どうやら、俺の隣人はアイドルだったらしい。   作:クウト

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お久しぶりでーす。
忙しかったり、休みを満喫したりしてたら遅くなりました。
今回序盤だけ感想でもらったアイデアを少しだけ使わせてもらいました。
ありがとね。あと勝手に使ってごめんよ。


クリエイター

彼方くんがお風呂に行くのを見送る私。

正直に言うと追いかけて突撃をかましたい気持ちはあるが、今の私はそれどころではなかった。先程まで彼方くんが寝ていたベッドに身を投げる。

 

「きゃ、きゃわぁぁ〜!!!」

 

え?えぇ!?

なにあれなにあれ!!!

起きたばかりの彼方くんの顔がいつもより素敵に見えたんだけど!?すごいスッキリしてますって言ってた時の笑顔なんて……。

 

「は、破壊力やばぁ……!!」

 

暴走せずに返事をするの大変だったよ。

私が元トップアイドルだからこそできた。そうじゃなかったら我慢できなかったと思う。昂った自分を押さえ込み、なんとか意識を逸らすためにウザ絡みしちゃったけど、しょうがないよねあれは!!

あーもう!

 

「……え?あれ?……なんか、いつもよりめっちゃ良い匂いするんだけど?なんで?」

 

感情が昂ってるから?

それともあんな可愛い顔を見てしまったせい?

どちらにしてもちょっとまずい。彼方くんを見るときは素敵に見えるフィルターがあると自覚しているが、急に最新式に変えられて理解が追いつけない感じだ。サイレントアップデートはやめてよね。

 

「ダメダメ。抑えないと」

 

お、落ち着けぇ私ぃ……!

彼方くんに苦手意識を持たれることだけは避けないといけない。全部一気に進めてしまいたいという焦った思いはあるけれど……。

 

「ゆっくり、じっくりいかないと」

 

もちろん押すところは押していく。

だって仕方ないでしょう?彼方くんの初恋……彼方くんの全ては私が貰いたいのだ。

 

「……むぅぅぅぅ……!!」

 

だがそれはそれとして、このモヤモヤとした気分はどうするべきだろう?私はそんなことを考えながら彼方くんがお風呂から帰ってくるまで、彼方くんのベッドの上で布団にくるまって悶えていたのだった。

 

 

 

俺が泣いた日、そしてアイさんが俺のベッドでジタバタモゾモゾしていた日から二日後。……いや、あの人何してんの?風呂から上がって部屋に戻ると謎に暴れてたから引き返したんだけど?おれ、あの人のこと愛しちゃったんだよね……いいのだろうか?いいか……。

ま、まぁそれは置いといて!

俺は今、自室にあるパソコンの前にいた。

 

「さーて!楽しい楽しいお仕事の時間ですよ〜!」

 

なーんでこうなったんだろう?とは思う。

俺は今リモート通話中。画面に映るのはアビ子さん、GOAさん、雷田さん、アビ子さんの担当。

……俺なんでここにいるの?

 

『彼方くん、なんか元気だね?もう大丈夫?』

 

「いやぁ、ごめんなさい雷田さん。あのときは色々と疲れが限界でして……アビ子さんもごめんね」

 

『い、いえ!私の方こそ、すみませんでした』

 

いーよいーよ。

俺も言いすぎたしな。

さて、今から行われるのは脚本の書き直し作業だ。

何でここにいるの?とは言ったが、アクアとあかねさんが頑張ってくれたのだから俺もやれる事はやらなければっていうちょっとした思いがあってここにいるのだ。……ごめんね、部外者で。

 

『じゃあ始めましょう』

 

アビ子さんがそう言った。

その瞬間に俺のスマホが鳴る。

 

「おっと、ごめんなさい。メールが来ちゃったみたいで、通知は切っておくべきでした」

 

気にしなくていいよ。

そう言われながらもサイレントモードに切り替えてメールを確認。ん?雷田さんから?

 

【ヒートアップし過ぎたら止めてね!ポシャるのが一番最悪だから!お願いね!!】

 

あー、なるほどね。

こういう作業をする時、原作者と脚本家はヒートアップしていくのだ。原作者はできるだけ原作を変えずに進めたい、脚本家はストーリーを時間内に収めるために編集したい。

 

「大丈夫でしょ」

 

邪魔をしないようにミュートにしながら呟いた。

今もアビ子さんとGOAさんはぶつかり合いながら作業を進めている。

アクアから聞いた話ではあるが、アビ子さんはGOAさんが書いた脚本の劇を見て楽しんでいたらしい。

だから雷田さんは安心していいですよ。

 

「きっと、とってもいい脚本ができますからね」

 

もちろん。

色々な意味でね。

いつの間にかアビ子さんとGOAさんはニッコニコしながら編集を進めていく。さっきからメールを受信しまくって画面が光り続ける俺のスマホ。ニヤニヤと悪い笑顔で見つめる俺に、頭とお腹を抑える雷田さんと担当さん。

それから数時間が経ち、朝日が部屋に差し込んだ頃。

 

『GOAさんのお陰でいい脚本になりました!ありがとうございます!』

 

『いえいえ!前よりもずっといい脚本になって良かったです!これもこの場を作ってくれた皆さんに感謝ですね!』

 

そうだそうだ。

アクアとあかねさんのおかげだぞ?

今度美味しいものでも食べさせてあげないとなぁ。

 

「さてさて、それでは俺もこの辺で」

 

『彼方くん?ちょっと待とうか……あと、GOAくん?』

 

「雷田さんメール送りすぎですよ?受信だけで何パー減ってると思ってるんですか?」

 

『楽しくなっちゃってつい……すみません』

 

頭を抱える雷田さん。

まぁ気持ちはわかるんだけどね。クリエイターたちが団結しちゃうと色んな意味で問題ある作品ができがちだしな。

でもこれに関しては大丈夫でしょ?舞台に立つ役者たちは天才ばかりだ。

 

「大丈夫ですよ。ふわぁ〜……じゃあ俺もこの辺で失礼しますね」

 

『お疲れ様でした。こんな時間までありがとう彼方くん』

 

『あ!ちょっと待って彼方く』

 

カチッとマウスを叩いて通話を切る。

俺にブレーキとしての役目を果たしてほしかっただろう雷田さんには申し訳ないが、元々そんなに手を出すつもりはなかったのだ。

だってあかねさんや大輝くんを筆頭に、ララライのみんなは俺の無茶振りにも応え続けてくれた人達だぞ?それに有馬さんなんて元天才子役なんて言われているが、今も実力は伸び続けている。

だからこそ役者に丸投げのキラーパス脚本を書いても応えてくれるという信頼があった。

 

「問題は……アクアだな」

 

アクアは器用だ。

自身の経験を繋ぎ合わせることで演技が出来てしまっている。勿論それが悪いとは言わない。実際何度も人々を楽しませているのは事実だしね。

 

「でもこのシーン……」

 

刀鬼の一番の見せ場。

重傷で倒れた鞘姫そして絶望する刀鬼、だが鞘姫は奇跡的に目覚めるという場面。

この時の刀鬼の感情の爆発。

大切な人を亡くすという不安からの解放、奇跡が起きて目覚めてくれた時の強い喜びと希望。

 

「映像なら問題ないんだけどなぁ」

 

舞台となると話は別だ。

舞台から遠く離れた人にまで届くような感情の爆発。それを表現するには今まで培ってきたものではダメだ。

 

「突くかなぁ……はぁ」

 

弟のように接している子にするべきだろうか?

という兄としての想い。

やるべきだ。俺たちが全てを、命を削ったものに対して全力で向き合え。

というクリエイターとしての想い。

……アクア自身に決めさせよう。

なんだかんだで器用にやり切れる気もするけども。今の自分を壊して次のステージに立つというのなら全力で応えよう。

 

「俺の世界にアクアを引き摺り込む」

 

壊れてしまいそうなアイさんにやったように。

消えてしまいそうなあかねさんにやったように。

それは俺がオパールとしてできる事だ。君は俺には返しきれないような量の幸せをくれたきっかけ……奇跡をくれた子だからね。

だからアクア。君が心から望むのであれば、俺がどんな世界でも見せてあげるよ。

 

「あの日、君を家に入れて本当に良かったよね」

 

小さくて手強いアクアを思い出して少し笑ってしまう俺だった。

 

 

 

俺はララライが使用しているスタジオへと足を運んでいた。今回の主な目的は俺からのお願いを聞いてくれたアクアとあかねちゃんに晩御飯を奢るためである。

そんなわけで稽古が終わる頃にお迎えに行くねと伝えたのだが、ついでに見学もどうか?と誘われたのだ。

 

「お邪魔しまーす」

 

「ん?彼方か。話は聞いてるからこっち来い」

 

金田一さんに迎えられた。

どうやら今日は新しい脚本での稽古が本格的に再開されたらしい。金田一さんには、とんでもないのをよこしてくれたな……なんて言われた。結構役者任せな脚本に仕上がったからなぁ。

でも俺無実でーす。

 

「俺無実です見たいなツラすんなよ?ここ、お前のクセあるぞ」

 

「……気のせいじゃないですか?」

 

「あとここ。ここもだ」

 

バレテーラ。流石である。

だって仕方ないじゃん!!アビ子さんもGOAさんも二人してめっちゃ楽しそうだったし!俺だって睡眠時間削って何故か会議に出てたんだから、少しぐらい口出させてほしいんだよ!

 

「も、問題ないでしょ?ララライメンバーなんて喜んで受けてくれるでしょうし、有馬さんとか他の人達も実力あるし」

 

「……まぁ、そうだな。特にウチの連中はお前のせいで鍛えられてる奴らだからな」

 

ほらね!

そういうと思ってたのよ!

 

「だから時間がない事と、舞台未経験者がいなけりゃ問題なかっただろうよ」

 

「ごめんなさい」

 

何も言えねぇわ。

公演まであと半月、時間がないのも確かだ。

 

「まぁいざとなったら使ってくれて構いませんよ」

 

「お前のアレか?」

 

「役を掴めるきっかけにはなるでしょう?」

 

「まぁ、な。星野のやつには必要かもな」

 

やっぱりか。

 

「だだそれやるなら別室でやれよ?」

 

「へ?どうしてです?この場でやれば」

 

「オパールの世界に引き摺り込むところを見せるなってんだよ。役者からしたら毒だからなアレ」

 

「何言ってんだこの人」

 

つい変な目で見てしまう。

毒って何?多少俺の見えている世界を共有する程度なのにそこまで言わなくて良くない?

そんな俺の気持ちがわかったのだろうか?

金田一さんは大きくため息を吐きながら説明してくれた。

 

「お前の見てる世界。ソレを共有するだけで役の幅が広がるんだよ。今まで出来なかったことが嘘のように出来てしまうんだよアレは」

 

「……いい事では?」

 

「んなわけあるか!お前の毒を飲むだけでその役ができるようになるなんてのはな。役者にとって考えることをやめるって事だ。何度も使い続けるといつか自分で役を理解することができなくなる。アレはそういう毒なんだよ」

 

「そうかなぁ?……そうかも?」

 

言いたいことはわかるのだが、そこまでになるのだろうか?けどそんなことを聞いてしまうとアクアに使うのをちょっとだけ躊躇ってしまうのだが……。

 

「使い方さえ間違えなければ問題ねぇよ。だから星野には使え」

 

「……はい」

 

稽古は進んでいく。

そして問題のシーン。

アクアは、刀鬼は奇跡的に目覚めた鞘姫を抱いて喜ぶのだが……弱いなぁ。実際金田一さんからももっと感情を引き出せと檄を飛ばされている。

そして最後まで通して休憩となった頃。あかねさんが俺のところへとやってきた。

 

「あの、彼方さん」

 

「んー」

 

「アクア君のことなんですが」

 

「うん。わかってるよ」

 

ただなぁ。

毒とまで言われればちょっと躊躇う。

さて、どうしたものか。

なんて思いながらアクアの方を見ると有馬さんと何か話しているようだ。俺も話があるし、少し気になったから近づいてみると。

 

「アクアくん。もし、お母さんが死んじゃったらどうする?」

 

あぁ、なるほど。

子役の子達なんかによく使われるやつだが、たしかにそれは大きすぎる感情の爆発につながるだろう。問題は俺が見せてしまうその光景をアクアが飲み込めるかどうか。でもそれを飲み込めて、乗り越えられた時は……。

 

「あぁ、まずいなぁ」

 

もしかしたら、とんでもなく成長するのではないだろうか?なんて思ってしまいクリエイターとしての血が騒ぎだす。

兄としてやってはいけないと思う理性がなくなっていくのを感じる。上がってしまいそうになる口角を自覚して、俺はそっと口元に手をやった。




久々に感想を読みなおしてたらものすごい元気もらったし笑ったわ。
指知識に翻弄されまくってたなぁ。なんて思いました。
まぁそれは置いといて。
アクアどうしようか。
彼方の兄としての気持ちはやりすぎは良くない!ってなってる。
けどオパールとしては今の自分を壊せよおい!可能性を見せろよ!ってなってる。
どうするべきか。まぁ、潰れかけてもアイもいるし大丈夫か。大丈夫だな!
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