【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第152話「優愛さん、クラスのグループチャットで呼びかけてもらっていいですか?」

 夏休みが終わり、文化祭準備期間を経てからの文化祭。

 初日目は各クラスや教師、そして保護者会や地域メンバーの出し物となっている。

グランドでは毎年謎の盛況を見せる、保護者会の出し物「冥土カフェ」は今年も例年にもれる事なく、順調な客入りを見せる。

 冥土カフェに負けじと、教師たちがそれぞれの特技を披露したり、地域メンバーが演奏をしたりと、グラウンドにいるだけでも楽しい空気が流れている。

 むしろこれだけ盛り上げてしまっては、校舎の生徒たちに客が流れないのではと不安になるほどである。

 だが、校舎の生徒たちも負けてはいない。

 各教室の窓からは、横断幕で自分たちのクラスの出し物をアピールし、グラウンドからでもどこで何をやっているのか一目でわかるようにしている。

 ただやってるものを書くだけでなく、興味を引くようなキャッチコピーが書かれてあったりと、生徒たちの頑張りが伺える。

 

「へぇ、今年の秋華祭はえらい豪華だな」

 

 秋華高校の文化祭「秋華祭」に訪れた人たちが、口々にそう呟く。

 去年までは各クラスと部活の出し物が同日だったが、今年からは別々になった。

 その為、調理部の部室を使えるようになり、飲食系が増え、吹奏楽部や軽音部が普段やっている音楽系の出し物を有志でやりやすくなったために、いつも以上に生徒たちがやる気を出したのだ。

 結果、出し物の数は減ったが、各クラスの熱意が遠目でも伝わるくらい、豪華になっている。

 そんなこんなで、どのクラスも繁盛している中、オタク君のクラスはというと。

 

「ちょっ、予想以上に来ててさばけないんだけど。誰かヘルプヘルプ」

 

「無理無理、こっちもいっぱいいっぱいだから」

 

 大繁盛である。

 オタク君発案の「冷凍おでん」に、村田姉妹発案の「カラフル綿菓子」

 その商品名が書かれた、秋華祭のパンフを見た人が、横断幕を見た人が、どんなものなのかと興味を持ち、次々と押し寄せてきたのだ。

 ほとんどの客の目当ては冷凍おでんとカラフル綿菓子だが、祭りというのは財布の紐が緩むものである。

 どうせ後で食べ物を買うのだから、ここでついでに買っていこうと、冷凍おでんとカラフル綿菓子以外も次々と売れていく。

 ある程度は人気が出るだろうと思っていたが、まさかここまでとは思っていなかったために、完全に人手が足りなくなっていた。

 

「優愛さん、クラスのグループチャットで呼びかけてもらっていいですか?」

 

「うん。今やってるよ」

 

 優愛のスマホに既読の文字がつくと、しばらくしてから廊下を走る音とともにオタク君のクラスメイトたちが次々と戻ってくる。

 クラスの外に出来た長蛇の列で状況を察し、それぞれの屋台の手伝いを始めるクラスメイトたち。

 

「去年も凄かったけど、今年もすごいことになってるな。小田倉、俺は何をすれば良い?」

 

「山崎その格好のまま来たの!? まいいや、クーラーボックスに入ってる冷凍おでんを次々と出してくれる?」

 

 炎の皇帝のコスプレ姿の山崎。

 クラスの宣伝のために、目立つ格好でビラ配りをしようと炎の皇帝のコスプレをしていたのだ。コスプレの理由の半分以上は彼の趣味だが。

 とはいえコスプレしているのは彼だけではない。他にもクラスメイトの何人かがクラスの出し物の宣伝のためという免罪符を使いコスプレをしていた。もちろん作ったのはオタク君である。

 

「しかし、小田倉はすげぇよな。二年連続でクラスの出し物大成功させてるとか」

 

「そんな事ないよ。皆頑張ったからだろ。山崎だってコスプレの勉強頑張って、注目を集めてくれてるじゃないか」

 

「それも小田倉あってだろ。去年も小田倉が色々やってくれなかったら上手く出来なかっただろうし、今年だって自分のことをやりながら俺とか他の奴らの面倒を見てたし、お前は凄いやつだよ」

 

「おだてたって何も出ないぞ。それよりさっきからチラチラ見てる人がいるから、撮影とかでファンサしてきな。こっちは人が足りてきたから」

 

「そうか。そうだな、盗撮みたいに撮られるよりはちゃんと撮ってもらいたいし、行ってくるわ。サンキューな」

 

 ちょっくら行ってくるわと言いながら、軽く手を上げて山崎が教室を出る。

 山崎に続き、他のコスプレしているクラスメイトも教室の外へ出ると、「おぉ」「本物みたい!」と言った声と共に「撮影していいですか?」という声が聞こえる。

 山崎と入れ替わるように、優愛がオタク君の手伝いに入る。 

 

「何々、男同士の友情ってやつ?」

 

「そんなんじゃないですよ」

 

 全く山崎は困ったもんだと言わんばかりに、肩をすくめオタク君が優愛に笑いかける。

 そんなオタク君に対し、優愛は首を横に振る。

 

「そんな事あると思うよ」

 

「私もそう思う」

 

「うぉっ!?」

 

 優愛に賛同するように、委員長がにゅっと生えてくる。両手に冷凍おでんを持ちながら。

 突然湧いた委員長に、オタク君と優愛が驚くが、全く気にした様子もなく、両手に持った冷凍おでんを客に渡し、接客をしている。

 

「そうそう。小田倉君が居てくれたからだとウチも思うよ」

 

「私もお姉ちゃんの意見に賛成かな。それと忙しいから小田倉君と優愛はいちゃつくの後にしろし」

 

 村田姉妹の発言でクラスメイトからは笑いが起き、屋台に来ていた客からは温かい目で見られるオタク君と優愛。

 二人が顔を赤らめ、しばらく無言になって接客していたのは言うまでもない。

 

「……ぷくーっ」

 

 委員長が少し膨れっ面になったのも、言うまでもない。

 

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