ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

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216話 宝石を探して

 朝食はすぐ出来た。そしていつもよりも雑だったし量もないので、直ぐに食事は終わった。ユメは少し不満そうだったが、今は時間優先だ。仕方がない。

 

 

「それで、どうしようか?」

 

「まずは、これの出所からだろうな」

 

「なんか……昨日と違うね?」

 

 

 ユメが不思議そうに、テーブルの上の宝石を指で突く。昨日の輝きは失われて、今ではガラスにしか見えなかった。何と言うか、脱け殻といった感想が湧いてくる。

 

 

「それは置いておいて、話を聞かなくちゃならないと思う」

 

「話って、昨日の娘たち?」

 

「出所はそこからだからな」

 

 

 昨日の不良達を思い出す。苦労して掘り出したと言っていた。だから、宝石の事だけでなく、場所も知っている筈だ。

 

 正直、徒労に終わるかもしれないが、これが唯一の手掛かりだ。足を運ぶ価値は充分にあった。

 

 

「あっ……でも、何処にいるのか、セン君は分かるの?」

 

「割り振った場所にいると思うけど……居なかったら、待つしかない」

 

 

 以前の立ち退きのゴタゴタで、彼女たちが代わりに選んだ場所は把握している。居なくても、夕方には戻る筈だ。あそこは、彼女達の住処なのだから。

 

 

「それで、ユメの方は大丈夫なのか?」

 

「ほえ……?」

 

 

 首を傾げるユメに、センは指摘する。

 

 

「そっちの予定は大丈夫なのかって。生徒会の用事とかは無いのか?」

 

「あー……」

 

 

 そう聞かれて、一瞬ユメの表情が曇ったような気がした。見間違いかと、センは瞬きしたが。そこにあるのは、いつものユメの笑顔だけだった。

 

 

「多分、今日は大丈夫な筈。だから大丈夫だよ」

 

「ふぅん……そう」

 

 

 センは深入りはしなかった。ユメは言いたく無さそうだし、ユメが言わないということは言いたく無いのかもしれない。

 

 どうせ、ここで聞かなくても、明日になれば分かるのだし、まあいいだろう。そう考えたセンは放置を決め込んだ。

 

 

「じゃあ、セン君。今日も頑張ろうね!」

 

 

 全くいつもの雰囲気でのユメの宣言に、センは笑う。さっきまでの悪夢の余韻はすっかり吹き飛んでいた。

 

 

 □

 

 

「何で、教えなきゃならないんだ」

 

 

 そう言い放つ不良のリーダーの言葉に、ですよねとセンは内心同意した。

 

 昨日の不良達は直ぐに見つかった。センの用意した住処で寛いでいたのだ。

 

 良かったのはそこまでで、宝石の事を聞けばこの反応である。

 

 

「どうして教えてくれないんだろ……嫌われてるのかな……」

 

 

 どことなくユメはショックだったらしく、センの背後でぶつぶつ呟いていた。

 

 

「嫌われてる訳じゃない。嫌われてたら追い出されてるし、話どころじゃなかったはずだ」

 

 

 普通に今は話せているから勘違いしがちだが、腐っても彼女たちは不良。無法者なのだ。

 

 関わり合いになれば、碌なことが起こらない。そう見なされて、それでもいいと思っている者達。

 

 普通であれば、今頃は身包み剥がそうと戦闘になっている。会話が成立する時点でかなり理性的である。

 

 

「こないだの代金立て替えが効いてる。昨日の今日だし、それくらいの義理立てはしてくれてるんだ」

 

「教えてくれないのは?」

 

「その義理を超えるラインなんだと思う。嫌いだから教えない訳じゃない」

 

 

 それを聞いたユメが少しだけ嬉しそうになる。でも、根本が解決しない事に気付いたのか、困った表情だ。

 

 確かに、どん詰まりで打つ手はない。しかし、どんな物にも隙間はあるし、天秤を傾けるやり方は幾らでもあるものだ。

 

 

「そういや、この間のお釣りだ」

 

 

 センは幾許かの紙幣をリーダーに握らせる。いきなりそんな事をされたリーダーは目を白黒させている。だって釣りなど方便に過ぎないからだ。

 

 確かに、差額はあった。しかし、そういう物は迷惑料か手数料として懐に仕舞われる。それに、握らせた金額の方が高い。

 

 

「……これは?」

 

「お釣りだよ。この前、スッパリ退いてくれたから、こっちも誠意を見せただけだ。教えられないなら、他の所を周るだけだ」

 

 

 ユメに一声かけて、帰ろうと踵を返す。そんなセンに声が投げかけられた。

 

 

「待ってくれ……」

 

 

 そう言うと、リーダーはどこか考え込んでいる様子だ。きっと頭の中では損得の天秤がユラユラ揺れているのだろう。内心でセンはほくそ笑んだ。

 

 この不良たちが、あの宝石の事を教えてくれない理由は幾つか考えられる。でも一番は決まっている。

 

 

 ──金だ。

 

 

 金で買えないモノはある。そう巷では言われるけれども。センは、その言葉を手放しでは受け入れられなかった。センはいつも、こう思っていた。

 

 

 ──金で買えないモノは殆どない。

 

 

 確かに、金で買えないモノは()()()()()()()()。センには見当もつかないが。だって、金があれば何でもできる。食べ物や家だけではない。関心だって、思い出だって、ましてや命だって買えるのだ。

 

 そして、目の前の不良も。同じとは言わないまでも、似たようなことは思っているに違いない。何故かって、彼女たちは困窮した記憶があるどころか、今もしている。

 

 彼女たちは金の匂いには敏感だ。だからこそ、カツアゲをしていたのだろうし、昨日もあの宝石を探しに行った。さっきの様子から鑑みるに、まだその場所には宝石が埋まっているに違いない。彼女たちは、それを横取りされたくない。だから言わない。

 

 彼女たちにとって、金は命と同等のものだ。だから、それに対して匹敵するもの。天秤の片側に乗せるべきはそれに比するモノでなければいけない。

 

 勿論、その場限りのモノではいけない。さりとて、利益が分かりにくいモノでもいけない。彼女たちが、納得できるだけのモノを乗せなければならない。

 

 先ほどセンはリーダーに金銭を渡した。お釣りだと言う名目でだ。これだけでは弱い。現金を渡して情報を売ってもらうのなら、埋蔵されているであろう宝石分を渡さねば納得しないだろう。流石にセンもその額は用意できない。

 

 じゃあ、どうしてリーダーは悩んでいるのか。それは、センが付加価値を付けたからだ。

 

 

 ──恩を売れば、返してくれるんじゃないか?

 

 

 リーダーはそう思っている。最初にセンは、彼女たちに今いる住処を提供した。その次に、昨日ラーメンの代金を立て替えた。そして今、普通は返さない釣りを色を付けて返している。

 

 そうしようとした意図は無いが、センはテュポーンの名前が売れている。そんなセンに、恩を売れるのだ。そんな機会は中々ない。

 

 それは期間限定で、今を逃せば手に入らない。それどころか、他の人間の所に渡ってしまうかもしれない。

 

 人はどうしても取り逃した損失を考えてしまうものだ。もしもを考えてしまう。自分の手から零れ落ちたもしもを考える。それを手にした他人を考えて我慢できなくなる。基本的に人間は他人の幸せが嫌いなものだから。

 

 

「分かった。話すよ」

 

「ありがとう。覚えておくよ」

 

 

 このリーダーに通じるかどうか不安だったが、上手く通じたらしい。早速とばかりに、リーダーは話し始めた。

 

 

「アビドス砂漠だ。あそこにあの宝石は埋まってるんだよ」

 

「アビドス砂漠ね……」

 

 

 どうにもおかしい。宝石は火山か何かの近くで採れるものだ。砂漠で宝石が採れるなど聞いたことがない。なら、アレは真っ当な宝石ではないのだ。

 

 

「何で知ってるんだ?」

 

「見たんだよ」

 

「見た? 宝石をか?」

 

 

 フルフルとリーダーは首を横に振った。さっきとは違って、どこか顔色が悪い。そして、小さく呟くのだ。

 

 

「大蛇を見たんだよ」

 

「たかが蛇だろ」

 

「あんなデカい蛇が居てたまるか! あそこの建物よりも大きいんだぞ!」

 

 

 怒鳴りながらリーダーは、近場の高層ビルの廃墟を指差す。高さだけで数十メートルはあるだろう。センは動物の蛇を想像したのだが、どうやら違うらしい。リーダーは最初から説明してくれた。

 

 

「ここに来たばかりの私らは金に困ってた。それで、なりふり構う余裕が無くて……仕事を受けたんだよ」

 

「どんな仕事だったんだ?」

 

「護衛さ。アビドス砂漠を横断する運び屋たちの護衛。やけに報酬が高かったんだ。直接声掛けされたから、ご禁制の品でも運んでいたんだと、その時は思ってた」

 

 

 その時の判断を後悔しているのだろう。リーダーは下を向いて呻いていた。けれど話を聞く限り、判断は間違っていないように思える。運んでいる物が問題だっただけで、それを見て見ぬふりすれば大丈夫だと思ったのだろう。

 

 

「護衛なんて、嘘っぱちだった。私もある程度は覚悟していたが、もっと酷かった」

 

 

 息を吸って、リーダーは吐き捨てる。

 

 

「私らは捨て駒にされたんだよ。元々、そのつもりだったんだろう。私たちに大蛇を擦りつけてきたんだ。私らが、散り散りになっている間に、大人たちは悠々と逃げて行った」

 

 

 気の毒な事態ではある。後ろで一緒に話を聞いているユメが同情していることからも明らかだった。しかし、センにとって大事なのはそこでは無かった。

 

 

「そこで、宝石を見たのか?」

 

「そうだよ。あの大蛇が吐いたビームで抉れた地面から見えたんだ。昨日の小さな欠片じゃない。それより大きいのもあったし、もっと沢山あった」

 

「ビーム……? そんなの吐くのか?」

 

「ああ。ミサイルもまるで鯨の潮吹きみたいに、背中から吐き出してきたよ」

 

 

 余りの盛り具合に言葉が出なかったが、大事なのは宝石だった。センは大蛇の事は置いておくことにする。

 

 

「それを覚えてたから、その宝石の買取依頼を見た時に思いついたってことか?」

 

 

 リーダーは頷いて、続きを話す。

 

 

「それで、見つからないように。夜にこっそり行ったんだ。依頼の時は車に乗せてもらったから、かなりの距離があって時間が掛かった」

 

 

 頭の中で反復するが、齟齬はないように思う。距離があったのなら昨日の様子は当然だ。車で行くような距離を徒歩で行ったのだし、いつ出てくるかもわからない大蛇を気にしながら、しかも夜の極寒のアビドス砂漠だ。憔悴もするだろうし、空腹に耐えきれなくなるのも分かる。

 

 

「穴はあったが宝石の山は消えてた。他にも穴がいくつもあって。底を浚って何とか見つけたのが、昨日のさ。地図を出してくれれば場所も教える。これで、満足か?」

 

「ありがとう」

 

 

 とても有益な情報だった。礼を言われたリーダーは鼻を鳴らして、住処の奥へと消えていく。

 

 

「どうするの? セン君……」

 

 

 前に出てきたユメが、心配そうに聞いてくる。宝石周りを徘徊している、ビームやミサイルをまき散らす大蛇。車でないと行けそうにない距離と、問題は山積みだ。

 

 

「今日中には無理だ。……二日くらいは時間がいる」

 

 

 流石のセンも時間が足りなさすぎる。情報収集に、車の調達に、物資の用意。今からでは今日中には間に合わない。

 

 

「そうなんだ……私にも手伝えることとか、あるかな」

 

「生徒会室だけ貸してくれればいい。それに、ユメは明日用事があるんじゃないか?」

 

 

 これはセンの都合だから、ユメの仕事を優先してほしくての発言だった。けれど、ユメの表情が一瞬曇ったのは気のせいでは無かった。

 

 

「……手伝った方が良いか? これまで手伝って貰ったんだし、俺は構わないけど……」

 

「いいよ。セン君。私は大丈夫。これは、私の仕事だから」

 

 

 何か含みがありそうで、どこか覚悟を感じる答えだった。そして、踏み入らせないような拒絶も感じた。だから、センは問い詰めずに、頭の中で予定を組み上げ始めた。

 

 

 □

 

 

「ふむ、時間通りか」

 

 

 豪華な調度品で囲まれた、男の仕事部屋。そこで、腕時計を確認した男は、一人の女生徒に語りかける。

 

 

「朝早くからわが社までの足労を済まない。だが、そろそろ答えを聞かせて貰いたい。梔子ユメ生徒会長」

 

 

 男は仕事でここに彼女を呼んだのだ。それは、ある質問に対する答えを聞くためだった。男としては、期待通りの答えが返ってくることを期待している。

 

 生徒会長である梔子ユメ。彼女の返答によっては、男の業務計画に大きく影響するからだった。

 

 

「アビドス生徒会。つまり君の先輩方が、我がカイザーローンから借りた借金。その返済についてだ」

 

「返済します」

 

「何……?」

 

 

 予想外の答えに男──カイザー理事は疑問の声を上げる。それは期待を裏切られた事だけでは無かった。梔子ユメの表情である。

 

 梔子ユメが生徒会長になったばかりの時期に、理事はこの質問を一度している。今日が、その回答日なのだ。

 

 その際に、アビドスの現状や展望、現実的な返済計画。つまりはアビドスの土地売却をちらつかせた。

 

 その時の梔子ユメの表情は、決して褒められたものでは無かった。どうしようもない現実を、彼女が気づいていなかった、もしくは見ないふりをしていた現実を突きつけてやったのだから、当然の話である。

 

 あのままなら、きっと諦めるだろうと理事は思っていたのだ。儚い夢は現実に敗れる。ありきたりで、この世界にはどこにでも転がっていることだ。今回もそうなると思っていた。

 

 だが、どうだろうか。今の梔子ユメの表情は。

 

 笑顔と言うわけでもない。さりとて、悲観しているわけでもない。捨て鉢になっているのでもない。

 

 これは、決意の表情だ。この先に待っている困難を知っていてもなお、前に進む意思を秘めた顔。覚悟を決めた表情だった。

 

 

「なるほど、了承した。それでは話は終わりだ。元金の返済はいつでもいいが、利子の支払いは滞りのないように」

 

「えっ?」

 

 

 不思議そうな表情の梔子ユメに、理事はため息をつく。よっぽど前回の対応が堪えたらしい。まぁ、淡々と大人の話。現実の話をした。散々に、威圧してまで精神的に甚振ったから、子供の戯言だと一蹴されるとでも思ったのかもしれない。

 

 

「何を不思議がる。君はアビドスの生徒会長だ。その君の発言は、この取り決めにおいて、何よりも優先される。君の言葉には、それだけの権力がある。それに対して、私が異を唱えることはない。それだけの話だとも」

 

 

 本当にそれだけの話だ。梔子ユメ自らが、自身の立場を理解し、その答えを出すならば。理事はその答えを尊重する。それが大人というモノだ。

 

 

「ありがとうございます……?」

 

 

 呆気にとられた顔のまま、梔子ユメは挨拶をして部屋を出て行った。一人になった部屋で、理事は独り言ちる。

 

 

「ふむ……予想外だったな」

 

 

 本当に予想外だった。今のアビドスを見ても諦めない。その諦めの悪さもそうだが、この間の絶望が滲んだ表情から、どうやって立て直したのか皆目見当がつかなかった。

 

 恐らくは、長丁場になるだろう。それだけのポテンシャルと覚悟を、梔子ユメの表情から感じた。少なくとも、彼女が在籍する三年間は、アビドスは持ちこたえるかもしれない。

 

 利子は、まだアビドスの貯金が残っているだろう。残っている物品を売ればその場しのぎにもなる。

 

 

「しかし、私の勝ちは決まっている」

 

 

 理事は落ち着いて、計画を練り直す。梔子ユメが頑張ろうと、一人ではどうしようもない。新入生が入学しなければ、少なからずアビドスは終わる。だから、三年後を目処に計画を練り直す。

 

 

「そうなると、些か梔子ユメ。アビドスの優先度は落ちるな」

 

 

 放置しても、利子だけでアビドスは限界なのだ。放置していても構うまい。それよりも目下の問題は同業者だ。

 

 

「PMC理事め、何を考えている……」

 

 

 理事は、目の上のたん瘤。PMC理事を思い返す。奴が、カイザー理事の事を嫌っているのは知っている。競争相手だからだ。それは当然の話だ。

 

 しかし、損害をまき散らすのは違うと思うのだ。

 

 アビドス全域に、何かを集める依頼を出している。それと、あの産廃の再開発。ビナーの討伐と言う目的は薄々察せられるが、本末転倒だった。

 

 不良に依頼をバラまく、在野の運び屋に運搬させる。情報管理がずさんなうえ、余りに手酷くやり過ぎている。そのことや、ネフティスから奪った設計図の事やらが連邦生徒会長の耳に入ればどうなるか。

 

 色々な理由をつけて妨害をしてくる可能性がある。今はアビドス内で収まっているからいいが、外の自治区から依頼目当てにやって来た輩が、アビドス砂漠で行方不明などと言う事態になれば、きっと介入してくる。

 

 最悪は、あの産廃が結果を出した場合だ。大々的にビナーに使ってしまえば存在が露見してしまう。量産してからならば良いが、その考えなどPMC理事にはないだろう。最悪は折を見て完成したモノを跡形もなく証拠隠滅しなければならない。現物無しにゼロから作り直すのは非常に手間だ。再現性も怪しい。

 

 

「それに、あの男。黒服と言ったか。奴も奴だ。余計なことを吹き込みおって……」

 

 

 PMC理事が集めている物品。アレの正体は分からない。しかし、超常のモノだと言う事は分かる。自分たちは、それについて造詣が深くない。それなのに、PMC理事が独力で動いたとは考えにくい。

 

 となれば、誰かの介入があったと考えるのが自然だ。あんなものに造詣が深い人間など、黒服位しか該当しない。

 

 山積みの問題に辟易しながら、特大の爆弾。最後の問題に理事は向き合う。数十枚の画像が、モニターに表示された。

 

 

「しかし、こんな黒かったか? この……デカグラマトンだったか? ビナーとやらは」

 

 

 以前、PMC理事が自前の部隊で襲撃した砂漠の大蛇。それの写真だった。プレジデントが執心の宝物。それが埋蔵されているだろうアビドス砂漠で回遊しているコイツは、宝物の捜索の上で最大の障害だった。

 

 プレジデントも、理事も、これの対処に頭を悩ませている。だから、唯一の詳細な資料である戦闘映像を何度も見返していた。だから、違和感にはすぐ気がついたのだ。

 

 ビナーの装甲は純白だったはずだ。目と発光部分は黄色で、装甲の隙間から見える本体は漆黒だ。しかし、この写真だと、装甲が黒ずんでいるような気がする。

 

 汚れの黒ではない。光を吸い込んでしまうような、艶消しの黒。その黒が、装甲の端から侵食しているような……。

 

 

「癪だが、仕方あるまい。背に腹は代えられん」

 

 

 苦々しげに呟いて、理事は電話を手に取った。理事の頭の中には、黒服のあの特徴的な顔が思い浮かんでいた。

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