逃げ上手の皇太子殿下   作:HMMLER

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投稿まで遅くなってしまって申し訳ない(某クソ映画メタルマンの博士並感)

ついでに文字数もいつもより少ない
許し亭…許して







別離

 

 時は少し遡る

 

1911年 8月頃

 

「マッタク、あの山師にはうんざりですよ!」

 

深夜のある貴族の邸宅でその声は響いた。

 

そう言ったのはロシア帝国の有力な貴族の一人であった。

 

「あの山師は……皇帝陛下及び皇后陛下を誑かして宮廷で我が物顔で歩き回っておる、しかもその上まだ幼い皇太子殿下も誑かして自分は皇太子殿下の臣下だとか名乗っておるそうじゃないか。」

 

「ほんにその通りじゃ。全くあんな山師がのさばるとは世も末じゃ。」

 

「どうにかできんもんかのう。」

 

各々がそう愚痴をこぼしていた。

 

「首相閣下はどうかの?」

 

その中のある一人がここにどうせしていたピョートル・ストルイピン━この一ヶ月後に暗殺される━に尋ねた。

 

「私もそう思います。いつまでもあの山師をのさばらせるわけにはいきません。」

 

 

「ウム、それはそうだがどうすれば…。」

 

「私に一つ策があります。」

 

「策?」

 

「まあ聞きなさい。その策とは………」

 

 

ストルイピンがその策を話すにつれ、夜は一層暗くなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は再び戻る

 

 1911年 10月

 

「アリョーシャや…ちょっと来なさい…。」

 

 ある一室にてロシア皇帝ニコライ2世は自分の子供を呼んだ。

 

「ハイ父上。」

 

「アリョーシャ…。お前に見せたいものがある。ついてきなさい。」

 

「見せたいもの……ですか?」

 

「まあまあついてきなさい。」

 

 そう言われてアレクセイはニコライについていき、居間に連れて行かれた。

 

(ハテ、こんなところにきてどうするのだろう…?)

 

アレクセイは内心訝しみながらもついていくとある美術品の目の前でニコライは止まった。

 

「あっ……。」

 

その美術品は前々から気になっていたもので、それを見るとアレクセイは彼が時行であった時のことを思い出した。

 

その美術品には彼が生前にもやったことがある犬追物が描かれていたのである。

 

「これはな綴錦犬追物壁掛と言って、私が最後に日本を旅行した時にいただいた物なんだ。」

 

「日本を………。」

 

「うん、そこで私は大津というところである日本人に襲われて頭に怪我を負ったんだ。」

 

「エッ…そんな目に遭ったんですか。」

 

「まあ、幸いその時一緒にいたギリシャのゲオルギウスのおかげでなんとか命は無事で済んだがね。」

 

「それはよかった……。」

 

「ウム、しかしあの時の日本人は酷い物だった。私が襲われているというのに傍観とは!」

 

「父上…?」

 

「おっと…すまない。あの時の日本人の酷さについカッときてしまった。」

 

「はあ…。」

 

「だが、そんな日本人の中でも高貴な人、尊厳に値する人物はいるもんだ、私を見舞ってくれた上にこれを贈ってくれた明治天皇や有栖川親王、そして島津忠義だ…。」

 

「島津忠義…。」

 

(島津…薩摩の方の武将か…。)

 

「私はあの人柄に引き込まれたもんだ…、噂では彼は外国人嫌いだそうだが、それ以上に人一倍高潔で忠義の心を持ち合わせていた…。そういえば彼にはこの絵に描かれている犬追物を見せてもらっていたもんだったな…。」

 

「へえ…………。」(武士はもういないもんだと思っていたが違うのかな…?)

 

「ところで父上、わざわざここに連れきてそんな話をしたのはどういうわけで…?」

 

「ああ実はな…お前に聞きたいことがあるんだ。」

 

「聞きたいこと…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前に…世界旅行の話がきているがどうだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界旅行…世界旅行…なんと…なんと…世界旅行…。

 

世界旅行なんていう壮大な旅という話が出てくるなんて夢にも思わなかった。

 

世界旅行…前世の頃なら考えられない壮大な規模の旅…

 

 

 

 

…………………面白い…!

 

 

 

その話が来て私はすぐに承諾した…こんな面白そうなこと…逃すはずがない…!

 

もうすでに胸の内は好奇心で一杯だ。ああ今からでもいきたい!

 

このワクワクとした気持ち…!好奇心は未知の世界への恐れなんぞ圧倒している…。

 

楽しみで仕方がない!

 

ああそうだ頼重殿もこの旅に来て貰おう…!あの人とも旅をするんだ…!きっともっと楽しいものになるだろうなあ…!

 

 

 

 

ああいつか聞いたベートーヴェンの交響曲第九番の如く心が躍っている…旅行の日が楽しみだ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはそれは結構なことでございますなあ。」

 

時行が捲し立てるように旅行への一日千秋の思いを口にするのに対し頼重は落ち着いた声でそう答えた。

 

「世界旅行ですよ!父上!あなたがいつか仰ったローマの遺跡!パリのエッフェル塔!天竺のタージマハル!ニューヨークの自由の女神!そして……私たちが元いた日本に行けるんです!いやあ楽しみだなあ!父上も家来として是非行かせますよ!諏訪神社も今はどうなってるのかなあ。」

 

頼重のその返事に対してもそんな風に時行は尚もこれからの旅への期待への気持ちを述べ続けた。

 

時行はそんな頼重の態度に疑問を抱いた。いつもならこんな時に頼重は後光を出してとにかく大きな声で笑って胡散臭い笑みを浮かべるもんだが今回に限っては違っていた。だがそんな疑問を抱きつつも旅への期待がその疑問を掻き消し、その日は時行は楽しみのあまり一日中はしゃいでいたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1912年2月

 

 あれから数ヶ月。世界旅行の日まであと一週間を切った。

私の心は楽しみで待ちきれない。あまりにはしゃぎすぎて走り回ったからついこの間には母上に怒られてしまった。

 

 それはそうとして、今回の旅には私の一番近い姉上であるナーシャも来るという。なんでも過保護な私の両親は私一人だけでは心配だということでナーシャもつけたらしい…。最もナーシャの方はあまり乗り気ではなくてついこの間も…

 

「あーお父様お母様と別れるなんていやよいやよ。」

 

なんて言っていた。まぁもっともその割には楽しみにしているところも有るには有るようだが…。

 

 ところで…今回の世界旅行は私の父、ニコライ二世が皇太子時代の時の世界旅行よりももっと大規模で、アメリカ大陸やアフリカにも訪れるという。

これ…私ならともかくナーシャに関しては家が恋しくなってしまわないかな…所謂ホームシックとかいうやつに…。

まぁ私ならともかく頼重殿がいるからそこんところはなんとかしてくれるだろう(適当)

 

 

時行はこういうところに関しては適当なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うーん遅いなぁ頼重殿…。そろそろ宮殿に出勤してくる時間のはずなんだが…。

 

その日、頼重はいつもの宮殿に参る時間になっても来ず、もうすでに数時間がたっていた。

 

 頼重殿…どうしたんですか…何か嫌なことでも起きたような気がする…

 

 

 その後数時間経っても来ないので父親に頼んで使いの人をラスプーチンの住んでいる所へと尋ねさせた。しかし…

 

 

 

「ダメです、もぬけの殻です。」

 

 

 そこには誰もいなかった。ラスプーチンからの連絡も何もなく、彼は正真正銘失踪したのである。

 その後、ロシア皇帝から直々にラスプーチンの捜索を警察及び内務省の秘密警察のオフラーナに命令するもペテルブルク中を探してもラスプーチンはおらず、その後、彼の実家があるトボリスクやその周辺、ひいてはロシア中を探しても彼の姿を見つけることができずにいた。

 

 そして、彼の姿が見つからないまま旅行の出発の日を迎えることとなる…。

       





ちなみに作中でニコライ2世が日本人は傍観してたとか言ってますけど実際には日本人が捕えたのでニコライ2世の(多分)誤解ですハイ。



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