ホシノ同級生相棒概念   作:洞鼬

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288話 持ち味を生かして

 もう日は西へと傾き始めていた。そんな太陽と競争をするように、マトは待ち合わせ場所であるホテルへと急いでいた。

 

 

「便利屋め、やってくれたね」

 

 

 走るマトの口からは、ここまで遅れた元凶の一つである便利屋68への恨み言が溢れる。

 

 

「ブラックマーケットの銀行で騒ぎを起こした挙句になんだい。ゲヘナの外で店舗を爆破? 本当に碌な事をしないね。それに、アコもアコだよ」

 

 

 今日の朝、便利屋68がアビドス内でラーメン店を爆破。その騒ぎを聞きつけた対策委員会と戦闘中に、アコ率いる風紀委員会が強引に介入した。

 

 大問題だ。ゲヘナ生徒が起こした他校の事件に、治安維持組織の一員が独断で、一方的に引き渡しを要求するなど。アビドスに対する完全なる宣戦布告に等しい。

 

 

「ったく、小鳥遊ホシノの機嫌が悪かったら、どうなると思うんだい?」

 

 

 きっと、今回のように無傷では済まなかった。速攻でホシノからマトに連絡が来たから、ヒナに回す事で何とかなったものの……

 

 

「まぁ、マコトにいびられるんだね。それが罰だよ」

 

 

 アリウスとの会談の後、その事を知った時の顔。嗜虐心しか感じ取れない顔だ。ヒナ率いる風紀委員会の失態はマコトにとっては垂涎ものだろう。他人の不幸は蜜の味とも言う。

 

 

「しかし、何で機嫌が良かったんだろうね?」

 

 

 ふと疑問が湧いて、マトは呟く。シェマタとカイザーの件で協力中ではあるから、定期的な連絡は取っている。つい先日も、カイザーがヘルメット団に闇銀行を通じて資金を横流ししていたと判明した。入手手段が銀行強盗故、全く褒められたものではないが。

 

 そして、それが機嫌のいい理由の全てではないはずだ。カヤツリからホシノに変わってからずっと、ホシノは落ち込んでいたのに。それがどうだろう。今までにない、恐ろしいほどに機嫌が良かった。おかげで、スムーズにヒナへ話を回すことが出来たのは間違いない。

 

 しかし、それでも、その後始末でここまで掛かってしまったのだ。

 

 走り疲れて、這々の体で、マトが待ち合わせ場所の部屋へと着くと、椅子に座る人影が見えた。

 

 

「大分待たせたみたいで済まないね」

 

 

 マトが声を掛けつつ近づくと、人影は振り向いて首を横に振る。

 

 

「ううん。大して待ってない」

 

 

 本当に何でもないように言うアツコを見て、マトは溜息を吐いた。

 

 午前中も思ったが、静かにお茶を嗜む姿は話に聞いたアリウス出身とは思えない。アルやマコトやアコに見習って欲しいくらいだ。

 

 そんなアツコの前のテーブルには、紙の山が出来ていた。それを誰が生産したのかは簡単に想像がついて、マトは部屋を見渡した。

 

 

「カヤツリは? どうしたんだい?」

 

「別の自分の部屋だけど? ……なんか、明日の受け渡しの電話で疲れたから、一度寝るって。……暫く寝かせてあげたい」

 

「ふぅん……カヤツリ抜きでか。そっちも私に話があるんじゃないのかい?」

 

 

 黙って頷くアツコを見て、嗚呼とマトは納得した。大して待っていないとは、こういう意味かと。

 

 マトが来ない間、カヤツリと何かを話していたのだ。会談で分かった事と、アツコとカヤツリの知っている事。最後に、ブチ切れたマトがマコトから絞り出した取り引き内容。それで、ある程度の結論が出たのだろう。

 

 そして、カヤツリが居るところでは聞けない事を聞くつもりだろう。それこそ、アリウスのゲヘナに対する悪感情でもぶつけられるのかもしれない。

 

 

「いや、それにしても。まさか、本当とはね……」

 

 

 それを想像して、今日何度目かも分からない溜め息を吐いて、マトは部屋の椅子に座り込んだ。

 

 

 ──アリウスがゲヘナに何かを仕掛けているかもしれない。

 

 

 表向きには療養中だとされているカヤツリから、事の顛末を聞いた時。マトは半分は心配のし過ぎだとも思っていた。

 

 だって、そうだ。いきなりとうの昔に居なくなった筈のアリウスに襲われて殺されかけた挙句に、そのアリウスがゲヘナに手を伸ばしている?

 

 マトは、カヤツリが半分錯乱していると思っていた。殺されかけたのだし、それも仕方がないと思っていた。その分、マトが調べればいいとも。だから、話を聞きつつも休む様に促した。

 

 だが、蓋を開けてみればどうだろう。

 

 いきなりアリウスのトップを連れて来るとは思わなかった。それに、マコトもマコトだ。まさか本当に取り引きをしているとは……。

 

 ぶり返した頭痛と共に、午前中の会談が、マトの中で再生される。

 

 

 ──ふむ。アリウスだったか。態々御苦労な事だ。突然の訪問とはな。一体、このマコト様に何の用だ?

 

 ──今日は挨拶をしに来たの。

 

 

 どこか浮世離れした雰囲気と、妙な威圧感、正道を歩いているという覇気。アツコから放たれていたそれは、あのマコトをして警戒させるものだった。

 

 

 ──挨拶……? いきなり押し掛けておいて、それだけか?

 

 ──そう。アポイントメントは必要だった?

 

 ──必要だっただと? アリウスは礼儀も知らんらし…………待て、アリウス?

 

 

 アポイントメントの話になった時、その時のマコトの表情を見て、マトはカヤツリがアポイントメントを取らなかった理由について理解した。

 

 不思議には思っていたのだ。マトには忘れた事のないそれを、マコトにはしなかった。マトには指定の時間、確実にマコトがいる様に頼むだけ。確実を期するカヤツリらしくはなかった。

 

 だが、それで良かったのだろう。アツコの護衛として、入り口に立っているマトが変装させたカヤツリが笑っていたから。

 

 

 ──もう一度言うけれど、私はただ挨拶に来たの。エデン条約は私達にとっても他人事じゃないから。まさか、今の今まで忘れていた。そんな訳じゃないでしょう?

 

 ──そうか。そうだろうな……であるならば、場所に口出ししたくもなるというものか。

 

 

 それを聞いて、その時のマトは怒りを抑え込むので精一杯だった。何て事のない普通の会話だが。ある程度の事情、アリウスとは何なのか。アリウスがゲヘナへ取り引きを仕掛けた。それらを知っている前提では話が変わる。

 

 アポイントメントについて、マコトがとやかく言わなかったのは、アリウスに押しかけられて面倒だったからではない。マコトは細かなミスですら論う。それが誰でも、アリウスという知らない学園のトップでも。

 

 そうしなかったのなら、マコトの中では、アポイントメントはとっていた事になる。それはいつか? 答えは決まっている。アリウスとの取り引きの時だ。

 

 そうマコトが答えて、続けて何と言った? これでは、取り引き内容の催促に対して言い訳している様にしか聞こえなかった。

 

 マコトはエデン条約に関して、アリウスと何かの取り引きをした。

 

 そうマトが確信するのに、この会談は十分だった。会談が終わって、アツコとカヤツリが居なくなった後、マコトを絞りに絞って、取り引きに関しての全権を奪い取ったのは言うまでもない。

 

 

「エデン条約調印式の会場の指定ね……トリニティの古聖堂か」

 

「うん。メールで教えてくれた通り、そこはカタコンベがあって、カタコンベはアリウス自治区と繋がってる」

 

 

 マトの独り言を、アツコが補足してくれた。アリウスの狙いははっきりしている。

 

 

「調印式を襲撃するつもりかい? 不意打ちで古聖堂ごと攻撃。その後地下からアリウスが湧いて来る」

 

「うん。あのバカは、トリニティだけに牙が向いてると思ってるって。そう言ってた」

 

 

 マトは胃が痛くなる。マコトはその通りに解釈していたからだ。よろよろとマトは立ち上がって、机の上に広げられた紙の山に目を通した。

 

 

「本来の目的はそうじゃない。そうだね?」

 

「うん。数が足りないって」

 

 

 紙の山の一部は計算用紙だ。トリニティを攻め落とすのに必要だろう戦力が書いてある。足りないだろうなと思う程の数が記されていた。

 

 

「あの会談の時の威圧感。あれは、誰の真似だい?」

 

「マダムの真似だよ」

 

 

 だろうねとマトは吐き捨てた。アリウスは一人の大人に支配されているという。中々、彼女の統治は酷いもので。あんな威圧感を出せるのは、そんな事をする大人くらいだ。

 

 そして、そんな大人が、態々アリウスを助けるだろうか? アリウスの生徒を雑に扱っているのに、アリウスの為に行動するとは思えない。

 

 なら、その大人なりの理由がある。

 

 

「カヤツリは何だと言ったんだい?」

 

「トリニティへの襲撃はアリウスの生徒に対する隠れ蓑だって。本来の目的は、エデン条約の会場を古聖堂へ変更する事じゃないかって」

 

「ふむ……隠れ蓑はそうだが。会場を古聖堂へ変更させた理由が見当つかないね……」

 

 

 マトは腕を組んで考え込む。トリニティへの襲撃は現実味がない。例え、調印式に出席した人間を確保したとしても、まだまだ数は居る。トップを抑えたところでトリニティは派閥が山のようにあるから、頭が入れ替わるだけだ。それに、拠点制圧にも数は居るのだから、アリウスだけで足りるわけがない。

 

 それをマダムと呼ばれた大人が考えていないというのは甘い考えだ。だから、カヤツリの言う通りに、別の目的があるはずなのだが。いくら考えても出てこない。

 

 

「あの人は、エデン条約の事を調べる必要があるって言ってた。態々、アリウスが追放された第一回公会議と同じ状況を揃えたのが気にかかるみたい。それと、態々アリウスを支配した理由も」

 

「第一回公会議と、エデン条約の会場が同じか。何か引っかかるね……こっちでも調べてみるよ」

 

 

 いくらか状況は進展したが、相手の目的が見えてこないのが不気味だ。だが、カヤツリがとるであろう行動は見えてくる。

 

 

「なら、カヤツリはトリニティへ帰るのかね」

 

「うん……明日に帰るって。どうするのかは言ってくれなかったけど」

 

 

 そう答えるアツコの表情が暗かった。気になったマトは少しだけ藪を突いてみる事にした。

 

 

「ふぅん……へぇ……そうかい。そっちはどうするんだい?」

 

「アリウスの皆を説得してみる。まずはアリウススクワッドの皆から。それで、マダムを何とかする。それで、これからの事を決めていくんだ」

 

 

 その時の表情は、希望に満ちていて。さっきとはまるで違った。とてもいい表情だとマトは思う。それは未来への希望に満ちた表情だったから。

 

 だから、マトも覚悟を決めた。アツコ相手なら、罵詈雑言も受け入れられるだろう。

 

 

「それで? 私に聞きたいことは?」

 

「小鳥遊ホシノって誰? あの人の何なの?」

 

「すまな……何? ……何だって?」

 

 

 思わずマトは聞き返してしまった。想像の斜め上の質問が飛び出してきたからだ。どうにも、マトの想像とは真逆の展開かもしれなかった。

 

 ちらりと、アツコの姿を確認する。とても真剣な雰囲気だが、質問の内容が内容だ。もう、答えは出ているようなものだった。そりゃあ、カヤツリを起こそうとしないわけである。

 

 今から思えば、当然かもしれない。もう、トリニティの襲撃事件から数週間は経っている。その間ずっと一緒に居たのだから、そういう感情の一つや二つは持つだろう。

 

 それに、カヤツリの事だ。アツコの為に際限なく、あのインチキ染みたスペックを振り回したに違いなかった。

 

 

「ハァ……それを聞いたところで、意味なんてないと思うけどね。あの娘の土俵じゃ、絶対に勝てないよ」

 

 

 アツコの表情が不満げに変わる。不満だろうが何だろうが、事実は事実だ。それを見つめなければ、勝負の土俵にすら上げてもらえない。

 

 マトはカヤツリが誰を選ぼうがどうでもいい。ホシノを選んだほうが丸いとは思うが、今の状況では行き詰っている。だったら、少しくらいの起爆剤は必要だろう。

 

 

「どうせ、あれだろう? 先日の銀行強盗。カヤツリが介入したことに怒ってるんだろう?」

 

「何で分かるの?」

 

「分かるさ。あの娘が嫌に機嫌が良かったからね。それなら、納得だよ」

 

 

 納得するマトとは正反対に、アツコの眉が吊り上がっていく。随分とカヤツリにご執心らしい。あんな面倒くさくて、頭が固い男のどこが良いのかは分からない。仕事づきあいなら最上級であるが踏み込むともなれば、あんな核地雷もそうないだろうに。

 

 マトですら、カヤツリの限界が分からない。何でもない様なフリして、臨界に達していてもマトは驚かない。

 

 ホシノは後輩たちの前では猫を被っている。そうであれと決めた先輩の皮を被っている。余りにも被りすぎたそれは、素のホシノと癒着してしまった。だから、息をする為にカヤツリを求める。皮を脱げるのはカヤツリの前だけだから。

 

 それが、カヤツリはそうじゃないなんて、誰にも分からないのに。皮を被っているだけでなくて、飼っているのに。

 

 

「大体が、何でそんな風になったかを知りたいんだろう? 何でカヤツリの中に、小鳥遊ホシノが棲んでいるのか」

 

「棲んでる……?」

 

「飼ってるとも言えるか。……ああ、詩的な表現だったかね。それだけ大事には思ってるのさ。多分、アリウススクワッドだったか、それに対するアンタの感情と似たようなものだよ。境遇も、まあ似てるんじゃないのかい?」

 

 

 少しだけ、アツコの表情が緩んだ。何となく理解できたらしい。それは、とても強く。他の何かと両立するものだと。

 

 

「それに、真正面から歯向かう愚かしさは分かるね? だったら、アンタの持ち味で勝負するべきだと私は思うよ」

 

「持ち味……?」

 

 

 考え込むアツコに、マトは安堵の息を吐く。話を逸らすことに成功したからだ。

 

 カヤツリの心に棲んでいるのは、小鳥遊ホシノだけではない。もう一人だけ棲んでいる。あれには絶対に勝てはしない。小鳥遊ホシノですら勝てはしないのだから、アツコがいくら頑張ったところで、無理なモノは無理だ。

 

 カヤツリの中に棲んでいる者。それは、梔子ユメと小鳥遊ホシノとの思い出だ。カヤツリがいくら願おうと、もう取り戻せないもの。マトが、そうさせてしまったモノ。カヤツリは、それを取り戻したくて、ずっと足掻いている。

 

 それが、もう戻らない事はカヤツリだって分かってはいるのだろう。ただ、本人が納得できるか。それだけの問題だった。

 

 だから、見捨てられないのだ。目の前で、誰かの大切な何かが失われようとしている時。それを救わずにはいられない。

 

 救って、救って、救い続けて。救ったそれが、それら全てが。カヤツリの求める物ではない事が分かった時、全てのやれることを試した時、ようやくカヤツリは納得できるのだろう。アレが仕方のない事なのだと。

 

 それには、そのための機会が必要だった。ならば、マトは償いの為にお膳立てくらいはする。

 

 

 ──本当に面倒くさい男だよ……いっそ、記憶でも失った方が楽に生きられたんじゃないかね。いや、私が過労死しそうだ。そもそも、あの娘がしっかり捕まえて置けばこんなことにはなってないんだよ……

 

 

 ホシノは、それに勝てるチャンスがあった。けれど、自らそれをドブへと捨ててしまった。あのカヤツリとホシノの喧嘩の日に。

 

 あそこで我慢できていれば、カヤツリは後悔を捨てられただろう。梔子ユメに対する罪悪感ではなく、自身の欲求でホシノに接していたと認められただろう。

 

 もしかしたら、小鳥遊ホシノはそれを許す言葉を言えたかもしれない。そう出来たなら、今も二人、アビドスで暮らしていたかもしれない。

 

 でも、そうはならなかった。カヤツリは後悔に耐えきれず、ホシノは許すどころか責めた。だから、この話はここでおしまいなのだ。アビドスの復興を成し遂げる事で清算するという方法は断ち切られてしまった。

 

 

「……アンタはある意味で、得な立場にいるんだよ」

 

「得……? そんなの、向こうの方が……」

 

「はぁ……それを聞いたら、あの娘は怒るだろうね。ずるいって」

 

 

 マトの助け舟がアツコをさらに混乱させたようだった。仕方なく、マトはヒントを出すことにした。

 

 

「小鳥遊ホシノはね。カヤツリに頼ってほしいのさ。だが、それは難しい事は分かるね?」

 

 

 勢いよくアツコは頷く。基本的にカヤツリのスペックは化け物染みている。だから、頼られるにはどれかのスペックを上回っていなければならない。ホシノは勿論それを持っている。

 

 圧倒的なまでの戦闘能力。それは、カヤツリが頼るに足るものだ。しかし、その分野を発揮する場面をカヤツリは作らない。先日の銀行強盗が例外なだけだ。そして、その例外を連発することは、もうできない。アビドスから離れたカヤツリをアビドスの問題に巻き込むことはできないからだ。

 

 一発の火力が大きいが、そのチャンスが全く回ってこない。それが対カヤツリにおける小鳥遊ホシノの立ち位置だった。昔はそのチャンスがあったのに、一時の癇癪で放り投げてしまったのが響いている。

 

 

「アンタは未熟だ。発展途上であるが故、カヤツリに勝るところはないだろう。しかし、そこが鍵なのさ」

 

「たくさん頼ればいいってコト? でも、それじゃ……」

 

「ハッ! 教え子に失望なんかしないよ。カヤツリはそんな奴じゃない。むしろ、頼ったことを褒めるし、成長したことを喜んでくれる。そして、成長し続ければ……」

 

「いつかは……?」

 

 

 正解に辿り着いたのだろう。アツコは何かを考え始めた様子だった。頭上に漫画でよく見るような吹き出しを幻視した。

 

 火力は低いが、チャンスが多い。重ねれば重ねるほどに火力は上がる。時間を掛ければ追いつけて、マダムの対処やアリウス復興というイベントも用意できる。ホシノが知ったら歯ぎしりする程の立場だ。

 

 

 ──しかし、トリニティね……

 

 

 嫌な予感がする。数週間のアツコでこれだ。一年間いたトリニティではどうなっているのか。全く想像ができない。

 

 百合園セイアなど特にそうだ。対カヤツリの力量が未知数に過ぎる。

 

 そもそも、カヤツリをアビドスから連れ出したことが異常なのだ。一体どうやってそれを成したのか。マトには分からない。まるで、判定でクリティカルを連発したかの所業。

 

 ティーパーティでの立場もそうだ。外部の人間を側近へと引き上げたうえ、トリニティへの入学許可まで取得した。完全にカヤツリ沼に首まで浸かっている。そう考えるべきだ。

 

 それに、恐らくは生きて潜伏している。

 

 だが、それを言う心算はマトには毛頭なかった。これは彼女たちの戦いなのだから。

 

 

「まぁ、頑張るんだね」

 

 

 明日の計画を練るアツコを横目に、マトは誰に言うでもなく、そう呟いた。

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