【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第158話(委員長ルート)「うん。負けないから」

 体育館では、吹奏楽部の演奏が終わると同時に、拍手が鳴り響く。

 

「まさか、アニメの最終話を完全再現するとは思いませんでしたね」

 

「ウチの学校って、アニメや漫画に対しての理解があるよね」

 

「確かに、案内所の名前も毎年SOS団ですしね」

 

 オタク君たちの通う秋華高校は、決してオタクが多いわけではないが、オタクに対しての偏見や迫害は少ない。

 なのでイベント事となると、オタクのオタクめいた提案でも、楽しければOKと生徒も教師も全員が全力で乗っかるのだ。

 もちろん、R18だったり、あまりにも行き過ぎた内容だった場合はすぐさまストップが入るが。

 

 体育館を出ていく人の列を横目に、オタク君と委員長はまだ座ったまま話し込んでいる。

 今出ようとしても、出る人の列に飲まれすぐには出られない。

 それなら無理に今すぐ出ようとせず、もうしばらく待って人が減ってから出よう。

 そう提案するオタク君に対し、委員長はそうだねと頷く。

 

(それならもっと小田倉君と二人きりでいられるし)

 

 もし体育館を出た際に、ばったり優愛やリコと鉢合えば合流する事になるだろう。

 せっかく二人きりのチャンスなのだから、一分一秒でも長く一緒にいたい。

 いじらしい恋心である。

 なので、少しでも会話を伸ばせるように、アニメや漫画の話題を絶やさないようにしている。

 

「そろそろ出ましょうか」

 

 とはいえ、それでも限度がある。

 人が減り、次の出し物の準備が始まると、今度はそれを見るために生徒たちが体育館へと入ってくる。

 このまま残り続ければ、入ってくる人の波に飲まれ出られなくなる。

 

「うん。そうだね」

 

 残念な気持ちを顔に出さないように、笑顔を作る委員長。

 立ち上がり、手を差し出すオタク君。

 その手を引き、委員長も立ち上がる。

 少しだけ遅い歩調で体育館を後にするオタク君と委員長。

 体育館を出ても、途切れることなくアニメや漫画の事で会話が続いていく。 

 この時間がずっと続けば良いのに。そう思うのは委員長だけではない。

 実はオタク君も、先ほどから委員長との会話を出来るだけ長引かせようとしていた。

 

 出来るだけ二人の時間が長く続くように、文化祭実行委員の見回りと称し、優愛やリコが行かなさそうな場所を選ぶオタク君。

 別に優愛やリコが嫌いだから避けているわけではない。

 ただ、こうして素直なオタク会話をしたい時がオタク君にもある。

 文化祭を見て周り、まるでアニメのシーンのようだねと言って笑い合う。

 優愛やリコではそこまでのオタク会話は中々出来ず、チョバムやエンジンやめちゃ美は斜に構えているところがあるので、変な地雷を踏みやすい。

 なので、委員長がパンピー過ぎず、かといってオタク過ぎるわけでもない、丁度良い位置なのだ。

 

 お互いに心地よい距離感なのに、素直な気持ちを言い出せず。

 楽しい時というのはあっという間で、気が付けば夕方になっていた。

 スピーカーからは、文化祭の終了を告げる挨拶が聞こえてくる。

 

「やばっ、第2文芸部ほったらかしにしてた」

 

「あっ……」

 

 完全に第2文芸部の手伝いが頭から抜けていたオタク君と委員長。

 慌てて部室に戻る。

 第2文芸部の部室のドアを開けると、既に客の姿はなく、いつものメンバーが揃ってTVゲームに熱中していた。

 

「あっ、オタク君おかえりー」

 

「こんな時間まで仕事してたんすか。文化祭実行委員って大変っすね」 

 

 小言の一つは覚悟していたオタク君と委員長だが、誰一人責めようとする者はいない。

 校内放送で文化祭実行委員として呼び出された事を知っているので、それで今まで対応していたと思っているからである。

 本当は二人で文化祭を楽しんでいただけなのだが、申し訳ない気持ちを抱えながら、その勘違いに乗っかるオタク君と委員長。

 

「そうだ。オタク君も一緒にやろう!」

 

「それなら拙者が小田倉殿と交代でござるな」

 

 ドアの近くで罪悪感から苦笑いを浮かべていたオタク君の手を引き、輪の中に引き入れる優愛。

 

「あっ……」

 

 名残惜しそうに、オタク君が優愛に手を引かれるのをただ見つめる委員長。

 そんな委員長の態度に誰も気が付かない。

 オタク君が参戦するということで、チョバムがゲームのコントローラーをオタク君に渡す。

 

「よーし、負けないぞ」

 

「お手柔らかにお願いします」

 

 そう言って笑い合う優愛とオタク君。

 二人の様子を見て、委員長が静かに唇を噛みしめる。

 

「わ、私もやる!」

 

 オタク君がチョバムからコントローラーを受け取り、ゲーム開始しようとした時だった。

 普段なら一歩離れた場所で見ている事が多い委員長が、珍しく参加表明をした。

 大人しいイメージとは裏腹な、力強い声で。

 

「それじゃあアタシが」

 

「いえいえ、ここは某が委員長氏と交代するですぞ」

 

 リコの代わりに、エンジンが交代すると名乗り出る。。

 オタク君の隣に移動しようとしていた優愛に気づきながらも、そうはさせまいとオタク君の横に素早く移動する委員長。

 

「おっ、委員長先輩も参戦っすね!」

 

 委員長はエンジンからコントローラーを受け取ると、一度深呼吸をしてから、コントローラーを強く握る。

 

「うん。負けないから」

 

 軽快な音楽と共に、ゲームは始まる。

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