暗くて――
荒々しく――
〝生きている〟とは感じられない地。
そこにある男がくたびれながら座り込んでいた。
この男の名は〝モンキー・D・ルフィ〟。
海賊である。
それもただの海賊ではない。
海の全てを手にした海賊王なのだ。
……なのだが
「……」
普段では底抜けて明るく豪快な彼は生きているとは思えない程に静かだった。
何せ、彼は――
「…皆…」
彼にとっては何よりも大切である〝麦わらの一味〟の仲間――フーシャ村の人々――たくさんの友達――彼らを失ったばかりなのだから。
実は彼は「ラフテル」で知った歴史を背負い、世界に挑んだのだ。
そして……
敗北してしまった。
「…ヒック…皆…ごめ゛んな゛ぁ…」
彼は歯を食いしばりながら決して小さくはない涙を流した。
「…オレ゛も゛…ぞっぢに゛…」
彼はそう呟き――瞼を閉じてしまう。
全てを手にした筈の〝海賊王〟モンキー・D・ルフィは全てを失い、失意の中で命を落とした――
――筈だった。
「!!?」
ハッとするルフィは目の前の景色に目を開く。
何せ
「いつかきっと返しに来い」
「立派な海賊になってな」
自身にとっての憧れである海賊――シャンクスがそう口にし、微笑みながら自身の船に向かう。
それに対してルフィは
「何だこりゃ?」
「(待て待て!冷静に、冷静になって―考えろ!一体どうなってるんだ?オレはつい死んだばかりだよな!!?)」
考える事を苦手としているルフィも自身の置かれている状況に頭を全力で回らせた。
「(これって……シャンクスから麦わら帽子を譲ってもらったあの時だよな??)」
目の前の景色によりルフィは見覚えのある状況を思い浮かべた。
続いて彼は自身の体を確認すると――身体が縮んでいた。子供の姿になっていた。
その事から
「もしかして過去に戻った?」
ルフィはそう推測した。
「(何で!!?どうやって!!?)」
能天気なルフィも動揺し続けた。無理もない。常識を疑う事が起こってきていた世界でもこういう事態はあり得ない筈。
ふと……
「あれ?」
「(これって……もしかしてチャンスなんじゃねぇか??)」
ルフィはそう考え始めている。
過去に戻ったのならば、今なら〝巨大な戦い〟の結果を変えられるのでは――
それだけではない。救えなられなかった兄エースの事を含める後悔を残している件を今なら打破できるのでは――
「(よし!何で過去に戻ったのは分らんねぇが……せっかくなら今度こそ助けてみせる!)」
「よぉぉし!やるぞ!」
そう考えたルフィは遠くなっていくシャンクスの船を見送りながら両手を挙げた。
そんな彼に
「行っちゃったね……皆……」
後ろからそう声かけられた。
「!!?」
その声にルフィは目をいっぱい開けて驚愕する。
後ろからの声に驚くのもあるが、その声の主がこの場にいるという事態に心から驚愕したのだ。
何せ〝前〟と違う事態がさっそく起こった。
だが同時に喜びが浮かんだ。
その人物がこの場にいるという事は〝前〟の絶望が起こらないかもしれないのだから――
その可能性に縋りたくなったルフィは後ろを振り返る。
そこには――
「ルフィ…?」
自身にとって大切な幼なじみ――ウタがルフィを不思議そうな表情で見つめながら立っていた。