どうやら、俺の隣人はアイドルだったらしい。   作:クウト

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日曜日は楽しかったです。いいリフレッシュになりました。
現地で声を出しすぎて喉が痛い以外はね!!
あ、あと日焼けがやべぇ。肌弱いから……。10月中旬なのに腕の皮むけてきたんだけど……。


有馬かなを引きずり出す

舞台の上であかねさんの輝きが増していく。

まるで主役は私だと主張するかのようだ。

事実、多くの観客はあかねさんが演じる鞘姫に夢中だろう。隣に座っているアイさんのような輝きを瞳に纏い、誰もが夢中になるような演技を魅せる。

 

「……綺麗……」

 

ルビーの小さな声が聞こえた。

同意だ。綺麗だと思う。

見る箇所は多くある。

全面戦争の舞台で多くの役者達が戦っている。

好きなキャラがいるとか、好きな役者がいるとか関係ない。今、間違いなく鞘姫が主役だった。

生き生きと舞、戦う姿は多くの人を魅了するのだ。

 

「さぁ、ここからだぞ」

 

ほら、頑張れあかねさん。

もっともっと、見せつけてあげればいい。

あの日言っただろう?俺にやると言っただろう?

俺にもう一度見せてほしいんだ。

有馬かなというスターを。

舞台上で上がっていく熱量。

客席で高まっていく期待。

俺はそんな会場の中で、舞台の上で、かつて見た小さな有馬さんを……輝きを失っていく有馬さんを見た気がした。

ほら、あかねさん。

そんな暗いところから引っ張り出してあげてよ。

俺は、あの日の会話を思い出しながらそう思った。

 

 

 

「彼方さん」

 

「ん?」

 

稽古場から離れようとした時、あかねさんに呼び止められる。ちょっとだけ休憩に行くつもりだったのだが……。

 

「あの、その」

 

「……とりあえず、飲み物でも買いに行かない?」

 

何か用があるのはわかった。

それがこの場ではなかなか言い出せないのもわかった。この子は周りをよくみているし、聞かれたくない人物でもこの場にいるのだろう。例えば、有馬かなさんとかかな?

休憩も少し気分転換がしたかっただけ。今はまだ集まりも少ない時間だし、少しぐらいなら稽古場から抜けるのも問題ないだろう。

 

「みんなの分も買いに行くから付き合ってくれるかな?」

 

「は、はい!」

 

金田一さんにメールだけを入れてこの場から離れる。近くのコンビニで人数分の飲み物でも買って差し入れるとしよう。

荷物を取って外に出る。

 

「……今日は夕方から人が集まってくるんだっけ?」

 

「はい。姫川さん達もそのぐらいに仕事に区切りがつくらしいので」

 

「なら姫川くん達のも買って来ないとなぁ。あかねさんがいてくれて助かったよ」

 

「いえ。私で手伝えることならなんでも言ってください。先生を助けれるならすぐに駆けつけますので」

 

「嬉しいこと言ってくれるなぁ」

 

他愛もない話。

コンビニに着いて適当に飲み物を買って稽古場へと戻る。その途中にやっとあかねさんは本題を話そうとしてくれた。

 

「彼方さん」

 

「ん?」

 

「私、今回の舞台でやりたい事があるんです」

 

「やりたい事?」

 

なんだろうか?

 

「本気の、有馬かなと演技がしたい。ぶつかり合いたいんです」

 

「……へぇ」

 

素直に面白いと思った。

有馬かなといえば元天才子役で有名。

今はルビー達と一緒にアイドル活動をしている子でもある。……俺も一度だけではあるが、あの子の演技に目を惹かれた過去がある。だからこそ俺の書いた物語に出てもらった事もあるのだ。

 

「本気の有馬かなねぇ」

 

「はい……ダメ、ですか?」

 

「ダメってなんで?」

 

「えっと……一応私も役者なので、今のかなちゃんの必要性は理解しているつもり……ですし、その」

 

必要性か。

小さな頃から役者をしていた有馬かな。

俺は彼女の演技には安定感があると思っている。必要なときに必要なことをしてくれる。何かしらの問題があったとしても、その豊富な経験のおかげで乗り切れるだろうという安心感。

そんな彼女だからこそ、私の行動で演技で作品が少しでも良くなるのなら……と、自分の気持ちをすりつぶしてまで作品のために行動ができる……できてしまう。

だからこそ有馬かなの必要性は大きい。

 

「まぁねぇ。こっち側からしたら有馬さんの存在ってありがたいと思うよ」

 

「ですよね……」

 

「全ての実力が高いし、どんなことを要求しても一定の合格ライン以上で応えてくれると思う。本番中に起こる事態にも対処してくれるだろうし、言い方は悪くなるけどさ。正直言うと今の彼女はものすごく扱いやすい存在だ」

 

「……」

 

「けどまぁ」

 

黙ってしまったあかねさんが俺の方を見る。

 

「昔の演技の方が俺は好きだったなぁ」

 

「……」

 

「十秒で泣ける天才子役だったかな?俺としてはそんなのよりもさ。私を見ろと言っているような演技……例えるなら太陽のように輝く姿。あれが好きだったなぁ」

 

「…………」

 

「……あかねさん?」

 

「…………で」

 

「で?」

 

「ですよね!!!!」

 

「うわぁ!?」

 

びっくりしたぁ!!

急に大きな声をあげないでほしい。

そこからは暴走したように出てくる有馬かなへの不満を吐き出すあかねさん。

あー、これってまともに聞いてたら終わらないやつだ。

そう思った俺は頭の中で次の話を作りつつあかねさんが冷静になるのを待つ。時間にして十分ぐらいだろうか?やっと我に返ったあかねさん。

 

「ご、ごめんなさい!私自分の話ばっかりで!」

 

「いいよいいよ」

 

まぁなんだ。

とりあえず今の有馬さんに対して不満がいっぱいなんだなぁ。でもそれ以上に有馬さんのこと好きすぎんか?厄介なオタクである面を知ってしまった気分……いや、この子俺に対しても結構厄介な部分あるな。適当に破って作った紙切れ栞に書いたサインをラミネートしてまで持ち続けるとか

 

「とりあえず話を戻すけど、有馬さんと本気のぶつかり合いをしたいわけね」

 

「はい……それが難しいことはわかっているんですけど……」

 

「いいんじゃない?」

 

「へ?」

 

きょとんとした顔。

しっかりした子がそんな顔をしたらちょっと面白いよなぁ。って、ゆっくりしすぎてそろそろ戻らないといけない時間になっているし話を進めてしまおう。

 

「有馬さんが演じるつるぎは天真爛漫な戦闘狂だ。そんなキャラを演じる人が自制心あり過ぎる演技をしても面白くないと俺は思う。もっと振り切っていいでしょ」

 

「……」

 

あかねさんは黙って聞いてくれる。

 

「ただそれを指示する側の俺たちが言っても意味はない。あの子の考えは大人だ。自分の意見を持っているし、自身のやることをしっかりわかっている。万が一、必要以上に昂ぶろうとした瞬間には理性でブレーキをかけるだろうね。すぐに自分をコントロールして舞台装置に徹すると思うよ」

 

だから。

 

「本気の有馬かなと演技をしたいのなら、その鋼のような理性と凝り固まった考えを演技中に……後戻りができない本番の舞台の上で潰してあげないとね」

 

「潰す……」

 

「うん。……と簡単に言ってもさ。相手はかつて一世を風靡したスター……そいつの理性を潰すんだからね。引き摺り出したはいいものの、周りがそれに着いていけなければ舞台は台無しだ」

 

俺が使いたいと思った有馬かな。

あの頃の有馬かなはすごかった。本気でこの子じゃないといけないと思えた。主演がアイさんだったからこそ我儘を言って使ったぐらいだ。

そう、あの輝きを存分に使うのなら……同じ位置で演技ができる人間がいなければ台無しになる。一方的に他の人たちが喰われて終わる。

 

「俺の作品じゃないからさ。あんまりこういうことは言ったらダメなんだけど」

 

それでもあれがもう一度見れるのなら。

 

「条件は一つ。台無しになると少しでも思えば元の軌道に戻すこと」

 

そして役者達がさらに大きく成長するのなら。

 

「それができるのなら、有馬かなの目を覚まさせてあげてもいいんじゃない?」

 

「……やります。やってみせます!」

 

「そっか。なら、有馬かなを潰す気で頑張りな」

 

「つぶっ!?」

 

「それができないならこの話は無しね。ほら、そろそろ戻りますよー」

 

「え!?あ、ちょっ!彼方さん!?」

 

期待してるよあかねさん。

あの天才と言われた子の目が覚めるのなら俺にとってはプラスなのだ。使える役者が増えるのはありがたい事だし、いい方向に行けばルビー達のアイドル活動にもいい影響が出るかもしれない。

アビ子さんの作品で好き勝手しちゃって申し訳ないけど、特に報酬もないんだからこれぐらいは許してくれよな。

 

 

 

かなちゃんの輝きがなくなっていく。

……本当に、本当にそれでいいの?

見えないよ。わからないよ……かなちゃん。

どうしてそんなに私にスポットライトを当てようとするの?そんなことしないでよ。そんな演技はしなくていいんだよ。貴方の手を借りなくても私は自分で輝ける……だからそんなのいらないのに。

もう、場面が変わる。

舞台裏に移動して思う。

あんな演技をさせたいわけじゃなかった。

もっと、もっと……。

 

「腹立つよな」

 

「アクアくん?」

 

話しかけてきたのはアクアくん。

私がしようとしていた事をわかっているらしい。

だから、疑問をぶつけてしまう。

 

「ねぇ、アクアくん……私が間違ってた?我儘だった?私はただ……本気のかなちゃんと」

 

「わかってる。あかねは間違ってない」

 

顔を上げる。

アクアくんの視線の先を見ると、私たちと同じように休憩しているかなちゃんがいた。

アクアくんはかなちゃんを見ながら話を続ける。

 

「あいつは何一つ分かってない。私を見ろって顔してる時が一番輝いていることも、たぶん兄さんから一番期待されてる事も。小器用に自分がいるから作品が成り立ってるみたいな顔しやがって」

 

「……なんか、アクアくんに名前呼ばれたの今ガチ以来かも」

 

「はぁ?」

 

「にしてもアクアくん。かなちゃんの事よく見てるよね。応援しようか?」

 

「なっ!」

 

「あと彼方さんに一番期待されてるって何?そこが一番聞きたいんだけど」

 

「おいやめろ怖い顔で笑うな。夢に出る」

 

酷いこと言うなぁ。

でも聞きたいのは事実だし笑顔のままアクアくんを見つめる。すると何故か焦り出した雰囲気のアクアくんが話を始める。

 

「と、とにかく。有馬のやつを本気にさせたいんだろ?手伝うからその顔やめろ」

 

「……まぁ、そうだね。本気の有馬かなを引きずり出せたのは私のおかげだって彼方さんに見てほしいし。褒めてもらいたいし」

 

「お前……」

 

「そんな引いた顔しないでよ。実際、年齢差とか分かってるし……私は仕事面で彼方さんをサポートして右腕的な存在になれたら今は十分だしね。だからこそ、ここでちゃんと証明したいし」

 

「……はぁ。まぁ、なんでもいいけどな」

 

「アイさんの邪魔はしないよ」

 

「……おまえ、どこまで知って……いや、その辺りはまた詳しく聞くからな」

 

詳しくって言われてもなぁ。

アイさんとよくメールするし、B小町やルビーちゃんの話を聞いたりとか、他にも彼方さんがB小町に注目してたりルビーちゃんを稽古場に招待したりとかしたり色々とピースがあったから繋がっただけというか。まぁ、今はどうでもいいよね。

 

「彼方さんがいなかったらアクアくんに惚れてたかもなぁ」

 

「どうだかな」

 

「……アクアくん。私に協力してね」

 

「あぁ、兄さんのためにもなるしな」

 

「ふふ、素直じゃないなぁ。お礼に私も今度手伝うね」

 

「はぁ?手伝うって何を?」

 

「さぁ?なんだろうね?」

 

アクアくんってかなちゃんのこと好きだよね。

なんて言ってしまえば舞台に支障が出るから言えないんだよね。とにかく私達でやろう。

 

「アクアくん。私たちで太陽を引き摺り出すよ」

 

「なんかそんな神話あったよな」

 

「神話と違って私たちが無理やり岩を叩き壊すんだけどね」

 

「女って怖い」

 

失礼な。

私はただ必死なだけだよ。




かなちゃん逃げてぇ!
でもこいつらずっと追いかけてくるだろうから諦めてぇ!!

にしても全然進まん。
次の話ぐらいで終わらす気だったのにね。
このペースじゃあと二、三話かかりそう。
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