Infinite Stratos -Children's small dream- 作:Tommy
それは始まりの日の出来事。三人の子供が夢を追い求めると誓った夜。
「いつか皆で、空に行こうよ」
八月の下旬。夏休みも終わりが近づき、もうすぐ新学期が始まるという日の夜。夏休みの思い出作りにと無断侵入した小学校の屋上で、篠ノ之束は幼なじみ二人に向けてそう言った。
天を仰げばそこにあるのは満天の星空。皆で見上げるそこから目を離さずに、けれど万感の思いを込めて、束は自分の言葉を二人に伝える。
「ずっとずっと続く無限の空へ。そこには私たちが憧れ続けたものがあって、手を伸ばせばきっと届くんだ。それはとても素晴らしいものだと私は思うから」
「皆で空へ行こうって?」
「うん」
それは束がずっと胸に秘めていた夢。星の海を自由自在に泳ぎたいというもの。言葉足らずに精一杯に、初めて吐露する夢だ。スペースシャトルなんかでは届かないようなもっともっと先の宇宙へ皆で行きたい。
束は星を見るのが好きだった。それは大好きな幼なじみ二人も同じで、三人はずっと一緒に星を見上げながら今日まで生きてきた。デネブ。アルタイル。ベガ。シリウス。アルビレオ。リゲル。レグルス。アンタレス。プロキオン。フォーマルハウト。ペテルギウス。ボルックス。他にも様々な星々を天体望遠鏡で観察してその煌めきに感動してきた。もはや魅了されている。どうしようもなくどこまでも。
ともすればこれは当然の帰結なのかもしれない。子供は夢を見る。叶うかどうかは関係なくそれは当たり前の事のことなのだから。
「柄にもなく詩的だな。なんだ、漫画の影響でも受けたのか?」
笑う事はなく、けれどどこか呆れたような声音で、織斑千冬はそう言った。
「まぁ、面白そうではあるけどな」
思いっきり笑いながら、けれどその光景をを思い浮かべて目を輝かせながら、佐倉弥月はそう言った。
彼ら二人はそういう奴だ。けして束のことを馬鹿にしない。他者から見て、それは無為な事だと断じれそうなものでも仕方ない奴だとでも言いたげに皮肉まじりにつき合ってくれる。それがさも当たり前であるかのように。
「あはは、どうだろうね。私としては別にそんな気はないんだけど」
「つまり本心からあんな言葉を言ったと。束、中二病にはまだ早いぞ」
「そういうお前も割とその気あるけどな」
いつも通りの掛け合い。それは束にとってとても心地よいものだ。己の夢を語っても変わらずそれを行う二人に少し安心しながら、いつも通り一触即発の空気を漂わせだした二人に続きを語る。
「難しい事かもしれないけれど、方法は私が作るよ。どれくらいかかるか分からないし、二人にもいっぱい迷惑かけちゃうかもだけどさ。だから―――」
一緒に行こう。
言った束に二人は、
「当然だな」
「むしろ俺ら置いて一人で行くとか言ったらペナルティだ。どぎついの一発かまさせてもらうからな」
期待してるぜ、とでも言いたげに微笑みながら二人はそう言う。
ああ、本当に変わらない。
篠ノ之束が二人に出会ってどれくらいの月日が経ったのだろう。昔の記憶はおぼろげで霞がかかったかのように判然としない。少なくとも物心がついた時にはもう二人はそばにいたし、束にとってそれは当然の事だったから今まで考えた事もなかった。小学六年生の今現在、覚えているだけで九年はつき合っている。冷静に考えればそれ位は分かるが、いざ出会いの瞬間を思い出そうとすればそれは不可能の一言だった。
束は二人の事が好きだった。ある意味それは依存と呼べる類のもので束自身そういう自覚はあった。今でこそ束は小学校でも同級生達から受け入れられているが、かつてはそんな事あり得なかったから。そのきっかけを作ってくれて、世界を恐れていた束の背中を押してくれたから。
本当の意味で自分の味方をしてくれた二人。本当の意味で自分を受け入れてくれた二人。そんな当たり前をしてくれたから束は二人の事が好きだった。
一緒に行こう。皆で行こう。星々の海へ。そんな言葉が自然と浮かんでくる。何か本当に駄目かもしれないと心の隅で思いながら、束は二人に笑みを返す。
「ただ、言ったからにはちゃんとやり遂げろよ、束。期待させるだけ期待させておいて出来ませんでしたじゃ許さんからな」
「途中放棄もペナルティだ。お前から言い出したんだからちゃんと責任取れよ」
「分かってる。絶対届かせるよ」
篠ノ之束はここに誓う。夢を追い続けると。それを現実にしてみせると。そしてそれは二人にしても同じ事で。
「じゃ、指切りだ」
弥月が小指を突き出して言う。
「お前、そんな幼稚な」
「良いじゃねえか別に。来年から中学つったって俺らまだ小学生だぜ。大人の皆から見たら幼稚も幼稚な
いかにも捻くれた子供のように弥月は千冬を一蹴して、「ほらっ」と二人に催促する。束はそれに迷いなく小指を絡め、千冬は溜め息と共にそれにならう。
「そんじゃいくぞ。せーのっ」
指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます。指切った。
夜の学校の屋上で三人が詠った。それが始まりで、きっかけは些細な事。ただ皆でずっと好きだった場所に行ってみたいというただそれだけ。
日本のある科学者が