第7錠 閉じる世界(後編)
「さて。柄じゃ無いけど、八つ当たりさせて貰おうか」
鳥一は未だに冷めず真っ赤なドライバーを越し翳す。
ベルトとなる鎖もまた赤い。
2人の想いが警告音を歪めた。
触れずとも、鎖が展開し、覆われる。
「変身」
真っ赤な鎖の繭が冷え、漆黒に染まる。
砕けて羽根のように舞う中に佇むは、真紅のジェイラー。
「色が変わったから何だというのだ!」
アジ・ダカーハは魔法陣を次々と展開する。
「「それはもう見た」」
ジェイラーは鎖で次々と砕いていく。
視覚を取り戻している上、見えてないふりをする必要も既にない。
この程度で遅れをとる筈がないのだ。
愛犬たちも名誉挽回とばかりに突き破っていく。
「チッ」
どこかで見ているであろう相手に手札を晒したくないとは思いながらも、
アジ・ダカーハは魔法陣の展開数をどんどん増やしていく。
ジェイラーは翼から吐き出される爆炎と共にそれらを突き破って接近し、アジ・ダカーハに鎖を叩きつける。
「効かぬ!」
アジ・ダカーハがそれを腕で弾くと、展開中の魔法が消えた。
「なに⁈」
本人も理解してはいなかったが、【千呪唱】アジ・ダカーハの魔法は、鱗が振動することにより発動している。
鎖が溶融して生じた棘が鱗に刺さると、魔法が封じられてしまうのだ。
理屈は分からずとも、因果は理解した両者の攻守は入れ替わる。
高速飛行しながら、四肢の鎖と愛犬たちの鎖で狙うジェイラー。
対するアジ・ダカーハは魔法陣の展開を繰り返しながらも必死に避ける。
鎖を避け損なうたびに魔法陣が消えてゆく。
「さあ、お縄につきな」
錠前のツマミを捻ると、ジャリジャリジャリと全身から真紅の鎖が溢れ出し、渦を巻く。
「おのれ!」
アジ・ダカーハは腕に付いていた錠前を引き千切るも、渦が触れると魔法陣が更に消えてゆく。
翼も細かく切り裂かれ飛ぶ事も叶わない。
ジェイラーは飛翔し、蹴りつけた。
鎖の渦がアジ・ダカーハの全身を削り取っていく。
錠前も無数に発生し、傷を抉るように、焼き固めるように発生していく。
「GAA!」
激痛に叫び狂うも、鎖は容赦なく巻き付いていく。
姿が見えないほど巻き付いたとき、青く強烈に光った。
長き戦いの末、アジ・ダカーハは敗れたのだった。
だが、戦いは終わってはいない。
GAoo!
GAoo‼︎
龍の生き残りがいたのだ。
生き残りは同胞の死骸を食べ、強化している。
強化のシステムはリソースの吸収。己で殺す必要はない。
強化した龍が暴れまわる。
鳥一は激怒した。
この世界そのものには愛着はないが、愛するモノたちと過ごした場所なのだ。
それを壊すなど許せるはずもない。
鳥一は決意した。
全てを終わらせる事を。
ジェイラーは大剣バルグラムの刀身に2つのジェイルジェムを装填した。
鍔から鎖が飛び出すと、アルゴスとグレムリンの型に変容した。
『なんだ、これは?』『?』
「アルゴスはオールダーを石化させろ、ジェイルジェムを見つけろ、それらを集めろ。
グレムリンはジェイルドライバーを集めろ、それを指定の位置で起動させろ」
『貴様に従うはずが…?』『?』
2体の意思に関わらず、身体が動く。
これこそが、強権バルグラムの力。オールダーを強制的に従わせることができるのだ。
アルゴスとグレムリンが忙しく働く傍ら、ジェイラーは佇む。
「勝手に決めてごめん」
「………………………」
「デートしたりないけど、君と一緒にいられるなら十分さ」
錠前が集まったのか、周囲一帯に鎖が広がる。それは巨大なジェイルジェムを形作っていく。
そして、青白く光っていく。
「綺麗な光景だね。君と見られるなんて幸せだよ」
一際美しく輝き、消えた。
殆どの化け物が消え、人々はかつての生活を取り戻した。
何故殆どなのかだって?
神話の怪物は討伐されるべき悪。
故に、運命が英雄を求めたとき、必ず現れる。
妖怪は謎の存在。人に、陰に潜むもの。
全ての目を掻い潜り、常に機会を窺っている。
向こうの物陰を見てごらん。
ほら、目が合った。