「だ、だれか……たす……け……」
この声が聞こえたときまず思ったことは「そんな……うそだろ」。次に「俺はそんな柄じゃない!」だ。
ゲーム中では死域の中に入るとゲージが徐々に溜まっていき満タンになるとゲームオーバーになってしまう。消し去るには草の種を使用したギミックを解き明かし、強化された敵を打ち倒し、死域の元凶を打ち払う必要がある。
ゲームでは救済措置として死域に汚染された状態を回復する石碑が置かれていたがどっこいここは現実。そんなものが都合良くあるはずがない。
まずよぎったのはもう会えない両親の顔。捨て子だって俺を異世界の混じり物の俺を実の息子のように育ててくれたかけがえのない人たち。
そして科学院の友人たち。時には意見のぶつかり合い、苦労させられることもあったけどみんな気の良い奴らだった。俺の作ろうとしているものをバカにしながらも応援しているといったあいつはどうしているだろうか。
そしてクロリンデ師匠。なぜ、彼女は俺を鍛え上げてくれたのだろうか? 以前ふと漏らしたものに”お前のその真っ直ぐさが時に羨ましいと感じる時がある”というものがある。あれにはどういった意味が込められていたのだろうか?
師匠の元素エネルギーが込められた弾丸を取り出しベルトのストックに差し込む。
つづいてフリーナ。俺はメインストーリーをそこまで進めていたわけではなかったので彼女の劇団というのを始めてみたのだが。今まで見ていなかったのを後悔するほどに素晴らしいものだった。そして俺は彼女に謝罪し素晴らしかったと感想を述べた。これはその餞別として下賜されたようなものだ。
フリーナの元素エネルギーが封入された弾丸を2つ目のストックに差し込む。
最後にナヒーダ。俺が彼女に語ったのは何だったのかを思い出す。そう、あのとき俺はなんと言っていた?
ナヒーダの元素エネルギー入の弾丸を3つ目のストックに差し込む。
3つの切り札をセットし草の種をできる限り体にまとわせる。やはりゲーム以上の8つほどの種がまとわりついてきた。これは安全地帯はないと思ったほうがいいな。
右手に愛剣。ゲームにしてみれば星3相当だろうが長い付き合いの分レベルは高い。
息を吐く、吐く、吐く。
左手にピストル。長年アップデートを繰り返し、あいかわらず狙ったところには当たらないが、直感の働くところにはかならず当たる。その点はワン・コマンドで済む分弓よりも優れる長年の相棒。
息を吸う、吸う、吸う。吸って吐く。
ここが俺の分水嶺。願わくば……
「願わくば……天理を打ち倒し……世界を……革命する力を!」
そして扉は開かれる。あとは駆け抜けるのみ。