【完結】ギャルに優しいオタク君   作:138ネコ

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第83話「ほら、去年委員長の仕事見てて大変そうだったから、副委員長になれば手伝えるしね」

 始業式が終わり、次の日からは普通に授業は始まる。

 だが、授業の前に一時限目を使ったHRがある。

 何故一時限目を使ったHRがあるのか?

 それは、委員会決めである。

 

 各自どの委員会に入るか決める際に、委員長は今年も委員長になったようだ。

 そして、オタク君は副委員長になっていた。

 

 その日の授業が終わり、委員長に与えられた最初の仕事は、翌日の授業に使うプリント等を持ってくることだった。

 いわゆる雑用係である。

 

「いいんちょ……じゃなくて、雪光さん。この書類の束を持って行けば良いんですか?」

 

「はい。手伝ってもらえますか?」

 

「勿論ですよ」

 

 準備室と書かれた部屋に、委員長とその手伝いの為に、副委員長であるオタク君も一緒に来ていた。

 雑用係だというのに、委員長はルンルン気分である。無表情のままだが。

 ちなみに二人きりなので、オタク君は委員長ではなく雪光さん呼びである。

 

(小田倉君と二人きり)

 

 アニメやゲームの話はいくら話しても終わりがないくらい、話したい事はいくらでもある。

 なので、オタク君が副委員長になった事で、委員長は内心では浮かれていた。

 

 頼まれた書類の束を、オタク君と一緒に抱えながら職員室に向かう委員長。

 向かう最中に話すネタは、最近のラノベの事だ。

 めんどくさいだけの作業も、こうしてオタク君とおしゃべりしながら歩くだけで楽しいのだろう。

 時折委員長から笑みが零れる。

 

 職員室に到着し、頼まれた書類を教師に届ける。

 特に問題なく委員長の仕事が終わり、職員室を後にするオタク君と委員長。

 委員長の仕事が終わったので、荷物を取りに行くために、教室に向かって二人は歩き出す。

 

「ところで、小田倉君はなんで副委員長になろうとしたのです?」

 

 教室に到着し、カバンに荷物を入れながら委員長がオタク君に尋ねる。

 こんなめんどうな仕事、やりたがる人は少ない。

 なのに、どうして副委員長になろうとしたのか気になったのだ。

 実際に委員長と副委員長は、オタク君と委員長以外誰も立候補をしていない。

 

「雪光さんが委員長になったからかな」

 

 一瞬小さな声で「えっ」と漏らす委員長。

 まるでオタク君が委員長と一緒になりたいから、副委員長になったみたいな言い方である。

 

「ほら、去年委員長の仕事見てて大変そうだったから、副委員長になれば手伝えるしね」

 

「そ、そうですか」

 

 だが、委員長が期待した答えとは違っていた。

 委員長。違って悲しいような、自分の手伝いの為に副委員長になってくれて嬉しいような複雑な気分である。

 

 一年生の時にも副委員長は居たが、口下手な委員長が自分から手伝って欲しいと言えず、ついつい自分一人でやりがちになっていた。

 オタク君はその様子を何度か見ていたので、今年は副委員長になろうと思ったのだ。

 

「でも手伝いって嫌になったりしません?」

 

「全然大丈夫ですよ。それに」

 

「それに?」

 

「雪光さんとこうやって話したりできて楽しいですし」

 

 そう言ってニッコリと委員長に笑いかけるオタク君。

 プレイボーイのような発言である。

 

 とはいえ、相手は委員長。オタク君とは同じタイプで、自分に恋愛感情を持たれていないと考えるタイプ。

 なので、気のあるようなセリフは通用しない。

 そう、通用しない……はずである。

 

「私も、小田倉君と話せるのは、楽しいです」

 

 えへへと笑いながら答える委員長の顔は、少し赤くなっていた。 

 普段ならお互いにこの手の会話をしても、オタク君も委員長も変に意識をしたりしない。

 現に、オタク君は全く意識をしていない。仲の良い友達のお手伝い程度の考えである。

 

 対して委員長は、胸が高鳴り始めていた。

 顔が熱くなり、それに合わせて心臓の鼓動が速くなるのを感じている。

 

(あれ、なんだか今日は調子が変?)

 

 以前に、部室でオタク君と下の名前で呼び合った時のような感覚を覚える委員長。 

 何故か顔が赤くなり、動悸が速くなり、それをオタク君に知られるのが何故か分からないが恥ずかしいと思ってしまう。

 

「あの、小田倉君」

 

「はい? どうしました?」

 

「なんだか風邪気味っぽいから、今日は先に帰りますね」

 

「あっ、はい。お大事に」

 

 カバンを手に、そそくさといった感じで教室を出る委員長。

 が、すぐに教室に戻ってくる。

 

「あの、小田倉君」

 

「はい?」

 

「また、明日ね」

 

「はい、また明日」

 

 顔を赤くした委員長が教室を出ていく。

 そんな、ちょっとだけ挙動不審な委員長を見て、オタク君は「季節の変わり目は風邪をひきやすいからな」などとのんきな事を考えていた。

 

 教室から出た委員長が一人呟く。

 

「季節の変わり目は風邪をひきやすいから、今日は暖かくして寝よう」

 

 オタク君だけでなく、委員長も同じことを考えていた。似た者同士である。

 口では風邪と言っているが、何か違う。

 

(でもこれ、本当に風邪なのかな?)

 

 初めての感情に戸惑う委員長。

 彼女はまだ、自覚をしていない。

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