【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第153話(優愛ルート)「えっと、芹さんの相方先輩、ですよね?」

 ふぅと一息つき、優愛がオタク君に話しかける。

 

「やっと落ち着いてきたね」

 

「そうですね」

 

 怒涛のラッシュも始めのうちだけで、時間が経つにつれ、客足も遠のき始めていた。

 そして客が減るにつれ、手伝いに来たクラスメイトも仕事がなくなり暇を持て余すようになっていた。

 

「それじゃあ俺たちは、またビラ配りして宣伝してくるから」

 

 コスプレ部隊、もとい宣伝部隊の山崎を筆頭にコスプレをしているオタク君たちのクラスメイトが教室を出て行く。

 しばらく残っていた他のクラスメイトも、自分の仕事がなくなると、一人また一人と教室を出ていった。

 

「小田倉、鳴海さん。そろそろ交代の時間じゃない?」

 

 そう声をかけたのはクラスメイトの樽井である。

 樽井が時計に指差す。

 

「あれ。もうそんな時間だっけ?」

 

 そんなに時間が経ったかなと思い、オタク君は時計に目をやる。

 時計は既に昼の一時を指していた。

 いつの間にと驚くオタク君。優愛も同じように「おー、マジだ」と驚きの声を上げている。

 忙しくあったが、自分の発案した商品が売れるのを見るのは楽しかったからだろう。完全に時間を忘れ夢中になっていたようだ。

 

「丁度青塚と秋葉が戻ってきたし、二人とも交代して楽しんできなよ」

 

「うん。それじゃあ後を頼んでも良いかな?」

 

「おう、行ってこい。青塚ぁ、秋葉ぁ。小田倉と鳴海さんと交代してやってくれー」

 

 樽井が大きめの声で呼びかける。

 了解と返事をしながら、オタク君と優愛の代わりに屋台に入る青塚と秋葉。

 あとは宜しくと言いながら教室を出たオタク君と優愛。

 教室を出てすぐに、二人の足が止まる。

 

「優愛さんは、どこか行くところとかあります?」

 

「ううん。特にないよ」

 

「それじゃあ、一緒に来てほしいところがあるんですけど、良いですか?」

 

 少し恥ずかしそうに頬をかきながら優愛を誘うオタク君。

 優愛はどこか行こうにも、村田姉妹も、リコもまだクラスの店番が残っている。なので特に行く場所はなかった。

 むしろここでオタク君が「他に行く場所があるので」と言って別れられたらどうしようと考えてたほどである。

 そこにオタク君からの「一緒に回ろうという」誘いは、優愛にとっては渡船であった。

 

「うん。良いよ」

 

 当然、断るという選択肢はない。

 即返事をすると、オタク君は少しだけほっとした顔で「じゃあ行きましょうか」と歩を進める。

 そんなオタク君の隣に、優愛は早足で近づくと並行して一緒に歩き始めた。

 

「それで行きたい場所なのですが……」

 

 オタク君と優愛が辿り着いた先は、一年の教室である。

 

「相方、優愛先輩連れてきてくれたんすか!?」

 

 奥手(鈍感メガネ)のオタク君が、自分から優愛を誘う。

 当然、そんな甲斐性をオタク君が持っているわけもなく、実際のところはめちゃ美に優愛をクラスの展示に連れてきて欲しいと頼まれたからである。

 オタク君と優愛の姿を見つけると、めちゃ美が興奮した様子でオタク君の元へと小走りで近づいて行く。その後を一人のギャルが追いかけながら。

 

「別に自分で誘えば良かったんじゃない?」

 

「それはほら、なんか面と向かっていうの恥ずかしいじゃないっすか」

 

「えー、別に恥ずかしくないじゃん。ほらほら、私とめちゃ美ちゃんの中じゃん?」

 

「フヒッ、そ、そうっすか」

 

 オタク君相手にはテンション高めのめちゃ美だが、どうやら優愛と話すにはまだテンションが足りないようだ。

 少しだけもじもじしながら、オタク君と優愛をチラチラするめちゃ美。

 そんなめちゃ美の態度に、軽くため息を吐きながら、オタク君が優愛に話しかける。

 

「めちゃ美のクラスは出し物でギャルメイク講座をやってるから、優愛さんにめちゃ美がメイクしたいらしいです」

 

「あっ、もちろん嫌なら嫌で良いっすよ。自分の腕よりも相方の方が良さそうですし、自分なんかが優愛先輩にメイクするのはおこがましいっすから。その、すみませんっす。生まれてきてすみませんっす!」

 

「いやいや、全然良いよ。むしろ黒ギャルメイクやってみたかったし!」

 

 ってかめちゃ美ちゃん、早口言葉になってるのウケると笑いながら優愛が快諾をする。

 オタク君と海に行ってこんがり小麦色に日焼けした優愛。せっかく日焼けしたのだが、文化祭の準備や宿題、それに遊ぶことに夢中で黒ギャルメイクには挑戦していなかった。

 なので、めちゃ美にメイクして貰えるのは、優愛的には逆にありがたい提案である。

 だが、せっかくOKを貰えたというのに、肝心のめちゃ美は「やっぱ自分なんかが」と絶賛自虐中である。

 全くコイツはめんどくさい奴だとため息を吐きながら、めちゃ美の頭をはたき、喝を入れるオタク君。

 

「ちょっ、相方何するんすか!」

 

「優愛さんが良いと言ってるんだから、さっさとやれば良いだろ」

 

「でも、失敗するかもしれないっす……」

 

「その時は僕がなんとかしてあげるから」

 

「おぉ、流石相方っす!」

 

 二人のやりとりを見て、うんうんとうなづく優愛。

 優愛が自分でなんとかするという選択肢はないようだ。

 妹みたいでほっとけない。そんな感じでなんだかんだめちゃ美には甘いオタク君。

 そのおかげで、めちゃ美は優愛にメイクをする決心がついたようだ。

 

「そ、それじゃあやらせてもらうっす!」

 

 教室では、そこそこの女生徒や来客の女性が机を対面にしながら、メイクをして貰ったり、メイクの相談をしていたりしている。

 めちゃ美は余っている机に優愛を案内し、机の中からファイルを取り出し、何やら相談を始めている。

 ファイルは、どんなメイクでどう仕上がるかをめちゃ美が事細かに書いたものである。

 自分が近くに居れば、めちゃ美も優愛も一々相談しに来ると思い、めちゃ美の自由にさせるため、あえて教室の隅に移動するオタク君。

 

「えっと、芹さんの相方先輩、ですよね?」

 

「あっ、はい」

 

 先ほどめちゃ美の後をついて来ていたギャルが、オタク君に話しかける。

 以前めちゃ美にギャルにして欲しいと頼んでいた女生徒である。

 相変わらず知り合い以外の女の子以外と話すのは苦手なオタク君。

 声をかけられるとは思っておらず、ちょっとだけ緊張気味に上擦りながら返事を返す。

 

「相方先輩の事はいつも芹さんから話を聞いてます。ところで、相方先輩は普段芹さんとどんな話をしたりしてるんですか」

 

「えっと、どんな話と言われても、アニメとかゲームの話、かなぁ?」

 

「へぇ、私の前ではあまりしてくれないのに、相方先輩の前ではそういう話をしてくれるんですね」

 

 めちゃ美の友人のギャル。オタク君に薄ら笑みを浮かべるものの、目が全く笑っていない。

 オタク君になにやら対抗心を燃やしているようだが、残念ながら本当のライバルはめちゃ美が今興奮しながらメイクをしている相手である。

 傍から見れば怖いはずなのだが、オタク君、似たような女子で耐性を持っているためにビビる事なく、普通にめちゃ美の事で会話を弾ませ始めていた。




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