる。

光線(レーザー)級が我が物顔でレーザーを放つ。

 

もはや、BETAの進出は止められない。

 

一瞬の油断。

背後に要撃(グラップラー)級が迫っているのを見逃していた。

 

「陛下! 危ない」

 

威徳02――クリフォード中校――が私と要撃(グラップラー)級の間に割り込んだ。

要撃(グラップラー)級の腕が威徳02のコクピットを貫く。

 

「中校!」

「――(ノイズ)下……生き(ノイズ)」

「中校!!!」

 

血の気が引いた。クリフォード中校がやられるとは……。

 

「陛下、気をしっかり! 戦況を確認してください」

 

七生の声で我に返る。

威徳大隊の光点(フリップ)は残り3つ。

私と七生、そして威徳05だけとなった。

 

「威徳01より大隊各機! もはやこの戦いは負けだ。血路を切り開いて基地へ帰還せよ! 生きろ……必ず……!」

 

「陛下! お伴します!」

 

七生が言う。

 

それから先は凄惨だった。BETAの返り血を機体に浴び、戦闘で”瑞鶴”の左腕が奪われた。

機体フレームもガタガタになり、もはや動いているのが奇跡だった。

 

それでも、私は新京の陸軍基地に辿り着くことが出来た。

七生の威徳03も同時に着地。

 

すぐに玲花が駆け寄ってきた。

 

「玲花! 増槽を用意せよ! 私達は”瑞鶴”で奉天に向かう。お前も急ぎ逃げるのだ!」

「陛下、もはや逃げる場所はどこにもありません。最後の一兵まで抵抗致します」

「馬鹿者! 死んで良い人間など居ないのだ! 生きろ! そして戦え!」

 

”瑞鶴”をハンガーに固定する。

整備兵達に増槽を追加してもらい、再び出撃だ。

 

基地にはヘリが暖機して待機している。低高度を飛べるヘリが唯一の脱出手段だ。

整備兵達は私達の機体へ増槽を付け終えると、ヘリに乗り込んで基地を去って行った。

光線(レーザー)級に落とされるな……私はそう祈って再出撃する。

 

1996年08月09日 満洲帝国 大連近郊

 

新京を経って数時間。奉天はもう手遅れだった。

そのまま七生と共に満鉄の路線に沿って南下。

最後の防衛線となってしまった遼東半島方面へ向かう。

大連が近づいた時、避難民を満載した満鉄の機関車が脱線して立ち往生しているのを発見した。

BETAはもう目と鼻の先まで到達している。

 

「こちら威徳01! 誰か応答せよ!」

「陛下……残念ながら味方は既に壊滅している模様です。我々も早く避難しないと」

「駄目だ! 国民を見捨てるわけにはいかない。脱線した機関車を戻せば再び走れるだろう。そうすれば、大連からの避難船に間に合うはずだ。七生、手助けをしてくれまいか」

「……仕方ありませんね陛下。でも、貴女が死んではどうしようもない事だけは理解してください。貴女は7000万の民を統べるお方ですよ」

「済まん……」

「威徳03了解。これより脱線した機関車を戻す作業に入ります」

 

七生は”瑞鶴”のアームで機関車を線路に戻す作業に入った。

一時的に無防備になる間、私が七生と列車を守らなければならない。

右腕しか残っていない為74式長刀は使えない。

 

小型種である戦車(タンク)級がこちらに迫っているのがレーダーで確認出来た。数は絶望的に多い。

しかし、国民がみすみす食われるのを見過ごすわけにはいかないのだ。

 

36mmの残弾を確かめる。

新京を出る時に可能な限り予備弾倉を持って来た。

あと15分は戦えるだろう。

 

「――(ノイズ)徳01! (ノイズ)ちら、大連CP(コマンドポスト)! 陛下、ご無事でしたか!」

 

無線が大連CP(コマンドポスト)からのコールを告げる。

 

「大連CP(コマンドポスト)へ、威徳01! こちらは被害甚大なれど未だ健在。現在大連より20kmの地点で脱線した満鉄車両を復旧中。小型種BETAが接近中のため支援を要請する」

「大連CP(コマンドポスト)より威徳01。現在座標を送ってください。装甲列車から砲撃支援を行います」

 

大連CP(コマンドポスト)からの要請に従って座標を転送する。

 

「威徳03、作業の進捗はどうか!」

「陛下、あと10分ください」

「分かった。戦車(タンク)級が接近している。作業を急げ!」

「威徳03了解!」

 

「大連CP(コマンドポスト)より威徳01。座標諸元入力完了。5分後に弾着予定。衝撃に備えるよう、周囲に警告を願います」

「威徳01了解」

 

外部マイクをONにして、避難民達に警告する。

 

「5分後に大連からの支援砲撃が届く。全員地面に伏せて耳を塞ぎ口を開けるよう!」

「陛下――ご無事でしたか――陛下!」

 

私の声を聞いて避難民達がどよめく。

 

「ああ、この通り無事だ。今しばらく耐えてくれ。朕が必ず大連へ連れて行く」

 

避難民達から歓声が上がった。

 

「大連CP(コマンドポスト)より威徳01! 弾着、今!」

「全員衝撃に備えよ!」

 

大連から到達したクラスター弾が赤蜘蛛達を殲滅してゆく。

ほぼ全滅させたと思える戦果だ。

 

「威徳01より大連CP(コマンドポスト)。BETA先鋒はほぼ壊滅の模様。後続は――突撃(デストロイヤー)級が多数だ!」

「陛下! 脱線からの復旧終わりました」

「良し! 急ぎ発車させよ。聞こえているな運転手!」

 

警笛が答える。満鉄は再び動き出した。

これで良い。後詰めは――私達がやろう。

 

「威徳03……いや七生。最後の戦だ。突出した敵突撃(デストロイヤー)級を叩くぞ!」

「威徳03了解。お伴します、陛下」

 

覚悟を決めて突撃しようとした時、新たな通信が入る。

渤海湾を遊弋中の海威からの通信だ。

 

「……威徳01! こちら海威! 陛下ご無事でしたか!」

「威徳01、感度良好。現在位置は大連郊外20km」

「海威了解。本艦は現在営口市付近。十分砲撃が届く距離です。座標をいただければ、本艦及び海王からも支援砲撃を開始します」

「助かる! 今すぐ送るので支援を頼む。2機では心許ないと思っていたところだ」

「海威了解。急ぎ砲撃準備に入ります」

 

――5分後――海からも砲撃支援が届き始めた。

BETAに我が帝国を蹂躙されるのは確定事項だが、せめて一矢報いることが出来ただけでも御の字だ。

 

「改めて、残党を叩くぞ七生! 付いて参れ」

「了解です陛下! 日本男児の意地を見せてあげますよ」

 

そのまま勢いを削がれたBETA先頭集団に突入する。

 

――しかし10分が限界だった。BETAの物量はキリが無い。

弾薬は全て撃ち尽くし、七生の74式長刀のうち一本が折れた。

 

そして、私は不意を打たれ”瑞鶴”の右脚を叩き折られた。

もはやこれまでか……。

 

「陛下! 僕が担ぎます。脱出しましょう。貴女はここで死ぬべきでは無い」

「助かる……推進剤が尽きる前に海上へ脱出しよう」

「僕が必ず守ります。安心してください陛下」

 

そのまま肩を担ぐ様にして飛行を開始する。

背後にはBETAの群れだ。先程の列車は無事に大連へ着いただろうか……。

私の意識は遠くなった……。

 

◇ ◇ ◇

 

「陛下! 大丈夫ですか陛下!」

 

七生の声で意識を取り戻す。

 

「まだ移動中です。渤海湾に出たばかりですよ」

「そうか。何とか生き残れたのだな……」

「海まで行けばBETA共は怖くありません。一安心です」

 

操縦席のアラートが鳴る。推進剤が残り10%だ。

 

七生の機体は比較的原型を保っているが、連戦であちこち損害が見られる。

無事に2機とも飛行できているのが不思議だ。

 

通信が入る。渤海湾を航行中の海威からだ。

 

「威徳01……こちら海威! 応答せよ威徳01! 陛下! 陛下……!」

「こち……威徳01……我、健在なり……現在地は渤海湾上……」

「陛下! 陛下! ご無事で! こちら海威! そちらの信号を拾いました。誘導しますので飛行甲板に着艦を!」

 

このままで着艦できるか……。でも今は頼るしかない。

「こちら威徳01、着艦を試みる……」

 

◇ ◇ ◇

 

気がついたら、医務室のベッドの上だった。

横の椅子には七生が居眠りしながら座っている。

 

起き上がると、身体のあちこちが痛む。

衛士強化装備のお陰で致命的な傷は無いが、あちこち打撲はしているようだ。

 

七生が気付いた。

 

「陛下! 大丈夫でしたか! ここは海威の医務室です。着艦するなり気絶されたから心配していたのですよ」

「良い、何とか動けはする。七生こそ大事無いか?」

「僕はこの通り。何なりと命令してください」

「では、急ぎ国防首脳に連絡を……私が健在であることを国際的にも明らかにしないとな」

「既に、海軍経由で首脳陣には陛下が健在であることは伝わっています。何をされるのですか」

「決まっている! 満洲帝国ここにあり、と世界に宣言するのだ! 艦長に内線を繋いでくれ。さあ、一世一代の演技、世界中に知らしめてやろうではないか!」

 

◇ ◇ ◇

 

「我が帝国は異星起源種(BETA)に蹂躙されましたが、必ずや再起致します。友邦日本帝国の好意により京都に亡命政府を樹立。美国(アメリカ)や日本帝国と共に必ずや大陸を人間の手に取り戻すべく戦っていきます。

 

――1996年08月10日、威徳帝の演説 日本海航行中の満洲帝国海軍総旗艦 海威の艦橋にて」

 

Muv-Luv Alternative Manchuria : 終劇

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