【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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閑話「オタク・プリズン(後編)

「それではこれより、貴様らをオタク・プリズン送りにするでござる!」

 

 チョバムの号令により、ここ第2文芸部はオタク・プリズンへとなった。

 

「良いでござるか。ここではオタクの言動をとった場合、問答無用で罰が待っているでござる。わかったでござるな!」

 

 プラスチックのバットを担ぎ、多分看守の真似事なのだろう。

 オタク君、エンジンを恫喝するように睨みながらゆっくりと歩いていく。

 エンジンを睨み終えると、プラスチックのバットをその場に置き、エンジンの隣に並ぶチョバム。彼もここでは囚人なので。

 

 オタク君

 通り名、平胸盛

 懲役20年

 

 エンジン

 通り名、脱法TS

 懲役無期懲役

 

 チョバム

 通り名、眼鏡スレイヤー

 懲役死刑

 

 ちなみにチョバムの元の罪状はオタク君とエンジンの説得により「眼鏡キャラの眼鏡を全部外した」に変更されている。

 

「というわけで、今からオタク・プリズン開始でござる」

 

「まぁ、オタクっぽい事言わなければ良いだけだし、そこまで難しくないよね」

 

「そうですな」

 

「とりあえず、文化祭の準備しよっか」

 

「某、ゲームカフェで流すアニソンのセトリ考えてきたですぞ!」

 

「エンジンアウトでござる!!」

 

 チョバムが声高らかに宣言をする。

 

「アニソンはオタク発言でござる!!」

 

 チョバムの言葉に、エンジンも「あっ」と声を上げる。

 曲のセトリと言えばセーフだっただろうに。

 多分セトリの内容はアニソンばかりだったからだろう。

 

「くっ……分かったですぞ」

 

 言い訳をしようにも「あっ」と言った時点で認めたようなものである。

 プラスチックバットを持ったチョバムに、大人しく尻を出すエンジン。

 パァンと心地の良い音が鳴り響く。

 

「くぅ……結構痛いですな……」

 

 叩かれた尻をさするエンジン。

 やられる側はたまったものではないだろうが、見ている側としては面白いもので、つい吹き出してしまうオタク君。

 チョバムにいたっては爆笑している。

 

「エンジン殿、早速やらかしたでござるな。ざまぁ」

 

 指差し笑っているチョバムを見て、エンジンがニチャァと笑みを浮かべる。

 

「チョバム氏アウトですぞ!!」

 

「な、何がでござるか!?」

 

「ざまぁはなろうで人気ジャンル。つまり今の発言はオタク発言ですぞ!」

 

「なっ……しまったでござる!」

 

 流石にそれは厳しくないかと思うオタク君だが、チョバムはどうやらアウトを認めているようだ。

 素直にプラスチックのバットをエンジンに手渡し、尻を出している。

 先ほどの恨みと言わんばかりに、振りかぶるエンジン。

 

「ぐぉ……」

 

 パァンと軽快な音が響き渡る。

 苦痛の表情を浮かべるチョバムを見て、エンジンは満足げである。

 そしてまた、オタク・プリズンが再開されるのだが。

 

「それで、エンジンのセトリってどんなの?」

 

「……」

 

「エンジン殿?」

 

「……ふっ」

 

 オタク君とチョバムの問いかけに、まるで聞こえていないように無言で笑みを浮かべるエンジン。どうやら彼はもう気づいたようだ。

 何も言わなければ、アウトにならない、と。

 だが、そう上手くいくほど、このオタク・プリズンは甘くない。

 こうなることくらい、チョバムは事前に気づいていた。

 

「エンジン殿アウトでござる!」

 

「某、何も喋っていないですぞ!」 

 

 エンジン、当然の反論である。

 

「拙者は最初に言ったでござるよ。オタクの『言動』と」

 

 そう、オタクの発言ではなく、言動である。

 つまりオタクっぽい動きでもNGなのだ。

 

「何も喋らないという事は、アニメや漫画に出てくる無口キャラの真似でござる。これは紛れもなくオタク行動でござる!」

 

「ぐっ、ぐぬぬぬぬ!」

 

 言い返そうにも、言葉が見つからないエンジン。

 それは無理があると思いつつも、先ほど自分が「ざまぁ」と言ったのでアウトと割と無理を通した手前、言い出せないでいた。

 結果、素直に尻を出すことにしたようだ。

 

「次は小田倉殿が叩くでござるよ」

 

「僕が?」

 

「順番ですぞ」

 

「それじゃあ」

 

 先ほどよりも一際高い音が第2文芸部の部室に鳴り響く。

 音に比例し、威力も上がっているのだろう。エンジンがチョバムの時とは違い、痛みに耐えかね体を反らす。

 

「チョバム氏と違い、小田倉氏のケツバットは効くですぞ!」

 

「流石小田倉殿でござるな!」

 

「まぁね、鍛え方が違うからね!」

 

 褒められ満更でもないオタク君が、腕を曲げ力こぶを見せる。

 だがそれは、チョバムとエンジンによる罠である。

 

「はい、小田倉氏アウトぉぉぉぉぉ!!」

 

「マッスルポーズは筋肉アニメのポーズの真似でござる!」

 

「は、謀ったな!」

 

「小田倉殿追加でアウト!」

 

「有名なロボットアニメのセリフですな!」

 

「くっ!!」

 

 咄嗟に言い返そうとすると、ついオタク語録が出てしまう。

 これ以上口を出すのは得策ではないと、オタク君は口を噤むしかなかった。

 

「いった、これ思った以上に痛くない?」

 

「はっはっは。そうですな、次は某が叩く番ですな」

 

 チョバムとエンジンに叩かれ、ヒリヒリする尻をさするオタク君。

 そんなオタク君を見て笑うチョバムとエンジンに、負けじと「オタクの言動だ!」と言いがかりをつけ始めるオタク君。

 オタク・プリズンから軽快な音が止むことがなく響き続ける。

 

「やれやれと言ったな。それはやれやれ系主人公の真似ですぞ!」

 

「下克上と言ったでござるな。それは有名な空耳シリーズの言葉でござる!」

 

「そもそも『ござる』も『ですぞ』もアウトだ。けつ出せ! よし次!」

 

 もはやなんでもオタクに結びつけるこじつけである。

 言いがかりをつけられたが最後、どう弁明しようとも、二対一なので最終的に多数決によりオタク判定をされてしまう。

 完全に暴走している。

 いいかげん辞めれば良いのだが、オタク君たちは止まらない。

 何故か?

 かつて、アメリカのカルフォニア州にある大学で、一つの実験が行われた。

 男女ランダムに二十一人を選出し、十一人を看守役に、残り十人を囚人役として役割を与えた、有名なスタンフォード監獄実験である。

 結果は、看守役は看守らしい行動を取るようになり、囚人は囚人らしい行動を取るようになったのだ。

 しかし、次第に看守役が囚人への罰則が酷くなり、この実験は囚人役の要請により中止となった。

 だが、オタク君たちは囚人役であると同時に、看守役も兼任してしまっている。

 そのため、罰を与えられる際は囚人側になるが、それ以外は見張りをする看守側になっている。そのために中止という発想には至らなかったのだ。

 オタク・プリズンからは、絶え間なく軽快な音が鳴り響く。

 その音が鳴り止むのは、下校のチャイムがなった時であった。

 下校のチャイムが、本日のオタク・プリズンの刑務作業終了を知らせるチャイムである。

 

「ねぇ、明日はもう辞めにしない?」

 

「そうでござるな」

 

「そもそも、なんでこんなアホなことをやってたですぞ……」

 

 刑務作業完了とともに、冷静になる一同。

 こうして、世界一くだらないスタンフォード監獄実験は幕を下ろした。

 ヒリヒリと痛む尻を抑え、オタク君たちは自分たちのバカな行いを後悔するのであった。

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