【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第19話「だって、オタク君本当に凄かったし!」

「オタク君おはよ……どうしたの?」

 

 朝からオタク君が囲まれ人気者になっている。

 

「小田倉君、触っても良い?」

 

「小田倉、お前オタクと思わせてなんだその上腕二頭筋は!?」

 

「えっ、マジで本物の筋肉なのこれ?」

 

 衣替えにより、生徒たちは皆夏服になっている。

 男子も女子も、暑さ対策のために布部分が薄くなる。

 

 薄くなるとどうなるか?

 筋肉ムキムキのオタク君が目立つ事になる。

 

 わらわらと人が寄ってきては、身体をベタベタ触られるオタク君。

 まんざらでもない様子だ。

 

 オタク君の周りが人だかりで近づけない優愛に、村田(姉)が話しかける。

 

「優愛、見てみ。小田倉君筋肉ヤバくね?」

 

「うん知ってるよ。オタク君脱いだらマジ凄いから!」

 

 優愛の発言で、教室がシーンとなった。

 言った本人も、オタク君も、何がおかしいのか分かっていない様子だ。

 

「えっ、あんたらもうそこまでいったの?」

 

 村田(姉)の言葉に対し、なおも頭に「?」を浮かべる優愛。

 逆にオタク君はその意味に気付いたようだ。

 

「ま、前に優愛さんとリコさん3人で温水プールに行ったんですよ。ほら、あそこ、大きいスライダーがあるとこ!」

 

 オタク君の焦り方と説明の仕方で、優愛もようやく言葉の意味を理解したようだ。

 みるみるうちに顔を赤らめていく。

 

「ちょっと、いったってプールだし! 変な意味じゃないし!」

 

「いや、脱いだら凄いって流石にやべーって、言い方やべーって」

 

「だって、オタク君本当に凄かったし!」

 

「だから言い方ァ!」

 

 気が付けばオタク君ではなく、優愛をいじるムードになっていた。

 必死に否定をしようとすればするほどアホな事を言ってしまう優愛。

 周りもそれが面白くて、ついつい悪ノリが加速してしまう。

 

(べ、別にオタク君とは、まだそういう関係じゃないし……)

 

「実際のところ、優愛って小田倉君の事どう思ってるの?」

 

(どうって、オタク君は面白いし、優しいし、色々してくれるし、全然嫌いじゃないし……あれ?)

 

(これは優愛さんが迷惑がってるな。確かに僕が相手だと嫌だろうし、ここは僕が何とかしなきゃ)

 

「皆、僕を見てくれ!」

 

 オタク君が叫ぶと、優愛の考えが中断された。 

 そして先ほどまで優愛をからかっていた声が「おー!」という歓喜の声に変わる。

 

 オタク君は上着を全て脱ぎ捨て、マッスルポーズを決めていた。

 

「鍛えたこの筋肉、凄いでしょ!」

 

 優愛の為に、オタク君は文字通り一肌脱いだのだ。

 制服から見える腕だけでなく、上半身全てが鍛え上げられ、胸元はピクピクと踊り、腹筋は6つに綺麗に分かれている。

 

「やっべ、写真撮らせてよ」

 

「小田倉君。お願い胸触らせて!」

 

 記者会見と言わんばかりに、写真をカシャカシャと取られるオタク君。

 サービスをするようにポーズを変えていくと、そのたびに歓声が上がる。

 

 オタク君の筋肉を見て、一部の女子は恍惚の表情に変わっていく。筋肉フェチなのだろう。

 胸元を開けて自慢げに胸筋を見せていた男子は、ガックリと項垂れながら胸元のボタンを締めていく。

 まぁ、明らかにレベルの違う筋肉を見せられてしまっては、仕方がないといえる。

 

「ってか、そんなに筋肉あるなら、腕相撲とかめっちゃ強いんじゃない?」

 

「小田倉君、2人がかり相手でも勝てるんじゃない?」

 

「流石にそれは無理ですよ」

 

「良いからやってみてよ。ほら、男子誰か挑まないの?」

 

 流石に2人がかりなら勝てるだろう。そうは思ってもなかなか立候補する者は居ない。

 もし2人がかりで負ければ、流石に恥ずかしいレベルではないからだ。

 

 結局候補者が出ず、近くにいた男子2人が女子に無理やり出される事になる。

 男子は嫌々言いながらも、女子に「早く行きなよ」と言って背中を押されるのはちょっと嬉しそうだ。

 どんな形でも女子に触れられるのは嬉しい。思春期である。

 

「始めるよ、レディー、ゴー!」

 

 勝負は一瞬で決着が付いた。

 オタク君の敗北である。

 

 まさかのオタク君の敗北に歓声が沸き、勝った男子の片方には「凄い」と言いながら女子が腕を絡ませてくる。

 多分この女子は勝った男子に気があったのだろう。どさくさに紛れて策士である。

 まぁ、男子も腕に女子の胸が当たって良い気分なので、どちらもWIN-WINだろう。

 

「オタク君よわーい」

 

 ゲラゲラ笑いながら、オタク君の背中をバシバシ叩く優愛。

 

「流石に2人がかりでは勝てませんよ」

 

「そんな事言って、1対1でも負けたらどうするよ?」

 

 うりうりと言いながら、オタク君の筋肉をツンツンしていく。

 敗者ではあるが、優愛に絡まれたので、それはそれでご褒美だろう。

 

 となると今この場に居る敗北者は、勝ったのに女子からスキンシップが何一つ飛んでこない、勝った男子の片割れだけになる。

 男子からはチヤホヤされているが、その背中には哀愁が漂っている。

 

「じゃあ次、小田倉にタイマン挑むわ!」

 

 気が付けば、始業のチャイムが鳴るまで男子の腕相撲大会が始まっていた。

 少しでも女子に良い所を見せたい男子が集まり、女子もこの状況を生かして気のある男子に近づいていく。

 青春である。

 

 ちなみにオタク君の腕相撲は、まぁまぁ強いという結果だった。

 筋肉があっても腕相撲が強いわけではないので。

 

「やった! オタク君勝った! 強い強い!」

 

 腕相撲はクラスで一番にはなれなかったが、もっと良い物をオタク君は手に入れているので十分だろう。

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