【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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リコルート 5

 六月。

 オタク君たちは全員無事に進級し、オタク君、優愛、リコ、委員長、エンジン、チョバムは三年生になった、

 クラスは優愛、村田歌音がB組、オタク君、リコ、委員長がE組、そしてエンジン、チョバム、村田詩音がD組である。

 めちゃ美も勿論二年生に進級し、心機一転の第2文芸部。  

 その第2文芸部は現在、引っ越しの準備を進めていた。

 

 何故第2文芸部が引っ越す事になったのか?

 

「お兄ちゃん。これも持っていくの?」

 

「あぁ、うん。これどうしようか?」

 

 秋華高校に、新入生で入ってきた希真理。

 そして希真理と共に池安凪、向井玲が第2文芸部に入部し、合計十人の大所帯となったためである。

 流石に物置のような部室に十人は厳しいので、新しくちゃんとした部室をあてがわれる事になったのだ。

 

 狭い部室の割には色々な物が置いてある第2文芸部。まぁほとんどがオタク君、チョバム、エンジンの私物なのだが。

 元々物置部屋として使われていたので、廃部になった部活の物もいくつかある。

 その仕分け作業をしているのだが、その中で持っていくか悩む物もいくつかあったりする。

 

 今オタク君を困らせているのは、スカスカなボディ、ヘラの腕、股間部に取り付けられた謎の銃口、トドメにアホっぽい6角形の顔。先を行く者。そう、先●者である。

 動かそうにも、適当に切り貼りしただけなので下手をしたら壊れてしまいかねない。

 もし壊さずに新しい部室へ持って行けたとしても、全長160cmを超える大型模型。はっきり言って邪魔である。

 

「チョバム、エンジン、これどうする?」

 

「あー……拙者は置いていった方が良いかなと思うでござる」

 

「某も、コイツはここにいた方が幸せだと思うですぞ」

 

 初めての文化祭で作った物だから、オタク君、チョバム、エンジンとしては出来れば持っていきたい気持ちがある。

 だが、現状部活の男女比は3:7。流石にコイツに執着すると女子からの目が痛そうなので、持っていきたいと言い出せないのである。

 ただのロボットなら良かったのに、何故そんなところ(股間部)に銃口を取り付けてしまったのかと悔やまれる。

 

「そうだね。壊れちゃうかもしれないしね」

 

 自分に言い聞かせるように、そう口にしてオタク君が先●者から目を逸らす。

 それぞれが雑談をしながら荷物を仕分けしていく。

 

「相方、委員長先輩は?」

 

「委員長は文化祭の実行委員会に出てるから、今日は来れないって」

 

「フーン、そっすか」

 

 現在部室にいるのは、委員長を除くオタク君、優愛、リコ、チョバム、エンジン、めちゃ美、希真理、凪、玲の九人。

 それぞれがそれぞれの邪魔にならないように、部屋の四方にグループで分かれ荷物の仕分けをしている。 

 

「そういえば、皆クラスって文化祭の出し物決まってるっすか?」

 

 荷物の仕分けもひと段落着き、めちゃ美がそう言うと、オタク君たちが返事をする前に希真理たちが食いつく。

 

「お兄ちゃん、私たちのクラス何も決まってないんだけど、こういうのってどうやって決めてる?」

 

「僕らのクラスも何も決まってないよ。毎年皆好き勝手にあれしたいこれしたいって言って、最後はなぁなぁで決まってる気がするけど」

 

「そうなんですか!? この学校の文化祭って力入れてるからもっとこう、皆で力を合わせてみたいな感じだと思っていました」

 

「僕が言うのもなんだけど、やりたがらない人も少なくないからね」

 

 そう言って、やりたがらない人こと、チョバムとエンジンを見るオタク君。

 オタク君だけでなく、全員から注目を受け、苦虫を潰したような顔で目を背けるチョバムとエンジン。

 

「某たちはいつも通りですぞ」

 

 三年生になり、最後の文化祭だというのに、相も変わらずの二人である。

 

「えー、チョバム先輩とエンジン先輩はやる気ないんですか? 見に行くつもりだったんですけど」

 

 そんなチョバムとエンジンに近づき、腕を絡ませ「文化祭楽しみましょうよ」と玲が言う。

 流石にその距離はガチ恋寸前の距離である。

 明らかなオタサーの姫行動なら、ネット知識で耐性の有るチョバムとエンジンだが、天然が相手では分が悪いようだ。

 顔を赤らめながら、必死に玲の姿を見ないように顔を背ける二人。

 このまま玲にじゃれられては理性が保てなくなるチョバムが、彼女の興味を移すために話題を変える。

 

「そ、それより、成海殿のクラスは何するか決まってるでござるか?」

 

「あー、こっちもまだ何も決まっていないかな」 

 

「まだどこも決まってない感じなんですね」

 

 そっかーと言いながらも、いまだに腕を離そうとしない玲。

 

「ところでめちゃ美氏、さっきからスマホで写真撮るのはやめて欲しいですぞ?」

 

「詩音先輩に送るために撮ってるっす」

 

「やめるですぞ。それはマジでやばいですぞ!!」

 

 玲が絡ませた腕を振り払い、めちゃ美からスマホを奪い取ろうとするエンジン。

 だが、下手に触れば問題になるので、手出しができず、「ぐぬぬ」とめちゃ美の前で顔を青くしている。

 そんなエンジンを見てニヤニヤしながら「一枚千円で手を打つっすよ」とめちゃ美が揺すり始める。

 流石にそれはやってはいけないラインを超えているので、オタク君の拳骨がめちゃ美の頭に振り下ろされたのは言うまでもない。

 

「先輩たち、どうしたんですか?」

 

 なおもチョバムに腕組した玲がキョトンと首を傾げる。

 

「玲ちゃん。お兄ちゃんに腕組してあげたら分かるよ」

 

「……? こうですか?」

 

 チョバムから腕を離し、言われるままに、オタク君に腕を絡ませる玲。

 ちょっとだけチョバムが名残惜しそうな顔をしたのは内緒である。

 

「おい、小田倉!」

 

「えっ、僕が悪いの!?」

 

 直後、目を吊り上げたリコがオタク君と玲の間に割って入り、無理やり腕を離させる。

 リコに説教をされ、困り顔のオタク君。

 その様子を見て、やっぱり分からないという顔をする玲。

 

「玲ちゃん、男の人に気軽に腕組んじゃだめだよ?」

 

 この先苦労が増えるなと、ため息を吐く凪を見て、玲は更に首を傾げていくのだった。

 

 そして数日後。

 

「小田倉。ちょっと話がある」

 

「どうしたんですか?」

 

 昼休みに入り、昼食を取ろうとしたオタク君にリコが話しかける。

 

「説明するよりも見て貰った方が早いな。ちょっとついて来てくれ」

 

「分かりました」

 

 よく見ると、少し不機嫌そうな表情をしたリコを見て、もしかして何かやらかしたか不安になりながらついて行くオタク君。

 教室を出て、向かった先はB組の優愛の教室である。

 

「優愛さんに何か用事でも?」

 

 教室の中を覗き見ようとするオタク君を、慌ててリコが抑える。

 口の前に指を当て、静かにしろとジェスチャーをしている。

 黙ってコクコクとオタク君が頷くと、リコが一人の女生徒を指さす。

 リコに指さされた女生徒をオタク君が見る。見覚えのない女生徒を見せてどうしろというのか。

 そう疑問に感じた時だった。

 

「見て見て、今日もシブタク自撮り送って来てるんだけど」

 

「ちょっ、彼氏君自撮り送り過ぎじゃね?」

 

 リコが指さした女生徒が、他の女生徒二人と仲良く話をし始めた。

 そこまではよく見る光景である。だが。

 

「彼氏と言えば、成海さんって、冴えないオタクに告って振られたんだっけ?」

 

「マジその話何回擦るんだって。ウケる」

 

「振られて泣いちゃったんでしょ。ヤバッ」

 

 わざと優愛本人に聞こえるように、馬鹿にした素振りで話を続ける女生徒たち。

 その様子を、他の生徒は見て見ぬふりをしている。

 言われた優愛はと言うと、まるで聞こえてないと言わんばかりに歌音と昼食を続けているが、困ったように笑う表情が更に哀愁を漂わせている。

 

 その終始を見届け、リコが小声でオタク君に声をかける。

 

「小田倉、教室に戻るぞ」

 

「でも……」

 

「良いから」

 

 これで良いのかと言いたいオタク君だが、リコの表情が物語っている。これで良いわけがない、と。

 眉をピク付かせ、今にも飛び出しそうなリコ。だというのに教室に戻ると彼女は言っている。

 

「何か策があるんですか?」

 

「なかったら今すぐあいつらをぶん殴ってるよ」

 

「分かりました」

 

 優愛はイジメの対象になっている。

 その理由に、自分が関わっている事を先ほどの会話でオタク君は気づいている。

 

「僕たちだけでどうにか出来るんですか?」

 

 不安から、そんな言葉が口に出る。

 

「アタシたちだけじゃ、ちょっと厳しいかもな。だから手伝いをお願いするつもりだ」

 

 オタク君とリコが自分たちの教室に戻ると、リコは真っ先に一人の少女の元へと向かい、声をかける。

 

「悪い、手伝って欲しい事がある」

 

「手伝い、ですか?」

 

 声をかけられた少女が、カクンと首を傾ける。

 リコが手伝いを求めた相手は、制服を綺麗に着こなし、腰まである漆黒の髪を一本に束ねた少女。

 そう。委員長である。

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