いや、ほんと、申し訳ない。
数々の浮気をして……言い訳やね。ごめんなさい。
ハイボール飲んでなんとなく気が向いたから書きました。
だから自分でまともに読み返してないし、違和感だらけかもしれん。ごめん。
舞台は進む。
突発的に入れられたアドリブとか小さなトラブルはあれど、問題なく進んでいる。
次は、俺の番。
かつての、兄さんが求めていた輝きを取り戻した有馬と、苛烈で目を惹かれる演技をし続ける姫川さん。それになんの問題もなくついていくあかね。
……まったく、才能ある人間っていうのはどうしてこうも眩しいのだろうか?
本当に、本当に羨ましい。
俺も、俺も少しはあの場所に……。
『なんで、お前も楽しもうとしてるんだよ』
頭の中でノイズが走る。
真っ暗な世界で俺の中の、雨宮五郎はそう呟く。
この世界にいる理由は?
この舞台に立った理由は?
お前がこの道を選んだ理由は?
全部全部。何のためだった?
『あの日の事を忘れるな』
忘れてない。
『ただの偶然。奇跡のおかげ』
そうだ。
たまたま兄さんがいてくれた。
それだけでアイの命は救われた奇跡。
『犯人が捕まった?だからどうした?』
もう、もういいんじゃないか?
俺だって、もう少し普通の……。
『ふざけるな。何度も見させてもらっただろ?絢瀬彼方がいない。そのもしもの世界線で起こる全てを』
……あぁ。
『その世界でのお前自身の運命を』
あぁ。
『最悪を想定しろ。今度は全部を見逃さないように。お前自身が大事にするものを取りこぼさないように』
……。
『演技を楽しむな。実力をつけろ』
……そうだな。
そうだったよ。
『改めて自分の目的を思い出せ。お前にとってこの世界にいる理由を』
……もうあんな事が起こらないようにする為。
アイを、ルビーを、大切な人達を、もうあんな危険な目に合わせないために……。
『そうだ。もう大事な人が傷付かずすむように、最悪な未来が訪れないように。全部を自分の手で守るために』
そうだな。そうだよな。
楽しんでいる暇なんてないんだ。
死に物狂いでやらないといけないんだ。
そう決意を固めた俺の目の前に、何度も兄さんに見せられた世界の俺が現れる。
『俺にとっての演技は?』
不思議だと思った。
舞台は進んでいるはずなのに、俺の目の前に現れる幻想。絢瀬彼方が作り出した世界での俺。
……血だらけの玄関。リビングへと続く扉に倒れるアイ。そのアイの前でアイの血を浴びた俺が睨むように立っている。
俺にとっての演技は……。
『そうだ。もう一度、ちゃんと頭に叩き込め』
俺には、憧れの人たちのような輝かしい才能なんてないけれど。利用できる全てを利用して、俺はこの闇だらけの世界で生き残る。
アイがもう害されなくて済むように。
ルビーが楽しんでアイドルを続けられるように。
兄さんがいつまでも多くの物語を綴れるように。
『俺が、ずっとそばで見続けるから』
だから、これが俺の全力なんだ。
「刀を抜け」
…………。
「女を斬られて、黙って引き下がるのか?」
舞台は続く。
自然と、俺の口からセリフが出てくる。
ちゃんと演技をできているだろうか?
俺は練習通りに動けているだろうか?
星野アクアマリンとしての人生がフラッシュバックする。
あの日のことを思い出すと体が固まる。
精神は大人だと言うのに、あの光景。
玄関先で行われた悲劇は俺の体を固まらせ、恐怖に包むには十分過ぎた。一瞬のことではあったけど、殺されるかもしれないアイの姿や、事件に巻き込まれる兄さんの姿。
あの場所で、肉体的には子供だとしても、おそらく一番大人だったのは俺だった。考えれることはたくさんあったろう?それなのに、それなのに普通に、幸せな日々を謳歌し続けたのは誰だ?
俺だ。
全部全部。
もっと気をつけるべきだった。
大人としても、医者としても、アイの姿を見て大人としてカバーしていくべきだった。それほどまでに当時はズレていた彼女をフォローするべきだった。
『あぁ、俺は甘えた。全て、全て俺の責任だ』
だというのに、俺はこの場所にいる。
今世で見つけた夢。
俺はそれを追ってしまっている。
ごめんなさい。
おれは、俺は……この場に立つべきなのか?
ふさわしいのか?
……頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。
この舞台の練習に付き合ってもらった五反田監督に言われたことを思い出す。
『お前は、のめり込もうとする自分に気がついたらブレーキをかけるよな』
『は?』
『演じていて楽しいとか、面白いとか、喜怒哀楽の全てが一定のレベルに達するとブレーキをかける.まるで自分はその場にいてはいけないというかのようだ。って、感じるんだがなぁ』
『……』
あぁ、それは言われて初めて気がついた。
おそらく……罪悪感だ。
俺なんかが楽しんではいけない。
もっともっと、俺は気をつけるべきだ。
俺にできることはたくさんあった。
俺のせいでアイは殺されかけた。
俺のせいでルビーは母親を失いかけた。
俺のせいで絢瀬彼方は指を失った。
『全部、お前が甘えた結果だ』
そうだ。
『出来ることをしなかった結果だ』
そうだ。
『なら、お前はどうする?これから先、気付かないうちに忍び寄る危険をどうするんだ?』
俺が出来る事。
馬鹿な望み。
今世で持ってしまった夢。
アイとの……。
ルビーとの……。
兄さんとの……。
有馬かなとの、黒川あかねとの、五反田監督との、全部全部全部……!!
『そうだ。お前は、楽しむためにその世界にいるな。全部を見逃さないように、自分自身を削り、少しずつ壊れながらも、もがいて苦しんで』
そうだ。
俺はこの世界にいたいなら。
少しでも大切な人たちに忍び寄る手を排除したいのなら。
『『演技なんて、楽しまない』』
そうだ。
『『俺にとって、演じる事は』』
自責なのだから。
「アクア?」
「……あぁ……そっか。そうなるのか……いや、そうだよなぁ……」
「彼方くん?」
アクアの演技を見て、伝わってきた感情。
母親であるアイさんも違和感を持ってしまうほどの激情。
必死で、鬼のような形相で演技をするアクアを見て心が痛む。
……気にするな。俺は、君達を助けて後悔なんてないんだ。それ以上に大きなものをもらっているのだ。
そんな絢瀬彼方としての想い。
……ははっ。いいなぁ。それほどの激情は、普通の人では引き出せない。人生において強烈すぎる経験をした人ができる事。アクア、すごいよ。本当に、君がこの場にいてくれて良かった。
……オパールとしての想い。
俺は、どうするべきだった?
アクアに見せた物語。
架空のあの日の出来事。
『正解だったか?』
ふとよぎるそんな想い。
二人の俺が正解だとも間違いだとも言ってきて、頭が痛い。
だけど、この場の多くの人たちは惹かれている。
『ほら、あれだけの感情。あの演技。俺が見える世界を、様々なIFを、アクアに仕込んで正解だったろう?』
……そうだな……その通りだ。
でも……なぁ、オパール。
お前は、少しだけ黙ってくれないか?
俺は、少しだけ、本当に少しだが、人生において初めて、といえば言い過ぎかもしれないが、それでも俺は自分の才能が嫌になったのだ。
「ごめんな」
あかねさんを、鞘姫を抱きしめて泣いているアクア……いや、刀鬼。俺は初めて、自分が関わった作品から目を背けたくなった。そんな俺の感情は無視されたまま、舞台は終わりへと近づいていく。
「最高の演技だと思うよ」
……あぁ、つい……そう溢してしまった。
俺はどう足掻いても、こうしてしまうのだと、本当に嫌になった瞬間だった。
「はぁ……」
舞台が終わり一安心。
思うことは色々とあるが、それでも大成功で終わってくれたのは確かだ。それはきてくれた観客のみんなの顔が証明してくれている。
本当なら手放しで喜んで楽屋に駆け込んでバンザイと行きたいところではあるのだが……。
「まぁ、人の舞台にあんまり干渉するべきじゃなかったって事にしようかな」
自分の色を出し過ぎたのではないか?
この舞台中に、まるで進化をするかのように成長する子達はいた。喜ばしい事ではあるが、俺はそれを手放しに喜んでいいのか?
絢瀬彼方としての気持ち。
オパールとしての気持ち。
「ここまで別れることって、あんまりなかったんだけどなぁ」
アクア。
本当に良かったのか?
俺は、何か取り返しのつかないことをしてないか?今までの幸せな日常にヒビを入れてないか?
「はぁ……一度リセットしないとか」
深呼吸を一つ。
これから一応大事な仕事があるのだ。
気持ちを入れ変えて向かうのは金田一さんがいるであろう場所。喫煙所だ。
思った通りに目的の人物はそこにいた。
「ん?今回の影の立役者じゃないか。どうした?」
「タバコを邪魔しちゃってすみません。今回の舞台でお礼をと……今いいですか?」
「もちろんだ」
俺の仕事は終わりだ。
あとは、舞台がどんどん進化していくだろう。
時間があれば見に行きたいが、あいにく俺も忙しい身。これ以上自分の仕事をおろそかにしていると編集部から色々と小言を言われかねない。
だから挨拶をしにきたのだ。
「金田一さん。今回の舞台ではお世話になりました」
「いや、それはこちらが言うことだ。本来なら部外者だってのに、世話になりすぎた」
「そうですか?……まぁ、一作家としてはあかねさんや、アクアみたいなのが育ってくれて嬉しい限りです」
「……ほんと、お前の能力には助けられた。今回の舞台で俺が怖かったのは、演技が飛び抜けつつある黒川あかねだからな」
舞台の公演が終わり安心したのか、金田一さんがポロポロと不安要素を話してくれる。
あかねさんの才能。
なんとか姫川さんで抑えようとしていた様だが、それだと演技全てに違和感が出る。早急にする事は役者全体のレベルアップだった。
本来なら取りたくない方法だったが、部外者である俺を演出側に入れる事で無理矢理底上げしたらしい。
「忙しいのにすまなかったな」
「いえいえ。俺も楽しんで終えれましたから……これから千秋楽まで駆け抜けてください」
「あぁ……暴走しかけたらまた呼んでいいか?」
「勘弁してください。これ以上手を出したら俺が怒られる……」
「そりゃそうか」
さて、俺はそろそろ退散しないと。
あんまりアイさんを待たせると……いや、あの人はたぶんアクアにでも連絡してテンションマックス状態だろうから、放っておいてもいいのか?
でもまぁ、疲れているアクアを助けるためにも早めに戻ろうか。
そう思い、俺は金田一さんに一言だけ別れを告げてこの場所をさる。
「ん?」
「あぁ、すみません」
少し離れた場所で人とぶつかりそうになった。
普段なら、なんて事ない。
ただ出会い頭にぶつかりそうになっただけ。
でも稀に、本当に稀にだけど、こういう時にオパールとしての思考が暴走しかける。日常生活においての不意に訪れる何か。感触だったり、香りだったり、風景や様々な要因は俺の中に取り込まれて物語の一部となる。
だから、だから俺は一度だけ振り向いた。
「アイさんの……香り?」
シャンプーでもない。
香水でもない。
でも一番近い香りはそれだ。
真っ黒な姿で、少し大きい帽子からチラリと見える金髪が星の様。まるで、星の元に生まれたあの兄妹を思い出させるそれ。
「あ……くっ……!」
息が詰まりそうになる。
たらりと鼻に違和感。
思わず抑えると血がついている。
いけない。まずい。下手したら倒れるやつだ。
なんとかオパールを抑えようとする。
なんて表現したらいいかわからない。
恐怖?不安?心配?緊張、怯え。
苛立ち、怒り、憎しみ、嫌悪や拒否感。
一気に濁流の様に押し寄せるマイナスのイメージ。
強すぎるストレスで目の前がチカチカとしてきてドンっと体に衝撃が走る。……倒れた?いや、壁にもたれかかったのか?
「はぁ……はぁ……」
息がうまく吸えない。
そんな時だった。
何か孤独な場所で押しつぶされそうな俺に届くのはスマホがなる音。助けてほしい一心でなんとか手に取り電話に出る。
「もし、もし」
『彼方くん?何かあったの?どこ?』
不思議だった。
この人の声を聞くだけで、暴走したオパールがスッと落ち着いていく。
「アイさん。ありがとうございます」
『それはいいから、どこ?』
「今からアクアの楽屋に向かいますので……では」
『ではじゃなくて!ど』
ピッとスマホをタップして電話を切る。
この場所にいたくない。
離れたい。
でも何よりもまず、アイさんをこの場所に居させたくない。俺は自分ができる最大の速度でアクアの楽屋を目指すのだった。
そうして、フラフラとする体を引き摺りつつ向かった先で、アイさんにとんでもない顔で詰められる。
「は、鼻血!?ど、どうしたの!?殴られた!?」
「へ?」
鼻血出てたこと忘れてた。
休止中感想くれた人達。
待っていてくれた人達。
本当にありがとうございます。
間隔を開けすぎてなんて返せばいいか分からなかったのでここで謝らせてください。
本当にごめんなさい!!!!
そして感想ありがとうございます!!!!