【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第120話「アイツは火属性かなにかか?」

 休日の昼前。

 

「思った以上に人がいるんだな」

 

「そうですね」

 

 オタク君とリコ。二人は今、公園に来ていた。

 公園とはいう物の、滑り台や砂場、鉄棒があるような小さな公園ではない。

 テニスコートやゴルフ場、広場に散歩道、雰囲気のある噴水などが楽しめるレジャー施設に近い。

 かつてオタク君が優愛の誕生日にデートで来た場所もここである。

 

 そんな公園に、オタク君はリコと二人で来ていた。

 観光やデートスポットの一つなので普段はそこそこ人が多い公園であるが、今日は特に人が多い。

 そして人が多いだけではない。あちらこちらにコスプレをした人が見かけられる。 

 というのも、本日はこの公園でコスプレのイベントがある日だからである。

 

「去年の商店街でやってたコスプレ祭りも凄かったけど、こっちはこっちで凄いな」

 

「人が密集してますからね」

 

 コスプレ祭りの来場者数は三十万を超える。

 対し、こちらのコスプレイベントは来場者数が千人ほど。

 

 だが、商店街全てを使ったコスプレ祭りと違い、今回のコスプレイベントは公園のみである。

 人口密度では決して負けていない。

 

 そんなコスプレイベントに、何故オタク君とリコが二人で来ているのか?

 

「下見ですが、リコさんしてみたいコスプレあったら言ってくださいね」

 

「あ、あぁ……」

 

 そう、コスプレイベントの下見である。

 去年のコスプレ祭りの時に、来年オタク君の地元にあるコスプレイベントに一緒に参加しようとリコと約束したオタク君。

 しかし、コスプレイベントにコスプレする側で参加した事は、オタク君もリコも当然ない。

 

 参加の流れはネットで調べる事は出来るが、実際にどんな感じかは参加してみないと分からないものである。

 暗黙のルールなども多数存在する。

 なので、今回のコスプレイベントで下見をする事にしたのだ。

 

 コスプレイヤーがどうしているか見て、それに倣う。

 ……のだが。

 

「リコさん。そのカメラは?」

 

 リコの首に下げられたカメラ。

 突っ込むべきかどうか悩み、あえて触れなかったオタク君。

 

「父さんのを借りてきたんだよ。ほら、コスプレイヤーってスマホよりも、ちゃんとしたカメラで撮って欲しい人もいるみたいだからさ!」

 

「そうなんですか?」

 

「スマホがダメってわけじゃないけど、ちゃんとしたカメラのが嬉しいって書いてあるの見かけてさ」

 

 コスプレイヤーの周りで写真を撮ってる人たちを指さすリコ。

 全員というわけではないが、立派なカメラを持った人は多い。

 コスプレ祭りの時は気にしなかったが、立派なカメラを持った人たちの中にスマホ片手に混じるのは確かに気が引けるなと思うオタク君。

 

 そして気づく。

 いやいや、そもそも写真を撮りに来たわけじゃないと。

 だが、隣でコスプレイヤーを撮る時の注意点などを嬉しそうに話すリコ。

 当然オタク君がツッコミを入れれるわけがなかった。

 

 ワクワクした表情で被写体を探すリコに対し、ちょっと困り気味のオタク君。

 そんなオタク君たちを見つけ、嬉しそうに顔をほころばせて近づいてくる者がいた。

 

「おーい、小田倉」

 

「ん? あぁ、山崎か」

 

 オタク君のクラスメイトの山崎である。

 今はリコのクラスメイトでもある。

 

 山崎の登場に動揺するオタク君とリコ。

 クラスメイトの男女が、休日に二人きりで出かけているのだ。

 お前らそういう関係だったのかと言われたら、どう言い訳しようかと考えを巡らせるオタク君とリコ。

 だが、オタク君とリコの不安は杞憂に終わる。

 

「さっきさ、炎皇帝(えんこうてい)がいたのよ炎皇帝! それであまりにスゲーから写真撮らせてもらったんだわ」

 

 相変わらずの山崎である。

 リコには一応「おっす」と声をかけた程度で、今の彼の目にはオタク君の姿しか映っていない。

 山崎はスマホを取り出し、炎皇帝のコスプレイヤーの写真をオタク君たちに見せる。

 

「いや、もうマジやべぇよな。これもう本物じゃん?」

 

「そ、そうだね」

 

「いやー、カッコいいよな。俺もやってみたいな」

 

 そう言いながら、チラチラとオタク君を見る山崎。

 何が言いたいのか一目瞭然である。

 

「えっと、またメイクとかやろうか?」

 

「マジで!? じゃあ先に材料費渡しておくから、頼むな!」

 

 そういって万札をオタク君に握らせる山崎。

 

「いや、前も言ったけど、こんなにもいらないよ!?」

 

「余った分は手間賃だ。じゃあな!」

 

 任せたぞと言いながら、そそくさとオタク君から離れ人混みに消えていく山崎。

 少し離れた場所で、チラリとオタク君とリコを見る。

 

「小田倉のやつ、姫野さんと一緒にいたけど、もしかして付き合ってたりするのかな」

 

 声に出して山崎は気づく。

 

「もしかして、俺邪魔しちゃったのでは?」

 

 もしかしなくてもお邪魔虫である。

 もしデートなら、近くにクラスメイトがいれば、居心地が悪いだろう。

 出来る限り二人の視界に入らないようにしようと心に決め、あえてオタク君たちとは反対側の場所まで移動する山崎。

 

 山崎の姿が見えなくなってから、オタク君が口を開く。

 

「山崎のヤツ、前回は炎の柱で、今回は炎皇帝か」

 

「アイツは火属性かなにかか?」

 

「確実に火属性ですね」

 

 山崎の登場に出鼻をくじかれたオタク君とリコ。

 同時にため息を吐き、そんなお互いの様子を笑い合う。

 

「とりあえず、色々と見て回りましょうか」

 

「そうだな」

 

 まずはどこに行こうか?

 そんな事を話しながら、オタク君とリコは公園に足を踏み入れた。

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