【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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閑話「ラブおた」

「ねぇねぇオタク君。この服どう?」

 

 唐突に開かれるオタク君の部屋のドア。

 ドアの先には、真冬だというのに、ショート丈のヘソ出しTシャツにホットパンツと、まるで真夏のような出で立ちの優愛が、オタク君に前かがみでポーズを決める。

 目のやり場に困るなと、頬を掻きながら目線を逸らしたりしつつも、チラチラと優愛を見るオタク君。

 

「良いと思いますけど、ちょっと露出が多いんじゃないかなぁと思います」

 

 優愛がいきなり入ってきた事を特に気に留める様子もなく、オタク君は素直な感想を述べる。

 

「おい優愛。せめてノックくらいしたらどうだ?」

 

「トイレじゃないんだから良いじゃん」

 

「マナーだぞ、マナー」

 

 優愛の反応に、軽くため息をつくリコ。

 全くと言いながらも、目線は優愛ではなくオタク君を見ている。

 気の利く性格のオタク君は、当然そんなリコの目線の意図を理解している。

 

「リコさんも、似合ってますね」

 

「そ、そうか。実はこれ前に買ったやつだけど、アタシじゃガキっぽくなるから似合わないと思ってずっと着てなくてさ」

 

「そんな事ないですよ。本当に似合ってますよ」

 

「そうだよ。せっかく選んであげたのに、着ないまま夏が終わっちゃったし」

 

 白のワンピースに身を包んだリコが、少しだけ照れくさそうに笑う。

 この日はファッションショーをしようとオタク君の妹の希真理が言い出し、優愛やリコが呼び出されていたのだ。

 

 来年から高校生になる希真理にとって、ファッションはどうしても外せない。

 女物のファッションセンスは何故かバツグンの兄に頼りたいところだが、本人の私服のセンスが壊滅的な事を考えると、本当に大丈夫なのか不安になる。

 なので、優愛やリコを呼んだのだ。

 ちなみに希真理は現在着替え中である。

 

「オタク君。この服装だとどんなメイクが似合うかな?」

 

「そうですねぇ……」

 

「あっ、小田倉。もしよかったら次はアタシもお願いして良いか?」

 

「はい、良いですよ」

 

 どんなメイクを試そうか。そう思い、部屋のドアを閉めた時だった。

 コンコンと、ノックする音がオタク君の部屋に鳴り響く。

 小さな悲鳴を上げ、オタク君にしがみつく優愛とリコ。

 彼女たちだけでなく、オタク君も驚きの表情を見せる。

 何故なら、ノックはオタク君の部屋にある窓からしているからである。

 オタク君の部屋は二階にある。だというのに、なおも窓からノックの音が聞こえてくるのだ。

 カーテンを閉めているために、窓の外の様子が分からない。もしかしたら泥棒かもしれない。

 一呼吸おき、一度自分を落ち着かせ、軽く優愛とリコに頷き、ゆっくりと窓へと歩を進めるオタク君。

 そして、震える手で、カーテンを開けた。

 

「お兄さん、開けて」

 

 そこいたのは、オタク君の妹の希真理の友達、向井玲である。

 ガタガタと震えながら、なおも窓を叩いている。

 急いで窓を開け、手を貸すオタク君。

 オタク君の手を借り、なんとかオタク君の部屋に入る玲。

 

「えっ、なんで!?」

 

「驚かせようと思って登ってたら、思った以上に寒くて」

 

 だったら諦めて玄関から来れば良いだろ。誰もがそう思った。

 そして口に出そうとした。その時だった。

 

「寒いんで温まらせてください」

 

 ブルブル震えながらオタク君に抱き着く玲。

 オタク君の体温で暖を取り、幸せそうな顔を見せる。

 

「えっ、ちょっと!?」

 

「お兄さんって体温高い方です? 凄く暖かいんですけど」

 

 引きはがそうとするも、下手に触れば通報案件になりかねない。

 なので、あたふたするしか出来ないオタク君。

 オタク君が暖かいからか、それとも抱き心地が良いのか、更に力を入れ抱きしめる玲。

 ドタドタと、オタク君の部屋に足音が近づく。

 

「お兄ちゃん、さっきから騒いでどうしたの?」

 

 ノックもなしに、オタク君の部屋のドアを開ける希真理。

 

「……お兄ちゃんのヘンタイ!!!!」

 

「誤解だ!!!!」

 

「お兄さん、今日はメイクを教えて貰えると聞きました。宜しくお願いします」

 

「うん。分かったから一旦離れてくれる!?」

 

 オタク君と希真理に言われ、名残惜しそうに離れる玲。

 そのまま引きずられるように希真理に連行されていく。

 

「いやぁ、驚きましたね」

 

 ハハハと笑いながら、窓を閉めるオタク君。

 暖房をつけている室内だが、窓を開けたせいで一気に室温は下がっていた。

 そして、室温が下がった部屋で、真夏のような格好の優愛とリコが寒さに震えるのは当然である。

 

「寒くなったので、一旦暖房を強めましょうか」

 

 二人の様子に気づき、暖房の設定を変えようとリモコンに手を伸ばそうとするオタク君。

 そんなオタク君の進路をふさぐように、優愛が立ちはだかる。ニヤニヤと笑みを浮かべ。

 なんとなく優愛が何をしようとするか予想がついたリコが止めに入るが、時すでに遅し。

 

「オタク君で温まらせろー」

 

 手をワキワキしながらオタク君に近づく優愛。

 思わず後ずさるオタク君だが、背にはベッド。既に逃げ道はない。

 逃げ道はないというのに後ずさった結果、ベッドに足を取られ、背中から倒れ込む。

 

「あっ!」

 

 バランスを崩したオタク君を支えようと、咄嗟に手を伸ばす優愛とリコ。

 が、オタク君を支える事が出来ず、優愛とリコも巻き込まれる形で盛大にベッドに倒れ込む。

 ドタドタと、オタク君の部屋に足音が近づく。

 

「お兄ちゃん、今大きい音がしたけど、どうしたの?」

 

 ノックもなしに、オタク君の部屋のドアを開ける希真理と玲。

 

「……お兄ちゃんのヘンタイ!!!!」

 

「誤解だ!!!!」

 

 ケガをしないようにと、抱きかかえる形でベッドに倒れたオタク君。

 傍から見れば、優愛とリコを抱いてベッドに寝転んでいるように見えなくもない。

 ラブコメのお決まり展開である。

 

 この後、誤解を解くのに時間がかかったり、玲が参戦してしっちゃかめっちゃかになったのは言うまでもない。

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