【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第170話「そういえば、チョバムとエンジンに報告しなきゃ」

 まだコミフェ閉会まで一時間以上時間があるが、完全に撤収準備を済ませたオタク君たち。

 手伝いに来てくれたクラスメイトたちは、せっかく来たのだからとコミフェ内を散策している。

 完売はしたが、完売した事を知らずに時折第2文芸部の新刊を買い求めて訪れる客がいるため、第2文芸部のメンバーはサークルで居残りである。

 

 特に問題が起きる事もなく、閉会時間まで雑談を楽しむ第2文芸部のメンバー。

 色々と大変ではあったが、終わってみれば良い思い出である。

 帰りの電車内では、第2文芸部や手伝いに来てくれたクラスメイトたち全員で今日の思い出を振り返っている。

 

「そういえば、チョバムとエンジンに報告しなきゃ」

 

 忙しかった事と、完売した事でテンションが上がり、完全に二人の事を忘れていたのは、なにもオタク君だけではない。

 この場にいた全員が、完全に忘れていた。

 

「『同人誌は完売したよ』っと、送信」

 

 スマホでチョバムとエンジンにメッセージを送るオタク君。

 返事が来たのは、電車を降りて駅構内に着いた時だった。 

 

「あれ、チョバムとエンジンから通話だ」

 

 メッセージアプリで二人からグループ通話が来ている事に気づき、オタク君が通話にでる。

 

「もしもし」

 

『完売ってどういう事でござるか!?』

 

『某、インフルで小田倉氏が完売したってメッセージの幻覚が見えてるですぞ』

 

 オタク君が電話にでるなり、完売って本当なのかと何度もまくしたてるチョバムとエンジン。

 興奮のあまり声量が大きくなるチョバムとエンジン、スマホから他のメンバーにも聞こえるほどである。

 完売がどれほど凄いのか、オタク君、委員長、めちゃ美以外はイマイチピンと来ていないために、チョバムとエンジンの興奮する様子に「そんな大げさな」といった感じで軽い苦笑を浮かべる。

 

『そうそう、エンジンが村田さんに手伝いお願いしてくれたんだって、おかげで助かったよ』

 

『いやいや、完売したならお願いした意味なかったですぞ』

 

『何言ってるんだ。皆がいなかったら行列捌けなかったよ』

 

『行列って、スタッフにお願いしたら整列してくれるでござるよ』

 

『えっ?』

 

『えっ?』

 

『えっ?』

 

 三者三様の「えっ?」である。

 

『その為に村田さんにお願いして他の人連れてきてもらったんじゃないの?』

 

『拙者は、売れ残った同人誌が入った段ボールを持ち運ぶための手伝いと思ったでござるが』

 

『某もそのつもりで頼んだですぞ』

 

『それは会場で宅配を手配出来るじゃん』

 

『えっ?』

 

『えっ?』

 

『えっ?』

 

 三者三様の「えっ?」である。

 オタク君、チョバム、エンジンは、今回でコミフェ参加が二回目。

 行列が出来てしまった場合、スタッフに相談しお願いすれば整列を手伝ってもらえる事も、持ちきれない荷物は、現地に宅配業者がいるので宅配を手配することが出来る事も当たり前の知識ではない。

 完全にホウ・レン・ソウを怠ったやらかしである。

 まぁ、今回はそれが良い方向に働いたわけだが。

 

 一瞬の間を置き、同時に笑いだすオタク君とチョバムとエンジン。

 その会話を聞いていた他のメンバーも「何だよそれ」と言いながら笑っている。

 つまるところ、初めからちゃんと調べておけば良かっただけの話である。

 

 だが、誰もそれを咎めたりはしない。

 確かに自分たちがやったのは徒労に近い行為かもしれない。

 それでも、全員で力を合わせて頑張ったことは楽しかったのだから。

 実際オタク君たちがちゃんと調べていなかったので、徒労ではなくちゃんとした成果を出しているわけだが。

 

『小田倉殿、売り上げはどれくらいでござるか』

 

『一部五百円だから、千部でざっと五十万くらいだよね』 

 

『……小田倉氏、全員にバイト代として一万、いや二万円づつ渡して、焼肉を驕るですぞ』

 

『元々売れ残ってマイナス予定だったお金でござるし、拙者もチョバムの意見に賛成でござる』

 

『うん。そうだね』

 

 チョバムとエンジンなら、きっとそう言うだろう。

 通話が来た時点でなんとなくその話が出るだろうと予想がついていたので、オタク君としては特に反対意見はない。

 これだけ手伝いをしてもらい、完売したというのに何もお礼はしないというのはオタク君的にも思う事もあったので。

 

『さてと、拙者たちはそろそろ寝るでござるよ』

 

『うん。さっきから声、大分辛そうだしゆっくり休んでよ』

 

『そうですな。治った暁には、完売祝いをするですぞ』

 

 それじゃあまた、と言ってオタク君は通話を切り、スマホをしまう。

 今日のお礼の話をしようとするオタク君に対し、通話内容を聞いていた面々が「お金はいらないよ」と先に反応を示す。

 そっか、それじゃあ仕方ないね。となるわけもなく。

 

「山崎」

 

「うん?」

 

「前に、コスプレを手伝ったお礼と言ってお金渡して来たのに、自分は受け取らないのは卑怯じゃない?」

 

「む、むう……」

 

「浅井、樽井、池安はこのお金あれば、もっと面白い事をして盛り上げてくれるだろ? それに青塚君と秋葉君は……」

 

「あー、分かった分かった。喜んでお金は受け取るし、焼肉も奢ってもらうから無理すんな」

 

 両手を上げ、降参のポーズをする青塚。

 文化祭や、その他イベントで誰もがオタク君にお世話になっている。だから今日は自分たちが返す番だと思い、彼らはやってきた。

 だからオタク君からのお礼なんていらないし、受け取るつもりはない。

 それでもと、必死に渡すための言い訳を考えるオタク君。

 今日は手伝いに来たのであって、困らせるつもりではない。

 なので、他の人も受け取るならと、なんだかんだ言いながらも全員がオタク君からバイト代を受け取った。それでオタク君が満足するならと。

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