ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

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131話 馬鹿な考え

 意気揚々とトリニティの席の方へと進むマコトの背中を追いかける。マコトの軽快な足取りとは反対に、進みはかなり遅かった。ごった返す人混みのせいだ。

 

 正確にはレッドウィンターでクーデターが起こったせいだ。一目散に戻ろうとする生徒でまともに身動きが取れなかった。クーデターと聞けばトリニティのクーデターを思い出すが、あれと比べれば脅威度は大したことでは無い。”晴れ時々クーデター”そんな言葉がまかり通るくらい、クーデターはレッドウィンターでは日常茶飯事だ。直ぐに鎮圧されるか、成功したとしても直ぐに政権を取り返されるだろう。あそこはそう言う学園だ。

 

 そんなわけで、カヤツリとマコト、イロハは足止めを食らっていた。またぞろマコトが理不尽にも怒り出しはしないだろうかと、警戒するカヤツリだったが、そんな様子は微塵もなかった。なんだかニヤニヤしている。そんなにトリニティを煽るのが楽しみなのだろうか。

 

 

「最近はあんな感じですよ。誰かさんのお陰です」

 

 

 面倒くさそうな様子のまま、イロハが帽子の陰からカヤツリを見上げた。彼女の眼は半開きで、それが呆れなのか面倒くささによるモノなのかはカヤツリには判断がつかない。

 

 

「苛立ちまぎれに風紀委員会に当たって、仕事が増えるなんてことが減ったのは良い事ですが。一体マコト先輩に何をしたんですか?」

 

「マト辺りに聞けばいいだろ」

 

「そのマト先輩が貴方に聞けと言ったんですよ」

 

 

 カヤツリは今のイロハと同じような表情になった。つまるところ答えるのが面倒なのだ。それくらい察してほしいし、元々はそっちの仕事だ。

 

 

「普通にしただけだよ」

 

「普通って何ですか。普通にしてたらマコト先輩があんな風になるんですか?」

 

「だから、ああなってるんじゃないか? 俺としてはそんな意図は全くないが」

 

「……マト先輩が言ったんですよ。”色仕掛けって言うのはああやるんだよ”って。もし、本当にそうなら私にも考えがあります」

 

 

 思い切りカヤツリは舌打ちした。マトの言いたいことは分からないでもないが、言葉選びのチョイスが圧倒的に間違っている。彼女の事だからわざとそう言う風な言葉を選んだのだろうが、そのツケがカヤツリに飛んでくるのは勘弁してほしかった。

 

 

「言葉通りの意味なわけがないだろう。だから、その携帯をしまえ」

 

 

 どうせ、ホシノにあることない事吹き込もうと言うのだろう。そんな事をされたらカヤツリは明日の朝日が拝めない。だから、立てこもり犯相手に交渉するようなヴァルキューレの気持ちになりながら、警戒したようなイロハに説明する。

 

 

「本当に普通の事をしただけだ。普通に、ゲヘナの生徒会。万魔殿のトップとして扱っただけだよ」

 

 

 カヤツリはイロハにしっかりと説明する。それは本当に普通の事だ。ちゃんと用があるときやゲヘナまで来るときはアポイントメントを取るし、ヒナやマトに用があるときは一声かける。アビドスの生徒会が、ゲヘナの下部組織に用があると言うのだから。それはしっかりするべきだろう。そこまでの労力をかけるのはさほど苦ではない。

 

 

「ああ……そういうことですか。安心しましたよ。本当に普通の事ですね。分かりました」

 

 

 そう言って、イロハは携帯をしまった。カヤツリは息をゆっくりと吐く。少なくとも今の説明で、イロハの通報によってホシノに詰問されることはなさそうだったからだ。

 

 

「しかし、良くそこまでできますね。マコト先輩ですよ?」

 

「……まあ、言いたいことは分かるけれども」

 

 

 カヤツリは苦笑いを浮かべる。トリニティやヒナに対するあの攻撃性は褒められたものではない。それに賛同したように、イロハは同調してくる。

 

 

「でしょう? そこまでしなくても、誰も文句は言わないと思いますが。マコト先輩も気難しいですが、それくらいで怒ったりしませんよ」

 

「だろうな。他の学園もそこまでしないだろ」

 

「ええ、似たようなことをもう一度聞きますが、なぜそこまでやるんです? マコト先輩にそこまでやっても、返ってくる保証はありません。それは貴方も分かっているのでは?」

 

 

 イロハの質問の一部分には頷いた。マコトは良いか悪いかで言えば付き合いにくい部類に入る。時たま思考回路が理解できないことがある。まだセイアの方が付き合いやすいだろう。

 

 

「……いいか。万魔殿に来るとき、俺は友達付き合いしに来てるわけじゃないんだ」

 

 

 リオやセイアやナギサと違って、マコトに対しては付き合いにくさで対応は変えない。別にマコトは友人という付き合いを求めているという訳ではない。それなら自分が評価するのはそこではない。そこに付き合いの良さが評価項目として入ることは無い。

 

 

「確かに、礼を尽くしたところで返って来る保証はない。ただ、それで態度を変えるのは誠実じゃない。むしろ失礼だろう。曲がりなりにも学園の責任者なんだぜ。見るなら、そこの部分なんじゃないか?」

 

 

 マコトは謝らない。個人的な付き合いをするならともかく、それは学園の責任者としては向いていた。責任者は謝ってはいけない。謝るようなことをしてはいけないし、そういった事をするのなら謝って済まないのだから、謝らないくらいの気持ちでするべきなのだ。

 

 マコトは少なくとも、あのゲヘナを回せている。カヤツリだったら回せる自信はない。ゲヘナの生徒は自由奔放で、喧嘩早くて、束縛を嫌う。悪し様に言うなら、自分の利益しか考えない質の悪い暴徒だ。回そうと思ったら、それこそ恐怖政治を敷くくらいしか思いつかない。

 

 しかし、いったいどうやっているのか。マコトは恐怖政治を敷かなくとも、それができている。治安を維持しているヒナのお陰もあるだろうが、学園の生徒の日常を守るといった、責任者としては最低限の、一番大事な仕事はしている。それは、まだアビドスを復興できていないカヤツリには出来ないことだ。だから、そこは評価しているのだ。

 

 

「俺はそこまでする必要があると思っているから、している。見返りとかそういったものは期待していない。強いて言うなら、持ちつ持たれつの、いい関係を築いていきたいと言ったところかな」

 

「随分と評価が高いですね」

 

「自分には出来ないことをできる奴の評価は高くなるだろう?」

 

 

 ゲヘナの責任者として。その点だけを見るなら高評価だ。嵌める真似をしたのは断られると思ったから。今回巻き込んだのはこっちの都合だ。最悪、トリニティとミレニアムでもできないことは無いのだから。

 

 

「……貴方はマコト先輩を評価しているから、そこまでの対応をすると? 嵌めるような真似をしたのも、断られると思ったからだったと……」

 

「最初からそう言ってるだろ」

 

 

 カヤツリの話を聞き終わったイロハは大きなため息をついた。初めと同じような目でカヤツリを見るが、さっきとは違って、そこに呆れも混じっている気がする。

 

 

「だから拗ねたんですね。マコト先輩も。一番評価されていると思ったから一番最初に来ると思っていたのに、トリニティの方に行ったから。それで嵌められたと聞いて、そこまで評価されていたと思ってあんなに機嫌よく……マト先輩の言っている意味が分かりましたよ。……はぁ、なるほど、確かにこれは色仕掛けですねぇ……私が参考にするには、いささか趣というか、攻め方が大きく違いますが。しかも、自覚がないのが性質が悪い……」

 

 

 やれやれと言うように、イロハは肩をすくめている。マトも同じような反応をするのだ。”アンタは学園を傾けるのが趣味なのかい?”とか、”そういう店でも開いたらどうだい?”とか、”真剣に頼むけどマニュアル化してくれないかい”とか。そんなことが出来るなら、ホシノに毎回締め上げられていない。ホシノ相手にはああいう事は出来ないというか、その必要はない。むしろしたら、これまで以上に怒るだろう。

 

 

「ん?」

 

 

 カヤツリの懐で、携帯が鳴った。着信の名前を見るとホシノからだ。

 

 

「出ればいいんじゃないですか? まだ人混みは収まりませんよ」

 

 

 イロハがそう言うので、カヤツリは電話に出る。出るなり、ホシノの声がカヤツリの耳に届いた。

 

 

『カヤツリ。シロコちゃんの居なくなった場所まで来たんだけど……』

 

 

 ホシノの言葉からして、シロコの失踪場所についたらしい。時間からして、その場所を調べた結果を報告してくれるのだろう。声色からしてあまりいい結果ではなさそうだったが。

 

 

『何もないよ。あるのはシロコちゃんの自転車だけ』

 

「争った跡とかは?」

 

『ううん。ないよ。自転車も倒れた時の砂がついてるだけ。周りの砂地も車のタイヤ痕とか、ヘリの風圧の痕もない。自転車の痕だけ』

 

「足跡は?」

 

『ないよ。何一つ』

 

 

 それは、妙な話だった。シロコを気絶させたにしろ、脅して連れていくにしろ。砂地に跡が残るはずだ。まるでその場から、瞬間移動したかのような状況だ。

 

 

『カヤツリの方は? 先生には話をできた? 先生はなんて?』

 

 

 ホシノの、期待が多分に含まれた声にカヤツリの気分は沈む。ホシノの報告が良くない物であったように、カヤツリの報告も似たようなものだからだ。予想通りに、カヤツリの報告を聞いたホシノは沈んだ声だ。

 

 

『……シロコちゃんと先生のは繋がってるの? たぶんほとんど同時だよね』

 

「だから、それを調べるんだよ」

 

『どうやって? まさか、ミレニアムやゲヘナやトリニティに手伝ってもらうの?』

 

 

 ホシノの言う、それは無理筋だ。彼女たちは先生が最優先だろうから、それよりもカヤツリにはいい案があった。

 

 

「セリカ後輩を探したのと同じ手を使う」

 

『セリカちゃんの? 連邦生徒会のセントラルネットワーク? それで先生と同時にってこと……でも、できるの?』

 

「だから、三大校とアビドスで要請する。向こうも断れないだろ。アビドスだけなら、無視されるだろうが。流石にこれは無理だろう?」

 

『いいね。それなら、何とかなりそう……ちょっと待って』

 

 

 それを聞いたホシノの声が、何かに気がついたのか。調子が変わる。

 

 

「何か見つけたのか?」

 

『うん。見つけたわけじゃなくて、気がついただけなんだけど。どうやったの?』

 

「何が?」

 

 

 嫌な予感がした。ホシノにはその自覚は無いだろうけど、声が何かを問い詰める時の声だ。

 

 

『カヤツリの言う通りなら、三大校に協力を要請したんだよね? ミレニアムは分かるけど。ゲヘナとトリニティは? あの二校はとてつもなく仲が悪いけど。どうやったの?』

 

「普通に話しただけだけど……」

 

『ふ~ん。”普通”にねぇ……まぁいいや。今はそれどころじゃないから、後でその話は聞かせてもらうとして。私はノノミちゃん達と一旦校舎に戻るよ。用があったら連絡して』

 

 

 そのまま電話は切れた。周りを見れば、人混みはさっきよりかは少なくなっている。これならトリニティ側まで行けそうだ。

 

 

「何をのろのろしている! この私を待たせるとは、どういう了見だ!」

 

 

 離れたところからマコトが怒鳴っている。傍に居たはずのイロハは、いつの間にかマコトの傍まで移動していた。イロハは悪戯が成功したかのような眼差しでカヤツリを見ていて、待たされているマコトは機嫌が悪そうだ。

 

 カヤツリは、マコトの機嫌をこれ以上損ねないよう。急いで移動を開始した。

 

 

 □

 

 

「突然で悪いがカヤツリ。問題発生だ」

 

 

 マコトを連れて、トリニティ側まで戻ってくるなり。セイアの深刻そうな声がカヤツリを迎えた。

 

 カヤツリがゲヘナの所に行ってから、大した時間は経っていない。そこまでの短時間で問題が発生するとは思えなかったが。セイアだけではなく、リオやナギサも深刻そうな表情をしている。

 

 

「ついさっき、代行に対して不信任決議案が可決された」

 

「この状況で? 正気か?」

 

「彼女たちにとっては、そうなのだろうね。狂気の中に居るのなら、狂気の沙汰も彼女たちにとっては正気のうちに入るということだよ」

 

 

 セイアの言葉にカヤツリは歯噛みする。別に代行がどうなろうと、カヤツリ達にとっては関係ない。問題なのは別の事だ。

 

 

「今現在。代行の権限は停止されています。つまり、連邦生徒会の機能がマヒしていると言う事です。これは、再信任決議がでるまで解除されることは無い……」

 

「再信任決議は明日以降だそうよ。それまでセントラルネットワークへのアクセス承認許可は出ない。先生の居場所は分からないまま。調査や各学園の連携に支障が出るわ」

 

 

 ナギサの言葉をリオが引き継ぐ。二人の言う通りに最悪の事態だった。

 

 カヤツリの仲介があれば三大校で連携は取れるだろう。ただ、それはこの場でだけだ。現場ではそうはいかない。全学園が一丸となるには先生と、その肩書が必要だった。

 

 どうするかと、カヤツリが頭を回す間にナギサが不満を漏らす。

 

 

「失踪から四八時間以内が勝負だと言うのに……こんなことをしている場合ではないでしょう!」

 

「そもそも、何でこのタイミングなんだ。不信任決議だって簡単に出るものでも、出すものでもないだろう」

 

 

 不信任決議はその日の気分でホイホイと出せるものではない。少なくとも何人かの同意か署名か何かと準備が必要なはずだった。

 

 

「”代行の暴走を止めるため”だそうよ。あの噂からして、前から準備だけはしていたのでしょう。先生の他にも防衛室長が行方不明らしいわ。今回の非常対策委員会で、最も権利を侵害されるのは防衛室。そして、SRTの穴埋めとして民間企業との取引が匿名で進んでいたそうよ。不信任決議案に踏み切る気持ちは分からないでもないけれど、もう少し状況を選んでほしいものだわ」

 

 

 リオの言う通りなら、まあ納得できる筋書きはできる。

 

 代行は防衛室が邪魔だった。非常対策委員会を設立し、キヴォトスの治安維持を司る防衛室の存在意義をガタつかせる。防衛室抜きで、この状況を解決できればそうなるだろう。

 

 もちろん防衛室は文句を言うだろう。だから排除した。口を挟む先生も同様に。防衛室の穴埋めとして民間企業を使えば治安維持は問題ない。

 

 他の連邦生徒会の部署としては、たまったものではない。今回は防衛室だが、次の標的は自分かもしれない。それならやられる前にやってしまえと、代行が動けない、この非常対策委員会を狙って不信任決議案を叩きつけたのだろう。

 

 

「我々には関係ないだろう。何、私がガツンと言えば……」

 

「人の話を聞いていなかったのかい? 不信任決議案が通った以上、もう彼女たち個人の裁量ではどうしようもないところまで来てしまっている。あれは約束事、契約だよ。それなら、幾ら、君たちゲヘナが恫喝したところで意味はない。最初に恫喝という手段が浮かぶ、その野蛮な思考は驚嘆に値するがね」

 

「貴様……」

 

「やめろ」

 

 

 セイアとマコトの下らない言い争いを止める。今はこんなことをしている場合ではないのだ。早急に対応策を考えなければならない。

 

 

「参考としてだが……カヤツリは、この一連の失踪は代行の暴走だと思うかい?」

 

「そんなわけないだろ。このキヴォトスの支配者になろうって? そんな罰ゲームを望んで受けようなんて余程のバカだ。少なくとも、そんな事は管理職やってれば思わないだろ」

 

「代行はそう思っていない。その可能性もあるだろう? その判断は早計じゃないかい?」

 

 

 焦るカヤツリにも関わらず、セイアは、面白そうな顔で問答を続ける。セイアとて、カヤツリの言いたいことは分かっているだろうに。問答を優先するらしかった。

 

 

「自分の仕事ぶりが完璧だと、自分ならもっとキヴォトスを良くできると思っている。そんな自信家ならそうだろうな。でも、代行はそんなタマじゃないだろ。それに……」

 

「それに? なんだい? 私に教えてくれ給えよ」

 

 

 少し迷ったカヤツリにセイアが発破をかける。もしかしたら、知っているのだろうか。でも、それを言うのは憚られた。

 

 

「手口が雑過ぎる。そんなことをしたら、いの一番に疑われるのは自分だろうに。あと先生を拉致するのは簡単じゃない。先生には攻撃が効かないだろ? それに手間を掛ければ助けを呼ばれる。迅速に拘束して、その場を離れる必要がある。気絶させられない、攻撃が効かない、抵抗する大の大人を誘拐するのは簡単じゃない」

 

「そうだね。なら、先生を誘拐する手口は限られているはずだ。君なら、想像ができるんじゃないかい?」

 

 

 カヤツリはため息をつく。セイアはどうしても、この話題を突き詰めたいらしかった。もう、先生が誘拐されたと確信している。四十八時間というナギサの言葉からして、トリニティは誘拐だと考えたようだ。まぁ、あの先生が何も言わずに失踪するとは考えられないだろう。

 

 

「薬を盛るのもいいが、足がつきやすいからな。俺なら送迎時を狙う。効かないのは銃撃や打撃だけだ。先生自身が強くなるわけじゃない。なら、送迎の車か何かに閉じ込めてしまえばいい。護衛の為とか言って装甲車でも用意してな。そうすれば車が牢屋に早変わり、後は人目につかない場所に移動すれば終わりだ」

 

「そうだね。じゃあ、それができるのは?」

 

「防衛室。はぁ、連邦生徒会内の権力闘争って言いたいのか? それは今。話し合うことか?」

 

 

 カヤツリは少し強い口調でセイアに抗議する。そんな事はもう分かっているのだ。犯人捜しをしたところで先生やシロコが見つかるわけでは無い。今やらなければならない事は、セントラルネットワークへのアクセスをどうするかだ。

 

 

「そう。今回、連邦生徒会の権力闘争で、この事態に私たちは巻き込まれている。私たちは王家の権力抗争に巻き込まれた、哀れな領主と行ったところだね。なら、そんな領主がやることは一つじゃないかい?」

 

「おい、まさか……」

 

 

 セイアの言いたいことが、カヤツリは分かった。それは、あまりにも強引だ。

 

 

「クキキキッ。トリニティにも話の分かる奴がいるようではないか。さっき我々を野蛮だと蔑んだトリニティの出す結論とは思えんな? ええ?」

 

「熟慮の結果の結論だとも。浅慮な君の思いつきと一緒にしないでくれ。さて、どうするカヤツリ? 君の答えを聞かせてほしい」

 

 

 カヤツリと同じ考えに至ったのか、マコトが舌なめずりしている。カヤツリは助けを求めてナギサを見る。

 

 

「カヤツリさん。貴方の後輩も行方不明なのでしょう?」

 

「そうだが……誰から……」

 

「私ですよ。情報共有は大事でしょう?」

 

 

 ナギサの傍にイロハが居る。彼女は彼女なりに動いていたらしい。ナギサはどこか、余裕のない口調で会話を続ける。

 

 

「もしかしたら、先生や貴方の後輩だけでなく、他にも行方不明の生徒がいるかもしれません。居なくとも、これから増えるやもしれませんね?」

 

「……それで?」

 

 

 凄まじく嫌な予感がする。よく見れば、ナギサの目が血走っているような……

 

 

「ヒフミさんが巻き込まれるかもしれません!」

 

 

 嫌な予感が的中した。ナギサはヒフミの事となると、少し暴走する。いつもはブレーキ役のナギサが暴走するのはマズイ。助けを求めるようにミカの方を見るが、どうしようもないと言うように首を横に振っている。

 

 助けを求めるようにリオを見ると、彼女はカヤツリに向かって告げる。

 

 

「今優先されるべきは時間。となれば、残る手段は一つよ」

 

「連邦生徒会本部。今いるここに人気が無くなった後侵入し、秘密裏に直接、セントラルネットワークにアクセスする。そういうことだな?」

 

 

 バカだ。本当にバカな考えだ。三大校の代表が話し合って出た結論とは思えない。しかし、今取れる最良の手段であることも事実だった。それなら、カヤツリも腹を決めるしかない。

 

 

「もちろん、支援はしてくれるんだろう?」

 

「任せてくれたまえ」

 

「クキキキッ。当然だとも」

 

「電子系関連なら任せて頂戴」

 

 

 カヤツリの言葉に、セイア、マコト、リオが快く答える。彼女たちの支援があるなら、かなり心強い。それでも準備は完璧にするべきだ。だから、カヤツリはさっきかけた番号に、もう一度電話を掛けた。

 

 

『どうしたの?』

 

 

 突然の電話に不安そうな声を出すホシノへ、カヤツリは要件を告げる。

 

 

「ちょっと手伝って欲しいんだ」

 

『いいけど。何を?』

 

 

 電話の向こうのホシノへ向かって、カヤツリと同時に、脳内のシロコが親指を立てて、イイ笑顔で言う。

 

 

「連邦生徒会を襲う」

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