【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第36話「ねぇねぇ、私達もお疲れさまでしたーってやつやろう!」

 

「それで、この後どうするんだ?」

 

「ん? 何も考えてないよ?」

 

 優愛ノープランである。

 どこのクラスの展示を見に行きたいとかは何もない。

 そもそも、自分のクラスの事で一杯一杯なのだから仕方がない。

 それは優愛に限らず、生徒のほとんどがそうだろ。

 故に、オタク君もノープランである。

 

「それじゃあ漫画研究部の出し物でも見に行くか? 小田倉は興味あるだろ?」

 

「そうですね。優愛さんとリコさんさえ良ければ」

 

「私はそれで良いよ」

 

「それじゃあ行くか」

 

 そう言って前をズンズンと歩くリコ。

 これはオタク君が行きたそうだから、リコが意を汲んだだけである。

 決してリコが行きたいわけではない。オタク君の為なのだ。きっと。

 

 部室練に移動し、漫画研究部の部室前まで来た3人。

 漫画研究部には、そこそこ人が入っているようだ。

 

 リコが扉を開けて中に入る。

 部室は結構広く、教室と同じくらいの広さがある。

 それだけ部員が多い証拠だろう。

 

 中には漫画研究部の冊子が置いてあり、壁にはそれぞれの作品や研究テーマが書かれている。

 中に入ったものの、オタク君はキョロキョロと挙動不審になっている。彼は一応隠れオタクなので。

 

「へぇ、最近の漫画やアニメのおすすめとか書いてある」

 

「ねぇねぇ、こっちは4コマとかあるよ」

 

 対して優愛とリコは気にした様子もなく、あれこれと展示物を見ている。 

 恥ずかしがっているオタク君だが、優愛とリコ以外で彼の事を気にする人は居ない。

 変な目で見られていると思い込んでいるだけで、実際は誰もオタク君に興味すら持っていないのだから、もっと堂々とするべきだろう。

 まぁ、それが出来ないから隠れオタクの第2文芸部に居るわけなのだが。

 

「ねぇねぇ、オタク君。この4コマどうよ。オタク君ってキャラ居るよ!」

 

 そんなオタク君の考えなど気にもせず、いつもの「オタク君」呼びをする優愛。 

 刹那、中で展示を見ていた人たちが一斉に振り返り、オタク君達を見た。

 

「オタク君に優しいギャルだって……オタク君もこんな風に優しくされたら嬉しい?」

 

「えっ、いや。ははっ、まぁそうですね」

 

 恥ずかしさのあまり、歯切れの悪い返事をするオタク君。

 本当は嬉しいし大好きである。なんならオタク君と呼ばれるだけでも嬉しいくらいだ。

 優愛に初めて「オタク君」と呼ばれた時も喜んでいたほどなので。

 

「ふ~ん」

 

 ニヤニヤしながら、オタク君の腕に絡みつく優愛。

 薄着なせいで、余計に腕に感じるお山の感触に思わず固まるオタク君。

 

「オタク君ってこういうのが好きなんだ」

 

 優愛がやっているのは、オタク君に優しいギャルというタイトルで描かれたイラストのポーズだ。

 オタク君と呼ばれた少年の腕に、ギャルが胸を押し当てるようにくっつくイラスト。そしてそのイラストに書かれているセリフである。

 

 まるでイチャイチャしてるバカップルである。ヨソでやれ。

 ゴクリと生唾を飲み、素直に「好きです」というわけにもいかないオタク君。

 そんなオタク君と優愛は、注目の的になっている。

 

(オタクに優しいギャル。存在したのか)

 

(オタク君って呼ばれてる人、初めて見た)

 

(リア充爆発しろ)

 

 オタク君と優愛を見て、ボソボソと内緒話があちこちから聞こえてくる。

 漫画研究部の展示物を見に来ている人の殆どがオタクである。なのでオタクに優しいギャルの概念は大体知っている。

 その概念が今現実に目の前で起こっているのだ。そんな2人を周りが見てしまうのは仕方がないといえる。

 

 そして見られている事に気付くオタク君。しかし恥ずかし過ぎて、何を言われているか聞き取る余裕はないようだ。

 多分、彼のオタク趣味に対するシャイな性格はもうしばらくは治らないだろう。

 

「なぁ、あっちにオススメの漫画とかあるけど、あの中で小田倉のおススメはあるか?」

 

 そんなオタク君のもう片方の腕にリコが絡みついてくる。

 優愛の立派な物とは違い、大きくはないが、それでもくっつけば主張をしてくるそれの感触にさらに固まるオタク君。

 優愛がぽよーんなら、リコはギュッギュだろう。何がとは言わないが。

 

 普段のリコならそんな事をしないだろう。

 だが、周りの会話はオタク君と優愛の2人の事ばかりで、まるで2人が付き合っているような言い方をしていたのが何となく気にくわなかった。

 特に理由はないが、なんとなく気にくわない。なので優愛と同じようにオタク君にくっついたのだ。

 

(ハーレムだと!?)

 

(あのオタク君、マジで何者だ!?)

 

(リア充爆発しろ)

 

 もはや見せつけているまである。いや、リコは見せつけているのか。

 本当に無自覚なのは優愛くらいだ。

 

 その後、漫画研究部の展示を見た後に、適当に目に入った展示を見て行く3人。

 流石に恥ずかしくなってきたのか、漫画研究部を出た辺りで優愛もリコもオタク君の腕からは離れている。

 

 気が付けば時刻は夕方である。

 時期が時期なのでまだ日は明るいが、あと1時間もすれば文化祭も終わる。

 

「最後に第2文芸部の部室に寄って行って良いですか?」

 

「アタシは構わないよ」

 

「私も良いよ」

 

 なんだかんだで顔を出せなくて申し訳ない気持ちを抱えながら、部室に顔を出したオタク君。

 第2文芸部のドアを開けると、中ではチョバムとエンジンが携帯ゲームをやっている最中だ。

 

「チョバム、エンジン。今日はどうだった?」

 

「あぁ、小田倉殿でござるか。ボチボチでござったよ」

 

「小田倉氏の妹氏も友達を連れて来ていたですぞ」

 

「希真理の奴来てたのか」

 

 携帯ゲームの画面を見て、時折「ホッ!」「やっ!」と掛け声をしながら返事をするチョバムとエンジン。

 

「任せっきりでごめんな」

 

「別に良いでござるよ。拙者もエンジン殿もクラスの手伝いが無いから、ここでずっとゲームしてたでござるし」

 

「むしろ小田倉氏にここの番をするから出てけと言われた方が困るですぞ」

 

「そっか。これお詫びと言っちゃなんだけど、うちのクラスの鬼まんじゅうとジュース」

 

「おぉ、ありがたいでござる」

 

「それでは、ちょっと休憩にして頂きますですぞ」

 

 キリが良い所になったのか、チョバムとエンジンが携帯ゲームを机に置いた。

 オタク君からの差し入れを受け取り、ようやく優愛達も居る事に気付いたようだ。

 

「おぉ、鳴海氏と姫野氏も来てたのですな。これは気づかず失礼ですぞ」

 

「別に良いよ。勝手に来ただけだし」

 

「チョバム君とエンジン君は、文化祭見て回らなくても良かったの?」

 

「拙者達は陰の者でござる。無理にはしゃいで回るより、こうして気の合う仲間とゲームしてる方が楽しいでござるよ」

 

「別に捻くれてるわけじゃないですぞ。こうしてリア充の祭りを横目にゲームをするというのも、中々乙なものですぞ」

 

 彼らは彼らなりに文化祭を楽しんでいるようだ。

 優愛もそれ以上何も言わず、そういうものなのだと自分に言い聞かせる。

 無理に誘ったりしても、良くない事くらいは優愛も理解している。

 

「そっか。チョバム君もエンジン君も、もし来年の文化祭を皆で楽しみたいと思ったら言ってね」

 

「アタシも一緒に展示物を考えたり作ったりする位はしてやるよ」

 

「その時はよろしく頼むでござるよ」

 

「ふふっ、鳴海氏も姫野氏も優しいですな」

 

 その後、しばらく部室でオタク君達は色々と話をした。

 色々見て回ったオタク君達は勿論だが、部室に引きこもっていたチョバムとエンジンも、それなりにお客さんが来たのでこんなことがあったと話題は絶えなかった。

 

 チャイムの音が鳴り、校舎のスピーカーから文化祭の終わりを告げられる。

 校舎からは、次々と校門を出て行く人達が見える。

 

 ”お疲れさまでした!”

 

 どこかの教室から、打ち上げの声が聞こえてくる。

 

「ねぇねぇ、私達もお疲れさまでしたーってやつやろう!」

 

「そうでござるな。拙者は構わないでござるよ」

 

「うん。良いね」

 

「アタシは部外者なんだけど。まぁいいか」

 

(それがし)も構わないですぞ。合図は小田倉氏に任せたですぞ」

 

「えっ。僕?」

 

 この輪の中心はオタク君なのだから、オタク君が合図をする流れになるのは、まぁ当然だろう。

 リコに「ほら、早く」と急かされ、照れくさそうに一つ咳ばらいをするオタク君。

 

「それじゃあ皆」

 

「「「「「お疲れさまでした!!!!!」」」」」

 

 こうしてオタク君達の高校生活初めての文化祭は終わったのだった。

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