ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

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12話 戦闘準備

「ひぃぃぃぃん。全然覚えられないよぉ」

 

「手伝うって言ったじゃないですか。自分の言葉には責任を持ってください。先輩は戦場に出ない分、頭を使ってもらいますよ」

 

 

 生徒会室で先輩が悲鳴を上げながらパソコンに向かっている。徹夜で長距離ドローンの操作をカヤツリが叩き込んでいた。

ビナーが来るまで、今日を入れて後2日間ある。今日はオーナーへ物資と装備の調達に、できる限り先輩にドローンに慣れてもらうために使う心算だった。

 

 

「何をそんなに苦労してるんです。操縦自体はある程度はオートなんですよ」

 

「映像とレーダーの画面で頭がぐちゃぐちゃになるよぉ……」

 

 

 先輩の画面を見ると、ウィンドウ塗れになっている。これでは混乱するのも仕方がなかった。いらないものを消して、カヤツリは先輩にもう一度説明する。

 

 

「先輩にやってほしいのは、ビナーの全体を見て欲しいんですよ。だから、この画面だけでいいんです。熱線とミサイルはこっちで何とかしますけど。潜行された時だけは、上からの先輩の視点じゃないと分かりにくいんです」

 

 

 ビナーに砂漠に潜行されると、何処に居るか分からなくなる上に砂嵐で視界も潰される。その隙に此方の足を潰されるのが、ビナーをアビドス砂漠の奥地まで引っ張っていくのに、一番やってほしくない行動だった。

 だから先輩にビナーの動きをドローン経由で監視してもらう算段だった。初めは車両の荷台で盾でもやってもらおうかとも思ったのだが振り落とされる未来しか見えなかったので、安全なこちらに変更したのだ。

 

 

「も、もう無理。休憩したいよ」

 

「もう随分やってますからね。限界なら、そろそろ休憩した方がいいんじゃないですか」

 

 

 先輩が頭から湯気を出して潰れている。ただ見る限りでは、今日中には何とかなりそうだった。そんな先輩を尻目にカヤツリは自分の仕事を続行する。

 

 

「そんなカヤツリ君は何してるの?」

 

「昨日の夜に始める前に言ったじゃないですか。使う装備と弾薬を注文してるんですよ。何しろ今回はタダですからね」

 

 

 もうカヤツリの分の注文は終わったのだが、ホシノの分がまだだった。カヤツリとしては、あんなことを言った手前、顔を合わせるのが気まずくて先輩に連絡と今までの状況説明を丸投げしていた。だから今の状況は知っているはずなのだが、普段とは違って、今日は来るのがやけに遅かった。

 

 

「先輩。ホシノにホントに連絡したんですよね。今になって忘れてたとかやめてくださいよ」

 

「したはずだよ?ちょっと確認してみるね」

 

 

 先輩がカバンから自分の携帯を取り出そうとしたところで、生徒会室のドアが開いた。

 

 

「あっ、おはよう。ホシノちゃん」

 

「おはようございます。ユメ先輩」

 

 

 カヤツリから見た感じはいつものホシノだった。別に雰囲気も表情もいつも通りだった。カヤツリは意を決して話しかける。

 

 

「ホシノ」

 

「何?」

 

 

 ホシノがカヤツリをじろりと見る。罪悪感による胸の痛みをかみ殺してカヤツリは頭を下げた。

 

 

「あの時は悪かった。ごめん」

 

「ああ、あの事?いいよ。私も悪かったから」

 

 

 ホシノのいつものような対応にカヤツリは拍子抜けした。最後に会話した時のことを考えたら、もっと怒っていてもよさそうなものだったが。むしろ機嫌が良さそうだった。何かがおかしいとカヤツリは訝しみながら、先輩の傍の椅子に座って説明を催促するホシノに向き合った。

 

 

「じゃあ。ホシノ。先輩から話は聞いてるか?」

 

「聞いてるよ。ビナーとかいうのをなんとかするんでしょ。どうすればいいか説明してよ。それがカヤツリの仕事でしょ」

 

 

 さっきから何かおかしい気もするがカヤツリは切り替える。ホシノの態度の理由は分からないが、今の最優先事項はビナーだった。

 

 

「簡単に言うと、此処に向かってくるビナーをアビドス砂漠に誘導するだけだ」

 

「本当に簡単に言うね」

 

「最初から情報をごちゃごちゃ言ってもわからないだろ」

 

 

 ホシノの茶々をいなしながら説明を続ける。誘導は向こうがカヤツリを追って来るので簡単なのだ。簡単なのはここまでで、ここからが大変なのだが。

 

 

「で、問題なのが誘導した後だ」

 

「二人で倒せばいいんじゃないの?」

 

「本当に簡単に言ってくれる」

 

 

 そうできればいいのだが、そう単純にはいかないのがビナーだった。ただでさえ巨大な体躯と頑強な装甲。最後に意志のようなものが垣間見える高い知能。今になって思うが、あれは何なのだろうか。

 

 

「カヤツリはどう考えてるのさ」

 

「前は、口内の砲口への攻撃が多少は効いた。だから剝き出しの砲口部分とかミサイルの発射口に、この前のレールガンを当てればダメージは入るはずだとは思う」

 

 

 カヤツリはオーナーの言葉を思い出す。レールガンの攻撃に反応したということは、あれならビナーに効くのだ。ただ問題はたったの一発で壊れたことだった。銃身が焼け付いたのと計測装置の故障が原因という話だが、計測装置を取り外し替えの銃身を用意するとしても、ビナーを倒しきれるか微妙なところだった。

 

 

「それで、私は何をすればいいの」

 

「誘導場所まで行くのに砂漠用にカスタムした車両を用意する。ビナーの熱線と体当たりは何とかするから、ミサイルを何とかしてくれ」

 

 

 前二つの攻撃はカヤツリの運転で何とかなるだろうが、ミサイルを避けるのは骨だった。迎撃するにしても運転しながらはつらいものがあったし、できるだけレールガンの部品を積んでおきたかった。そんなカヤツリの回答にどことなくホシノは不満そうだった。

 

 

「本当にカヤツリの銃しか効かないの?」

 

「……わからない。少なくとも前やった時、対物ライフルは表面装甲に弾かれたから、ホシノの銃が効くかは微妙なところだ」

 

「表面装甲じゃないなら、効くってこと?」

 

「弾かれるってことはないだろうが危険極まりない。効くとしたらビナーの口内と首付近の発射口だけだ。位置が高すぎてホシノの銃じゃ届かないだろ」

 

 

 ヘリに乗って撃てば当たるかもしれないがカヤツリはヘリの操縦はしたことがない。できたとしてもビナーの攻撃はかわせる自信がなかった。ただホシノは自信があるのか頑なだった。

 

 

「あのくらいの高さなら跳べば届くよ」

 

「……いや、届くとしても空中じゃ躱せないだろ。ミサイルが来たらどうするんだ」

 

「踏み台にすればいいでしょ」

 

「……ああ。ホシノはそういう奴だったな。俺が悪かったよ」

 

 

 そこまで自信があるならカヤツリに反対する理由はなかった。頭の中でホシノへ、ミサイル迎撃と誘導場所でのビナーへの攻撃の仕事を割り振る。特に止めようとしないカヤツリを不審に思ったのかホシノが口を開く。

 

 

「止めないの?」

 

「なんで?急に自信がなくなったのか」

 

「いつもは止めるでしょ。スマートじゃないとか言ってさ」

 

「ホシノは出来ないことは言わないだろ。それに戦闘方面は俺より頭が回るし、今回は事が事だから」

 

 

 カヤツリの答えを聞いたホシノはまた不満そうな表情だった。何が気に入らないというのだろうか。カヤツリには分からなかった。

 

 

「なんか不満そうじゃないか」

 

「何でもないよ。今回だけかって思っただけ」

 

「別に、他に何かやりたかったら言えばいい。もう止めないし、むしろ言ってくれ」

 

 

 もう、カヤツリにはホシノを止めるつもりはなかった。先輩に言われたのもあるが、ホシノを信頼することにしたからだ。たぶん今まで信用はしていても信頼はしていなかった。

 たぶんホシノは信頼までしてくれていたのだと思う。そうでなければ仕事など手伝わないだろうし、今ここにいないだろう。たぶん一人でビナーに突撃でもしていたのではないだろうか。ちらりと横目でホシノを見ると不満そうな表情は消えていた。

 

 

「じゃあ言うけど。なんでビナーと並走して戦闘する前提なの?」

 

「ヤツが止まっているところなんて見たことがないから」

 

 

 ホシノはカヤツリを少し呆れた目で見て、懐から持ち運んでるらしい砂漠の地図を出した。そのまま地図の一点を指さす。

 

 

「鮪じゃないんだから止まっている時だってあるでしょ。それに元々砂漠だった場所は砂しかないから泳ぐように移動するのかもしれないけど。アビドスの中心街だった此処とかは、瓦礫でうまく移動ができないと思うよ」

 

 

 確かに筋は通るのかもしれなかった。縄張りは砂漠の奥深くだし、昔のカヤツリの走行ルートもそうだった。

 

 

「すごいな。気づかなかった」

 

「こういうのはユメ先輩の方が得意だよ。私でも知らない所を知ってるから」

 

 

 そう言いながらホシノは机で潰れている先輩を揺らして起こす。先輩は携帯を確認した後そのまま休憩しているようだった。しばらく揺らされた先輩は目を覚ました。

 

 

「何~。ホシノちゃん。私は頭を使い過ぎて、まだ休憩しないと頭がおかしくなっちゃうよ」

 

「ユメ先輩。目的地までのルートを作るのは私より得意でしょう?お願いします」

 

「ホシノちゃんのお願いなんて珍しいね。ちょっと頑張っちゃおうかな」

 

 

 ホシノのお願いですぐさま先輩は復活した。要望を伝えると、しばらく地図を睨んで何か書き込むとそのまま地図を渡してきた。よく見ると新しいルートが書いてあった。カヤツリにはどう違うのかわからない。

 

 

「要望通りに作ったよ?一応、最初は砂地のルートなんだけど、途中から元々大きな町だったところや工場跡とかも通るようにしたから」

 

「こんなこと出来たんですか」

 

「宝探しに必須だからね」

 

 

 確かにそうだった。宝探しを提案するのはいつも先輩でルート構築も先輩だった。それなのに埋蔵場所を間違えたり、コンパスを忘れるのは意味不明だが。

 

 カヤツリは頭の中で作戦を組み直す。先輩にはドローンを校舎から飛ばしてもらって情報は3人で共有する。次にホシノとカヤツリが車両で出発し、ビナーを先輩のルート通りに誘引。最後はビナーが移動しにくいエリアへ誘導し、二人で動きの鈍ったビナーを攻撃。カヤツリが一番対処が面倒な、巨体での突撃や潜行ができないのであれば、本当に何とかなりそうだった。

 

 

「何とかなりそう?カヤツリ」

 

 

 少し笑った顔のホシノにカヤツリは自信をもって答えた。

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