【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第119話「完売を祝して、乾杯でござる!」

「ありがとうございました!」

 

 昼時には少し遅い14時前。

 第2文芸部の同人誌が完売した。

 

「完売でござるな」

 

「完売ですな」

 

「完売だね」

 

 冬コミフェの時は、印刷屋に刷ってもらった物が百部。

 それと比べれば今回は三分の一以下の三十部。両隣に配った分を引けば二十八部、約四分の一である。

 ならば完売してもおかしくないのではと思うが、会場の規模が違う。

 

 コミフェは数万のサークルが集まるのに対し、今回の即売会イベントは四百あるかないかくらい。

 百分の一程度の規模である。

 

 そして、即売会で売れるのはごく一部のサークルくらいで、参加サークル全体のアベレージで見れば、売り上げは数部がほとんどなのだ。

 その証拠に、オタク君たちの両隣のサークルは、いまだ売り上げが十部に届いていない。

 

 では、何故オタク君たちのサークルはそれだけ売れたのか?

 第2文芸部のサークルは前回のコミフェで話題性を獲得し、サークル活動をしている事をアピールするために、日々地道にイラストを描いたりしてSNSで宣伝していた。

 結果、注目されるサークルの一つになっていたのだ。

 

 大手や有名なサークルと比べれば優先順位は下がるが、その後に周るリストにチェックされるくらいに。

 なので、開演時には誰も来なかったが、一時間経ったあたりから人が来るようになったのだ。

 そして、落ち着いて来た会場で人が集まっているサークルを見かけたら、参加者は興味を持つ。

 興味を持った参加者が集まり集客効果となり、完売である。

 

 オタク君たちは気づいていない。

 自分たちが既に中堅クラスのサークル一歩手前まで来ている事を。

 

「全く、最初はどうなるかと思ったよ」

 

「激しく同意ですぞ」

 

 前回のコミフェ初参加で百部も中々のやらかしだが、今回も十分のやらかしだった。

 完売できたから良いものの、次回はもうちょっと考えてやろうねと笑いながら話し合うオタク君たち。

 まぁ、次回もやらかすのだが、それはまだ先の話である。

 

「それでは、分け前を渡すでござるよ」

 

 オタク君たちの今回の売り上げは一部三百円が二十八部、八千四百円の売り上げである。

 そこからイベント参加費を差し引けば一人頭千円ちょっとの黒字になる。

 実際はイベント参加費の他に交通費や印刷費などの諸々諸経費がかかるのだが、実家暮らし且つ学生のオタク君たちは家のプリンターと、定期券がある。

 なので、イベント参加費以外は殆どお金がかかっていない。

 

「完売を祝して、乾杯でござる!」

 

 その黒字分も、こうして打ち上げに消えているわけだが。

 ほとんどのサークルが赤字を抱えている中、売上金で打ち上げが出来るなら十分すぎる成果だろう。

 即売会のイベントが終わり、オタク君たちは近くのファミレスで打ち上げをしていた。

 

 ドリンクバーにデザート一品をそれぞれが注文すると、コップにジュースをなみなみと注ぎ乾杯をするオタク君たち。

 ジュースを一気に飲み干すと、今回のイベントについての感想戦をし始める。

 

 どこのサークルで買った同人誌が良かった。

 変わった格好のコスプレイヤーの写真を撮った。

 両隣のサークルと挨拶したから後でSNSのフォローをしよう等。

 

 ちょっとオタク寄りな会話を声量が大きすぎる気もするが、昼食にはあまりに遅く、夕食にはまだ早すぎる時間帯。

 周りの席は、同じようにサークルの打ち上げをしている者達ばかりである。

 なので最初はコソコソしていた感じだったが、周りが同士と気づき、声量をあまり気にしなくなったのだ。

 オタク君たちの会話は続いていく。

 

「次回のイベントはどうする?」

 

「夏コミフェは流石に金銭が厳しいから、冬にかける感じですな」

 

「新刊もその時に出すでござるよ」

 

 学生身分故に、金銭面で出られるイベントが少ない。

 だからこそ、近場で少しでも安いイベントをあーでもないこうでもないと言い合いながら探し語り合う。

 イベントを探していたはずが、気が付けばアニメやゲームの会話にすり替わり盛り上がる。

 キャラの物真似をしたり、傍から見たらくだらないようなネタで笑い合う。

 オタクの青春である。 

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