ホシノ同級生相棒概念 作:洞鼬
「そろそろ機嫌を直しなよ~」
珍しい物を見るような、困ったような声色でホシノがカヤツリに話しかけている。当のカヤツリは椅子に身体を預けて虚空を睨みつけていた。
シロコが到着すれば全員で出かけなければならない。シロコ以外は全員部室に集まって、後はシロコ待ちだった。
別にシロコが遅刻しているからとか、ホシノが自分に対して何かをやらかして、カヤツリが怒っているわけでは無い。それなら、ホシノはもっと申し訳なさそうな声色だっただろうし、自分もここまで不機嫌では無かっただろうから。
「良い事じゃないの? 今まで音沙汰が無かった連邦生徒会から連絡が来たんでしょ? なんで先輩が腹を立ててるのよ」
「……まあ、今更ではあるし。都合良く使われてると思うけど……悪いことでは無いと思うよ。セリカちゃん」
部室の隅で、セリカ後輩とアヤネ後輩がひそひそと話している。
実際、二人の言っていることは合っている。自分が怒っているのは、さっき対策委員会へ向けた連邦生徒会からの通達が来たからだ。
「カヤツリ先輩は何が気に入らないんですか? 先輩の事ですから感情以外の理由がありますよね。今までの支援要請を無視してきた連邦生徒会が気に入らないのは分かりますけど……」
ノノミ後輩が、少しの苦笑いと共に推測する。その理由も間違ってはいない。どの面下げてという思いもある。それだけだったら自分の苛立ちを、ここまで表に出しはしない。とても子供っぽくて情けないから、普段ならできやしない。怒りよりも羞恥心と理性が上回るからだ。
でも、今回ばかりは話が別だ。タイミングが悪いし、意味も恐らくない。
「無駄な事に付き合わされて、予定を潰された挙句、こっちには恐らく何の意味もないからだけど」
「無駄?」
ノノミ後輩が苦笑いから、困惑の表情に変わった。アヤネ後輩も同じ表情になって、通達の内容を確認する。
「各自治区の生徒会代表の緊急招集ですよ? 連邦生徒会も冗談でこんな事はしないと思いますが……」
「何について話し合うのか書いてない。触りすらも。ただ緊急対策委員会を設置することと、そのために連邦生徒会本部のサンクトゥムタワーに来ること。それしか書いてないじゃないか……」
詳細は向こうでとのことなのだろう。まだ不確定な情報しかないのかもしれない。それか、それほどまでにマズいモノか。なんだかとてもきな臭い。
「カヤツリは何だと思うのさ。おじさんにはとんと分からないけど?」
「連邦生徒会がまた内輪揉めしてるんじゃないかって」
「この状況で? 全自治区に招集を掛けているのに? カヤツリはこれをガセか何かだと思っているの?」
「そこまでじゃないかな。たぶん招集する程の何かはあるんだと思うよ。でもまだ何も分からない状況なんだと思う。内輪揉めと言うより、連携が取れてないのかな」
だから、書くに書けないのだ。まだ何も分からなくて、人手か何かがいるのかもしれないし、それが広範囲に及ぶのかもしれない。カヤツリとて、規模はともかくとして、それは嘘ではないと思っている。それか、書けないほどマズい物か。
「最近、シャーレの手伝いに行ったときに噂をよく聞くんだ。代行が職権を濫用しているって」
「……ああ。そういうこと。それで、内輪揉めだって?」
ホシノはある程度は納得したようだった。他の三人はポカンとした顔をしている。
「二人だけで納得しないで説明してほしいんだけど……?」
「……悪いな。セリカ後輩」
セリカ後輩が頭上にクエスチョンマークを浮かべたまま、カヤツリとホシノに説明を求めた。カヤツリはホシノ用の説明だったことをすっかり忘れていたから、前提条件の共有から始めることにした。
「今回の緊急招集は簡単にできる事じゃない。それなりの権限がいるし、議題に応じた連邦生徒会の各担当の承認もいるだろう。それに、各自治区の責任者を呼ぶんだ。完璧とは言わないが、ある程度の情報共有や具体案が出なけりゃ無駄足だ」
うんうんとセリカ後輩は頷いているし、他の二人も疑問はなさそうだ。カヤツリは安心して質問を投げる。
「それが失敗したらどうなると思う?」
「それは、責任問題になるのでは? ただ学園の責任者を呼びつけただけで終われば、失態どころではありません……ああ、それで、あの噂ですか?」
「誰かがわざと失敗させようとしているってこと?」
「その可能性もある。他にも理由はあるが、だから無駄だって言ったんだ」
”生徒会長代行が権力を濫用している”その噂はまだゴシップの類だ。ただ今回の招集が失敗すれば、少なからず不満は増す。会議の準備は楽ではない。資料や会場の準備や警備。失敗すればそれらが無為に帰す。不満の一つや二つは出るだろう。
「でも、失敗するとは限らないんじゃない? 他の学園の人だってちゃんとやるでしょ」
「普通ならな……」
カヤツリはため息をつく。セリカ後輩の言う事は普通ならの話だ。生憎と今回はそうではない。
「全自治区ってことはゲヘナとトリニティも出席するんだ。会議が荒れない未来が全く想像できない」
「……そうかも」
会議の様子を想像したのか、セリカ後輩はうんざりした表情だ。きっとカヤツリと同じような場面を想像したに違いなかった。
「エデン条約の後ですよ? そうなるでしょうか?」
「なるよ。ノノミ後輩。風紀委員会と正義実現委員会とかシスターフッドの会合ならそうはならないけど。今回は違う」
確かに調印式のあの共闘でお互いの見方は変わっただろう。ただそれは現場に出ていた組織間の話だ。あの時、万魔殿は飛行船の爆発に巻き込まれて入院していた。ティーパーティもナギサはメンタルがやられていてそれどころではなかったそうだし、詳しくは聞いていないがセイアもそれどころではなかったのだという。
今回は外交だから、ゲヘナは風紀委員会でなくて万魔殿が出る。そうでなくても、マコトのあの性格だ。ヒナには伝えないだろう。トリニティはティーパーティを始めとした各派閥だと想像できる。それだけでも最悪なのに、もっと悪い報せをカヤツリは知っている。
先日、二人に聞いた話だが、トリニティで聴聞会が行われた。何に対してと言えば、エデン条約のクーデターの主犯、ティーパーティのパテル派の長。聖園ミカの処分だ。友人だと言うナギサやセイアは、それに至った理由も知っているし、理解もして、許してはいるそうだが、やったことがやったことだ。公的な処分は必要ではある。
処分内容はティーパーティからの除名。それなりには重い罰ではあるが、あの二人は喜んでいたし、カヤツリにも思うところはない。顔も知らないし、会った事もないからだ。今回の招集に関わることでカヤツリが懸念しているのが一つある。
除名は決まったが後任は決まっていない。だからそれまでは席があるのだという。あの風通しの悪いトリニティだ。後任が決まるのは時間が掛かるだろう。少なくとも招集までには決まらない。
つまり、今回の招集に彼女が出席する可能性が高い。ゲヘナ嫌いを公言してはばからない。クーデターの理由に挙げさえした。そんな人間がゲヘナとの会議に出席する。
悪い冗談だった。他の二人の手前、流石に自分から吹っ掛けにはいかないだろうが、煽られたらどうなるか。あまりいい想像は出来なかった。
「両校が煽って、喧嘩になって、他の自治区は呆れて帰る。そんな感じか?」
「連邦生徒会側が止めるのでは? それに先生もいますし……」
「いや。無理だよ。昔ならともかく、今は無理だ。それに先生だけで引き留められるか……?」
ノノミ後輩の疑問に、カヤツリは遠い目になる。ノノミ後輩の言う事も分かるが、今回はそうではない。
「アビドスじゃ実感はできないかもしれないが、他の自治区じゃ連邦生徒会が軽く見られ始めている。連邦生徒会長が失踪してから犯罪率が跳ね上がった上に、エデン条約直前のあの発表が止めだったな……」
──各学園の自治区で起きた事件につきまして、基本的にはそれぞれの学園に対応を委ねています。連邦生徒会の無暗な介入は、かえって無責任かと考えます。
エデン条約について、クロノスのリポータが質問したときの回答だ。実に当たり障りのない答えで、突っ込むところは何もない。これがエデン条約でなければ満点の回答だった。
エデン条約は連邦生徒会長が発案したものだ。発案したくせに”そっちで勝手にやって”と放り投げた。調印式に来たのは先生だけだったし、解決したのも先生だった。連邦生徒会も何かしたのかもしれないが、それはカヤツリ達には分からない。こういうのは分からなければ意味がないのに。
他の学園から見れば、やる事はやらないくせに、口だけは一丁前に出してくる邪魔でしかない存在だ。前は、連邦生徒会長が居た頃は仕事は回り、それをやってもらっていた都合上文句は言えなかった。
でも、今はそうではない。連邦生徒会長の失踪で作業効率が格段に落ちた上に、まだ後任も見つからない。それに、今までこなせていた業務を各自治区に丸投げするようになっている。そのせいで自治区だけで回せるようになってきている。
そうともなれば言う事を素直に聞く必要はあまりない。やるべき当然のことをできていない奴の言う事を何故素直に聞かねばならないのか。本当の緊急事態と分かるようなら、真面目に聞くだろうが。そうでないなら、何も分かっていないような状況なら、いい結果にはならないだろう。
「失敗したらどうなると思う? カヤツリ?」
「……たぶん近いうちに不信任案が出るんじゃないか?」
ただでさえ連邦生徒会は仕事に人が追い付いていないせいで機能不全に近いのだ。自分たちの仕事もこなして準備させられたそれが無駄でしたともなれば、不信任案が出てもおかしくはない。逆に、会議が上手くいけば代行は噂を払拭し、地位を盤石にできるだろう。連邦生徒会長になるのも夢ではない。きっとそんな事は一切思っていないだろうが。
単純に連邦生徒会は連邦生徒会長がいた頃のままなのだ。いた頃のまま何とかしようとして齟齬が出てきている。確かに連邦生徒会長がいた頃なら、この内容の招集でも何とかなった。
でも、もう超人は居ない。彼女の威光は無いし、自前の暴力装置だったSRTも解散している。通常業務もギリギリで、幾つかの業務、特に治安維持は各自治区に丸投げだ。学園を従わせる材料はあまりにも少ない。
だから、さっさと代行ではなく後任をたてればいいものを。
それを気がついているのか、いないのか。教えてやる誰かも居ないのか、教えられても無視したのか。きっと皆、自分の事だけ考えているのかもしれない。理事から話だけは聞いた、あの腐り切った防衛室など特にそうだろう。
連邦生徒会の部署が思い思いに動いて、仕事の邪魔をするものは、自分の上だろうと排除する。まるでタチの悪いアレルギーか何かだ。カヤツリが今回の事を内輪揉めだと言ったのはそれが理由だ。
「哀れな奴だよ。本人は一生懸命なのにな」
「……何? また? また私の知らない所で粉かけたの? そういえば髪が長かったね……」
カヤツリの呟きを聞きつけたのか、ホシノの雰囲気が冷たくなる。それを察した後輩たちが距離を取り始めた。カヤツリは慌てて否定する。
「違う! アビドスの事件が終わった大分後に先生が言ったんだよ。”悪く思わないであげてね”って……色々とその時に聞いたんだよ……」
カヤツリが昔、連邦生徒会に悪意を持ってちょっかいを掛けた事を気にしていたのだろう。カヤツリの誤解を解こうとしたのかもしれない。彼女にも立場があるのだと言うことを、懇切丁寧に説明していた。向こうに先生が自分の事をどう説明したかは知らないが、恐らく長く代行と接している先生があそこまで言うのだから、悪い奴ではないのだろう。見た目通りの堅物なのかもしれない。
「かなり限界らしい。それで限界ギリギリで回してるんだって。今回の緊急招集から見て俺が思うに実務能力は高いけど、根回しとかそこらへんはヘタクソなんじゃないかね。なまじ全部自分でやって潰れるタイプ? 権限がある代行ってのが良くないのかもな。大体の事は強引に出来るから」
「……それで? カヤツリが無駄だって言ったのは分かったけど。それだけ? 機嫌が悪い理由は」
「皆の予定を合わせてセッティングしたのが無駄になったからだな」
この前、後輩二人にした話──アビドスの復興計画。ノノミ後輩とシロコにも後で話したそれ。あの場では話せなかったその他諸々を話そうと思っていた。自分だけでなく、ゲヘナのヒナとマトとマコトも呼んで。それと先生も。それぞれの情報の共有とこれからのこと、それらのすり合わせがしたくて、今日、この日に予定を合わせたのだ。
それが連邦生徒会内の招集で無に帰した。また調整しなければならない。昔と言い今と言い、毎度毎度邪魔されればこうもなる。仕方がないから我慢するが、知らない上に気にくわない他人の都合に振り回されるのは大嫌いだ。
「いや~、今のピりついたカヤツリを見てると昔を思い出すね。シロコちゃんが来た時とか、ノノミちゃんが来た時とか……」
「……ホシノが連邦生徒会を襲撃しようと言い出したこととか?」
「ええ……ホシノ先輩? そんなこと考えてたの?」
カヤツリの発言を聞いたセリカ後輩が、驚いたような目でホシノを見た。ホシノが昔を思い出したと言ったのも、ピりついたカヤツリを見てあの時の自分を思い出したのだろう。
「うへ~。昔の話だよ。セリカちゃん。今の私はもう年だからね。昔の様にはとてもとても……」
「私と二つしか変わらないじゃない……」
セリカ後輩とホシノのやり取りを聞きながら、今ならどうだろうかとカヤツリは想いを馳せる。
良いところまで行けるどころか、制圧できそうな気もする。あの時にいたSRTがもういないから、ごり押しが効くだろう。
「ん? シロコちゃん? どうしたんだろ」
カヤツリが物思いに耽っているとホシノの携帯が鳴った。どうにもシロコからの様で、ホシノはシロコから何か言われたのかスピーカーをオンにした。
『もうすぐ学校に着くんだけど……』
「どうしたの?」
『カイザーPMCが変な動きをしてる。今までにない数がアビドス砂漠の方へ向かってる』
カイザーPMCはまだアビドス砂漠で活動している。ビナーやセトのせいで基地をいくつか失ったとはいえ、母体はカイザーコーポレーションだ。それに土地もカイザーのままだから、金さえあれば幾らでも補充はきく。
『様子を見てくる』
「だめだよシロコちゃん。そんなことはいいから、早く帰っておいで」
『ん。ちょっと遠くから見てくるだけ』
シロコはPMCの動向がどうしても気になるようだった。心配するホシノの言葉を無視して、進路を変えたようだ。自転車を漕ぐ音が電話越しでも分かる。しばらくすると漕ぐ音が突然止まり、シロコの何かを確認しているような声が聞こえた。
『……不思議な光が見える……黒……? ……いや虹……?』
その瞬間に、カヤツリの全身を悪寒が襲った。なにか危険な物がやって来る。そんな予感だ。それはホシノも同じだったようで、ホシノにしては珍しい大声を上げた。
「シロコちゃん! 危ないから早く帰っておいで!!」
『地震? 地面が揺れて……! あ……黒い…鳥……?』
「シロコちゃん!!」
突然、電話口から何も聞こえなくなる。電話口に向かってノノミ後輩が叫ぶが、そのまま通話が切れた。
「ダメです! つながりません!」
「シロコ先輩は何してるのよ!」
「……こういう時、どうすれば……」
焦ったように叫ぶノノミ後輩に、セリカ後輩とアヤネ後輩はうろたえて、どうすれば良いのか分からないようだった。
「先生に連絡しろ。誰でもいいから。早く」
「はい!」
アヤネ後輩が一拍遅れて反応して、先生の番号にかけ始めた。ホシノをちらりと見れば、何事かを考え込んでいる。
「……カヤツリ。カイザーだと思う?」
「たぶん。違うと思う。ホシノもそうじゃないのか」
ホシノは険しい顔で、昔の雰囲気で頷く。先の嫌な感覚もあるが、銃声も何も電話口からは聞こえなかった。何か異常事態が起こっている。そんな感覚だ。
「だめです。先生も繋がりません」
気落ちしたようにアヤネ後輩が報告する。となるとできる事は限られた。どうするか考えていると、ホシノの携帯で掛け直していたノノミが喜びの声を上げる。
「繋がりました! シロコちゃん! 返事をしてください!」
けれど、電話口の向こうからは何も聞こえない。そしてそのまま、ブツリと通話は切れた。
□
「だめだ。何もない」
シロコの通話から数十分。カヤツリはモニターの画面を見て、落胆の言葉を吐く。
ハッキングした監視カメラの映像。ドローンからの空中映像。カヤツリのスキルの全てを使って、シロコが居たであろう場所を突き止めて、様子を確認したが何もなかった。正確には、シロコの乗っていた自転車だけが地面に転がっていた。
画面から見た限りは周りには争ったような形跡はなく。まるでそのまま消えてしまったようだった。シロコがアビドスにやってきたのを逆再生したかのようで、カヤツリの気分が悪くなる。
「私たちはどうしたら……」
どうしたらいいのか分からないのだろう。手持ち無沙汰に佇む後輩たちに、ホシノが腹を決めたように言う。
「できる事をやろう。アヤネちゃん。先生には連絡がつかないんだね?」
「ええ」
「たぶん、緊急招集でそれどころじゃないんだろう。電波が届かない場所に居るのかもしれない」
カヤツリは自らの憶測を告げるとホシノは頷いた。
「じゃあ、会議に行って先生を……」
「いや。俺だけが行く。これにさほど人数は必要ない。それなら、現地に行って情報を収集するべきだ」
「じゃあ、準備するわ」
どこか不安そうにホシノはカヤツリを見るが特に反対はしなかった。後輩たちはシロコが居なくなった場所へ向かう準備を始めている。
「……カヤツリ」
「探しに行きたいんじゃないのか」
シロコが居なくなってから、ホシノはずっと思い詰めた顔をしている。後輩たちには気づかせまいとしているが、カヤツリとノノミ後輩には。ホシノが何を思っているかは察せられた。
ホシノは仲間が居なくなるのを嫌う。普通そうだが、先輩のことがある。今すぐにも探しに行きたいはずだ。でも、それを押し殺して、確実な手段を選んだのだ。それはホシノの成長だったが、まだ手段を選ぶ余裕がある。
「それはカヤツリもじゃないの……? だってカヤツリは……」
「探せもしなかったから?」
こくりとホシノは頷く。ホシノはカヤツリに気を使ったのだろう。本当は二人で探しに行きたいが、先生に連絡をつけるのが最優先だ。後輩たちだけを招集場所へ行かせるのはできないから。
カヤツリはいいのだ。ホシノがやりたいようにやってほしいのだ。自分よりホシノの方が大事だった。
「いいんだよ。ホシノ。それに、あの場所には何か危険があるかもしれない。皆を守るなら、俺よりホシノが適任だ」
「……いいの?」
「いいよ。それに俺も向こうでやることがある」
ホシノは静かに目を閉じて、しばらくしてから瞼を開けた。目から迷いは消えて、思いつめた表情は幾分か和らいでいた。
「分かった。カヤツリ。向こうは頼むね。私は皆を守るから、シロコちゃんも見つけるよ」
「任された。ホシノも頼んだ」
「任されたよカヤツリ。お互いにね」
二人はお互いに頷いて、それぞれがやるべきことに向かい合った。