コロナで少ししんどいけど休みを満喫中でございます。
さらに季節は流れた。
双子はもうすっかりと大きくなり、六年生となっている。もう少しで中学生になるのだと思うと感慨深いものがあるな。本当に……。
「この数年間は楽しいなぁ」
時が経つのは早い。
あの家族と出会ってから本当にそれを感じている。
それまではどんな暮らしだっただろうか?学校でもあんまり人と関わらなかったし、よく話すのは俺の担当ぐらい。適当にサボって文字を書いて、たまに親父に嫌味を言われて、人との関わりなんて全くなかった。
それが今となってはどうだろう?
……最近、うちにはアクアとルビーの物だけでなく星野さんの物も増えた。まぁ自分の物というか、キッチン用具が増えたってだけなんだけど。
何かしらの節目とか、イベントの日なんかは斉藤夫妻も交えて俺の家で飲み食いすることも多い。
「あの人たちも最近は慣れてくれてるしなぁ」
斉藤さん達が申し訳なさそうにすることももうない。俺としても親戚が遊びに来たらこんな感じなのだろうか?なんて思えて楽しい。
……まぁ、今でも合鍵を数本作らされたのは如何なんだろうとは思わなくもないが……ちなみにその鍵を持っているのはアクアとルビーそして星野さんである。
「さて、用意も完了。でるか」
これからお仕事の時間である。
全くメディアに出ない俺だが、打ち合わせとかは別という事もあってこんなふうに外に出る時もあるのだ。……行きたくないなぁ。
そう思っていても逃げられないのだが……電車に乗って、タクシーも使ってやってきました打ち合わせ場所。はぁ……帰りたい。対戦ゲームの練習してアクアをボコさないといけないのだ。後星野さんも。
アイツら俺より強くね?本当に。
「お待ちしておりましたオパールさん」
「……はぁ……」
「なんでそんな顔するんですか……」
もうこんな歳になってオパールと言われるのは辛い。なんでこんな名前にしたのだろうか?いや、ちゃんと理由はあるけどさ……しんどい。大人になってからこんなふうに思うなんて思わなかった。
「いえ、なんでも」
「では早速、今回のドラマの打ち合わせと行きましょう」
はいはい。
さて、今回はドラマの打ち合わせのために出てきている。とは言っても俺が口出しすることはほとんどない。原作から大きく逸脱すれば話は別ではあるが、その辺を俺が嫌がる事も知っている人達だし基本任せっきりだ。ただし今回はその……本当にこれでいくの?
「では、主演の候補はアイさんで決定ですかね」
「……」
「どうかしましたか?先生」
「あー、いえ。なんでも」
今回は詐欺師が活躍するお話。
まぁ嘘つきの仮面をかぶっていたあの人には結構なハマり役かもしれない。騙し騙され悪徳企業なんかからお金を騙し取るのだが……うーん。星野さんがやるのかぁ。うるさくなりそう。
「では他のキャストを決めましょうか」
「あ、じゃあ一話目の被害者はリクエストしてもいいですか?」
「え?あぁ、はい」
めずらしく声を上げたからかみんなの視線がこちらに集中する。
少しばかり恥ずかしいがさっさと言ってしまおう。
「えっと、この子にハマり役の子がいてですね」
スケジュールを押さえられればいいのだが……。
前に見たドラマですごく良かったしな。
「彼方くーん!!」
ガチャガチャ!ばたん!!と大きな音を立てながら俺の家の扉が開いた。そしてそれと同時に大きな子供の声も聞こえてくる。
その声の主はリビングの扉も勢いよく開けて部屋に飛び込んできた。
「うわぁ……きたぁ」
「えぇ!?うわぁってなに!?」
ドラマの話がそっちに行ったのだろうか?
やけにハイテンションな星野さんがウチに来た。
「なんですか?」
「もー、わかってるくせにぃ」
「……アクアー!ルビー!めんどうだし助けてぇ!」
「めんどう!?」
「今ゲーム中だから無理ー!あ、ちょっ!お兄ちゃんそれ反則!!」
「勝てば正義なんだよ」
「もぉおおおお!!」
だーめだこりゃ。
自分で処理するしかなさそうだ。
「それでそれで?私が主役でいいの?ねぇねぇ」
「嘘つきにはハマり役でしょう?」
「んなぁ!?一応私はアクアとルビーと彼方くんには本当のことしか言ってないと思うんだけど!?」
「初対面の時のインパクトが強いもので」
「もう。昔のことでしょうそれ」
「まぁ、はい」
はぁ、まぁいいや。
星野さんが持っていた食材を受け取り冷蔵庫へと入れていく。その間に星野さんは今日の食費を壁にかけてあるホワイトボードへと記入。
なぜかいまだに俺の分のご飯まで用意してくれるのだ。だがしてもらうだけではいけないので、月末になったらお金を纏めて渡すのである。だからこそこうやって金額をメモするのだ。
「今日はカレーだよ」
「……そっすか」
「嬉しそうだねぇ」
「カレーは好きなので」
「そっかそっか」
俺と星野さんが話しているとゲームを終えたアクアとルビーがやってくる。
「なんか御機嫌だねママ」
「何かいい事でもあったの?」
「ふふーん。実はねぇ」
星野さんは満面の笑みで大きく手を広げながら二人に告げる。
「この度!彼方くんが書いた小説のドラマの主役を演じる事になりました!星野アイでーす!!」
「「おぉ〜」」
パチパチパチパチ。
と拍手をする二人。そんな二人に向かってハイテンションのままイェイとピースをする星野さん。
俺?玉ねぎの皮剥いてます。
「なんのお話なの?」
「信用詐欺師だよ」
「アレか」
「お兄ちゃんも読んだ事あるの?」
「あぁ。ルビーももう少しオパールの作品を読めばいいのに」
「うーん。恋愛ものなら何冊か読んだけど……今度読んでみようかなぁ」
「それなら兄さんの部屋に行けばある」
「どれ?」
そんな話をしながら二人は本をとりに俺の部屋へと向かった。……いや、あの、置いていかないで?
玉ねぎを切っていると目に染みてしまい、逃げるタイミングを逃す俺だった。
そしてまた月日が流れ、今日は現場へとお呼ばれした。本当なら行かないのだが今回は星野さんが出ている事もあり、絶対に来いとの事なので来るしかなかったのだ。
……いや、だって俺の好物作ってくれるって言うしさ……胃袋掴まれてるなぁ俺。
「オパール先生のご到着です」
「……そんな大きな声出さなくてもいいのに……」
もう隅っこで縮こまっておくので放っておいてほしい。そんな俺の願いは何処へやら。
星野さんが真っ先に飛んできた。
「初めましてオパールさん。この度主演をする事になったアイです。よければこれにサインくれませんか?ファンなんです!」
「ひぇっ」
サインなんかあんまりした事ないのに……!!
知ってるだろあんたは!!
「えっと、普通に名前だけでもいいですか?」
「もちろん!アイへって書いてくれれば嬉しいです」
「あ、はい。アイさんへって書きますね」
「!!……へへへぇ〜……」
アイさんが持ってきた原作の本に、オパールの名前とアイさんへと書いて渡す。誰もを魅了する様な笑顔でお礼を言って持ち場へと戻っていった。
その後も色々な人が挨拶に来てコレコレの作品が好きだとか、今回の役について重要視してほしいところとかはないかとか色々と話をしてくれる。
そしてそんな中やってきた一人。
「あの!今回はよろしくお願いします!」
「あ、はい。よろしくお願いします」
有馬かなさんだ。
第一話の被害者役に選ばれた彼女が挨拶に来た。
どこか緊張気味ではあるのだが、そんな風にする子なのだろうか?昔見たドラマではもっと自己主張が強かった気がする。
今回の被害者は私が一番とばかりに行動する子が騙されてそれを救うって話なのだが……。イメージと違ったか?
「あの……」
「なんでしょうか?」
「監督から先生が私を指名してくれたって聞きました。……本当に私でいいんですか?」
「えぇ、問題ないです。……ただ」
「ッ!」
なぜこんなにビクビクしてるのだろうか?
とりあえず伝えたいことは伝えておこう。
「思いっきりやってくださいね」
「え?」
「私が一番とばかりに演じてください。あそこにいるアイさんよりもずっと大きく輝こうとしてください」
「……」
「大丈夫。貴女がそれをできることは知っています」
「……でも、本当に大丈夫ですか?」
「えぇ。昔貴女が出た映画やドラマを見たことがあります。そんな頃の貴女の演技ならピッタリです。周りに合わせようなんてせずに、自信を持って輝いてください」
「……はい!」
そう言って有馬さんを送り出す。
何にそんなに悩んでいたのだろうか?謎である。
だがまぁどこか吹っ切れた様な顔をしたのを見ると話をして良かったと思えた。
今回ほどしっかり見たのは初めてな撮影現場は行って良かったと思える程のものだった。自分が経験したものを文章にできるかもしれないし、本当にいい経験をさせてもらう機会になったと思う。
「ほらほら!もう始まるよ」
「にしても月曜日の二十一時からって。すっかり売れっ子作家だね」
「アクア、彼方くんは前から売れっ子だよ?」
「すっかり信者になってるなぁこの母親は……」
「何か言った?」
「なんでもなーい」
わちゃわちゃと今日も俺の家は騒がしい。
俺はキッチンでみんなの分のお茶を用意しているのだ。そんな俺を待ちきれなかったのか誰よりも一番にソファに座っていたルビーがキッチンまでやってくる。
「カナお兄ちゃん早く早く!」
「はいはい焦らないで。っと、おっと」
パリンと大きな音。
大丈夫ー?と星野さん達が声をかけてくる。
ただ俺はそれどころではない。
「あ、ご、ごめんなさい……」
「大丈夫だよ。ルビー」
普段からは考えられないほど暗くなるルビー。
焦ったルビーが俺の右手を掴もうとしたのだ。コップを持とうとしていた時だったのもあり、俺の手が欠損している事もありコップを落としてしまった。
「タイミングが悪かっただけだよ。大丈夫」
「で、でも」
「大丈夫。ほら、コップも持てるよ」
右手で割れてないコップを握る。
ちゃんと持てるから。安心してほしい。
様子がおかしい事に気がついた星野さんがキッチンまでやってくる。そしてルビーを抱きしめながら大丈夫だと安心させる。
「ほら、ルビーはソファに座ってて。片付けは私達がやるから」
「もう始まるんだろ?楽しみにしてたんだしちゃんと見ないと」
「う、うん」
「ルビー。始まったぞ」
あんなに落ち込まなくてもいいのにな。
あのタイミングなら欠損していない普通の手であってもコップは割れていただろう。早くしないとドラマが始まるし、俺と一緒に見たいという焦りから起こった事故。
「ルビーはたまにああなっちゃうね」
「ですね」
いい加減、俺の手もなんとかしないといけないだろう……今度、義指の事でも調べてみようかな。
俺が考えている間に軽く掃除を終えた星野さんが俺の背中を押す。
「それよりほらほら、ドラマ始まってるよ」
「はいはい。行きますよ」
掃除機は後でかけることにしよう。
今はルビーの側でドラマを見ることが優先だしな。
たくさんの感想励みになります。
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みんないっぱいしてくれてありがとうね。ちゃんと目を通してます。