ホシノ同級生相棒概念 作:洞鼬
「ああ、良かった。本当に……」
トイレから戻ってきて、気持ちが多少落ち着いたカヤツリは安堵の息を吐いた。知らない間に子持ちにされていたり、女になったわけでは無いのだ。
「クックックッ……落ち着いたようで何よりです。話は理解しましたね?」
「おおよそは」
黒服が言うには、この短髪ホシノはカヤツリが知るホシノではない。ここではない未来のキヴォトスから来たのだろうと。並行世界という奴だろうか?
先生のあのよく分からないカード。アレが呼びだしたモノの残滓が、カヤツリの神秘を吸って、ここまで大きくなったらしい。調子が悪かったのは、神秘が大きく目減りしていたから。あの腹痛は異物に対する拒絶反応だと。
「つまり、カヤツリ君が産んだという事ですね。クックックッ……おめでとうございます」
黒服としては事実を言っているだけなのだろうが、カヤツリにとっては気分が良くない。反応しても止めはしないので、これに関しては無視することにする。相変わらず何が面白いのかくつくつ笑う黒服ではなく、短髪ホシノに気になったことを聞いてみる。
「やっぱり、色々違うのか? 時期とか」
「うーん。ここに来たって事は、おおよそは同じかな。私の方が半年くらい先にいるね。何? 宝くじの番号とか知りたいの?」
「セリカ後輩じゃないんだ。そんなことはしない」
カヤツリの返答に短髪ホシノはニコニコ笑う。それを見てカヤツリは疑問が浮かぶ。そもそも、彼女は何のために来たのだろうか。カヤツリの疑問に彼女は首を振る。
「別に目的があってきたわけじゃないよ。今回は事故みたいなものだし、そんなに長居ができるわけじゃないんだ」
「何かを警告しに来たわけじゃないのか」
短髪ホシノの言葉にカヤツリは拍子抜けした。頼み事がある訳でも無く、危機が迫っている訳でも無い。本当に偶然らしい。
すると、カヤツリと短髪ホシノの会話を聞いていた黒服は何を思ったのか、カヤツリに忠告する。
「未来の事を変えようとしているのなら、止めた方が良いと思いますよ。どうしてもというなら止めはしませんが」
「矛盾が生じるからですか?」
タイムパラドックスという奴だろう。目の前のホシノが情報を伝えて、カヤツリが未来を変えたとする。そうした未来には、情報を伝えたホシノは居ないから。そうなると、最初に情報を伝えたホシノが矛盾する。
ただ、それは時間軸が一本の場合だ。平行世界なら、平行に走る時間軸が複数あるから。情報を伝えた時点で、聞いた未来と聞かなかった未来に分岐するだけだ。
「それは時間と世界という物を軽く考え過ぎですよ。時間は一方通行の線路のようなものですし、この世界はそこを走る電車のようなものですから」
そう言って黒服はカヤツリを窘める。
線路と電車とは、また珍しい例えだとカヤツリは思った。大体は川の流れに例えられるからだ。研究者の黒服の事だ。分かりやすい例えがあるなら、そっちを使うと思っていた。それに黒服は相も変わらずの笑いで答えた。
「クックックッ……ここはアビドスですから、川よりも電車の方が馴染み深いでしょう? 廃線になって久しいですが」
「ホントのことだけど、くるものがあるね……」
短髪ホシノが微妙な顔をしている。何か思うところでもあるのだろう。しかし、黒服はそれを気にもせずに続きを話す。
「例えば、過去のホシノさんか、同じ時間軸のホシノさんから貴方が話を聞く分には良いでしょう。未来から地続きの過去を変えることはできません。未来の自分なら知っている情報しか、そこにはありません。未来から過去は変えられません。線路のポイントをいくら切り替えようと、そこを電車に乗った私たちは通り過ぎた後なのですから」
ですがと、黒服は言う。
「逆は別です。過去からなら、如何様にも未来は変えられます」
「変える気は無くても?」
「ええ、変える気は無くともです。それに、知れば貴方は自分を抑えられますか? それがどうしようもない未来で、それが変えられるとしたら」
黒服は言葉を止めて、カヤツリをジッと見た。大分、黒服は真剣だった。契約前の説明並みの真剣さだ。
「人生は選択の連続です。どちらを選んでも大差ない選択もありますが、そうでないものもある。貴方は重々承知しているとは思いますが」
カヤツリは知っている。その時の選択が、その後の人生に大きな影響を与えることを。黒服やホシノとの契約。先輩の言う事を聞いたこと、このどれかが違ったら。今、ここにカヤツリはいなかった。
「未来などいつ来るかも分からない不確かなものです。その時は良くないものかもしれませんが。後から思えば良かったと。そう思う日が来るものです。私も経験した事が、貴方に訪れない筈が無い」
何かを戒めるように、黒服は言う。カヤツリは、いつかの契約満了の時を思い出した。
「カヤツリ君。貴方はこれまで、真剣に悩んで選択したはずです。そうしたからこそ、貴方は逃げずに選択した責任を果たせた。どんな結果も受け止めてこれた。その時に、貴方はいつ来るかも分からない先のことを考えましたか? 今直面している事。その次の事を」
カヤツリは首を横に振った。
ビナーの時、先輩が居なくなった時、ホシノと喧嘩した時、ホシノに好きだと言った時。
カヤツリは目の前の事に精一杯だった。目の前の事を何とかしたくて、あんなに頑張ったのだ。
それを見た黒服は嬉しそうに頷く。
「ええ、そうでしょうとも。カヤツリ君。だからこそ、貴方はそこに居る。そして、それは私の神秘の探究も同じです」
カヤツリは黒服には聞き返さなかった。きっとまだ続きがあるからだ。黒服が長い話をするのは珍しいから。
「思った通りの結果が出ない事も、失敗する事も、そもそもの考えが間違っていた事も、邪魔される事もあります。けれど、研究とは、探究とは、そういうものです。そうしたものに向き合って、積み上げていくものです。だからこそ、そこには真実があるのです。私の求めた崇高がそこにはある」
短髪ホシノは少し、驚いたような表情で黒服を見ていた。きっと、こんな黒服を見るのは初めてなのかもしれない。何となく、カヤツリは黒服の言いたいことが分かる気がした。それなら、今この話をカヤツリにしている理由も少しは理解できる。
「カヤツリ君。未来を知って、それを前提に行動するという事は。答えありきで行動するという事です。その恐ろしさ、浅はかさが分かりますか? それが、どれだけ意味のない事か。どれだけのモノを取りこぼすのか」
黙ってカヤツリは頷く。その時に知った未来は変えたくなる程に嫌なものだと想定する。きっと何でもするだろう。取捨選択をして、それを乗り越えるだろう。その途中にあるモノを、大事なものをすべて無視してだ。
もし、先輩が、ああなる事を知っていたとしたら。きっとカヤツリはマトの提案に乗らなかっただろう。そうしたら、先輩はああならなかったのかもしれないし、ホシノもあそこまで傷つかなかったのかもしれない。
でも、そうしたら。アビドスは残っていただろうか。後輩たちや先生は来ただろうか。友達は出来ただろうか。先輩は、ホシノは、それでよかったと笑うのだろうか。
カヤツリはそれは違うと思うのだ。真実はもう分からないけれど。先輩が居ない事は悲しいけれど。あの選択を後悔はしたくなかった。
カヤツリを見て黒服は答えを察したのか、答えを言った。
「ええ、そうです。そうしたなら、その未来の過程にあるモノを、貴方の糧になるモノを、貴方は全て取りこぼす。そうして、手に入れた物になんの価値があるというのです。その先も世界は続き、時間は進みます。同じような事があった時、貴方はまた未来を知りたがる。最短距離を進みたがる。それしか方法が無いのだと思い込む。それのどこが、成長でしょうか。むしろ何もできなくなっている。これでは退化でしょう?」
そうなった自分を想像して、直ぐにカヤツリはそれを頭から消した。見るに堪えなかったからだ。
「だから、止めておくのが良いでしょう。それはあくまで可能性にしか過ぎません。未来など知らなくとも、大概の問題は対処できるものです。貴方は今までそうしてきたでしょう? 貴方が積み上げたものは、たかが未来を知った程度で回避できる出来事に敵わないはずがない。それは貴方の積み上げた今までの否定です」
そうカヤツリに黒服が警告する。カヤツリには、もう未来を知る気は無くなっていた。それを見た黒服は満足そうに頷く。
「ええ、その方が賢明ですよ。雑談レベルのモノに留めるのが一番です。精々が今までの時期の相違点の確認か、彼女にホシノさんの事を相談するくらいにして、自分の態度を改める等にしておきなさい。そのくらいの使い方が丁度良いというモノです」
黒服の話が終わると同時にカヤツリの制服の裾が引っ張られた。見れば短髪ホシノが服を引っ張っている。さっきとは打って変わって、いつもの様子に戻った黒服に、短髪ホシノは驚いているようだった。
「ねぇ。あれって、本当に黒服? あんな黒服、私は見たことが無いんだけど」
カヤツリは首を傾げる。確かに珍しいが、短髪ホシノが言うほど珍しいものではない。そう答えると短髪ホシノは信じられないと言った様子だった。
「ああ、貴女にも忠告を」
黒服は短髪ホシノの方にも話を振った。カヤツリがいない間に対価の質問とやらは終わっているはずだが、まだ黒服は短髪ホシノに言いたいことがあるようだった。短髪ホシノは不審そうな目を隠そうともしない。
「え、何。もう言うことは無いって言ってたでしょ」
「ええ、対価の質問としてはです。今から貴女に贈る言葉はただの気まぐれですとも。今の話の流れだと丁度いいので」
短髪ホシノは無言で顎をしゃくった。言えという合図だろう。黒服もそう受け取ったのか、静かに話し出す。
「貴女はもう終わりだと思っているようですが、世界は、時間は進むものです。案外、貴女も諦めるのは早いかもしれませんよ。先ほど世界と時間を電車と線路に例えましたが、乗りいれる事もあるかもしれないのですから」
短髪ホシノは虚を突かれたような表情になって、黙る。そして、しばらくしてから黒服に礼を言う。黒服も短く言葉を返し、その場に沈黙が流れた。黒服のくせになんだか、短髪ホシノには話しにくそうな雰囲気だった。仕方ないので、カヤツリが一言入れる。
「あー。電話を借りても?」
「クックックッ……どうぞ。多分、出ないと思いますが。何事も試行するのは悪い事ではありません」
カヤツリは黒服の座るデスクの電話を借りて、目当ての番号にかけるが。呼び出し音が数回鳴ると同時に切れた。呼び出し音の回数からして、番号を見た瞬間に切られたらしい。カヤツリは大きなため息をついた。手間が増えるどころの話では無いからだ。その様子に黒服は愉快そうに、カヤツリに何かを手渡した。
「おそらく必要でしょう。物は後日に返却でも構いませんが、どうしますか? カヤツリ君」
「後で請求しといてくれれば良いです。……準備が良いですね」
黒服が手渡した物──ハンドガンとその弾、現金。それと何かの鍵。それを受け取ったカヤツリは、それらをすぐさま身に着けていく。カヤツリの返事に笑いながら了解の返事をする黒服を、短髪ホシノがまた驚いた顔をして眺めていた。
□
「誰に電話してたの?」
黒服から貰った鍵。それをバイクに差し込みながら、カヤツリは短髪ホシノの質問に答える。
「ホシノ。速攻で切られたけど」
「え? なんでさ。カヤツリからの電話だよ?」
バイクのエンジンを入れながら、カヤツリはまたため息をついた。確かに、あそこでホシノが電話を取ってくれれば話は早かった。でも、今回ばかりはホシノを責められない。
目の前でカヤツリが攫われて、自分は何もできなかった。カヤツリには今、ホシノが何をしているのかは知らない。けれど、心配しているとは思うのだ。そんな中で、知らない番号から、もしかしたらホシノは知っているのかもしれないが、黒服の番号から電話がかかってきたらどう思うだろう。窮地にまた契約を仕掛けようとしたと判断して、即切りしたに違いなかった。
「カヤツリの携帯で掛ければ?」
「無い」
「え」
バイクに跨って、カヤツリはそう吐き捨てた。茫然とする短髪ホシノに、隣のサイドカーを指さしながら告げた。
「制服に着替え終わった段階で、ホシ……攫われたんだ。携帯どころか銃も財布もない。手ぶらだよ。だから、黒服が色々用意したんだ」
「ああ……私のせいか。ごめんね。カヤツリ」
「別にいい。早く乗ってくれ」
申し訳なさそうな短髪ホシノに、カヤツリはこれ以上何も言う気は起きなかった。本当にやりにくいと感じる。サイドカーに短髪ホシノが乗り込んで言う。
「これからどうするの? どこかに行くなら、私が抱えて跳んだ方が速いけど」
「……そんなことして、ホシノの前に現れて見ろ。また拗れるだろ。宥めるのは誰だと思ってるんだ。向かうのはアビドス校舎だよ。ホシ……チッ」
またホシノと呼びそうになって、カヤツリは舌打ちした。この短髪ホシノを、カヤツリの知るホシノと混同したくなかった。黒服や他の人間に言わせれば同じなのかもしれないが、カヤツリは嫌なのだ。自分でも面倒くさいと思うけれど。
「別に拗れても、私は平気だよ。多分攻撃は効かないし……」
「……それだと時間が掛かる。一日しかないんだ。限られた時間なら、そういう事に無駄遣いすべきじゃない。こっちの皆に会いたいんだろ」
カヤツリの答えに、短髪ホシノは目を見開いた。そして、どこか困ったような顔で呟く。
「相変わらずだねぇ。カヤツリはやっぱりカヤツリなんだね」
カヤツリはその短髪ホシノに何も言うことは無く、バイクを発進させた。
別に急に攫われたことに怒っていないわけでは無い。でも彼女は悲しそうで、カヤツリを一目見た時に、本当に嬉しそうだったから。
別に皆に会わせるくらいなら問題なかった。どう説明するかは考えものだったが。
「……なんて呼べばいい。ホシノの前でホシノなんて呼びたくは無いんだ」
「はぁ……まあ元はと言えばテラーだし、そうだね。テラノで良いよ」
恐竜みたいな名前だが良いのかと聞き返そうとしたが、テラノが先にカヤツリに聞く。
「何で私を呼びたくないの? 呼び分けるのがめんどくさいから?」
「向こうの俺に悪いだろう。殺し合いたくは無いんだ」
カヤツリは何ともなしに答える。テラノの反応からして、関係性はこちらのホシノとカヤツリとそう変わらないのだろう。もし、そうであれば。カヤツリが向こうのカヤツリの立場であれば。自分の彼女が並行世界の自分とは言え呼び捨てにされるのだ。しかも馴れ馴れしく。それを見たらカヤツリは激怒する自信があった。
「うへ、本当にアレだね。カヤツリは。それをさ。こっちの私には言ったの?」
テラノが信じられないことを言う。そんな事を言えるはずがない。テラノ相手だから言ったのだ。ホシノに言ったらドン引きされるだろう。テラノはニヤニヤ笑って言う。
「ふーん。言ったら喜ぶと思うよ」
「まさか」
「……こっちの私も苦労してそうだねぇ」
ニヤニヤ笑いを崩さずにテラノがカヤツリを見ているので、カヤツリは話題を切り替える。気になったことがあったからだ。
「シロコには会わなくていいのか。あげた名前になかったけど」
「あー。どうしようかな。合わせる顔が無いんだよ。違うって分かってるのにね……」
アビドスだけあって、人通りはそれほどでもない。渋滞もないので移動はスムーズだった。もうしばらく走らせれば着くだろう。テラノは何処か言いにくそうにしている。
「毎日会ってるようなものだからね。いいかなと思ったんだけど……」
そう言うテラノの言葉がカヤツリは不思議だった。他の皆には会っていないような口ぶりなのに。シロコとカヤツリだけは会っているようだ。カヤツリは会っているだけで会話が無いような感じだが。
テラノはどこかの未来。今から約半年後の存在だという。半年後ならホシノとカヤツリは卒業しているだろう。多分一緒に居て、アビドス高校に今ほどは居ないだろうから、他の後輩たちと会っていないのは分かる。どうしてシロコは別枠なのか。
嫌な想像がカヤツリの脳裏をよぎる。
卒業後のカヤツリとホシノの家に居候するシロコの姿。弁当目当てで居候を選択しそうだ。それに、一緒に居るのにホシノとカヤツリの間には会話が無いという。きっとカヤツリが夜遅くに帰ってきて、朝早く出るのだ。
脳内のシロコが何か言っている。
──ん。ここをキャンプ地とする。
「倦怠期……シロコが居候……」
「ふふっ……なんて想像してるのさ。それなら、こっちの私に、もっとさっきみたいなことを言ってあげなよ。どうせカヤツリの事だから、はっきりとは言わない感じなんでしょ?」
「……」
カヤツリはテラノの言う事を無視する。分が悪いからだ。そんなテラノは揶揄うような表情の後に何か決めたのか、カヤツリに言った。
「やっぱりシロコちゃんにも会う事にするよ。ん? あれって……」
何かに気がついたのかテラノの声が訝し気になる。彼女が指さす方を見れば、便利屋のムツキだ。何かを探しているのか、きょろきよろと辺りを見渡していた。
珍しいとカヤツリは思う。便利屋は家賃が払えずにアビドスのオフィスを引き払っているはずだ。時々、対策委員が留守番を頼んだりすればやってくるが、普段はブラックマーケット方面にいるはずなのに。
「あ、みーつけた」
そう言ってこっちを見て、手を振るムツキにカヤツリは嫌なものを感じた。隣のテラノもどうにも顔が険しい。
「カヤツリ! 右!」
「分かってる!」
カヤツリは左へハンドルを切る。二人が乗るバイクへの狙撃だった。狙撃の主はきっとアルだろう。
躱した先には先程、ムツキが放り投げたカバンが転がっている。その先は簡単に予想できた。アレの中身は爆発物だという事をカヤツリは知っている。
えい、とテラノが何かする。カバンとその中身が爆発もせずに燃え尽きた様に塵になる。それを見て、ムツキは引きつったような顔をしていた。
「依頼か?」
「くふふ、やっぱりわかっちゃうよね? もちろん依頼人は秘密だよ? お兄さんは分かってるだろうけど」
カヤツリは返事をせずにバイクを反転させた。遠くの、後ろの方でアルの”え!? 向かってこないじゃない!?”という声が聞こえる。どうせ、その先にはハルカ辺りが仕掛けたであろう爆発物が埋設してあるに決まっている。
依頼人の予想は着いている。便利屋を雇ったという事は、とんでもなく怒っているか、本気でどうにかしようとしている。
少なくとも頭を冷やさなければ話も聞かないだろうと言う予感がする。先生の助けが必要だった。
ただ、ここからシャーレは遠すぎる。それなら、もっと良いところがあった。彼女なら、先生に連絡を取ってくれるだろうし、仲裁の手伝いもしてくれるはずだった。
「どこに向かうの?」
「ゲヘナ学園! 少し飛ばすぞ!」
追いすがる便利屋たちを振り切って、二人の乗るバイクはゲヘナ学園、風紀委員会本部へと向かっていった。