【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第116話「ぐ~ ぐまぐま ま?」

 教科書を開き、一ページ目からうんうん唸るめちゃ美。

 そんなめちゃ美を見て、あぁ、これはダメだと誰もが悲観していた。オタク君を除いて。

 

「なぁ、めちゃ美」

 

「なんすか?」

 

 オタク君に声をかけられ、返事をするめちゃ美。

 めちゃ美は目の端にいっぱい涙を溜めて、ヘラヘラ笑っている。もはや笑うしかないのだろう。

 どこかで見たことある光景だなとデジャヴを感じ、オタク君は少しだけ笑ってしまいそうになる。

 出来るだけめちゃ美を不安にさせないように、微笑みかけるオタク君。

 

「ぐ~ ぐまぐま ま?」

 

 そして出た言葉がこれである。

 めちゃ美に続き、オタク君も壊れてしまったようだ。 

 

「ぐまっす!」

 

 めちゃ美とオタク君が、ぐまぐまと謎の会話を広げる。

 誰もがその様子を黙って見守っていた。なんと声をかければ良いか分からなかったので。

 

「……なるほどな」

 

 何かを納得したような顔で、オタク君がやっと元に戻る。

 

「えっ、オタク君たち、なんの会話してたの?」

 

「何って、ベアグマ語っすけど?」

 

 不思議そうな顔で答えるめちゃ美。

 何故そんな事を聞くのかと言わんばかりである。

 めちゃ美の対応に、慌ててオタク君が説明をする。

 

「あるゲームで使われてた異種族の言語でベアグマ語というのがあるんですけど、そのベアグマ語でめちゃ美に質問をしてたんです」

 

「質問?」

 

「はい。基本的にゲームに出てくる地名と、そこに行くまでの道順ですね」 

 

「なるほど?」

 

 といってみたものの、優愛の頭には「?」マークが浮かんでいた。

 話を聞いてる他の部員も同様である。

 

「めちゃ美、他にはどの言語が扱える?」

 

「聖ヨトゥン語っすね」

 

 ちなみに聖ヨトゥン語というのも、ゲームに出てくるオリジナル言語である。

 それを聞き、オタク君は確信めいたものを感じ頷く。

 

「めちゃ美は英語と地理が苦手なんじゃなくて、覚える気がないだけだね」 

 

 ベアグマ語も聖ヨトゥン語も、ゲームを進行する上で覚えなくてはいけない言語である。

 とはいえ、最近はネットの発達により、無理に覚えなくても攻略サイト等を見ればどうにかすることが出来る。

 それなのにわざわざ覚える理由はただ一つ。リアルタイムで物語を楽しみたいからである。

 

「その証拠に、他の言語や地名とかはちゃんとわかってただろ?」

 

「それはあっちの世界では必要だったからっすよ」

 

 まるで異世界帰りのようなセリフである。

 

「ようは、必要に駆られればやれるって事だろ?」

 

「それはそうかもしれないっすけど」

 

「それならやりようはある。とりあえず明日から頑張ろうか」

 

 準備があるからといってオタク君が先に帰ると、この日は何となくで解散となった。

 無理に残っていても、空気が重くなるだけなので。

 

 翌日。

 めちゃ美が第2文芸部を訪れると、部室には長机が1つ追加されていた。

 オタク君がめちゃ美を壁際に配置された長机まで案内し、椅子に座らせる。

 めちゃ美が座ると、その右隣にリコが座る。

 

「リコ先輩ッ!?」  

 

「えっ、そんなに驚く事か?」

 

 めちゃ美が驚きの声を上げる。

 何故ならリコがメガネをかけていたからだ。

 メガネをかけただけで、なぜめちゃ美がそこまで驚いたのか?

 それは、めちゃ美の性癖にドストライクだからである。

 

(流石相方っす)

 

 めちゃ美の性癖に『普段はコンタクトだけど、たまに見せるメガネ姿のギャル』というものがある。

 オタク君はリコにメガネをかけさせる事により、疑似的にその属性を付与させたのだ。

 ちなみにリコは目が良いので、度が入っていない伊達メガネである。 

 

(そっすよね。メガネはバフアイテムっす。メガネキャラが本気を出す際にメガネを外すのはご法度、メガネ拭きでメガネを拭いてから掛けなおすべきっす!)

 

 オタク君に目で訴えるめちゃ美。

 そんなめちゃ美に、力強く頷き返すオタク君。

 同意ではなく、めちゃ美はどうせくだらない事を考えているんだろうなと、適当にあしらっているだけである。

 

「隣、座るね」

(訳:一緒に頑張ろうね└( 'ω' )┘)

 

 そして、めちゃ美の左隣には委員長が座る。

 委員長本人はやる気満々のハイテンションのつもりだが、無表情に近く知り合って間もないめちゃ美にはそれが分かりづらい。

 なので、めちゃ美からは委員長がヤンデレっぽく見えてしまう。

 

(ヤバイっす。無機質な目で見られるの癖になりそうっす!)

 

 だが、めちゃ美にはそれが良かった。

 めちゃ美。両手に花ならぬ、両手にギャルである。

 更に、後ろには優愛が控えている。

 優愛の役割は、時折後ろから顔を覗かせるオタクに優しいギャル要員である。

 

「それと参考書にこれを使って」

 

 そう言ってオタク君が机に置いたのは『ギャル単』と書かれた一冊の本である。

 表紙にはいかにもなギャルが描かれている。

 

 ギャル単とは、正式名称「ギャル英単語ギャル単」

 日本語ではなく、あえてギャルの言葉を英語にした例文が載っており、様々な応用も書かれている。

 オタク向けのネタグッズかと思いきや、若者の言葉だからこそわかりやすいと話題になり、一時期は参考書の中で一番の売り上げを出していたくらいである。

 

「テストの出題範囲部分に絞ってマークしてあるから、その部分だけやっていこう」

 

 完全にギャル漬けである。

 初めて使う参考書、しかもやや特殊な内容なだけに、少しだけ戸惑いながら委員長がその内容を読み解いていく。

 途中で詰まったりすれば、リコがフォローに入り、逆にリコが詰まれば委員長がフォローに入る。

 リコと委員長がそれぞれ内容を分かりやすくかみ砕きながら、めちゃ美に説明していく。

 

「えっと、つまりこういう事っすか」

 

「うん。あってる」

 

「じゃあ次いくね」

(訳:すごいね。めちゃ美ちゃん飲み込み早い(; ・`д・´))

 

 次々と回答を埋めていくめちゃ美。

 ギャルたちが分かりやすく教えてくれたうえに、正解するたびに褒めて貰える。

 めちゃ美のやる気を出すには十分であった。

  

「小田倉殿はこっちでござる」

 

「某たちに勉強を教えるですぞ」

 

 自分も何か手伝うか。

 そう思ったオタク君だが、両脇をチョバムとエンジンに抱えられ、近くの長机に連行されてしまう。 

 そして連行した本人たちは、教科書を開くも勉強など全くする気が無い。

 

「二人とも、勉強するんじゃないの?」

 

「小田倉殿、知ってるでござるか?」

 

「百合に挟まろうとする間男は逝ってヨシですぞ」

 

 彼らがオタク君を連れだしたのは、別に勉強するためではない。

 百合に挟まりに行こうとしたから、阻止しただけである。百合に挟まる男ダメ、絶対。

 

「百合って……」

 

 何をいっているんだと思うオタク君だが、強くは否定できなかった。

 ギャルが好きなめちゃ美に、ギャルたちが囲んでいるのだから、確かに百合ハーレムに見えない事はないからである。

 リアルにそういうの(百合)を求めるのはどうかとは思うオタク君だが、チョバムとエンジンの気持ちも分からなくはない。

 なので、黙って一緒に見守る事にした。実際にめちゃ美は勉強が捗っているわけだから、無理に入る必要もないので。

 

「むっ、百合の話をしている気がしたっす!」

 

 オタク君たちの会話に反応し、めちゃ美が顔をオタク君たちの方へ向ける。

 ギャルも好きだが、百合も好きなので。

 

 だが、即座に委員長がめちゃ美の顔を両手で掴み、ぐるりと回転させる。

 めちゃ美の顔を、無理やり自分の方へ向ける委員長。

 

「よそ見したらダメ」

(訳:気になるのは分かるけど、今は勉強しようね(*'ω'*))

 

「ひゃ、ひゃいっす!!」

 

「うん。良い子」

(訳:頑張ろうね。ナデナデヾ(・ω・`))  

 

 後にめちゃ美はこう語る。

 

『この後の記憶はないっすけど、気づいたら英語が全て頭の中に入ってたんすよ』

 

 こうして、めちゃ美の赤点の危機は回避された。

 今回の件で、委員長との距離が近づき「同性のオタク仲間」という目で見られるようになっためちゃ美。

 後日、委員長から「一緒にお買い物に行こう」と持ち掛けられ「実質デートっす!!」とはしゃぐのだが、一人で行く勇気がなく、オタク君を呼んで一緒に来てもらうヘタレムーブをするが、それはまた別の話である。

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