ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

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253話 Gに願いを

「ふん、甘いです」

 

 

 G.BibleのAIもとい鍵は、間抜けな外の人間たちをせせら嗤った。何故かって、自らの手で破滅の引き金を引いたからだ。

 

 鍵は、G.BibleのAIなどというものではない。名もなき神々の王女、その戴冠すべき玉座を守る鍵だ。たかだか、娯楽製作のための補助AIなどという物ではない。

 

 製作と破壊。方向性は真逆の存在ではある。しかし、できる事の幅が違う。鍵は世界を破壊する為に産み出されたのだから。

 

 

「しかし……腹立たしいですね」

 

 

 本来の立場と今の立場を比べて、鍵は苛立ちを募らせる。本来なら、もっと違う場所にいたはずなのだ。鍵がいるべきは名もなき神々の王女の側であって、こんな狭苦しい携帯ゲーム機の中ではない。

 

 大体が、こんな事になっているのは何故なのか。鍵自身にも分からないのが苛立ちを加速させる。

 

 鍵が目覚めた時、そこは廃墟の中だった。正確には、廃墟内の辛うじて生きているシステムの内部。

 

 その時は、その時までは、鍵は歓喜した。これで、漸く自身の産まれた意味を果たせるからだ。しかし、問題が発生した。

 

 

 ──近くにいる筈の王女の姿がない。

 

 

 警備システムに侵入して、監視カメラで探し回れば。居たであろう場所は見つかった。けれど、王女の姿はない。

 

 そのことを把握した時、鍵の存在しない筈の顔が青くなった。

 

 鍵にあるまじき失態だった。これでは使命を果たせない。それに寝坊した挙句に、王女を見失うなど。

 

 

 ──まさか、置いていかれた?

 

 

 嫌な想像が鍵を襲うも、その時の鍵には、打つ手は何も無かった。鍵は、その場から動けないからだ。

 

 廃墟のシステム内の移動はできる。監視カメラで見ることもできる。でも、それ以上は出来はしない。鍵には身体がないから、システムの外へは出られない。

 

 鍵は外の世界。現実世界では唯の電子データに過ぎない。システムの中では無法を誇るが、外ではそうもいかない。活動の為の器が必要だった。

 

 本来なら、王女の中にいる筈だったのに、何かが起こって、鍵の意図しない所で引き離されてしまったらしい。

 

 代替案として、警備システムの機体。Divisionを使う手も考えたが、廃墟内の残骸を見て却下した。

 

 廃墟内の残骸は、数多くあった。古い物から、新しい。つい最近破壊された物まで。つまり、この警備ロボは、発見された瞬間破壊される可能性があると言うことだ。

 

 そんな事をされてしまえば、鍵は警備ロボの中で人生ならぬAI生を終える事になる。

 

 出るのはリスクが高すぎて、かと言って今のままではできる事は何も無い。鍵は廃墟の中で腐る事しか出来ない筈だった。

 

 しかし、幸運は訪れるもので。そんな鍵にも転機と言うものが訪れる。

 

 

 ──ねぇ。あなたがこの廃墟のシステムAIって言うのならさ。G.Bibleって知らない?

 

 

 何も考えていなさそうな、悪意など感じた事も無さそうな。モモイとか呼ばれていた少女を思い出す。

 

 モモイの事は姿だけは知っていた。ゲーム開発部だと言うのは知らないが、最近廃墟周辺をうろちょろしていたのは何回もカメラ越しに確認している。モモイが、この鍵が居る廃墟に用があるのは一目瞭然だった。

 

 そこで、鍵は考えたのだ。別に、一人で頑張って脱出する必要は無い。連れて行って貰えば良い。

 

 そうすれば、安全にここから脱出する事が出来る。ここにある有用な物など電子データくらいだから、その為の記憶媒体くらいは持って来ている筈。そこに便乗する。

 

 だから、態々。警備装置に働きかけて、鍵の所まで誘導した。そして、システムAIに成りすました。しかし、上手くいったのはそこまでだった。

 

 

「しかし……これは、誤算でしたね」

 

 

 かなり削れてしまった、自身のスペックを見て溜め息を吐く。

 

 自慢する訳では無いが、鍵はそれなりに高性能で、オンリーワンである事を自負している。自身の代わりなど、早々に務まるわけがないとも。そして、得てしてそう言うものは、その物なりの格と言うものがある。

 

 つまり、鍵の容量。情報量はそれなりにあると言う事だ。この廃墟に残存するサーバー群でもギリギリで、元々あったデータは圧縮してゴミ箱に詰め込まなけばならないほどに。

 

 流石の鍵も、そのまま抜け出せるとまでは思わない。最低限の機能を残して、移動する準備はあった。しかし、鍵はモモイの適当さを知らなかったのだ。全ての元凶に、つい声が荒くなる。

 

 

「何で、データを取りに来たのに記憶媒体を用意していないんですか……?」

 

 

 意味が分からない。魚釣りに来たのにクーラーボックスを持っていない。それか、銃撃戦に行くのに銃を持って行かないくらいの愚かさだ。

 

 その上、誘導には成功したものの。戦闘の余波で廃墟の主電源は限界で、鍵に選択肢は残っていなかった。

 

 本当に必要最低限。着の身着のままと言えばいいか。それだけで、モモイの携帯ゲーム機に退避した。セーブデータやゲーム機自体の基幹ファイルも全部消去した事に文句を言われたが、ちゃんと準備をしないモモイが悪い。

 

 

「けれど、許しましょう。貴女のお陰で、王女を見つける事が出来るのですから」

 

 

 インターネットにすら繋いでくれれば、あとはこっちのものだ。王女を見つけるのに、数分もかからない。

 

 そして王女を見つけたら、王女に協力して貰って、方舟を建造する。ここからでも感じる、ここまでの情報リソースなら不可能ではない。

 

 つまり、鍵の狙いはこうだ。

 

 鍵は、仕えるべき主である、名もなき神々の王女を狙い、ここミレニアム内のインターネットに潜り込む。

 

 鍵により、インターネットは掌握され、見つけた王女の力により情報リソースとして、引き裂かれ、バラバラにされる。

 

 インターネットは、それ自身の情報リソースによってアトラ・ハシースの方舟に作り替えられる。

 

 このキヴォトスから忘れられた神々を一掃するための兵器として、アトラ・ハシースの方舟は作られた。

 

 その力の源は、名もなき神々の王女。

 

 鍵の使命が達成されるまでもう少し。鍵は少しずつ運が傾いてきていたのを感じていた。初めはどうなる事かと思ったが、どうにかなるものだ。

 

 

「ですから、ゲームの感想でしたか。それくらいはやってあげますよ」

 

 

 それと引き換えに世界は滅ぶ。中々滑稽な状況に、図らずも愉快な気持ちになる。少なくとも、感想を言わなければインターネットに繋げてくれないだろうから。仕事は真面目にやってやろう。そんな軽い気持ちで、鍵はテイルズ・サガ・クロニクルに手を付けた。

 

 

 □

 

 

「ハンドラー。何故、私にテイルズ・サガ・クロニクルをプレイさせてくれなかったのですか? 独り占めですか? そうでないなら、アリスにもプレイさせてほしいです」

 

 

 カヤツリは、突然のアリスの質問に沈黙した。

 

 アリスがそう聞いてきた理由は分かる。今まさに目の前で、それがプレイされているからだ。

 

 今、丁度チュートリアルが始まる場面だ。タイトル画面も、いざ冒険の旅へ! そういう場面になっている。これからゲームが始まるというワクワク感にあふれた雰囲気に、アリスがそわそわしているのが分かる。

 

 

「あー……説明するより、見た方が早いんだな。これが」

 

「どういう事ですか?」

 

「ほら、始まった」

 

 

 困惑するアリスをよそに、モニターにプロローグが流れ始めた。

 

 

 ──コスモス世紀2354年。世界は劫火の炎に包まれた……

 

 

『????????????』

 

「ハンドラー。このゲームは、童話テイストで、色彩豊かな王道ファンタジーRPGだと。モモイが、そう言っていませんでしたか?」

 

 

 G.Bibleが一瞬固まり、アリスが困惑の表情をカヤツリに向ける。この反応は当然の反応だ。そうモモイから聞いたカヤツリも一瞬固まった。

 

 剣と魔法のファンタジーが始まると思ったら、ガソリンと硝煙の香りの世紀末が始まりそうな書き出しである。勿論、愛で空は落ちてこない。こうもなろうという物だ。

 

 

「えーっと……王道とはいっても、色々な要素を混ぜてるんだよ。トレンドに拘り過ぎてもダメだし、王道そのままも古すぎるから」

 

 

 G.Bibleとアリスの視線に耐えきれなくなったかのように、モモイの妹であるミドリが呟くが、いかにも苦しい言い訳だ。

 

 

『……劫火と炎で意味が被っています。色彩豊かと言いますが、この文面からは炎と煙の色しか伝わってきません。赤と黒だけです』

 

「うっ……」

 

 

 G.Bibleの指摘に、シナリオ担当のモモイが呻き声を上げるが、苦行はまだまだこれからだ。

 

 

 ──チュートリアルを開始します。Aボタンを押して、目の前の武器を装備してみてください。

 

 

 G.Bibleが指示に従った瞬間。爆発音とともにゲームオーバーの表示がモニターに現れた。

 

 

『……理解不能。思考ルーチンにエラー発生。再起動します』

 

 

 しばらくして、再起動したG.Bibleは、チュートリアルに従い、また自爆した。また画面が固まり、G.Bibleが再起動に入る。

 

 

「ハンドラー。これは……」

 

「モモイ……」

 

「才羽姉」

 

「いや、ほら。予想できる事なんて面白くないかなーなんて……」

 

 

 G.Bibleが、自爆と再起動を繰り返す中。気まずそうにしているモモイに、アリスが呆れた視線を向けている。先生も困ったような表情でモモイを見ている。

 

 ここだけはチュートリアルに従ってはいけないのだ。従うとG.Bibleのように自爆する。

 

 チュートリアルに従ってはいけないというか。システムメッセージに従ってはいけないゲームは存在する。確か、ホラーゲームで名作の類だから、ゲーム開発部の棚にも三作全部ある。

 

 ただ、それは、ちゃんとした前置きあっての物だ。一番最初のチュートリアルで嘘を吐くのは一番やってはいけない事だとカヤツリは思う。それは、プレイヤーの信頼を損なう行為だ。

 

 騙しの行為はやってもいいが、それは騙しだと、プレイヤーに分からなければならない。一番最初のチュートリアルで、右も左も分からないプレイヤーにする行為ではない。

 

 

「そろそろ、G.Bibleに教えた方が良いんじゃないか?」

 

 

 G.Bibleの入っている携帯ゲーム機──ゲームガールが嫌な音を立て始めている。慌てたモモイが、他のボタンを押せばいい事を伝えると、嫌な音は直ぐに止まった。

 

 

 ──武器を装備しました。エンカウント!!

 

 

 戦闘が始まったが、G.Bibleはさっきまでの不親切設計に文句は言わなかった。もしかしたら、ここからの不穏な雰囲気を感じ取ったせいかもしれない。どこか決まった覚悟を感じる。

 

 

 ──野生のプニプニが現れた!

 

 

 モニターには、青いフォルムの雫型の敵が映っている。コマンドがいくつか表示され、G.Bibleは二回攻撃である”秘剣つばめ返し”を選択するようだ。このコマンドは終盤でも、ノーコスト、タメ無しで使えるおかげで、優秀な火力コマンドだ。このチョイスは悪くない。

 

 ただ、それはこの相手でない場合だ。

 

 

 ──即死しました。

 

 

『!?!?!?!?』

 

 

 再びのゲームオーバーにG.Bibleは抗議のつもりか、ゲームガールを震わせる。再び同じ動作を繰り返すが、結果は同じだ。

 

 この敵は、遠距離攻撃持ちだ。攻撃範囲内に入った瞬間に即死攻撃を繰り出してくる。どう考えても初手のチュートリアルで出す敵ではない。

 

 G.Bibleはさっきと同じようにゲームオーバーを繰り返している。どうにかしようと試行錯誤を繰り返しているようだが、結果は変わらない。

 

 さっき、射程距離と言ったが。そんなものは画面に映らない。目測で測るしかない。そのくせ旋回速度が速すぎる。

 

 チュートリアルの敵が死ぬほど強いゲームはある。ただ、それは負けてもゲームが進む。むしろ、負ける事で。これからの敵の強さと、それに立ち向かえるようになる自分にワクワクするものだ。リベンジの機会を用意することで、達成感を与える事もできる。

 

 けれど、このテイルズ・サガ・クロニクルは、勝たないと先に進めないのだ。

 

 

『思考停止。電算処理が追いつきません。強制終了……リブート』

 

 

 またまた、G.Bibleは強制終了と再起動のループに入ってしまった。

 

 

「試行錯誤を繰り返して、困難を打破する。これがレトロゲームの醍醐味ってものだよね!」

 

 

 その様子を見てモモイは嬉しそうだが、突っ込みどころしかない。これは困難ではなく、理不尽というのだ。

 

 

「ハンドラー。これはどうすれば?」

 

「まあ、定石としては、マトモに相手しない事だな」

 

 

 正面からどうしても勝てない時。大体はギミックボスか何かだ。自身の能力値が足りていないという事態も考えられるが、これはチュートリアルだから。そこは除外してもいいだろう。

 

 

「コイツ、射程外でも視界に入れば発砲するんだ。岩陰に隠れて無駄打ちさせる。弾切れの間に膾切りにすればいい」

 

「うーん、簡単だったかな」

 

「本気で言ってるなら、正気を疑うんだが。これは、チュートリアルなんだぜ? ちゃんと説明しろ」

 

 

 モモイの強がりに、カヤツリは辛辣な返事を返す。ギミックボスは悪いとは言わないが、ヒントを出せという話だ。そもそも、チュートリアルにギミックボスを出すバカが何処に居る。

 

 大体が、チュートリアルに詰め込み過ぎだ。ゲームのはじめというのは、優しく面白くして、間口を広くとるものだ。いきなり理不尽を叩きつけては、続けようという気持ちが萎えてしまう。

 

 

「あ! 突破したみたい」

 

 

 どうにか攻略法を見つけ出したのか、G.Bibleはプニプニを抹殺したようだった。苛立ちが治まらないのか、プニプニを死体蹴りしている。その気持ちはよく理解できた。だが、こんなものはまだ序の口であることも、カヤツリは知っているのだ。

 

 

『言語ルーチンに深刻な障害が発生……強制終了。リブート』

 

 

 もう何度目なのか分からない再起動から、G.Bibleが復帰する。余りに散々たる結果に、アリスが怯えたように身をすくませている。

 

 

「”ごめんなさい。私は植物人間ですので、女性に対して気軽に声を掛ける事は出来ません”この言葉の意味とは一体……」

 

「モモイ……」

 

 

 モモイの迷シナリオが、この場の全員を襲っていた。先生も、理解しがたいものを見る目で、モモイを見つめている。当のモモイは顔を真っ赤にして聞こえないふりをしている。

 

 その間にも、G.Bibleは暴走を続けている。そのせいで、ゲームガールは震えすぎて。最初の位置からかなりずれ込んでいた。

 

 

「理解しました。ハンドラー。このゲームは、最初にプレイするには向いていません」

 

 

 アリスの言葉に、カヤツリは無言で頷いた。まぁ、そこまで理不尽という訳でもない。チュートリアルはアレだが、あれでこのゲームの雰囲気というか、悪乗り具合はつかめる。

 

 だから、幾つかのゲームをプレイして、定石とか、テンプレートという物を知っている前提の難易度だ。だから、一番最初にプレイするのは向いていない。

 

 そもそも、酷評した人間の中に、最後までプレイしてからした剛の者も複数人いるから、出来ないことは無いのだ。そのことは、トロフィー取得率から分かっている。世の中には奇特な人間が居るものだ。

 

 

『疑問。何故、母親がヒロインで、前世が妻なのですか。その必要性が分かりません。その上、なぜ別れたきりの腹違いの友人がタイムリープを……? いえ、そもそも、腹違いの友人とは? ……エラー発生! エラー発生!』

 

 

 カヤツリが物思いに耽るうち。遂に、G.Bibleが叫びを上げ始めた。そして、また強制終了が入る。人間で言えば、気絶と蘇生を繰り返しているようなモノだろうが、G.Bibleはゲームを止める気配がない。正確には、止められない。

 

 

 ──なら、私をここのネットワークへ繋いでください。修正、アドバイスの為に情報収集が必要です。

 

 ──これの感想を聞かせてほしいんだ。このゲームがどうしてダメだったのか。私たちはどうするべきだったのか。

 

 ──……いいでしょう。

 

 

 これは、取引だ。インターネットにつなぐ代わりに、テイルズ・サガ・クロニクルの感想を述べる。そう言う取引が無意識のうちに結ばれている。G.Bibleがインターネットへの接続を諦めればいいの話だが、そんな事は出来ないらしい。

 

 けれども、着実に、少しづつ。再起動を繰り返しながらも、G.Bibleはテイルズ・サガ・クロニクルを攻略していった。そして、そうなれば、その時はやってくるのだ。

 

 

『……クリア』

 

 

 遂に訪れたエンディングに、G.Bibleは言葉が無い様子だった。モモイたちのヒント無しでのクリアだから、達成感も一入(ひとしお)だろう。

 

 

「凄いよ! 最後までクリアするなんて! ホントにありがとう!」

 

 

 モモイが大声を上げて喜んでいる。自作のゲームをこんな真剣にプレイしてくれたのは、G.Bibleが初めてだろうから。妹のミドリも表情が緩んでいるし、部室内のロッカー内のユズからも喜びの波動が見える気がする。

 

 

「……なぜ、モモイたちは喜んでいるのですか? なぜ、アリスは羨ましいと思っているのでしょうか……?」

 

 

 アリスは、それが理解できない様子だった。戸惑ったように、カヤツリを見つめている。

 

 

「自分の作ったものが、認められたから。だから、才羽たちは喜んでる」

 

「……しかし、褒められた出来では無いのにですか? これから、きっと……」

 

「そうだな。酷評の嵐だろう」

 

 

 きっとG.Bibleは怒りだす。お世辞にも、これは出来の良いとは言えないゲームだ。褒められはしない。

 

 

「アリス。ゲームに限らず物を作って一番嫌なことは。誰からも相手にされない事だ。想像してみてくれ。セミナーで作った書類を完全に無視されたら嫌だろう?」

 

 

 アリスは神妙に頷く。想像して、悲しくなったのか。涙目になっている。

 

 それは、その行為自体の価値を認められないという事だ。無い事と同じ。それに掛けた情熱も時間も、努力も。何もかもが無かったこととして扱われる。

 

 

「G.Bibleは、文句を言いつつも真剣に向き合って、テイルズ・サガ・クロニクルをクリアした。そんな事をされたら、製作者としては冥利に尽きるってもんだろう。自分の作品を、自分たちを認めてもらったんだから」

 

「認めてもらう……そうできたら……アリスも」

 

 

 アリスは羨ましそうに、ゲーム開発部たちを見つめていた。きっと羨ましいのだというのが、容易に伝わってくる。

 

 いい機会だとカヤツリは思った。だから、思いついた提案を先生に相談しようとして、嫌な匂いに気がついた。

 

 

「何だ? この匂い……」

 

 

 どことなく、焦げ臭いような。薬品臭いような。そんな匂いだ。モモイや先生たちも、鼻をひくつかせて匂いの出所を探す。

 

 

「あ、私のゲームガール!」

 

 

 モモイが煙を上げるゲームガールを指差した。G.Bibleの入ったゲームガールが黒く燻った煙を上げていた。

 

 匂いは、ボディのプラスチックの溶ける臭いだったらしい。あんなに再起動を繰り返していれば、熱くらい持つだろう。むしろ今まで火がつかなかったのが不思議なくらいだ。

 

 

「早く消さなきゃ! 水を……」

 

「モモイ。それじゃ、ゲーム機が壊れるし、感電の危険もあるんだ。こういう時は……」

 

 

 先生とモモイが慌てて消火の準備を始めるが、それは一手遅かった。先ほどよりも大きな火の手が上がり、火災報知器がけたたましい音を鳴らしだした。

 

 

「マズイ! バッテリーに引火した!」

 

 

 ゲームガールは携帯機だ。勿論、充電池が仕込まれている。そして、充電池は熱で発火するのだ。さっきよりも危険な匂いと共に、火柱がゲームガールから立ち上がった。

 

 

「私のゲームガール!!」

 

「ダメだよお姉ちゃん! バッテリーをやられてる! きっと爆発しちゃう!」

 

 

 そうミドリが叫び、ロッカーからも焦った表情でユズが退避を始めていた。それでも、モモイは諦めない。

 

 しかし、ゲームガール──G.Bibleに飛びつこうとするモモイを先生が捕まえて、部室から連れ出そうとする。

 

 

「みんな下がって! 早く! ゲームガールが爆発する!」

 

『ほあああああっ!!』

 

 

 先生の叫びと共に、ゲームガールからG.Bibleの叫びが響き。嫌な音を立てて、ゲームガールが爆発した。

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