【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第133話「お兄ちゃんどいて! ソイツ殺せない!」

 小田倉家の居間に、物騒な声が響く。

 

「お兄ちゃんどいて! ソイツ殺せない!」

 

「やめろ希真理!」

 

「そっすよ~。希真理ちゃんやめるっすよ~」

 

 オタク君が両手を広げ、めちゃ美を庇うように希真理の前に立ちふさがる。

 

「今ソイツ殺すから」

 

「あぁ……」

 

 オタク君の奮闘虚しく、めちゃ美は希真理の手によって殺された……というフレーバーテキストが読み上げられる。

 ヘラヘラ笑いながら、めちゃ美がひらひらと一枚のカードを見せる。

 

「だから言ったじゃないっすか、自分は村人っすよ」

 

「くっ、くぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「狼の人数が村人と同数になったから、また狼側の勝ちだね」

 

 ため息を吐きながら、希真理の友人である凪がそう宣言する。

 オタク君たちは今、村に潜む狼が誰かを当てるというボードゲームをやっていた。

 ドヤ顔でなおも『村人』と書かれたカードをヒラヒラするめちゃ美。

 そしてそれを悔しそうにムムムと言いながら睨む希真理。

 

「いや、ドヤ顔してるけどお前も負けなんだぞ」

 

 呆れたようにめちゃ美に注意をするが、めちゃ美はヘラヘラしている。

 勝負の勝ち負けよりも、場を荒らす事に喜びを感じるタイプのプレイヤーなのだろう。迷惑極まりない。

 

「いやぁ、相方のリアル妹はからかいがいがあるっすからね」 

 

「芹さん、その呼び方やめてください!」

 

「えぇ~、リアル妹って良い響きじゃないっすか。ねぇ相方?」

 

「頼むから僕に振らないでくれる?」

 

 オープンオタクなめちゃ美、割と際どい、というか妹持ちにはアウトな同意をオタク君にぶつけてくる。

 オタク君としては、リアルに妹がいても、アニメやゲームの妹キャラはそれはそれなので、有りかなしかでいえば有りである。

 有りであるが、そんなのを実の妹の前でいえるわけがない。

 ならば拒否すれば良いかと思うが、それはオタクとしての矜持(きょうじ)に関わる。

 なので、強く拒否が出来ない。

 

(お兄ちゃん、否定しないってもしかして妹キャラ萌え!?)

 

 そんな態度なので、妹に誤解されても仕方がない。まぁ誤解ではないのだが。

 

「お兄ちゃん、もしかして私をそんな目で見てたの!?」

 

「そんなわけないだろ」

 

 軽い拳骨を妹に落とすオタク君。

 妹キャラは好きだが、別にリアルの妹に発情するわけではないので。

 オタク君、希真理、めちゃ美のコントのようなやりとりに、凪とリコはため息を吐き、優愛と玲が笑ってみている。 

 この日はオタク君の誕生日という事で、優愛とリコがささやかながら、オタク君の誕生日を祝う予定であった。

 去年優愛とリコがオタク君の誕生日を祝っていた事を知り、希真理が『今年も誕生会するんですか?』と二人に確認していたのだ。

 大好きなお兄ちゃんと恋仲になる可能性があるのはこの二人なので、接近イベントを潰すために。

 しかし優愛かリコ、どちらかがこの日にオタク君にアタックをかけるとしたら、もう片方に自分はブロックされるだろう。

 

『お兄ちゃんの誕生日にケーキ作ってあげたいんだけど、手伝って』

 

 なので希真理は増援として、凪と玲を呼び出した。

 結果。オタク君ハーレムの完成である。

 

「あっ、ケーキそろそろじゃない?」

 

「私がやっとくから、お兄ちゃんは座っててよ」

 

「希真理、私も手伝うよ」

 

 妹の希真理と、その友達の凪がケーキの様子を見に台所に向かう。

 兄としてはやはり心配なのか、立ち上がり自分も見に行こうとするオタク君だが。

 

「今日の主役はお兄さんなんですから座っててくださいよ。あっ、肩もみましょうか?」

 

 立ち上がろうとするオタク君の肩を抑え、ついでにマッサージといわんばかりに肩を揉み始める玲。

 わざわざ耳元で「痛かったりしませんか?」というあたり、大分あざといが、別に狙っているわけではない。

 男兄弟が多いので男慣れしているから、いつも兄や父にマッサージする時の要領でやっているだけである。

 対していまだに女の子慣れしていないオタク君。

 上擦った声で「あっはい」を繰り返すだけである。

 

「お皿並べるくらいなら私も手伝うよ」

 

「アタシも。優愛は皿割るなよ」

 

「おっ、リコ喧嘩か? やるか?」

 

「いいからさっさと皿並べるぞ」

 

 優愛とリコも立ち上がり、台所へ消えていく。

 皆が何か作業をしているのに、自分だけ座っていて、更にはマッサージまでしてもらい、少しだけ居心地の悪さを感じるオタク君。

 

「相方、分かるっすよ」

 

「どうせ『ギャルがギャルっぽい格好のままエプロン付けるのは至高っす』とか言い出すんだろ?」

 

 笑顔で親指を立てるめちゃ美に、笑顔で中指を立てるオタク君。

 玲がそんな二人を兄貴たちがよくこんなコミュニケーション取ってるなと思い、その様子をニコニコと見ている。

 この中で一番大人である。

 

「そもそも、めちゃ美はなんでいるんだ?」

 

 疑問を口にするオタク君。めちゃ美を呼んだのはオタク君ではない。 

 優愛やリコからも、めちゃ美を呼ぶという話は聞いていない。

 それもそのはず、優愛やリコもめちゃ美を呼んでいないからである。

 

 当然のように来て当然のように居座っていたので、オタク君も優愛もリコもなぜめちゃ美がここにいるのか聞けなかったのだ。

 

「相方のリアル妹に呼ばれたっすよ」

 

「えっ、そうなの?」

 

「そっす! 相方の誕生日だって聞いたっす。あとメイク教えて欲しいって」

 

 いつの間に希真理がめちゃ美と仲良くなっていたんだと思うオタク君。

 実は前にめちゃ美がオタク君の家に来た時に、希真理は連絡先を交換していたのだ。メイクを教えてもらうために。

 

 優愛やリコにメイクの仕方を教えてもらいたくても「オタク君に教えてもらった方が良い」というばかり。

 まぁ、優愛もリコもメイクはオタク君に教えて貰ってるので教えれる程じゃないからだが。

 そして、そのオタク君である兄に教えてとねだっても「お前にはまだ早い」と言われ断られる始末。

 なので、兄の友達の第三のギャル、めちゃ美に狙いをつけたのだ。

 

 今回めちゃ美が希真理に呼ばれたのは、オタク君の恋路の邪魔をするブロック要員であり、時間があればメイクを教えてもらうためである。

 めちゃ美、希真理から完全にオタク君の恋のライバルには見られていない。

 

「それなら私もメイク教えて欲しいです!」

 

「おぉ、相方のリアル妹の友達ちゃんっすね! 良いっすよ!」

 

「それだと長くて呼びにくいですから、玲で良いですよ」

 

「玲ちゃんっすね! そうだ、相方もメイク教えるの得意って優愛先輩から聞いたっす!」

 

「そうなんですか!? それじゃあお兄さんも教えて欲しいです」

 

「あぁ、うん。得意って言える程じゃないけど、今日のお礼に手伝うくらいならするよ」

 

 めちゃ美のファインプレーにより、オタク君の優愛リコフラグが見事にへし折れていく。

 誕生会の後にメイクを教えるオタク君に玲がくっついたり、くっつく玲に優愛やリコが対抗したりして別のフラグが立ったのは言うまでもない。

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