どうやら、俺の隣人はアイドルだったらしい。   作:クウト

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ランキング二位ありがとうございます!!
なんとなく書き始めたものが沢山の人に楽しんでもらえてると思うと嬉しいです。


入学

季節は流れ、春。

星野家とは色々とあったし、その時に斉藤社長や奥さんのミヤコさんとお知り合いになったりもした。ただ星野さんがウチに来るというのを聞くたびに頭を抱えているのだが……かわいそうに。

 

「この部屋も結構変わったなぁ」

 

俺のものだけの必要最低限なものしかない殺風景だった部屋。それが今となっては所々にアクアくんやルビーちゃんの物があったりする。流石に星野さんのものはないけど。

 

「もう小学生かぁ。早いなぁ」

 

あの子たちも今日から小学生。

本当に時間が流れるのはあっという間だった。

まぁ、ここ最近は忙しかったってのもある。新作とか、書いた本が映画やドラマになったりとか。あちこちで打ち合わせとかバタバタした記憶しかない。

 

「おかげで高校辞めちゃったしなぁ」

 

留年確実となってしまったのだ。

父親からは呆れた目を向けられたが無視。もう連絡すらも来ないだろう。別に気にもしないけど。

それはそうと、俺は今少しソワソワとしながらリビングにいる。本当ならまだ寝ている時間なのだが……。

 

「お?来た来た」

 

インターホンが鳴り響く。

待ってましたと言わんばかりに玄関へと向かい扉を開ける。

 

「おはようカナお兄ちゃん」

 

「おはよう兄さん」

 

「うん。おはようアクア、ルビー。そして入学おめでとう」

 

ピッカピカの一年生。

二人にあったランドセル姿は眩しいぐらいで、本当にめでたい日だなぁと思う。

そんな俺の言葉にアクアは少し恥ずかしそうに、ルビーは満面の笑みでありがとうと返してくれる。

この子達がもう小学生なんだよなぁ。

 

「おはよう彼方くん」

 

「おはようございます星野さん。そしておめでとうございます」

 

「むぅ……」

 

「な、なんですか?」

 

気に触ることを言っただろうか?

星野さんは少し不満そうな顔をしている。だがそれも一瞬であり、すぐさま笑顔になり俺に返事をした。

 

「ありがとう。これも全部彼方くんのおかげだね」

 

「まだ言うかこの人は」

 

「大事な時を迎える度に思い出すだろうなぁ。その度にお礼を言うね」

 

「二人ともなんとかしてよ」

 

「別にいいんじゃない?」

 

「兄さんが責任とって処理して」

 

「ぐぬぬ」

 

っと、あんまりゆっくりとしている暇はないのだった。俺は玄関に用意していた物を取って二人に渡す。

 

「はいこれ。入学祝いね」

 

アクアには俺が書いた新作を。

ルビーには新しいリボンを。

アクアはともかくルビーの品は悩んだ。最終的に星野さんに聞いてみて選んだ。喜んでくれるだろうか?

なんて不安に思っていたのだが……。

 

「アクア?今読まないで?時間ないよ?後ルビー?君も髪型のセット今から変えたら時間かかるからね?あの、ちょっ!……没収!!」

 

「「あぁ!!!」」

 

「あらら。まぁ今日は本当に時間はないからね。帰ってからまた貰いにこよう」

 

こんな俺たちの姿を笑いながら見ていた星野さんが締めてくれる。はぁ全く。まぁ、喜んでくれて良かったけどね。

 

「じゃあ二人とも行ってらっしゃい」

 

「「え?」」

 

「え?」

 

何言ってんだこいつ?みたいな表情で見ないでよ。

俺が一緒に行けるわけないでしょうが。そんな双子に乗っかる様にニヤニヤとしながら星野さんも悪ふざけをしようとしてくる。

 

「彼方くんは行かないの?」

 

「なぜ行くと思ってるんだあなた達は……ほらほら、さっさと出発しますよー」

 

ナチュラルに家族に入れようとするな。

というか下で社長さん達が待ってるんじゃないの?ほらほら行った行った。

アクアとルビーのランドセルを押しながらエレベーターへと向かう。すぐにエレベーターはやって来て下に降りる三人を見送る。

 

「行ってらっしゃい」

 

「「「行って来まーす」」」

 

扉が閉まるのを見届けて軽く伸び。

さてと……。

 

「寝るか」

 

小学生が登校する時に睡眠をかます気満々の俺。

今修羅場で寝れたの二時間だけだから……許して。

 

 

 

彼方くんにエレベーターに乗せられた後、アクアとルビーが話しているのを眺める。

 

「カナお兄ちゃんあんまり寝てなさそうだったね」

 

「最近は特に忙しそうだったからな」

 

「また無理矢理にでも寝させる?お昼寝しよって言ったらなんだかんだで聞いてくれると思うけど」

 

「時と場合によるだろ?本当に修羅場なら寝てる暇もないだろうし」

 

「うーん。前みたいに身体壊さないといいけど」

 

視線の先で話す愛しい子供達を見ていると、一瞬本当に泣きそうになった。でもメイクが崩れるし、心配もかけてしまうからグッと我慢をする。

彼方くんがいなければこの光景も見る事はできなかっただろう。これから先、まだまだ大きくなっていくこの子達の側に居れる事が心の底から嬉しい。

 

「ママ?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「……んー。なんでもない」

 

「そう?」

 

少し考える様な表情をしたルビー。

どうかしたのだろうか?

エレベーターから出てもコソコソと話をする二人を見つめる。……うーん。最近は二人で内緒のお話をする事が多いんだよなぁ。なんでだろ?彼方くんなら知っているかなぁ。

 

「どう思う?」

 

「まぁそういうことだろ」

 

「自覚とかあるのかな?」

 

「さぁ?その辺は本人にしか分からないからな。それより前見て歩けよ」

 

「もー、お兄ちゃん!」

 

なんなのだろうか?

たぶん私のことについて話してる気がするのだけど……うーん?なんかやっちゃったかなぁ?

頭を悩ませる。

 

「おーい。早くしろよ」

 

おっと。

考えすぎで歩くのが遅くなってしまっていた様だ。

……最近の彼方くんの忙しさは少し異常だ。しっかりと見ていてあげないとまた倒れてしまうかもしれない。

 

「はーい」

 

隣人で居続ける間は、私達がついていてあげるからね。

 

 

 

ぐっすりと寝た。

そしてリビングへと向かうとなぜかいる星野家達と社長夫妻。なんで?

そんな俺に気がついたのか、斉藤社長が俺の方へとやって来て申し訳なさそうに話出した。

 

「あー……その、すまない絢瀬くん。アイツらが行くっていって大騒ぎでな……」

 

「あ、いえ。……あの、お疲れ様です」

 

「すまない。ありがとう」

 

いえ、慣れてますので。

アクアとルビーを見る。

アクアは新作を読んでくれているし、ルビーは新しいリボンを星野さんとミヤコさんに見せびらかしていた。微笑ましいなぁ。

 

「あ!彼方くん起きたの?」

 

「はい。おはようございます」

 

「彼方くん。ちょっとこっち」

 

俺が起きたことに気がついた星野さん。

星野さんはルビーのことをミヤコさんに頼み、キッチンの方へと俺を誘う。なんだ?

申し訳なさそうな顔で軽く会釈するミヤコさんに気にしないでいいですと手を振りキッチンへと向かう。

 

「なんですか?」

 

「いや、そのね」

 

話を聞いてみると子供たちが自分のことで何かコソコソと話しているらしい。んー?アレの事だろうか?もしくは星野さんがマジで何かやらかしてて、それを子供達だけが気づいているパターンか?

まぁなんにせよいいタイミングなのかもしれない。

 

「ちょっとリビングの方へ行っててください」

 

「え?う、うん」

 

少し不安そうな顔の星野さんはとりあえず置いといて、俺はアクアとルビーに声をかけた。

 

「アクア、ルビー」

 

「はーい!お兄ちゃん行くよ」

 

「今いいところだったけど仕方ないか」

 

そんな俺たちを見て社長夫妻は首を傾げ、星野さんも訳がわからないという顔。そんな人たちは放っておいて三人で俺の部屋へと向かう。

 

「じゃあこれね」

 

俺はアクアとルビーに頼まれていた物を渡す。

 

「ありがとうカナお兄ちゃん」

 

「ありがとう兄さん」

 

「いいよ。バイト頑張ってくれたからね」

 

バイトといっても軽い家事の手伝いだ。

一緒に皿を洗ったり、掃除機をかけてもらったり楽しくみんなで俺の部屋の事をしてもらったのだ。今回アクアとルビーに頼まれたコレはそのお礼である。

 

「ママ!」

 

「母さん」

 

「え!?なになに!?」

 

ルビーが俺の部屋から飛び出して、それをアクアが追いかける。その二人から遅れて俺も部屋から出て追いかけると、ルビーからの圧にタジタジな星野さんがいた。

 

「おいルビー。渡すんじゃないのか?」

 

「っは!!甘えてしまった」

 

コレ!どうぞ!

と二人で綺麗にラッピングされたプレゼントを星野さんに渡す。その様子を見て何が起こっているのか理解した斉藤夫妻は顔を見合わせて笑っている。

俺も三人の幸せな家族の姿を見て笑顔になれる。

 

「え?これ、ママに?」

 

「うん!カナお兄ちゃんのお手伝い頑張ったから買ってもらったんだ!」

 

「無償でもらった訳じゃないから」

 

「え?えぇ!?か、かな、彼方くん!?」

 

「何も言わずにもらってあげてください」

 

「う、うん。……あ、開けてもいいかな?」

 

「「もちろん!」」

 

少し震える手でラッピングを開けていく。

破れない様にゆっくりと綺麗に。少しだけ手が震えているけど……。

 

「ハンカチだ」

 

「お仕事でも使えるかなって」

 

「あんまり高い物だとダメだから」

 

「気にしないでいいのに」

 

「「ダメなの!」」

 

「お、おう」

 

二人の圧がすごい。

先程まで星野さんに構って欲しそうだったのにお前はとりあえず高いものってのに行こうとするなと詰められる。流石にルビーとアクアマリン入った何かはダメだったらしい。

……わかった。わかったからもう勘弁して!!

 

「絢瀬くん」

 

俺が二人に詰められていると、斉藤夫妻がやって来た。ほらほら、俺はこの二人と話すからお前たちは星野さんのとこ行ってあげろ。今一人で震えながら泣きそうだし。

 

「ありがとう。二人のお願いを聞いてくれて」

 

「いいんですよミヤコさん。実際、部屋の掃除してもらえるのは助かりました。結構忙しくて時間が取れなかったですし」

 

「それでもよ。あの子達のそばにいてくれてありがとう」

 

「もう……やめてください。恥ずかしいです」

 

なぜか顔が熱い。

この人聖人だよなぁと思える程度には良い人だし、そんな人から直球で感謝されたら少しぐらいは照れてしまう。

 

「ミヤコはやらんぞ」

 

「何言ってんだこいつ」

 

社長は黙ってなさい。

それよりほら、アレ見てくださいって。

 

「……よかったね。星野さん」

 

アクアとルビーを抱きしめ泣いている星野さん。

これから先も数々の困難もあるかもしれない。けれどこんな幸せな時があるのなら、この家族なら乗り越えていけるのだと信じたいものだ。




あの、指はつなぐの無理だったって事にしておいて。
いやマジでごめんて。そこまで考えてなかったんだって。
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