逃げ上手の皇太子殿下   作:HMMLER

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読者のみなさんありがとナス!

???「革命的な色だな!」






怪僧来る

 

1907年4月

 

 

 

 …あれから3年近くたった…。

 

 あの目覚め以来…前世とは何もかもが違いすぎてまるで夢の国のようである。彼らの文化、風俗といい、前世の人間たちに言えば間違いなく信じられないようなものを今まで目にしてきた。

 至る所で金や銀が使われており、おそらくこような贅沢は前世の帝や公卿達もしたことがないだろう…。まるで極楽浄土のようだ…。

 

 あの目覚めから3年…。私はあの時以来、あの夫婦、そして姉達から溺愛されて育ってきた。

 最初は彼らの言うことは何にもわからずただただ意味不明な言語を言っているように聞こえたが、生まれてからしばらくたつと、だんだんと彼らの言っていることがわかるようになってきた。

 そして…、彼らの言語を習得していくうちに連れて、私を取り巻く環境もわかってきた。

 

 何でも私の名前はアレクセイ・ニコラエヴィチ・ロマノフと言うらしい…、全くもって異様な感じがする…。そしてこの私の父の名前はニコライ・アレクサンドロヴィチ・ロマノフ…、もしくはニコライ2世といい、そして、母の名前はアレクサンドラ・フョードロヴナと言うらしい…。聞くところによるとこの2人は私が生まれた国の最高君主とその妻であり、そして何でも私はその2人の息子で…唯一の男子として次の「皇帝(ツァーリ)」になる予定らしい。

 初めて聞いた時は耳を疑った。前世でも私は私の実の父の北条高時の嫡子として次の鎌倉殿の主君となる予定だった…最もそれは結局鎌倉殿の滅亡でなくなったが、まさか次の世でも世継ぎとして生まれるとは…、これは一種の私の運命なのだろうか?

 

 

 こう考えて見ると…また一方でこれは呪いなのではないかという考えも浮かんできた。前世では私が世継ぎとなるはずだった鎌倉殿は私の父を最後として北条一族諸共滅亡してしまった。そして今世でまたも世継ぎとなる運命にあったということは、また今世の私の一族であるロマノフ家もまた滅亡してしまうのではないかという恐ろしい考えである。

 もしそうであるとすれば…これが呪いでなくて何であろう。前世の罪業が呪いとなって自分にまとわりついているかもしれない…。あの目覚めから幾分か罪の意識を何とか割り切ることができてきたが…このような考えが思い浮かべると前世での行いを悔いても悔い切れなかった。

 

 

 

 だが、そんな私でも今世にきてからは心休まる相手がいる。

 

「アリョーシャ!これ、あなたにあげるわ。」

 

 そう言いながら彼女自身が編んだ編み物を差し出すこの女の子は名前はアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ。私とは三歳違いの姉で、私の4人の姉の中で一番年少者で最も私と年が近い姉である。

 

「えっ、あっ、これくれるの。」

 

「そうよ、あなたのために編んであげたんだから。」

 

「あっ、ありがとう。」

 

「どういたしまして。」

 

「感謝しなさいよアリョーシャ、あなたのためにナーシャ、夜遅くまで編んでくれてたんだから。」

 

 そう言うのは、4人の姉の中で2番目の年長者のタチアナ・ニコラエヴナ・ロマノヴァ。4人の姉の中では最もしっかりとした性格で、一番上の姉よりも頼もしい姉であった。

 

「オーリャも作ったんでしょ。自信作って言ってたわね。」

 

「あっ、うん。」

 

 次にタチアナに呼びかけられたのは一番上の姉である、オリガ・ニコラエヴナ・ロマノヴァである。彼女は四姉妹の中でも教養が深い一方でぶっきらぼうなところがあった。

 

「オーリャ〜、そんなに固くならないの。あなたの弟よ。」

 

「イヤ、別にそんなつもりはないんだけどなぁ。」

 

「そうかしら、まぁオーリャは昔からそうだものね。そういえばマーシャはどうしたのかしら。」

 

「マーシャなら今部屋で必死に編んでるよ。」

 

「えっ?そうなのナーシャ。」

 

「うん。怠けてたせいで完成できていなかったそうなの。」

 

「全くあの子ったら〜。」

 

 マーシャは四姉妹の中で3番目の姉である、マリア・ニコラエヴナ・ロマノヴァである。彼女は本来、優秀である片鱗を見せているのだが、その分怠け癖があるといった具合の姉であった。

 

「ねぇオーリャ姉さん。今からマーシャお姉さんを手伝ってきてもいい?私、彼女のことが心配なの。」

 

「いいけど…、でも時間を忘れないでね。今日はアリョーシャを治すために特別な人が来るんだから、邪魔しないようにしないと。」

 

「わかった!じゃあね、アリョーシャ!」

 

そういうと、彼女はいそいそと走り去っていったのであった。

 

(この人達といると何だか心が安らぐなぁ…。特にあのナーシャといっしょにいると…。そういえば…、オーリャが言っていた特別な人って誰だろう…。)

 

「ねぇ、お姉さん…。特別な人ってだぁれ?」

 

「あー知らなかったの?あなたってちょっと血を出しただけでも血が止まらずに大量に出ちゃうでしょ?」

 

 そう、これこそが私が今世に来て最も肉体的に困り、苦しんでいることである。私は何でも血友病と言う遺伝からくる病気で、血が少し出ただけでも止まらずに大量に出てしまうのである。この、厄介な病気のせいで現に今も寝込んでいる。今は痛みが少し引いて姉達と会話できているが、少し前までは激しい痛みがずっと続いていた。

 

(くそぉ…こんなことになるくらいなら宮殿内を走り回るんじゃなかったなぁ。久しぶりに走り回ったから色々と鈍っていたもんで、壁にぶつけて運悪く内出血してしまった。ついてないなぁ。)

 

「それでね、それが医者でも手に負えない病気だそうで、お母様とお父様、何でもお坊さんのお力をお借りするそうよ。」

 

「へぇ…。そうなんだ。どんな人が来るんだろうなぁ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

 

「皇帝陛下…本当によろしいのですか…?あの山師に皇太子殿下をあずけるなど…。」

 

こう言ったのはアレクセイの主治医である。

 

「大丈夫大丈夫…。彼には神秘的な力がある。きっとアリョーシャの病状もよくなるはずだ。」

 

「ハァ…。」

(皇帝陛下…、あんな山師が治せるはずはずがありませんよ…。)

 

「では…主治医殿…、賭けをしませんか。」

 

「?!」

 

 振り向くとそこには立派な髭をたくわえた修道僧の格好をした人物がいた。そう彼こそが先ほどから山師と言われていた人物。グリゴリー・ラスプーチンであった。

 

「ラスプーチン殿…。」

 

「私ははっきり宣言してやりましょう。アレクセイ皇太子殿下を完治させてみせるとね…。」

 

 

「か、完治だと…?!そんなことできるはずがない!」

 

「だからこそ賭けをしてみようと言ってるんじゃないですか…。私が完治してみせたらあなたには私の力を認めていただこう…。もしできなかったら…私は宮廷に一切顔を出さないようにしてその上であなたのただ働きの下僕として扱ってくれていい…。どうです?」

 

「…!いいだろう…。皇帝陛下の名に誓ってかけてみようじゃあないか。」

 

(このアホンダラの山師め…遺伝病を完治させるだと…!できるはずがない!きっと遺伝病が何なのかもわかってないんだろう。せいぜい使い潰してくれるわ。その方が皇帝陛下の周りに奸臣がいなくなって宮廷もより良くなるなろうしな!)

 

そう思っている主治医を横目に皇帝は心配そうな顔をしていた。

 

「ラスプーチン殿…。本当に完治させるつもりで…?」

 

「ええ本気です。なぁに私の力を信じてください。」

 

そういうと彼はにっこり笑った。最もその笑顔はこう言った祈祷師や霊能力者特有の胡散臭さを含んだ笑みであったが…。

 

「まぁそれはそれとして早速彼の"治療"に取り掛かりましょうか。おっと、皇帝陛下ここから先は私1人で…、心配するのはやまやまですが祈祷は私とあの皇太子の2人でなりたつものですので…。」

 

「そ、そうか…。」

 

「なぁに首を長くして待っていてくださいよ。」

 

そういうと彼はアレクセイが寝ている部屋に入っていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何者だ…?この人は…。さっきから父上と何人かが部屋の外で喋っているのを聞いていたが…。まさかこのヒゲモジャの人物がオーリャの言っていた特別な人…?何だこのいかにも胡散臭そうな感じは…。こんな人が本当に私を治療できるんだろうか…?

 

 

 彼がそう思っていた中、ラスプーチンはアレクセイの目をじっと見つめていた。そして次にこう言った。

 

 

「やはりでしたか…若君…。」

 

と。

 

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