【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第115話「もちろん英語と地理が赤点っすよ。それがどうかしたっすか?」

「話は聞かせてもらったっす!」

 

 めちゃ美の声と共に、勢いよく第2文芸部のドアが開かれる。

 まるで計ったようなタイミングである。

 実際にタイミングを計っていたわけだが。

 めちゃ美はテンションが上がると饒舌になるが、テンションが上がっていないと気弱で引っ込み思案な性格なので。

 

「おっ、めちゃ美ちゃんブチ上がってるじゃん!」

 

「当然っすよ!」

 

 めちゃ美は、どちらかといえばチョバムやエンジンと同じく日陰者。

 中学時代の文化祭も、盛り上がる周りを尻目に息を殺し、極力関わらないように潜んでいた身である。

 なので、教室で文化祭の話題が出た時は「ちょっとめんどくさいな」と考えていた。

 せめてギャルと一緒に文化祭を楽しめたらと妄想した辺りでめちゃ美は気づく、優愛やリコはギャルなのだから文化祭を盛り上げようとするはず、と。

 そして、その輪の中に自分も入れば、ギャルと楽しく文化祭を過ごすというオタクの妄想のような展開が可能だという事に。 

 

 オタク君の一言で、手のひらを返したようにやる気を出すチョバムとエンジンを見て、めちゃ美は確信した。

 これでギャルと楽しく文化祭が過ごせると。

 

 テンション爆上がりのめちゃ美。

 同じくテンションが爆上がりの優愛と共に「ウェーイ」と言いながらリコにウザ絡みを始める。

 

 優愛相手なら適当にあしらうリコだが、めちゃ美も加わっているためにぞんざいに扱えずやや困惑気味である。

 助けを求めるようにオタク君を見るリコ。

 オタク君は気が利く性格なので、もちろんリコの反応に気づいている。

 

「めちゃ美。やる気があるのは良いけど、テストは大丈夫だったのか? 前にチャットで散々だったとか言ってたけど」

 

 なので、適当に別の話題を振り、めちゃ美のテンションを下げようとするオタク君。

 

「もちろん英語と地理が赤点っすよ。それがどうかしたっすか?」

 

 だが、その程度でめちゃ美のテンションは下がらない。

 

「えっ……」

 

 めちゃ美のテンションは下がらないが、優愛たちのテンションは一瞬で下がった。

 真顔になったオタク君たちだが、めちゃ美は事態を飲み込めていない。

 

「赤点取ったら何かヤバイんすか?」

 

「ヤバいも何も、期末も赤点なら文化祭の準備期間中ずっと補習受ける事になるんだぞ!?」

 

「ちょっ、じゃあ自分の楽しい文化祭はどうなるんすか!!」

 

「それに、めちゃ美ちゃんのその恰好も直すように指導されるんだよ!?」

 

「最悪じゃないっすか! 断固抗議するっす!」

 

 そんな話は聞いていないとオタク君に抗議をするめちゃ美。

 実際はちゃんと説明されている。言葉通りめちゃ美が話を聞いていなかっただけで。

 

「そんな……自分はどうすれば良いんすか……」

 

「勉強したら?」

 

 オタク君。ぐぅの音も出ない程の正論である。

 

「むぅ……相方……いや、優愛先輩は赤点ないんすか?」

 

 オタク君に聞こうとしためちゃ美だが、会話の流れからオタク君が赤点を取った事がないのは予想できていた。 

 なので、めちゃ美はこの中で一番成績が低そうな相手である優愛に話しかけた。

 優愛の成績がこの中で一番低そうというのは偏見ではあるが、正解である。

 

「もちろん、赤点なんて取った事ないよ!」

 

 そんなめちゃ美の問いに、胸を張りドヤ顔で答える優愛。

 優愛の発言に対し、オタク君とリコが物言いたげにしているが、見て見ぬふりである。

 実際に、優愛の発言は嘘ではない。彼女が取ったのは赤点ではなく、赤点の更に半分の青点なのだから。

 

 もし突っ込まれれば「そんな私でも頑張ってテストで良い成績を収めたよ」と美談にし。

 突っ込まれなければプライドが保てるという、優愛の二段構えの作戦である。

 

「優愛先輩、ギャルを極めながらも学業を疎かにしないのは凄いっすね!」 

 

「まぁね!」

 

 結局オタク君とリコが優愛たちの会話にツッコミを入れる事はなかった。

 突っ込めば優愛にウザ絡みをされるのは目に見えているからだ。

 それに、優愛にツッコミを入れるよりも、めちゃ美に勉強をさせる事のが優先である。

 

「分かったっす。期末に向けて今から勉強するっす」

 

 最終的に、めちゃ美は第2文芸部の部員全員に赤点がないか聞くが、赤点を取った者はいなかった。

 となると、これ以上駄々をこねても無駄だと悟るめちゃ美。仕方なく勉強をする事にしたようだ。

 そもそも誰かが赤点を取っていたとしても、めちゃ美が勉強しなくて良い理由にはならないのだが。

 

 めちゃ美がカバンから英語の教科書を取り出し、最初のページを開き固まる。

 その表情は、まるで蛇に睨まれた蛙である。

 

「まさか、もう分からないとか言わないよな?」

 

「そのまさかっす!!」

 

 その時、めちゃ美以外の全員の心が一つになった。

 それでよく入学できたな、と。

 

 

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