書き直そうにも時間ないからこのまま更新しちゃったけど……。
うーむ。でもあかねちゃんも大概だからええか。
ここ数日、彼方くんの様子がおかしい。
またかぁ。と思うと同時にいつもよりも酷いなぁとも思う。これはアレだ。
「倒れた時と一緒だよねぇこれ」
あの時はサスペンスものを書いてたっけ。
記憶の中の貴女。
彼方くんが書く小説は所謂名作が多い。多くの人に読まれてウケて、映像化や舞台化。さらに多くの人の目に留まる。
そんな彼方くん……オパールはたまにおかしな話を書く時がある。奇作……とでも言えばいいだろうか?
「あんな本当に物語みたいなこと起こるなんて、誰も思わないよね……。たまに何処かで変な電波でも拾ってるんじゃないかな?って思うし」
未解決事件をベースにして書いたもの。
多くの未解決事件をできるだけ調べあげ、寝ることも忘れて倒れるぐらい考えて書き上げた物語。
その物語は主人公が恋をしていた人に想いを伝えたが断られ、殺してしまう。そこから始まる愛憎の物語。
「あれ、すごい気持ち悪かったな」
主人公の起こした殺人事件は未解決事件となってしまう。罪悪感に震えて過ごす数年間。その数年の間に自身の中で消えていく彼女への思い。どうにかなってしまいそうな時に出会ってしまうのは殺した女性と同じ名前、雰囲気もそっくりな人。
主人公の歪んだ想いがその子を狙う。
そんな気持ち悪い話……なんだけど。
「まさか本当に元にした事件の犯人が自首するなんて誰も思わないって……」
もう世間は大騒ぎである。
あとがきには一文だけ。
『貴方を見ています』
なんでこんな事を書いたのか?と聞いてみると、クソ気持ち悪くなっちゃったから後書きもクソ気持ち悪くしようとしてやった。なんて言うし……。
犯人も半狂乱状態で、いつも目が見てくるんだ!!いつもそこにいるんだ!!今も!!なんて言っていたらしい……怖いよ。
警察動くし、彼方くんも今までほとんどなかったメディアへ出ることになるし……全部終わったあとまた倒れたんだよなぁ。
そんな時と今の彼方くんはすごく似ている。
と言うわけで。
「彼方くん!甘いものでも食べに行かない?」
「……今ですか?」
「今!もう出るよ!」
無理矢理にでもパソコンから引き剥がそう。
仕事の邪魔をしてしまうから心が痛いけど、倒れられるよりはマシである。
うわー。すっっごい嫌そうな顔。
私これでも元トップアイドルだよ?一応それなりにプライドというか、自信あるんだけど……なーんか傷つくなぁ。
「まぁ、そうですね。糖分食べましょう」
「甘いものね。糖分って言い方はやめようね?」
「甘ければなんでもいいです。あ、新しく見つけたカフェあるんでそこ行きましょ」
「行く!!」
出かける用意をしたあと彼方くんの手を引いて家を出る。もちろん変装もバッチリでバレない自信がある。
トボトボと歩く彼方くんを連れて歩く。
「こっち?」
「はい」
もしやあそこだろうか?
最近ちょっと話題になっているらしいカフェがこの辺にあったはず。ルビーが一緒に行こうと誘ってくれたけどタイミングが合わなかったんだよなぁ。先に彼方くんと来ることになってしまった。ごめんねルビー。
「あ、今なら入れそう」
「……そっすね」
「もー、ほらほら彼方くん。入るよー」
背中を押して店内へと向かう。
こんなボーッとした状態の彼方くんにメニュー見せていたら一生終わらないので適当に美味しそうなのを頼む。飲み物は〜……彼方くんはコーヒーでいいかな?
パフェにパンケーキ、プリンにタルト。
ケーキもあといくつかくる。
さて、ここからが面白いのだ。
「はい彼方くん。あーん」
「……あ」
んふふふふ。
こんな時の彼方くんは、いつもより言いなりになってくれるからねぇ。糖分のおかげでそのうち正気に戻るだろうし、今だけは私が楽しませてもらおう。
思っていたのとは少し違うけど、せっかくのデートだからね。このぐらいの役得ぐらい許してもらおう。
「うま……」
お?スイッチ入ってきたかな?
自分でフォークを取ってタルトを食べ出した。
彼方くんタルト好きだもんねぇ。
「……アイさん。ありがとうございます」
「んーん。ほらほら、パフェも食べて」
「ん。いただきます」
結構頼んじゃったかなぁ?なんて一瞬思ってたけど、パクパクと吸い込まれるように無くなっていくデザート達。次第にボーッとしていて生気がない感じだったのも無くなり、だんだんと目に力も戻ってきた。
やっと私のこと見てくれるかなぁ?
せっかくのデートなのだ。女としては好きな人に今の姿を誉めてもらいたいんだよ?
考え込んで靄がかかっていたような頭がスッキリしてくる気がする。目の前にはいつもより星の瞳の光が抑えめのアイさん。初めて知ったけど、こんなこと出来るんだな。
その辺どうやっているのかとか聞きたいが、まずは言わないといけないことがあるだろう。
「アイさん」
「ん?どうしたの?」
「連れて来てくれてありがとうございます。すごく美味しいです」
「それは良かった」
「……」
「……それだけ?」
「え?」
「……はぁ、デートなんだから目の前の女の子のこと褒めたりしてほしいなぁって思うんだけど?」
なる……ほど。
確かにデートの時は相手を褒めるシチュエーションはよくやる事だろう。俺もよく書く。
褒めるとこ。……褒める……とこ?
「……あー、その」
「ん?」
「いつも綺麗なので今更じゃないですか?」
そう言うと机に顔を伏せてしまった。
これが所謂バッドコミュニケーションというやつだろうか?ごめんね。不器用で……。
「……なんでそんな普通に言えるのかなぁ?」
「あ、パフェ美味しい」
「聞いちゃいないし……」
「へ?何か言いました?」
やけにニマニマと口角が上がっているが、何があったのだろうか?でもまぁ、アイさんも気にしなくていいと手を振ってるし気にせずに食事を再開。
……そう言えば。
「今は星野さん呼びの方がいいのか?」
「ダメ」
「へ?」
ボソッと呟いたつもりだったが聞こえたようだ。
えっと、アイさん?少し睨むような視線を感じてしまうのだが……。そのままアイさんは困った人を注意するような口調で話し出した。
「今更、星野さん呼びとかやめてね?アイって呼び捨てで」
「アイさんでいきますね」
「ヘタレ」
「うるせぇ」
いきなり呼び捨てとか……無理です。恥ずかしい。
アイさんの視線から逃げるように俺はパフェを食べ進める。次は何を食べようか。プリンなんていいかもしれない。
なんて思った時だった。
「先生」
聞き覚えのある声に思わず振り返る。
そこにいたのは黒川あかね。
こんなところで会うなんて思わなかった。
……まずくない?これ。
どうしてこうなった?
目の前にはアイさん。横を向けば黒川さん。
なんか、その……物凄い雰囲気で俺の手が震えているのかプリンが震えているのかわからない。
スプーンに乗っているプリンがプルップルしてる。
いや、手なの?プリンなの?どっちなの?
「お邪魔してしまってすみません。黒川あかねと申します」
「うん、そうだねぇ。私は……星野アイ。よろしくね黒川さん?」
「よろしくお願いします。……まさか本名を聞けるなんて思いませんでした……」
「ここはフェアに行くべきかなぁって」
「なるほど。ありがとうございます」
プリン美味しい。
……普段と違って何故か物凄い食べにくいな。
あ、俺の手が震えてるのか。なるほどね。
……怖いってここ。帰りたい。
「単刀直入に聞きます」
「何かな?」
「オパール先生とはどんな関係なんですか?」
「大切な関係」
「……驚きました。隠しもしないんですね」
「黒川さんには隠せないでしょう?」
何が起こってるんだ?
教えてくれアクアぁ!!
目の前でアイさんと黒川さんがすっっごいなんか、こう、すっごい雰囲気なんだけどどうすればいい?ってメール飛ばしたけど……なんで既読無視するの!?
「黒川さんの方は?彼方くんとどんな関係なのかなぁ?」
「私の恩人であり、大切な人ですね」
「へー?そうなんだ」
「えぇ、そうなんです」
くっっ!!
ルビー!!教えてくれ!どうしたらいいんだ!?
アクアと同様のメールを送ってみる。
数分もしないうちに俺のスマホから通知音が鳴る。急いで確認してみると。
『ママ以外の女?カナお兄ちゃんのクズ男女の敵』
ル、ルビィイイイイ!!!!!
言いたいことはわかるさ!!えぇわかるとも!!
片方は元トップアイドルで今も大人気のアイさん!
俺はこの人に日常から仕事のサポートまでありとあらゆるお世話をしてもらっています!
ありがたすぎて足向けて寝れんて!!
もう片方は劇団ララライのエースである天才役者の黒川あかね!
俺はこの人に俺の物語の登場人物を何人も演じてもらっている。作家オパールとして正直に言うが俺の物語の登場人物達、我が子達を心の底から安心して任せられるのはこの子しかいないと思う。
だからこの人もありがたすぎて足向けて寝れないんだって!!
「ふぅ……あの、コーヒーおかわり」
「うん。すぐに頼むね」
「私が店員さん呼びますね」
「「……はい?」」
「あ、すみませーん!コーヒーおかわりくださーい!」
ごめんなさい!自分でやります!!
本当にどうしてこうなったの!?俺はただこの間の事が気になって仕方ないだけなのと、美味しい甘いものを食べてただけなのにぃ!!
俺が真っ白に燃え尽きてグッタリとしていると、アイさんが声をかけてくる。
「彼方くん」
「ひゃい……」
「あかねちゃんいい子だねぇ!」
「どうしてそうなったの???????」
頭の中疑問符だらけである。
この短時間に何があったの?もはやコーヒー飲むだけの人形になってしまっていたからわからんて。
ふふふふふ。と笑い合う二人。
俺が混乱しているとアイさんはしょうがないなぁと言うような表情で話し出した。
「え?えぇ……?」
「彼方くんの作品といえばさ」
「あぁ!アイさんと趣味合いそうですね!私もそれ好きです!」
「めっちゃ仲良いじゃん」
結局、アイさんとあかねさんの女子会?が終わるまで俺はずっと目の前の光景に混乱していた。その混乱中に黒川さんと呼ぶのをやめて名前で呼んであげろと、アイさんから言われ素直に了承する程度には混乱していたのだ。
「それじゃあまたね!次の舞台は観に行くね!」
「はい!是非!ではまたアイさん。彼方先生も今日はありがとうございました」
「あ、はい」
あっという間に時間は流れ退店。
主に食い散らかしていたのは俺なので全額を払い。気がつけばもう別れる時間のようだ。時間の流れる速さにまるで宇宙を背負った猫のように固まってしまう。
「あ!忘れるところでした」
あかねさんがゴソゴソと荷物を漁る。
眼鏡ケースのようなものを取り出してそこから大事そうにラミネートされた紙切れを取り出した。
「これ!いつも肌身離さず持ってます!またサインくださいね。彼方先生!」
「あ、はい。……と言うかそれまだ持ってたんだね」
「勿論です。先生が使ってた栞なんですから」
「栞って……今度ちゃんとしたのあげるから」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
そう言ってあかねさんは帰って行った。
あかねさんが持っていた栞。
舞台で何度か一緒になっている時、あかねちゃんにサインを頼まれた事がある。こんな事を言うのは珍しいと思い勿論了承したのだが、サインできる色紙なんて手元にはなかった。緊張してたのかな?
そして俺がたまたま持っていた栞……と言うには酷すぎるけど……ソレに書いて渡したのだが……それ、台本の一部を千切っただけの紙切れ栞なのに……。
ラミネートまでされて大事に持ってくれてるのを見ると申し訳ない気持ちになる。今度もっとちゃんとしたの買って書こう。
「それで、なんでこんなに意気投合してんです?」
「彼方くんボーッとしてたもんね。あかねちゃん本当にいい子なんだよぉ〜」
そう言ってアイさんはあかねちゃんとの話の内容を教えてくれる。
アイさんは……その、俺へ恋愛的な意味での好意を持っている。それと違いあかねちゃんは俺への好意はあるものの、どちらかといえばオパールへの想いが強いとかなんとか。
「昔の私のファンみたいな感じかな」
「なるほど?なんとなくわかった気がします」
「だからあかねちゃんのこと大事にしないと刺されるよぉ〜」
「洒落になってませんからね!?」
なんて事言うんだこの人は!!
まぁファンとしての想いの方が強いということで納得しておこう。アイさんからの想いも応えていないのに問題が増えたら俺が死ねるし……。
「それはそうと彼方くん」
「はい?」
「万が一、あかねちゃんに手を出したら犯罪だからね?あと捕まる前に私が……」
「怖いよ!!それにそんな事しません!!さっきから何言ってんですか!?」
「だってぇ!モテる作家とかもう厄介者でしかないじゃん!」
はぁ!?
さっきから人のこと酷く言い過ぎだからね!?
だいたい!生まれてからモテたことなんてないですぅ!!それどころかまともな友達もいません!!
あ、辛い……ここ十年で遊んだ記憶はアイさんとアクアとルビーぐらいしかない。なんでこんなダメージ受けてるんだろ?
なんか、こう。頭にくるなって……!!
「こっの!!帰ったらその口閉じてやる!!」
「え!?ナニで!?」
「ガムテープ!!」
「えぇ!?」
DVだ!とキャッキャと笑いながら叫ぶアイさん。
あ、知らない人です。俺の知り合いじゃないですから。だからそんなに近づかないでアイさん!!
いやぁ、ブルアカの対策委員会の三章一気読みしたけど泣いたわ。
最高でした本当に。
あとはアリ夏と臨戦ホシノとシロコテラーの話読んだら一息つけるわ。