ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

14 / 336
ビナー周りは独自設定多いです。


13話 ビナー決戦

 暗い砂の下でビナーは目覚めた。自らの頭上に気配を感じたからである。

 ビナーには、初めこんな意思などというものは無かった。ある時何者かに”説得”されてこうなった。

 何かの為に生み出され、それに唯々諾々と従う自分にそれは語りかけてきた。

 

 

 ──神にならないかと。自らの存在証明には誰の許可も何もいらないと。

 

 

 その声を聞き入れる事で”こう”なったビナーはもう自由だった。自らの縄張りでただただ過ごしていたのだ。宿敵がやってくるまでは。

 それは、幾度も自分を撃退し、遂には相打ちにまで持ち込まれた。

 

 ビナーは思った。自身は神になったはずではなかったのか。神とは、こんなちっぽけなものだったのか。

 こんな、神秘にも恐怖にも知性にも激情にもなり切れないものに自分は、相打ちとはいえ負けたのか。

 

 

 ──許せない。ビナーが次に思うのはそれだった。今度こそ宿敵を打ち倒し証明するのだ。自らの存在を。

 

 

 そう信じて、破壊された自身の機体を修復し待ち続けた。そしてある時その願いは叶ったのだ。

 宿敵の神秘の気配だった。探し回る途中で攻撃を受けたが些末なものだ。砂漠中を泳ぎまわったが、薄い気配ばかりで見つからない。

 仕方なく縄張りに戻り待つことにした。すると、時折宿敵の気配が濃くなる時があった。

 

 歓喜と共に砂漠から飛び出すが、何もない。そういったことが幾度も続いた。

 今度もまた同じような結果に終わるのだろう。そんな諦念を抱きながら、砂漠からいつものようにビナーは頭部を出した。

 

 次の瞬間、青白い燐光を纏った弾丸がビナーの頭部を撃ち抜いた。

 

 

 ──何が起こった?左半分が欠けた視界の中でビナーは自問した。欠けた視界から、どうやら頭部の左部分を吹き飛ばされたらしい。

 残ったカメラで飛翔物が飛んできた方向をみる。探し求めていた気配がする。近くにもう一つ気配があるがそんなものはどうでもいい。あの雷!宿敵だ!宿敵の気配がする!!

 

 声にならない歓喜の咆哮と共にビナーは宿敵に向かって突撃した。

 

 

 

 

「来たぞ!掴まってろ!」

 

 

 カヤツリは冷却中のレールガンを車両の荷台に放り投げるとアクセルを踏みしめる。車両は二人を乗せたまま、猛スピードでビナーから距離を離していく。

 フルチャージしたレールガンの先制攻撃でビナーの視界を奪うことには成功したが、本番はここからだ。怒り狂ったビナーとの追いかけっこだ。運転に集中するカヤツリの隣の席でホシノが手に持った手榴弾を眺めながら言う。

 

 

「本当に効くんだね」

 

「嘘だけはつかないからな。あの人は」

 

 

 オーナーがどうやってビナーを足止めしていたのか聞いたら、この手榴弾が送られてきたのだ。どうも複製したカヤツリの神秘が入っているらしく、それを撒き餌に妨害していたそうだ。それで、これを使って先制攻撃することにしたのだ。目論見はうまくいき、今の状況になっていた。

 

 

『二人とも、ビームが来るよ!』

 

 

 先輩からの無線が二人のインカムに届いた。バックミラーを見ると遠くのビナーの口が開いているのが見える。ただ体勢がおかしい。砲口が此方ではなく横を向いている。これからビナーがやろうとしていることが思い当たり、カヤツリの背筋に悪寒が走った。

 

 

「まさか、横から薙ぎ払う気か!」

 

「どうするの!」

 

 

 ビナーの頭部の高さを見るに高さの軸を合わせてきている。躱すには跳ぶしかないが、周りに砂丘はなく平らな地面が広がっている。車両を踏み台にすれば二人の脚力なら躱せるだろうが、それでは車両を失うことになる。これではいきなりゲームオーバーだ。

 つまり、どうにかして車両ごと飛ばなければならない。

 

 

「やってやるよ!振り落とされるなよ!」

 

 

 カヤツリは向きを反転し逆にビナーに向かって、すれ違うように車両を走らせる。そして正面からくる砂の波を踏み台にして車ごと跳んだ。自分たちの下を熱線が通り抜けるのは肝が冷えたが、何とか切り抜けた。

 ビナーはその巨体故に砂漠を泳ぐだけで砂嵐と砂の波を起こす。今回はその波を踏み台にしたがあまり多用したくはなかった。

 

 

『カヤツリ君!ミサイル!』

 

「ホシノ!」

 

「分かってる!」

 

 

 向きを変えるのと波の所為でスピードが落ちた車両に、ビナーからのミサイルが殺到する。ホシノは危なげなくショットガンで撃墜するが、このままではじり貧だった。

 本当ならビナーから離れた位置を維持しながら、ビームとミサイルだけを対処するはずだった。ただ今はビナーの左わきを走行しているため、波でスピードが出ない。早いところ波の影響が少なく、ビームもミサイルもよけやすいビナーの正面付近に移動したいのだが、こうもミサイルが雨あられと降り注いではどうしようもない。

 いくら最大で6発ごとしか飛んでこないとは言えホシノもノーミスでずっとは厳しいはずだった。ショットガンをリロードしながらハンドガンでミサイルを撃墜しているホシノがカヤツリに叫んだ。

 

 

「カヤツリ!ミサイルを止めればいいの!」

 

「そう!そうしたら正面の安全地帯に出られる!」

 

「ビナーに跳ぶから!寄せて!」

 

 

 何も言わず、ビナーのスピードに合わせながら、波で横転しない範囲ギリギリにカヤツリは車を寄せる。ホシノはそこから跳ぶが、どう見ても距離が足りない。その時ちょうどミサイルがホシノとビナーの間に飛んできていた。そのままホシノはミサイルを踏み台にする。踏まれたミサイルは他のミサイルと接触し、共に爆発。爆風でちょうどホシノは距離を稼ぎ切ってビナーの上に着地した。

 

 

「ホントにやったよ……」

 

 

 ホシノが、開いたミサイルの発射口にグレネードを投げ込みながら頭の方へ走ってきている。カヤツリもミサイルが途切れたため、ビナーの正面付近へ移動する。そのまま、ビナーの抉れた頭部部分へショットガンを連射しながら、ホシノが車両へ降りてきた。

 

 

「おかえり」

 

「出来るって言ったでしょ」

 

 

 少し得意そうにホシノが言う。カヤツリもそれを受けて少し笑った。ビナーの発射口では、ホシノのグレネードが爆発したせいかミサイルが吐き出されなくなっていた。もうこれで気にするのは熱線だけでよくなった。

 

 

『二人とも、そろそろ最初のポイントに着くよ』

 

 

 先輩の連絡が入るが、まだビナーの猛攻は止まる気配を見せない。ミサイルは封じられているものの、さっきから熱線の照射が止まらない。何とか躱して今はビナーの正面にいるが、いまだに残った右半分の目からの視線を感じる。このままポイントに入ったところで、この勢いのまま突破されるだろう。

 最初の先制攻撃で左目を吹き飛ばせば、攻撃の勢いが多少は緩むかとも思ったが、その様子は一向に見られない。おそらくもう一撃は加える必要があった。

 

 

「先輩、車の運転の操作を一旦投げますよ」

 

『えっ』

 

「昨日、練習したでしょう。別に熱線は避けなくていいですから」

 

『ちょっと待っ……。ひぃぃぃぃん』

 

 

 先輩の悲鳴が無線から流れるが、車両は一瞬揺れたもののすぐに立て直した。要領はドローンと一緒だから、走らせるだけなら先輩にもできるのだ。カヤツリは運転席を離れ、荷台に上がりレールガンを確認する。冷却は中途半端だが、もう一発くらいは撃てそうだった。

 

 

「カヤツリ!ビームが来るよ!」

 

 

 焦ったようなホシノの声でビナーの方を見ると、こちらを向いたビナーが口を開けている。開けた口内にはオレンジの光が収束を始めていた。今の車の操作は先輩で、先輩は運転で精一杯だ。躱すなんて芸当はまだできない。このままでは直撃コースだった。

 

 別にカヤツリとて無策で運転を変わったわけではない。まだフルチャージには遠いが、そのままレールガンで砲撃した。

 今度は展開中の口内に直撃。衝撃でビナーの頭部が此方からズレ、熱線は脇を通り抜けていった。レールガンは煙を吐いて強制冷却が始まった。しばらくは撃てない。

 

 ビナーは流石に学習したのか、口内の展開をやめて此方の追跡に専念するようだった。そのままカヤツリ達はポイントまで誘導していった。

 

 

 

 

 最初のポイントは、砂に埋もれた都市跡だった。道路や多くの建物はまだ原形を保っており、完全に砂には埋もれていない。ビナーはここに近づくなり地面に潜行していった。先輩からのドローン映像によるとどうも地下を掘り進んでいるようで、昨日のホシノと先輩の推測が正しかったことになる。ビナーが地面を突き破って出てくるまで大分時間が稼げそうだった。

 ビナーに先行して侵入した二人は装備を車両から降ろす。揺れが続いているが、ビナーが此処まで侵入してくるにはまだ余裕があるはずだった。レールガンは冷却がまだ終わっていなかった。さっき無理に2発目を撃ったせいだった。ホシノは防弾ジャケットやら追加のグレネードやらを取り出していた。

 

 

「それ、何が変わったの?」

 

 

 ホシノが冷却中のレールガンを見て聞いた。見た目からしてだいぶ変わったと思うのだが。ホシノには特に変わったようには見えないらしかった。オーナーによれば頑強さを重視したらしく、銃本体に装甲が追加されてもう盾のようになっている。あまりに重いので背中のバックパックの補助アームがないと大分振り回しにくかった。

 

 

「なんか、盾に使えるようになったのと。全力で撃っても壊れにくくなったくらいか」

 

「じゃあ、タンクが出来るようになったんだ」

 

「もう、タンクやってたようなものだけどな」

 

 

 どうせカヤツリしかビナーは狙ってこないのだ。さっきの車両での逃避行もかなりギリギリだった。初手の真横への薙ぎ払いは反則だとカヤツリは思う。それに前回は縦方向だけだったのだ。どうも、ビナーに知性のようなものを感じる。砂漠での並走戦闘もそうだが、市街地での戦闘も嫌な予感がしてしょうがなかった。今想像できる攻撃方法としては、熱線と体当たりくらいだろうか。大分対応しやすいが、また何かやってきそうでカヤツリは不安だった。

 

 

「やっぱり装甲が硬かったよ。結構力入れて撃ったんだけど、カヤツリの最初の一撃くらいしか効いてないね」

 

「これを丁寧に当てていくしかないのか」

 

 

 チャージ中のレールガンを睨む。今回時間稼ぎのポイントを複数用意しているのは、レールガンの冷却とチャージ時間の確保のためだった。チャージは速いのだが冷却の時間がとにかくかかる。流石のオーナーでも冷却時間は短くできなかったようで、銃身を入れ替えるのも考えたらしいが、替えの銃身が大きすぎて却下したらしかった。

 

 

「カヤツリはさ。前にも戦ったんでしょ。その時はどうしたの?」

 

 

 ”それはまだなかったでしょ”と。ホシノがレールガンを指さす。確かにあの時はまだレールガンはなかった。カヤツリは渋い顔をした。

 

 

「色々した。最初の方は対物ライフルが効いてた。段々硬くなって遂には装甲に弾かれるようになった。冗談だとは思うけれど、最後の方は作業用のパワードスーツで肉弾戦でもするかみたいな話になった」

 

「実際にやったの?」

 

 

 カヤツリは首を横に振った。その前に依頼で失敗したからだ。結局は、その時の積荷だったパワーローダーの弾薬を車両に積み込んでビナーに特攻したのだが。

 

 

「じゃあ、最初の作戦通りにするしかないってことだね」

 

 

 結論が出ると同時に揺れが激しくなった。どうやらビナーがそろそろ出てくる様だった。先輩からも無線が入る。

 

 

『二人とも準備は終わった?そろそろ出てくるよ。案内するね』

 

 

 まだ作戦も道半ばだ。カヤツリは気を引き締めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。