【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第157話(優愛ルート)「優愛さん、しゃがんでっ!」

 文化祭二日目。

 第2文芸部の出し物、ゲームカフェ「バーボンハウス」は大盛況なのは良いが、部員が全員いては窮屈になる。

 なので、オタク君は一度交代で休憩に行く事にした。

 オタク君が行けば、当然優愛もついてくる。リコもついてくる。更に委員長もついてくる。

 ついてくるのだが、流石に四人も抜ければ人を減らし過ぎになる。

 そして行われたジャンケン大会。賞品はオタク君と一緒に文化祭を周れる権。

 見事に勝ち抜いた優愛が、オタク君と文化祭を周れる権利を獲得したのだが。 

 

「優愛さん、こっちで良いんですか?」

 

「あぁ……うん……」

 

 オタク君と優愛は、文化祭の出し物などなさそうな、人気(ひとけ)のない校舎裏を歩いていた。

 何故こんな場所をオタク君と優愛は歩いているのか?

 文化祭一日目は、オタク君が優愛に合わせて行きたいところについてきてくれた。

 優愛としてはありがたい事である。であるが、それは自分本位になってしまう。

 オタク君にも文化祭を楽しんで欲しい。

 楽しんで貰うためにはどうすれば良いか?

 考えた結果、オタク君が行きたそうな場所に行く事だった。

 しかし、一年以上オタク君と付き合ってる優愛は、知っている。

 こういう時にオタク君を誘っても、周囲を気にして、恥ずかしがってしまい首を縦に振ってくれないという事を。 

 なので優愛は、人気のない場所でオタク君に「漫画研究部に行かない?」と誘うつもりだったのだ。

 事前に人気がない場所から漫画研究部へのルートも下調べしており、もし道中を恥ずかしがるとしても人目に付かないルートがあるよと言おうと考えていた。

 だが、その考えは甘かったことに気づく。

 

 文化祭である。文化祭は仲間内で盛り上がるだけが文化祭ではない。

 恋人同士でコッソリいちゃつくのも文化祭の醍醐味である。

 そしてコッソリいちゃつくのだから、普段人気のない場所は、いちゃつく恋人たちの大人気スポットへと変貌する。

 人気のない場所を探し、焦る優愛。

 対してオタク君も焦っていた。

 行きたい場所があると言われついていったら、人気のない校舎裏。

 周りはいちゃつくカップルだらけ。

 なおも前を歩き、人気のない場所を探すように、というか実際に探している優愛。 

 これで期待をするなという方が無理である。

 

(優愛さん、人気のない場所に来てどうするつもりなんだろう)

 

 オタク君が思わずキョロキョロすれば、物陰でいちゃつくカップルが見える。

 ちょっと探せば簡単に見つかるくらいの距離に何組ものカップルが密集している。

 密集しているというのに、「二人きりだね」などと愛を囁き合っているカップルたち。お互いの相手しか見えていないのか、それとも不文律の不可侵条約でも結ばれているのか。

 そんなカップル密集地帯を抜け、やっと他よりも人がいない場所に着いた優愛とオタク君。

 ここでやっとオタク君を誘える。

 

「ねぇ、オタクく……」

 

「しっ!」

 

 そう思った優愛の口を、オタク君が手で塞ぐ。

 

「優愛さん、しゃがんでっ!」

 

 小声で優愛に話しかけるオタク君。

 どうしたのと答えたい優愛だが、オタク君の真剣な表情に、何も言えなくなり、大人しく言われたとおりにその場にしゃがみ込む。

 

「ほら、あれ」

 

 そう言ってオタク君が指さした先には、一組のカップルがいた。

 女生徒が目を瞑りながら、顔を上げている。

 そんな女生徒の反応に、周りをキョロキョロと見回す男子生徒。

 優愛もオタク君も、カップルからは小声の会話は聞こえない程度には離れている。

 だというのに、男子生徒が緊張からつばを飲み込む音が聞こえたような気がした。

 そして、女生徒の肩に手を置くと、そっと唇を重ねる。

 

 唇を重ねたままのカップル。

 しばしの沈黙のあと、風の音にびくりと反応すると、カップルは気まずそうにしながら、その場を離れた。

 

「……凄い物を見ちゃったね」

 

「はい」

 

 オタク君も優愛も顔が真っ赤である。

 キスシーンならテレビや映画でいくらでも見たことがある。

 だが、こうして目の前でキスするところを見るのは、全然違っていた。

 そして、優愛は気づく。

 オタク君を誘うために人気のない場所に連れて来ていたが、人気のない場所はカップルだらけだったと。

 これではまるで、自分がオタク君を誘っているみたいではないかと。まぁ(漫画研究部の出し物を見に行こうと)誘っているわけではあるが。

 

 普段よりも明らかに距離の近い二人。

 もしかしたら、自分の鼓動が聞こえてしまっているのではないかと不安になる距離である。

 立ち上がるなり、離れるなりすれば良いのだが、唐突の急接近に頭が回らず。身動きが出来ないでいた。

 何か言おうにも、上手い言葉が見つからないオタク君と優愛。

 どう声をかけようかと、オタク君が優愛を見る。

 同タイミングで、優愛も同じ事を考えてオタク君を見た。

 視線がバッチリ会い、二人の気恥ずかしさは加速する一方である。

 

「そ、そういえば友達同士でもキスしたりするらしいですね」

 

 恥ずかしさを誤魔化すために、適当な話題を出すオタク君。

 まるで、優愛とキスしたいと言わんばかりの発言である。

 オタク君にやましい気持ちは微塵もない。

 何かしゃべらなければと思い、何も考えずに話題を口に出しただけである。

 何も考えずに出る話題というのは、大抵直前までの行動に関連付けたものが出てくる。

 直前まで見ていたのはカップルのキス。なのでキスの話題が出てしまったのだ。よりにもよってこのタイミングで。

 

「はっ!?」

 

 そんな事を言われれば、優愛は、いや、優愛じゃなくても当然こう思うだろう。

 お前は何を言ってるんだ、と。

 友達同士でキスをする? そんなわけないだろうがと。

 喉元まで出かけた言葉を、優愛は必死に飲み込む。

 パニック状態の優愛の頭に浮かんだのは、かつての村田姉妹との会話である。

 

『ねぇねぇ、キスは雰囲気が大切ですって、その雰囲気にするにはどうすれば良いのかな?』

 

『そりゃあ、キスしても良いって感じにするんだろ?』

 

(もしかして、今ってキスしても良い雰囲気じゃない!?)

 

 じっとオタク君を見る優愛。

 だが、オタク君は目を泳がせながら愛想笑いを浮かべるばかりである。

 

『でも相手がキスして良い感じか分からなかったりするじゃん?』

 

『あー、確かにな』

 

『そういう時は『良いよ』とか言うべきだったんじゃね?』

 

『お姉ちゃんだったら、どうやってそういう雰囲気にする?』

 

『え、ウチ!? あー……『して』って言うかな』

 

「オタク君……」

 

「あっ、はい」

 

「キス……して?」




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