ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

173 / 337
172話 想像の限界

「……時間を取らせてすみません。先生」

 

 

 久しぶりの、正確には一年と数ヶ月ぶりの行為で、なんだか気分がすっきりしていた。

 

 

「いや、すっきりしたみたいで良かったよ」

 

 

 先生は自分を見て、ニコニコしている。自分の目元はまだ赤いから、何をしていたかなど明らかだろう。それでも、外から見ても、さっきまでの様子よりはマシなのだろう。

 

 肝心の気分は、快晴というほどにはいかないが、大雨から曇り空くらいには回復している。快晴にするには決着が必要だが、それはまだしばらくかかる。

 

 

「それで、私に手伝えることはあるかな? もちろん、シャーレの部屋を貸す以外でもいいよ?」

 

 

 先生の提案を少しだけ考える。”まあいいか”と思った。向こうが巻き込んでくれていいと言うのだから、盛大に巻き込んでしまおう。

 

 どうせ、先生に今回の件に関するしがらみはないのだ。先輩の事が効果的に働くのは自分と対策委員会くらいだから。

 

 必要な物を取り出すために、先生の前から自分の荷物まで行く。中には今回の切り札が入っている。万が一の時の為に、先生に預けておくのもいいだろう。

 

 

「それじゃあ、まず。これをどうぞ」

 

「これは……」

 

 

 キッチリ五枚の書類を渡す。それを見た先生が驚きで固まっていた。

 

 

「苦労したんですよ。それを使えるようにするのは」

 

「あー……やり方はアルに聞いたんだね。喜んでたでしょ」

 

「ええ、小躍りしてましたね。初めての経験でしょうから」

 

 

 これで同業者ね! とか。協業の時は今まで通り声を掛けて頂戴! とか。これが名刺交換……! とか。

 

 それの記憶を頭の片隅に追いやって、話を元に戻す。

 

 

「これがあれば、皆も総会までは行けるはずです」

 

「全員分あるんだ……。でも、向こうからしたら知ったこっちゃないんじゃない?」

 

 

 確かにそうだ。幾ら身分を取り繕ったところで意味はない。そこに行く資格があるのは、自分だけだから。幾ら身分を用意して、その内に対策委員会を入れたところで、向こうには言い訳のしようがいくらでもある。

 

 

「アイツらは債権を買い占めました。でも全部とは言いませんでしたよね? ()()と言っていたはずです」

 

「買ったの……? あの短時間で?」

 

「俺じゃなくて、別の人間ですが……ったく……」

 

 

 アレで首の皮一枚繋がったが……あの後の小言が耳に痛かった。”腑抜けた”だの”手を抜いた”だのなんだのと……。

 

 それを思い出して、渋い顔になる。

 

 

「兎に角、その紙切れがあれば。俺じゃなくて対策委員会でも、総会の会場に入れるはずです」

 

 

 あの書類の中身は簡単に言えば、採用書類だ。債権を買った別名義の組織の物。本当なら、ネフティスの買い占めが無ければ。もう少し後で教えようと思っていたモノ。

 

 

「私募ファンドはアビドス生徒会ではなく、俺個人に狙い撃ちしてきました。その理由は先生に介入させないためです」

 

 

 シャーレの権限は絶大だ。あらゆる学園の力を借り、強制的に介入することが出来る。ただ、弱点は一つだけある。それは、自主的に行動できないと言う点だ。

 

 生徒から、ある程度の組織から、助けを求められなければ先生は介入できない。シャーレの仕事は全て問題が起きてからでなければ介入できない。それが、先生の弱点だった。

 

 

「俺個人の問題だから、先生は介入しにくい。そして、怪しい気配はあれど、まだ何も起こっていないから、介入の理由も捻出できない」

 

 

 いやらしい手だ。今回、私募ファンドとネフティスが公式に行った事は、ハイランダーと総会の件の説明だけだ。

 

 自分がいない間に、後輩やホシノたちに色々吹き込んだ件は、ノノミ後輩に呼ばれたからと言い訳が効いてしまう。かなり苦しい言い訳だが、そこを突いても意味はない。ただ、悪口を言っただけで、そんな事は誰だってしているのだから。

 

 

「闇討ちでもしてくると思ったんですがね……」

 

「だから、泊まりに来たんだ。その割には、夜中に出歩いていたみたいだけど」

 

「……知ってたんですか……?」

 

 

 先生は当然と言うように頷いていた。やっぱりこの大人には敵わなかった。

 

 自分を総会に出席させない一番の手は、自分を病院送りにすることだ。そうすれば、一番手間がない。

 

 だからこそ、後輩たちを巻き込まないためにシャーレに避難した。ホシノは大丈夫だろうが、先輩の件もあるから、この選択が丸いと思った。

 

 昨夜出かけたのも、ゲヘナ間での調整があったせいだ。盗聴や尾行を警戒したのもあって、向こうまで足を運ぶしかなかった。

 

 

「態々出かけたのも、向こうの出方を探るのもあったんですが。気持ち悪いくらいに無反応でした。妙ですが、こちらが取れる手は限られています。総会に出席する事です」

 

 

 闇討ちとはいかないまでも、出方を見るくらいはしてくると思っていた。それが無いのであれば、総会への出席の妨害に全てを賭けるのだろう。それか、闇討ちによる先生の介入を嫌ったか。

 

 

「だからこその、この書類です。債権を持つ俺を向こうは拒否できません。拒否すれば先生の介入を招くことになる。騒ぎを大きくするのは避けたいでしょうから」

 

 

 総会の目的は、債権で手に入れた物の分配だ。だから、債権を持つ者を拒否はできない。それは道理に沿わないからだ。拒否をしたら、それこそ先生が介入する口実になる。総会にさえ出席すれば自分の勝ちは揺るがない。

 

 

「待って? 俺? 俺たちじゃなくて? その口ぶりじゃあ、カヤツリ一人で行くみたいじゃないか」

 

「そうですよ。総会には俺一人で行きます」

 

「何か、理由があるんだね? 梔子ユメさんの事以外に」

 

 

 先生はお見通しの様で、自分は降参するしかない。素直に理由を話す。

 

 

「最悪の事態に備えてです。今回の件は、何かおかしいと感じませんか?」

 

 

 これは最初から変なのだ。

 

 砂漠横断鉄道はずっと放置されていた。シェマタも存在を忘れ去られているはずだった。

 

 誰かがシェマタのシュミレーションをしたから、この件は持ち上がったとホシノたちは聞いたと言う。

 

 それはおかしい。

 

 

「シェマタは存在が秘匿されていました。砂漠横断鉄道を隠れ蓑にするほどの物です。なんで、私募ファンドがその存在を知っているんですか?」

 

 

 あれはとびっきりの機密だ。それこそ一握りの人間しか知らないはずの厄ネタだ。アビドス生徒会とネフティス、ゲヘナが協力して、世界を終わらしかねない兵器を作り出した。

 

 こんな話が漏れてしまえば事だ。幾ら失敗作だったとはいえ、それを作ろうとしたと言う事実だけでも良くはない。

 

 

「ネフティスなら分かります。彼らもその件に噛んでいたんですから。でも、彼らの言い分はそうではない」

 

 

 だからこそ、私募ファンドが知っているのがおかしいのだ。ネフティスが知っているのならまだ分かる。けれど、向こうの言い分では私募ファンドが持ちかけてきたと言うような話だった。

 

 

「もちろん、ネフティスが嘘をついた可能性は高い。彼らの方から持ち掛けたのかもしれない。でも、その場合は私募ファンドを巻き込む理由がありません」

 

 

 私募ファンドとネフティスは他人だ。別に仲がいいわけでは無い。共同で債権を購入したところで、敵が増えるだけだ。現に今、そうなっている。

 

 

「お金が足りなかったんじゃないの? ほら、最後は債権の値段が青天井になってたでしょう」

 

「それは、短期間で買い占めたからですよ。ネフティスにはそんなことをする必要はありません」

 

「どうして? 買い占めないとアビドスの債権が他の人の手に渡っちゃうんじゃ……」

 

 

 それはそうかもしれない。だが、ネフティス視点で考えれば変な話だ。

 

 

「アビドスの債権なんて、誰が買うんですか? 回収の見込みのない、終わりかけの、六人しかいない学園ですよ? 今は返せていますが、来年以降に誰も入学しなければ終わる学園です。需要なんてありませんよ」

 

 

 だから、カイザーは債権を手放した。そして、その金額も大したものでは無かった。高騰したのは、短期間で買い漁られたからだ。

 

 逆に言えば、それまでは安いのだ。買われる心配もほとんどない。だから、その資金を用意できるまで待って、ネフティスだけで確保した方が良い。

 

 

「……言われてみれば、どうしてだろう」

 

「きっと、そうせざるを得なかったんでしょう。それに、全てのタイミングが良すぎるんです。まるで誰かが調整しているみたいだ」

 

「タイミング?」

 

 

 さっきの自分に対しての洞察が嘘のように鈍くなった先生に、内心ため息をつく。

 

 

「私募ファンドとネフティスが協力して債権を買ったでしょう? どんなタイミングでした?」

 

「販売直後にすぐだよね。夕方のタイムセールみたいな勢いだったよ」

 

 

 スーパーで客の群れに飲み込まれる先生が想像できたが、今の話には関係ない。

 

 

「それですよ。先生。タイミングが良いっていうのはそう言う事です。いつ販売が開始されるのか、それを知っていなければそんなことはできません」

 

「でも、カヤツリは知ってたじゃない」

 

「それは、カイザーに耳と目があるからですよ。そして、私募ファンドとネフティスはもっと早く知ってたんじゃないでしょうか」

 

 

 協力と簡単に言うが、ネフティスと私募ファンドの場合、そう簡単にはいかない。個人と個人の協力ではなく、それなりに大きな組織間での協力だからだ。

 

 カイザーのプレジデントのように、一個人が組織の全てを掌握しているのならばいい。だが、ネフティスはともかく、私募ファンドは違う。私募ファンドは、投資家の集まりだからだ。必ず全員の利益が出るように調整しなければならない。それにはきっと多くの時間が必要だった。

 

 それに、彼らを納得させる材料も必要だろう。シェマタは極上の餌ではあるが、大前提としてカイザーが債権を手放さなければ話にならない。シェマタの権利はあの時点までカイザーが握っていた。そして、カイザーがいつ債権を売り出すのか。そもそも売り出すのかを彼らは知りようがない。それが分かるのはカイザーだけだ。

 

 いつかというのは分かるだろう。だが、それまで待てるだろうか。そのために多額の資金を遊ばせておけるだろうか。他のモノに投資した方が儲かるかもしれないのに?

 

 それでも起きた事実は変わらない。実際に、債権は殆ど買い占められた。その事実が示すのは、私募ファンドとネフティスは債権が売られるのがいつなのか。それと、カイザーが債権を売りに出すことを知っていたことになる。自分よりもずっと前に。

 

 

「誰かが、裏で糸を引いています。そうとしか考えられない。余りにも向こうに都合が良すぎる。一つや二つなら偶然で誤魔化せますが、これは異常です。俺の知らない何かが動いている」

 

 

 誰かが糸を引いている。

 

 誰かが私募ファンドにシェマタの事を教え、ネフティスにも教えた。あまり考えたくはないが、カイザーにも顔が効く可能性がある。

 

 

「それが、梔子ユメさんだって、カヤツリは思うの?」

 

 

 先生が心配そうに聞いてくるが、もう心配はいらなかった。

 

 

「いえ、流石に先輩もそこまではできないはず。そもそも伝手がありません。協力はしているかもしれませんが。考えても仕方ないでしょう。先輩かどうかも定かじゃありませんしね」

 

 

 その答えに先生は安心したようだった。自分も、先生になら任せてもいいと思える。

 

 

「だから、俺一人で行きます。先生には、俺に何かあった場合のフォローを頼みたいんです」

 

 

 相手の底が知れない。どこまで手が伸びるか分からない。それを調べる時間もない。

 

 ならば、自分を餌にするしかない。

 

 そのための書類だった。自分が居なくても、総会に出席できるような手段を用意する必要があった。

 

 

「俺も最大限に気をつけます。そのための方法も別に用意してありますから……」

 

「分かった。いいよ」

 

 

 先生が短く頷いて、口を開いた。

 

 

「それで、もう一つは? まずはって、言ってたよね? 本当は最初から、伝えることは考えてたんじゃないの?」

 

「……何で分かるんです?」

 

「私は先生だからね」

 

 

 先輩みたいなことを言うものだと、内心舌を巻いた。観念して、もう二枚の書類を渡す。

 

 

「これは……どうして? 今回の事には役に立たなさそうだけど」

 

「念のためです。最初のネフティスのやり方が気になります。それらがあれば、万一の助けにも、介入の口実にもなるでしょうから、先生が持っていてください」

 

 

 本当はもっとしかるべきやり方があると思うし、今回の為に用意したわけでは無いのだが。まあ念の為だ。先生が持っているのが確実だろう。

 

 

「うわぁ……これ、どうやったの?」

 

「……嫌です。答えたくありません」

 

 

 先生が二枚の書類を見て、本当に驚いている。その理由は分かるし、その方法も聞きたいのだろうが、答える気はなかった。恥ずかしいにも程がある。

 

 

「フフ……じゃあ、答えなくてもいいからさ。一つだけ聞いてもいい?」

 

「どうぞ。変なこと以外ならなんでも」

 

 

 答えを聞くなり、小さく笑っていた先生は、急にさっきのような真面目な雰囲気に戻って言う。

 

 

「ノノミとシロコ達はどうするの?」

 

「……許せと。先生は、言うんですか?」

 

 

 ”いいや”と先生は首を横に振る。

 

 

「私がそれを言う権利は無いよ。ただ、カヤツリはどうするのかなって」

 

「明日の件が終われば、事情は話しますよ」

 

 

 それで、十分だろうと思うが、先生は険しい顔だ。

 

 

「まさか淡々と、説明口調で話すの? それは、止めた方が良いと思うよ?」

 

「どうしてですか? 今の状態が、これ以上ない罰でしょう? それを知るべきです。自分がやったことがどんな結果を引き起こしたのか。俺も経験したことです。よく、俺やホシノの気持ちが分かるでしょう?」

 

 

 悪意を持ってやったのではないことくらい分かっている。でも、報いは必要だ。自分がやったことを見つめ直すことは必要だ。

 

 善意や好奇心でやったことが、自分が思ってもみなかったことを引き起こす。助けたかった相手を酷い目に遭わせる。それが今回二人がやってしまった事だ。

 

 それは、自分がやったかもしれないことだ。善意で先輩を手伝った結果、先輩を死へ追いやってしまった。まだ事実は分からないが、写真を見るまで自分はそう思っていた。

 

 あれは本当につらい。逃げ出したくなるほどに。きっと今の二人もそうだろう。

 

 その気持ちが分かったなら。その辛さが分かったなら。もう二度とやらないだろう。事情を説明すれば理解はするはずだ。それで十分だ。これ以上は私刑になるし、必要以上に二人を苦しめたいわけでは無い。間違いは誰にでもあるものだ。

 

 

 その説明を聞いても、先生の険しい顔はそのままだった。

 

 

「それは、さっきみたいに怒らないってことでしょう? 良くないよ。それは」

 

 

 先生は気まずそうな顔になりながらも説明する。

 

 

「だって、カヤツリの気持ちが分からないじゃないか。私は分かるよ? 言ってくれたからね? でも二人には伝わらないよ。その時、カヤツリがどう思って、どれだけ辛くて、どれだけ傷ついたか。それは言うべきだと思う」

 

「何故です? 俺の愚痴を聞いても嬉しくないでしょう?」

 

 

 答えを聞くと、先生の気まずそうな顔がさらに深くなった。先生はとても言いにくそうに口を開く。前置きに、ごめんねと言うほどだった。

 

 

「カヤツリはさ。辛かったんでしょ? 梔子ユメさんが居なくなって、それが自分のせいかもしれないと思った時に」

 

 

 それは、そうだ。それは、さっきも語ったことだから、静かに頷く。

 

 

「それは、梔子ユメさんが何も言ってくれないからだよね? 彼女が、カヤツリに対して何を思ったか分からないから、辛かったんだよね?」

 

 

 再び、黙って頷く。先生が言いにくそうにする理由は分かるが、それが二人の事とどう関係するのか。それが分からなかった。ちゃんと自分は説明すると言ったのにだ。

 

 

「これから酷いことを言うけどさ。カヤツリは梔子ユメさんが亡くなったから、少なくともそう思ったから、納得できたんじゃないの? 梔子ユメさんが思った事が分からない事にさ。死者は話さないから。死人に口なしともいうくらいだもの。それは当然のことだから」

 

 

 そこまで聞いて、先生の言いたいことが分かった。これは、確かに良くないかもしれない。

 

 

「二人にとっては違うよ。カヤツリは生きてるんだから。カヤツリが思った事を、その時の気持ちを二人に言わないで、怒りもしないってことはさ。自分たちには、それだけの価値もないって言ってるようなものじゃない? そこまでカヤツリは二人に怒ってるわけじゃないでしょ?」

 

「……怒れって言うんですか? 情けなく、さっきみたいに」

 

 

 あれは、気が進まなかった。アレは自分の弱いところをさらけ出すに等しい行為だ。さっきだって、追い詰められたからできたようなものだ。しかし、そういう事では無いらしく、先生は違うと言う。

 

 

「さっきみたいにはしなくていいよ。ただ、ちゃんと怒った方が良い。何で怒ったか、どのくらい傷ついたのか、二人がやったことがどれだけ嫌だったのか。怒鳴ってもいいし、淡々と言ってもいい。でも、ちゃんとカヤツリの気持ちを言ってあげて。客観的な状況の説明だけで終わらせないで。悪い事をしたと思っている人に、ずっと怒ってもらえないことはとても辛い事だから。そのことをカヤツリは知ってるでしょ?」

 

「分かりました。言いますよ。そうします」

 

 

 二人は自分には聞けないだろう。”何で怒ってくれないんですか”なんて。それで、そのまま日々を過ごす。ずっと許されていないと思ったまま。それは生き地獄だ。それほどまでに怒っているわけでは無い。

 

 自分はただ、やらかしたことを分かってほしいだけだ。二人に想定以上にずっと苦しんでほしいわけでは無い。今も自分が苦しんでいるのと同じような状態になってほしいわけでは無い。

 

 

「ん? アロナ? プラナも……どうしたの?」

 

 

 自分の答えを聞いて、満足げに笑っていた先生がタブレットに向かって話しかけていた。どうやら、中に居る彼女たちが用があるらしかった。

 

 彼女たちの声は先生にしか聞こえない。向こう側の、プラナと呼ばれている方だけは、向こう側の自分たちと話せるらしいが。

 

 

「ガス管? ガス管の業者が入ったかって?」

 

「入ってませんよ。全員で調べましたからね」

 

 

 調べようとした先生の代わりに答える。

 

 シャーレは一度、ジェネラル率いるカイザーPMCに占領された。奪還には成功したのだが、その時にカイザーがシャーレに爆弾を仕掛けたらしい。自分のせいでジェネラル抜きの状態で追い詰められたカイザーPMCは、それを交渉材料にした。

 

 勿論、それは上手くいかず瞬く間に制圧された。だが、彼らは爆弾の場所を全部吐く前に撤退した。アトラ・ハシースの箱舟が襲来し、空が赤く染まったからだ。その隙を突かれた。

 

 だから、全員で捜索して取り除いたはずだ。ただ、それにかなり時間が掛かったせいで、業者の予定は全部先送りになっている。

 

 

「だそうだよ? え? 戻った? どうしたの? プラナ……?」

 

 

 どうにも勘違いの様で、先生はタブレットとにらめっこしている。もう、自分が入る余地はない。ならば、自分がやるべきことをやるだけだ。

 

 ノノミ後輩とシロコは落ち込んでいるだろう。当然の話だ。アヤネ後輩とセリカ後輩はそうでもないらしい。主導ではないからだろう。

 

 ただ、ホシノはマズイかもしれない。どちらが悪いと言うわけでは無いが、喧嘩別れみたいになってしまった。後日話すとか、突き放すようなことを言ってしまったが、落ち着いた今になって心配になってきた。モモトークか電話位はした方が良いかもしれない。

 

 どこか気まずさを感じながら、携帯を手に取り、ホシノの番号を呼び出そうとする。

 

 その瞬間、爆発音と衝撃が自分を襲った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。