機動戦士ガンダムSEED Destiny “M” 作:神谷萌
第2話を、公開後に設定に関わる部分を含めて改訂しました。
ってか量産機の命名間違えてました。
うわーっ、恥ずかしー……
『この! 神妙にしなさい!!』
赤いジェニス・アパリションが、倒れ込みかけたアビスのフェアリングシールドを踏みつけ、機体の重量を乗せてのしかかり、動きの自由を奪っている。
マユへの挨拶からは一転、ルナマリアは、外部スピーカー越しに、怒気をはらんだ声で厳しい声を出す。
「アウル!」
「おっと!」
カオスが、ビームサーベルを構えてルナマリアのジェニスに突進しようとする。それを遮るように、ガイアがシールドを構えながら割り込んでくる ────
「その程度はお見通しだっ」
「えっ!?」
ガイアがシールドを構えた時点で、カオスが深く踏み込んで浅くジャンプする。そのまま、ガイアのシールドを両足で蹴飛ばして、その背後へ向かって跳躍から降下する。
「わ、私を踏み台にしたーっ!?」
マユが叫んでいる間にも、カオスは、ビームライフルでルナマリア機を牽制しながら、足の爪先にビームクローを出現させて、足でルナマリア機を斬りつけようとする。
「っ、くっ」
アンチビームバックラー構えさせつつも、一歩下がった事で、アビスのフェアリングシールドから降りることになる。
ルナマリア機がアビスのフェアリングシールドから降りると、アウルはアビスを立ち上がらせる。そのアビスと、ルナマリア機とガイアの間とへ、スティングがカオスを割り込ませ、庇うような姿勢をとった。
「アウル、これ以上は無理だ。離脱するぞ」
スティングは、落ち着いた口調で、通信越しにアウルに言う。
『けど! スティング!!』
アビスは射撃で牽制しながら飛び上がるものの、カオスの通信用ディスプレイには、曇った表情のアウルが映り、不満気な声を出す。
「スアラのことは諦めろ……運が、なかったんだ」
スティングは、カオスを飛び上がらせつつも、自身も後ろ髪引かれる様子でそう言った。
『畜生! お前ら、後で皆殺しにしてやっからなぁっ!』
アウルは、外部スピーカーでそう怒鳴りつつも、アビスを上昇させていく。
「この……」
マユが、ガイアを飛び上がらせて追いかけかけようとすると、ルナマリアの顔が通信用ディスプレイに映った。
『マユちゃん、先に追いかけててくれる? すぐに追いつく』
「解った」
ルナマリアはマユにそう伝えたものの、ジェニスはガイア同様、コロニーの大地を蹴って、その限定的な重力の空中へと飛び出している。
──── が、ルナマリアのジェニスは、空中を少し緩い速度で上昇しながら、対装甲アキナスのストックを折りたたんでバックラーに格納してしまう。その状態で、背面を上に向け、ほぼ直立の状態になった。
行動中換装型バックパックシステム、エクステンショナルシルエットの換装パック輸送用無人機『シルエットフライヤー』がその背面を通過しながら、4枚の翼をもつ換装パック、『ファルコンシルエット』を切り離した。
ファルコンシルエットはZGMF-X56S用の『フォースシルエット』をベースに、追加バッテリーありきで再設計したものだった。
シルエットとジェニス本体側、それぞれのカプラーからガイドビームが伸び、それに従ってファルコンシルエットがドッキングした。
「このまま逃さないんだから、待ってなさいよ!!」
追加バーニアが付き、推力が増した状態で、カオスとアビス、それにガイアが上昇していった先に、高速で向かっていく。
「大丈夫か? カガリ」
カオスやアビスの射撃、それに、ガイアやジェニスとの戦闘での流れ弾やらで、無惨な姿になった工廠地区を、リック・ジンオーカーを歩かせながら、アレックスはカガリに訊ねた。
「ああ、大したことはない……」
カガリはそう言ったものの、彼女が向けた顔を覗いて、アレックスはギョッと驚いた。
その顔面に血液が滴っていたからだ。
だが、観察してみると、額がきれいに割れて、最初のうち出血が目立ったが、深手ではないようだった。
「くっ、これというのもZAFTがこんな新兵器を造るから……」
カガリは、憎々しそうにそう言って、歯を食いしばった。
それを聞いて、アレックスは、少しだけ心穏やかではない感触を覚えた。
「あのパイロットの判断は正しかった。割って入ってきてくれなければ、こちらは深手を負わされていた」
アレックスは、メインディスプレイに視線を向け直しつつ、少女パイロットをかばうようにそう言った。
「それは解っている、私にだって……」
── ん?
アレックスは、カガリの反応をちらりと見て、少しばかり怪訝に思った。
── そうか、カガリはパイロットの姿を見ていないのか……
そう考えつつも、アレックスはリック・ジンオーカーを進ませる。
「医療チームD班は第7工区へ!」
「第45ストレージの温度が上がりすぎている! 注水しろ! 爆薬だぞ!!」
アレックスは、カガリの手当が受けられるところを探していたが、工廠地区は大混乱で、とてもそれどころの状況ではないようだった。
『ダメだダメだ! 工廠は整備機能を完全に喪失している! 動ける機体はミネルバのドックへ向かってくれ!』
他の損傷機の集まり始めているところへ向かうと、通信越しにそうぶっきらぼうに伝えるこえがきこえてきた。
「ミネルバか…………」
アレックスが反応する。
デュランダル政権下で建造され、明日、就役式を迎えるはずだったZAFTの新造大型艦。
ZAFTの流出オーブ技術の導入に抗議しに来たカガリにとっては、面白くない存在かも知れないが、背に腹は代えられない。
アレックスが、リック・ジンオーカーを歩かせようとすると、
「ミネルバに行くのか?」
と、カガリが問いかけてきた。
「ああ、ここは安全ではないようだし、止むをえない」
アレックスがそう言って、リック・ジンオーカーはミネルバが就役式を行う予定だったドックへと向かっていった。
フラスコ型コロニーの底面が構成する地面から離れ、遠心力による人工重力の影響が殆どなくなるところまで上昇してくると、アビスはコロニーの壁面と向かい合う。
ズバーッ、ドガァッ!!
アビスのフルバーストが、コロニーの壁面に向かって撃ち込まれる。
流石に、人が居住する
だが、アウルは、1点に狙いを絞って、2度、3度、と、アビスのフルバーストを何度も撃ち込む。
累積した熱量で、その壁面の1点が赤熱し始めた。
「やめなさいよぉっ!!」
下方から突進してきたガイアが、アビスに向かってタックルをかける。
「くっ!」
アビスを追撃しようとするガイアの行く手を塞ぐように、スティングがカオスを割り込ませる。
「アンタの相手は私よっ!」
ガイアを上回る速度で突進してきたルナマリアのジェニスが、バックラーを使ったシールドタックルで、カオスをさらに強烈に跳ね飛ばした。
ルナマリアは、ジェニス本体と、ファルコンシルエットの整流・放熱フィン一体型バッテリーケースの間に位置するビームサーベルマウントから、2つあるうちの1本のビームサーベルを、ジェニスに抜かせ、構えさせた。
「ちくしょー、いい加減にしやがれ!」
アウルは、頭に血が
「待て! アウル、こいつらは俺が抑える。お前は早く穴を開けてくれ! でないと、ネオに怒られるぞ!」
「ちっ」
スティングの言葉に、アウルは舌打ちしつつ、ガイアから間合いを取ろうとする。
「えっ!?」
アビスは前方にいるはずなのに、ガイアのコクピットに後方からのロックオンアラートが鳴る。
マユが横転するように急機動をかけると、直前までガイアがいた場所を、カオスの、2つの機動兵装ポッドの射撃がクロスした。
そのカオス本体は、やや大振りだがジェニスの斬撃を急機動で躱し続けている。
「遠隔兵装まで……やっぱりこいつら、ただのテロリストじゃない!」
そう言った時には、機動兵装ポッドの射撃を躱すために、スナップの効いた急機動を繰り返しつつ、壁面へと向かう。
壁面までたどり着きかけたところで、姿勢を入れ替える。背中のビームブレイドを起こしつつ、壁面を蹴飛ばして、逆に一気に機動兵装ポッドにビームブレイドで斬りつけようとする。
機動兵装ポッドは散開して回避する。しかし、ガイアはそのまま、一度捻りつつ、ルナマリアのジェニスと対峙しているカオスの方へと向かう。
「このぉっ!!」
ドガァッ!!
「ぐぉっ!?」
ロックオンアラートは鳴らなかった、ぐるっと転回してきたガイアのドロップキックが、カオスの頭部に突き刺さる。
ガイアがルナマリアのジェニスとほぼ同じ高度で止まる。カオスは、MS2機分ほど高度を落とす。
「あとはっ!」
僅かに息を継ぎつつ、マユはガイアをアビスに向かって突進させる。
アビスに繰り返しフルバーストを叩き込まれた壁面は、かなりの部分が溶岩のように赤熱していた。
「やめなさいよぉっ!!」
ガイアが背面のビーム突撃砲でアビスに撃ちかける。アビスはガイアの斜線から逃れようとするが、
「これで! どうだっ!」
「あーっ!!」
ジェニスを振り切るために、戦闘機のような機首をもつモビルアーマー形態に変形していたカオスから、その形態の時に使えるMGX-2235B『カリドゥス改』複相ビーム砲と、ビームライフル、機動兵装ポッドのビーム砲をあわせたフルバーストが放たれ、壁面の溶けかけていた部分に撃ち込まれた。
追い縋っていたルナマリアが声を上げるが早いか、
グボォッ、グワァアァァァッ
と、赤熱していた部分が崩れ、直径30mほどの穴が開いた。
「しまった!」
マユが険しい声を出す。
コロニー全体からすると、針の穴のようなもので、いきなり内部が真空になるということはない。
だが、その穴の付近にいる者は別だ。
漏れ出す空気は、外部へ向かっての強烈な吸引力となる。こうなると、MSの推力程度では抗うことはできない。
猛烈な空気の流れの中、カオスは、ガイア、ジュネスの間を縫うようにして、アビスとともに、自ら破口に吸い込まれていった。
「きゃあぁぁぁっ」
少し遅れて、推力で気流に抗っていたガイアとジェニスも、押し負けるかたちで、破口付近で一気に強まる気流によって、外へと押し出されていった。
「あーっ!? あいつら、勝手に!」
ミネルバCIC。
ガイアと、ルナマリア機の識別信号が、アーモリー1の外へと飛び出していったのを見て、独断専行と勘違いしたアーサーが声を上げた。
「ガイアとのリンクダウン、稼働時間、最大であと300です!」
メイリンが、険しい顔で声を上げた。
「ミネルバ、発進を開始します!」
タリアがそう宣言する。
他のスタッフは、驚いた様子で、視線をタリアに向けた。
「し、しかし艦長……」
スタッフの驚きを代表するかたちで、アーサーが声を出す。
「2人を
タリアが言う。
「……頼む」
デュランダルが、そう小さく呟いた。
「ミネルバ、発進シークェンス開始! ドックのコントロールシステムとコンタクト、リンケージアップ」
「本艦はこれより、戦闘ステータスに移行する」
メイリンが、そして続けてアーサーが告げた。
「議長は退艦を」
タリアは、デュランダルとその側近達がいる方を向き、そう促したが、
「タリア、とても残って報告を待っていられる状況ではないよ」
と、デュランダルは、険しい表情で否定する。
「私には権限もあれば義務もある。私も行く。許可してくれ」
デュランダルの強い意志と感情を感じさせる口調に、タリアは、かすかなため息を
「了承しました」
「ありがとう、タリア」
「本艦は此より発進します。各員所定の作業に就いて下さい。繰り返します、本艦は此より発進します。各員所定の作業に就いて下さい」
メイリンの声が艦外にも放送で響く。警告灯が点灯し、所定の手順に従って、作業員達が行動を開始する。
ミネルバ、格納庫。
「これで最後だ! ハッチ閉じるぞ!」
整備班長のエイブスの声が響く。
自身の発艦シークェンスの為、ミネルバは損傷機の受け入れを中止して、格納庫ハッチを閉じようとしていた。
エイブスの指示した通り、最後に、1機のリック・ジンオーカーが着艦する。
「ん……?」
緑のZAFT制服を着た、スレンダーな身体つき、ショートヘアの前髪に金髪メッシュが入った、ボーイッシュな少女が、怪訝そうにそのリック・ジンオーカーを見る。
「!!」
そのリック・ジンオーカーから降りてきたのが、私服姿の男女連れと見るや、少女パイロットは、腰のホルスターからオートマチックの拳銃を抜きながら、その2人の前へと駆け寄っていく。
「動くな!」
少女がそう言うと同時に、整備兵の何人かが、アサルトライフルを手に2人連れを取り囲む。
「抵抗しないで! 指示に従えば命の安全は保証します」
少女パイロットは、拳銃を構えたまま言う。
彼女らには、外の騒ぎは、テロリストが新型MSを強奪する事でおきたと伝えられている。私服でZAFTのMSを乗り回していたとなると、テロリストの仲間の可能性もあった。
「待て! 抵抗の意思も敵意もない」
男の方が、手を少女パイロットの方に向けて制するようにしながら、そう声を張り上げた。
「こちらは、オーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハ。自分はその随員のアレックス・ディノだ。デュランダル議長との会談の途中、このような事態に巻き込まれ、申し訳ないが、避難の為にこの機体を拝借させていただいた」
アレックスは、自分達の身分を明かし、ここへ来た経緯を説明した。
「オーブの……代表?」
少女パイロットは、怪訝そうに反芻しつつも、拳銃を上に向けて銃口を逸らす。そして、腕でライフルを構えた整備員に、銃を下ろすよう合図した。
「自分は本艦所属のMSパイロット、ミレッタ・ラバッツです。艦内ではZAFTの指示に従っていただきます。よろしいですね?」
ミレッタ、と名乗った少女パイロットは、しかし、まだ険しい口調でそう告げた。
「ああ、ただ、ご覧の通り、アスハ代表は負傷しておられる。まずは手当をお願いしたいのだが」
アレックスの方は、口調を柔らかくして、頼み込んだ。
「解りました。ただしその前に、武器を預からせていただきます。よろしいですね?」
「解った」
アレックスが返事をすると、ミレッタが2人の傍まで来る。アレックスは拳銃とナイフをミレッタに手渡した。
「それでは、医務室にご案内いたします。こちらへ」
オリキャラ、ミレッタ・ラバッツ嬢
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