【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第21話「期末も終わったし、後は夏休みだね」

 

「オタク君。テストどうだった?」

 

 期末テストも終わった放課後、浮ついた空気が流れる教室で、優愛がオタク君に声をかけた。

 優愛の明るい声と表情から、悪い結果でない事が分かる。

 これならオタク君も、安心して点数が聞けると言うものだ。

 

「まぁまぁといった感じですね。優愛さんは?」

 

「ふふーん。どうよ!」

 

「おぉ。全部平均点に近いじゃないですか! 頑張りましたね」

 

「まぁね」

 

 平均点に近い、オタク君なりに相当言葉を選んだ褒め方だ。

 どれも平均にはギリギリ届いていない。それでも前回よりは点数が上がっている。

 せっかくやる気を出してくれているのだから、このまま続くように褒めて伸ばす方針だろう。

 

 ちなみに、オタク君はどれも70点以上の数字を出している。

 オタク趣味に時間を割きつつ、学業で親を納得させるには十分な点数だ。

 

「おーい、優愛帰ろう」

 

「おっ、リコ丁度良い所に、見て見て」

 

「へー、頑張ったじゃん」

 

 わざわざ優愛の答案の上に自分の答案を重ねるリコ。

 完全なマウンティングである。

 

「めっちゃ煽られてる気がするんだけど! ってかめっちゃ棒読み!」

 

「小田倉はテストの点数良い女と悪い女、どっちが良い?」

 

「ははっ」

 

「おっ、リコやんのか? 喧嘩か? 受けて立つぞヨーシ」

 

 オタク君、目の前でじゃれ合う2人を見て苦笑いを浮かべるしかない。

 

「とりあえず、今日は疲れたし帰りにラーメンでも食べて行きませんか?」

 

 テストの点数は問題ない。分かっていても返却されるまではどうしても気負ってしまう。

 授業とテスト返却による精神疲労は、中々のようだ。

 疲れた心と体を癒やすために、彼の心はラーメンを欲しているようだ。

 

「ス●キヤなら付いて行くけど」

 

「ええ、普通のラーメン屋は高いですからね」

 

 普通のお店でラーメンを頼めば700円以上するだろう。

 だが、ス●キヤならラーメン一杯330円なのだ。学生の財布には物凄く優しい値段設定である。

 

「私も行く、リコどうせミニラーメンでしょ? なら私と普通のラーメン半分こしようよ」

 

「うん。良いよ」

 

「オタク君は?」

 

「僕は普通のラーメンと、食後にソフトクリームですね」

 

「あ、それ良いね。私もソフトクリーム頼もう!」

 

「それじゃあ準備して行きましょうか」

 

 オタク君の机に並べられた答案をそれぞれ回収し、店に向かう。

 店には学生が何組か居座っていた。誰もが口々にテストの話をしている辺り、同じようにテストから解放されたばかりなのだろう。

 

 空いてる席を見つけ、手早く注文を済ませる。

 

「期末も終わったし、後は夏休みだね」

 

「その前に進路相談がありますよ」

 

「進路相談って、まだ入学したばかりだから何も考えてないし。オタク君とリコは?」

 

「アタシも特には考えていないけど、親は大学に進学しろって言ってるね」

 

「うちも同じような感じですね。出来れば国立に行って欲しいとは言われますけど」

 

 一応それなりに良い学校(とこ)なので、そのまま良い大学に行けるなら行って欲しいと思うのは当然だろう。

 

「マジか、うちなんて『高校卒業してくれるなら後は好きにして良い』だよ」

 

 放任主義と見るべきか、子の自主性に任せると見るべきか。

 変に突っ込むとやぶ蛇になりかねない。オタク君もリコも苦笑いで誤魔化すだけだ。

 

「あっ、ラーメン出来たみたいですね。取りに行ってきます」

 

「こっちもだ。取りに行くから、リコは席確保のためにここで待ってて」

 

「一応荷物置いてるけど、まぁ待っとくわ」

 

 それぞれラーメンの容器を受け取り席に戻る。

 優愛は一回り小さい容器にラーメンと汁を入れて、リコと半分こをしている。 

 

「そういや夏休みもだけど、そろそろ文化祭や体育祭の準備も始まるんじゃないっけ?」

 

「そうですね、確か夏休み前には何をやるか決めて、夏休みと9月を使って準備だったはずです」

 

「アタシのクラスでは今日その話出てたよ。何がやりたいとか決まらなくて、めちゃくちゃだったし」

 

「そうなんだ。オタク君は何かしたい事とかある?」

 

「僕は、特に考えてませんね」

 

 中学時代はクラスの影でひっそりと生きてきたオタク君にとって、文化祭も体育祭も別世界の話だ。

 陽キャ達がワイワイ騒ぐのを、ただ遠くから見ているだけの。

 

「それじゃあ何するか一緒に考えよう。一緒にクラスを盛り上げよう」

 

「ははっ」

 

 オタク君の口から、少しだけ乾いた声が出た。

 僕のようなオタクが入って盛り上がるだろうか?

 そんな考えが頭をよぎる。

 

 多分そんな事を口にすれば、優愛は悲しむだろう。

 そして、沢山の言葉で、弱気な言葉を否定してくれるだろう。

 そうしてくれるのは嬉しいけれど、それをするのは構ってちゃんが過ぎる。

 

「そうですね。一緒に頑張りましょう」

 

 だからオタク君は、前向きに答える。

 自分はまだ信じられないけど、優愛の言葉を信じて。

 

「あーあ。アタシも同じクラスだったら良かったなぁ」

 

「良いでしょー。私とオタク君で文化祭も体育祭もリコのクラスに勝ってやるんだから」

 

「はいはい。負けたら優愛が足引っ張ったって言うから覚悟しといてね」

 

 他愛のない話は続く。

 オタク君達のイベントは、まだまだ始まったばかりなのだから。

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