【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第6話「オタク君マジ神!!」

「オタク君おまたせ」

 

「いえ、準備してたので、今来たところですよ」

 

「そうなんだ。じゃあ早速行こっか」

 

「はい。ところでどこに行くんですか?」

 

 校門を出て、優愛に合わせて歩くオタク君だが、目的地は分かっていない。

 

「一駅離れた所に大きな商店街があるでしょ? そこにウィッグやアクセの専門店があるから、そこを見て行かない?」

 

「分かりました」

 

 オタク君も優愛も電車通学なので、定期券を持っている。

 なので電車を使う移動は、比較的安価で行けるのだ。

 彼らが向かう場所は、県内で最も多く人が集まる地域。

 その地域に近い場所にある商店街で、有名な神社などがあるので、外国人観光客も多く、かなり栄えている商店街だ。

 商店街にはお土産やカフェ、ちょっと変わった飲食店やパソコンショップ等が多く立ち並んでいる。

 その中には、当然オタク君をターゲットにしたお店もあるが、今回向かうのは女性向けのお店である。

 

「そういえばオタク君、髪型変えた?」

 

「えっ……」

 

 確かにオタクっぽく見られないようにいじったが、微々たる変化だ。

 だと言うのに、優愛はめざとくそれを見つけた。

 普通ならその手の変化を気づいて貰えるのは嬉しいが、リコとのやり取りがあった直後。

 これでは二人のやり取りを、オタク君が盗み聞きしていましたと言わんばかりだ。

 

「ほら、学校と違って人が多いところに行くから、だらしない格好するのは嫌だなと思って」

 

 なので背筋もこうやって伸ばしてますと言いながら、オタク君はわざと猫背にしてから背筋を伸ばした。

 

「変かな?」

 

「いーじゃんいーじゃん。そういえばオタク君、オタク趣味隠してるんだから、その辺気にするよね」

 

「うん、まぁね」

 

「それならさ、学校でもちゃんとした方が良くない?」

 

「あはは、朝忙しいとついサボっちゃうからね」

 

「あー、確かに朝はだるいからね。あっそうだ。オタクっぽく見られないならこうした方が良くない」

 

 目的地に着くまでの間、優愛はオタク君の髪をいじったりして遊んでいた。

 オタク君の髪をいじったりするたびに、スマホのカメラで写真を撮っては「これでどうよ?」と聞く優愛に、良く分からないなりに返事をするオタク君。

 

(何がどう変わったのか良く分かないけど、鳴海さんが満足ならそれで良いか)

 

 なすがままにされるオタク君。

 とりあえず誤魔化す事には成功したようだ。

 

「いらっしゃいませ」

 

 商店街に到着したが、具体的にどの店が良いか決めていなかった二人は、近くの店から手当たり次第入る事にした。

 気に入った物が見つかったら、その場で購入する予定だ。平日の放課後に電車に乗って来たため、時間に余裕があるわけではないので。

 

「ねぇねぇオタク君。これ凄くない?」

 

 というのに、優愛は目的外の物に興味を奪われている。

 今優愛が手に持っているのは、メッシュを入れるためのエクステ。

 ピンクな色合いの細いウィッグで、何本か付けるとカラフルな感じになりそうである。

 

「そうですね。値段もお手頃で悪くなさそうですし、目的のエクステを買って、財布に余裕があったら買って行きます?」

 

「おっ、良いね!」

 

 優愛は手に持ったエクステを元の場所に戻す。

 変に否定をしたりするのはあまり良くないので、同意しながら目的地へエスコートするオタク君。

 彼が[女の子 話し方]でググって、自分なりに出した答えだ。

 優愛は気分を害する事なく、オタク君のエスコートされるままに目的の物を探し始めているので、多分正解だろう。

 

「襟足エクステは、この辺のようですね」

 

 女性向けのショップだが、オタク君は思ったより動揺した様子がない。

 最初は少し動揺したオタク君だったが、店を見回して気づく。店に置いてある物は普段ドールのウィッグで使っている物と大体同じような物ばかりだと。

 大きいドール用品が置いてあるお店。彼の脳内はそう判断したようだ。

 だが、そのおかげで目的の物をすぐに見つけ出すことが出来た。

 優愛に任せていれば、次々と別の物に興味が移り目的を忘れて閉店時間になっていただろう。オタク君、ファインプレーである。

 

「色々種類あるね。とりあえず髪の色と同じのを選べば良いかな?」

 

「いえ、そうとも限りません」

 

 優愛が手に取ったものと、オタク君が手に持ったものは明らかに色が違う。

 優愛の持っているのは優愛と同じ明るい金髪のエクステだが、オタク君が持っているのは毛先がピンクになっている物と白になっているエクステである。

 

「確かに同じ髪色ですと違和感なく出来ます。ですがせっかくエクステで遊ぶのでしたら、普段は中々出来ない色を混ぜてグラデーションを作る事も出来ます。例えばこちらのピンクですと髪型と色の両方で活発な印象を与える事が出来ますし、こちらの毛先が白の場合は派手な髪型と色に反し、落ち着いた印象を与えることが出来ますよ」

 

「なになに、オタク君めっちゃ詳しいじゃん!? ヤバッ!」

 

 思わず自分のテリトリーの会話をしてしまうオタク君だが、優愛にとっては斬新な発想に思わず驚いてしまう。

 確かに自分と同じ髪の色を選べば髪型が変わりはするが、どうせなら違う色を試してみたい。そして、色を変えるなら、もっと違う髪型もやってみたいと悩む優愛。

 

「ついでにカールを強くするのとかどうかな?」

 

「あっ、それなら耐熱性のエクステにしましょうか。自然な感じの軽いカールの物を選んで、着用した時に物足りなかったら僕がヘアアイロンで調整しますよ」

 

「オタク君マジ神!!」

 

 オーバーな褒め方だが、オタク君は満更でもない様子である。

 オタク知識がこんな所で役に立ち、ちょっと自慢げだ。

『鳴海さんはどっちが良いですか?』

 オタク君がそう聞く前に、毛先が白のエクステを手に持ち、既に会計に向かっている優愛がいた。判断が速い。

 

 翌日。

 

「うっわ、優愛の髪型すごっ。マジヤバくない?」

 

「ってか最近、優愛おしゃれじゃね?」

 

 優愛はエクステを買った帰りに、オタク君に教えてもらいエクステの調整の仕方や、ハーフアップの作り方を覚えた。

 が、結局上手く行かず、朝方にスマホのメッセージでオタク君に泣きつき、早朝の電車の中でやって貰ったのだった。

 

「オタク君がたまたま早起きしててくれてマジ助かったわ」

 

「もしかしてと思って、早起きしておいたので」

 

 それなら最初から「明日早起きして髪の毛セットしに行きましょうか?」と言えば良かっただけだが、オタク君にそれを言える勇気はまだない。

 

「ちょっ、あの子の髪型凄くね?」

 

「良いな。どうやったんだろ?」

 

「私ちょっと聞いてみようかな」

 

 学校で優愛とすれ違う女子たちは、振り返り羨ましそうに見たり、中には話しかけたりしている。

 オタク君から教えて貰った知識を自慢げに話す優愛を見て、オタク君も満足そうだ。

 しばらくしてから彼は気づく。優愛の髪型をセットするために、初めて妹以外の女の子の髪や頭を触っていた事に。

 

 好きな事や得意な事になると周りが見えなくなるのはあまり良くないが、もし優愛を意識していたら髪型のセットは上手く行かなかっただろう。

 サラサラした優愛の髪の感触を思い出し、しばらく悶々とした気持ちになるオタク君であった。

 

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